スターティングメンバー
コートに向かう途中、1人の女性に声をかけられた。
アリアが言うには代表チームのコーチらしい。
「はじめまして!カナデです!」
そう言ってお辞儀する彼女は、カナデ・ネコミヤ。可愛いとはこの子を意味するのではないかと言いたくなるような容姿。
背は少し低く、胸も膨らみかけ。だからこそ良さがある!!
しかしなんと言っても特筆すべきは猫耳。
NEKOMIMI。Cat's Ear。そう、ねこみみ。
現実世界じゃありえない。けど、ここならそれが許される。異世界、最高。
「あの...聞いてます...?」
「すいません、猫耳に心を奪われていました。監督になる不知火隼人です。」
「ハヤトさんですね!私のことはカナデって呼んでください!」
「よろしく、タマちゃん。」
「私の話聞いてました!?」
仕方ない、だってタマちゃんだもん。
可愛い。日本人なら誰だってそうなる。
しかし、カナデはご立腹した様子で話しかけてきた。
「こちら、選手のデータです。事前にまとめておきました。」
「お、やるねタマちゃん。ありがとう。」
「だーかーらー!」
憤慨しているカナデを横目に、渡された資料に目を通す。
「よく分析されているな...」
そこにはスタメン・ベンチを含めた全メンバーのデータがあった。
個性や特性、気性など細かく表示されている。その中で、特に気になった3人のメンバーをリストアップして、カナデに資料を返す。
「あれ?もういいんですか?」
「うん、後は直接見るから。」
そう言って、2人はコートに一歩足を踏み入れた。
「えー、はじめまして。監督をすることになった不知火隼人です。よろしくお願いします。」
反応は案外悪くない。所々から黄色い声が聞こえてくる。
ざっと見た限り、中学生から高校生といった年代の子たちだろう。
そんな子達が国の命運をかけて争いをしているのだ。
サッカーというスポーツを用いて。
「えっと、早速で申し訳ないんだけど、今からミニゲームをします。これから呼ばれた人はオレの所に来てくれ。呼ばれなかったものはタマちゃんの所に行ってくれ。」
「だから、カナデですって!」
「はいはい。それじゃあまず ー」
そう言って、メンバーを呼ぶ。
「ねぇねぇ監督!私こっちのチームなの?」
「ん?嫌だった?」
声をかけてきたのは、GKのクロエ・ローリエ。褐色の肌、控え目な胸が15歳の成長期らしい身体を表している。うん、良い。素晴らしい。ロリコンではないがこれはよいぞぉぉぉ。おっと失礼、取り乱した。
「ううん、そんなことないけど、私でいいのかなぁって。」
「あぁ、それは大丈夫。ちゃんと選んだ理由があるから。」
普段は控えのGKをしているこの子を選んだには訳がある。というよりかは、なぜこの子が正GKじゃないのか不思議でならない。
ピックアップした選手のうちの1人のクロエは、間違いなくとんでもない才能を秘めている。まぁそれは試合を見てからじゃなんとも言えないから、ここでは黙っておくが。
「監督のために頑張る〜!」
可愛い。懐いてくれてる。可愛いは正義。
「あの、不知火さん」
凛とした声に振り返る。
そこには『清楚』が立っていた。
あぁ、失礼。清楚が人と化しているんだ。
長い黒髪、ぱっちりした目、大和撫子とは正にこの人!と言ったような完璧美少女。
「あぁ、シズク・サイオンジさんだよね。」
「えぇ。シズクとお呼び下さい。私も不知火さんとお呼びさせて頂きますから。」
「分かった。よろしくな、シズク。それでどうかした?」
「あの、監督には監督の考えがあるんだとは分かった上でなのですが...あの人とは出来れば違うチームにしてもらえませんか?」
シズクの視線の先には1人の金髪の女性が立っていた。
金髪ロング、豊満、白い肌、まさに漫画の世界にしかいないような完璧超人。そして、このチームのキャプテン、ルナ・サルアージュ。18歳という若さで代表のキャプテンを務める彼女は、少しツンとした態度でこちらを見ていた。分かった、さてはツンデレだな。
お兄さん、ツンデレも好きだよ。まぁデレ7くらいが好きだから、ツンデレと言えるかは分からないけど。
「監督!なぜ私がシズクと同じチームなの!ネコミヤさんから聞いてないの?」
「おう、シズクが大好きなんだろ?」
「なっ、そんなわけないじゃない!べっ、別にそんなわけは...」
「おー、まさにツンデレ」
「何を言っているんですか不知火さん?」
「いや、何でもない」
「そんなことより、シズクとはプレースタイルが合わないからセットでは使わないように、って聞いてるでしょ?」
そう、今ルナが言ったようにタマちゃんからこの2人はプレースタイルが合わない為、一緒に使わないように言われていた。
でも、2人の能力は非常に高い。仲が悪い、というわけではないだろうに。
「とりあえず、今日は2人を使う。仲良しこよしをしろとは言わないけど、同じチームってことは忘れずにプレーしろよ。」
2人は少しムッとした様子でお互いの顔を見たが、ウォームアップへ戻っていった。
「さて、どうなるかな...」
選手達のアップの様子を眺めつつ、戦術を構想するその姿は、まさしく『監督』の姿だった。
次からいよいよミニゲーム!
戦術、個性、いろいろ飛び出します!