不知火の受難
クロエとユリアにせがまれ、頭を洗い背中を洗った後、2人は湯船へと向かい、洗い場にはルナと不知火だけとなった。
「...シズクとは、何を話してたの。」
少し不機嫌なのか、頰を膨らませ訪ねてくるルナ。
「別に大したことじゃないよ。今日の試合について話してただけだ。」
「...そう。」
ルナは椅子に座ると、自身の長い髪を纏め、不知火の方を振り向いた。
「私も身体、洗ってくれるんでしょ...?」
「...いや、流石にそれは無理...」
「な、なんでよ!シズクやクロエやユリアは良くて私はダメなの!?」
「その、なんていうか、自分の身体に聞いてください...」
そう言って顔を逸らす。クロエやユリアはまだまだ子供だからなんとかなったが、シズクはかなり危なかった。黒髪が艶めく姿や、スラッとした体つきを見たときは、思わず衝動に駆られそうになったが、そのときはかつての恩人の話をしていたため、なんとか理性が留まった。しかし、ルナの溢れんばかりの胸が、もし仮に少しでも見えてしまったら、もう後戻り出来る自信がない。
それを察せないルナは、無理やり不知火を自分の背に立たせ、身体を洗うように命じた。
仕方なく、背中をタオルで擦る。
「ん...あっ...」
「おい!変な声出すなよ!」
「だって...なんか洗い方が嫌らしいんだもん...」
だもんってなんだ、だもんって。いつものそんな口調じゃないだろ!
心の中でツッコムが、それな心の叫びは届かない。ひたすら無心を貫き、なんとか身体を洗い終わり、不知火は逃げるように立ち去ろうとした。
「あっ、ちょっと待って!」
ルナが不知火を呼び止める。何だ?と振り返ると、ルナはもじもじしながら話し出した。
「今日はその、あんたのお陰で勝てたっていうか、別にあんただけじゃなくて皆が頑張ったっていうのもあるけど、なんというか、その...」
「なんだよ」
はっきりしない口調で話すルナに、不知火が続きを促す。
「その...」
腹を括ったのか、意を決した様子でルナは言葉を発した。
「あなたが監督で良かった。今日はサッカーが、楽しかった。」
その時の言葉はきっと忘れないだろう。
「...これからもよろしくな、キャプテン。」
ふいっと背中を向けて歩き出す。真っ赤になった顔を、ルナに見せないために。
「まだまだこれから頑張らなくちゃな。」
そう呟いて、今後のチームの課題の克服方法を、頭の中で描いていた。
次回はシズクのお家へと




