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1番重要なプレーとは

vsパルスロスト⑥にあたります。

相手ボールから試合が再開される。

スコアは1-1。残り時間はおよそ15分。

その間になんとしても1点を取りたい二ホアニア代表チームは、果敢にも0-10-1 のフォーメーションを継続した。

パルスロストはそのままのフォーメーションで、ジャンヌのロングシュートのタイミングを計っている。しかし、ルナの隣にポジションを取っているユリアが、そうはさせまいとジャンヌのシュートコースを消していた。

しかし、それでもボールは動く。次第に疲れから動きが鈍る中、ジャンヌの動きは前半と何ら変わりない。ついに、フリーの状態を作ってしまった。

「しまった!」

ルナが叫ぶ。しかし、もう既にシュートモーションに入ってしまったジャンヌを、誰も止めることは出来ない。

「エクスカリバァァァァァー!!!」

光の線がゴール目掛けて一直線に飛んで行く。

終わった、と誰しもが思った。たった2人を除いては。


1つ、人間には慣れというものがある。

2つ、回数を重ねる程、その精度は上がる。

3つ、今の段階に於いて、この2つの条件は揃っているのか。


ジャンヌが放ったシュートは僅かに2本。

一本はユリアが触れ、ゴールから大きく逸れたが、もう一本はゴールへと突き刺さった。

通常、たった2本のシュートを見ただけで、『慣れる』ことは不可能だろう。

しかし、時にこの世界には、常識が適用されない者も存在する。

ジャンヌの放った超長距離シュートは、ゴール直前で軌道が変わった。そのボールはゴールの脇を抜け、コートの外へ転がって行く。

一瞬静まり返ったスタジアムに、一気に割れんばかりの歓声が響いた。


クロエが、ジャンヌの超長距離シュートに反応し、ボールを弾きゴールを守ったのだ。


「監督ー!止めたよー!」

「ありがとうクロエ愛してる!」

ぴょんぴょん飛び跳ねるクロエに、大声で愛を伝える。何人かから冷たい視線を浴びせられたが、可愛いんだから仕方ない。今からクロエの可愛いところを、ただひたすらに喋る講座を開きたいくらいだ。

「と思うんだがどう思う?」

「突然なんですか?」

隣でカナデが怪訝そうにこちらを見てくる。

そのうちネコミミ講座も開こう。そう決意し視線をコートに戻す。

相手のコーナーキックはクロエがきっちりキャッチし、味方にボールを渡していた。

「クロエさんが止めてくれて、本当に助かりました...」

カナデがほっと胸を撫で下ろす。

「あの成長速度は反則的だな。...となると、身体の成長も速いのか...?身体はそのままでいいのに...いや、しかし大人になったクロエも見てみたい...」

「あの、試合中ですけど通報しますよ?」

「すいませんでした。」

頭を地面に擦り付ける。試合中にコーチに土下座をする監督なんて今まで見たことない。もちろん、オレも初めて見たし初めてやった。

カナデはジトッとこちら見ていたが、通報するのはやめてくれたようだ。

「クロエさんが止めるって分かってたんですか?」

「100%分かってた。と言ったら嘘になる。正直言うと50%くらいの確率だと思ってた。」

でも、と言葉を続ける。

「信じるって言ったからな。だから最後はクロエを信じた。」

0-10-1のフォーメーションも、シズクへの指示も全て、信じる事が何よりも必要だった。

「タマちゃんさ、コート上でのプレーにおいて、1番重要なプレーってなんだと思う?」

突然の質問にカナデは慌てながらも自身の考えを答えた。

「えっと、パス、ですかね。やっぱりボールが繋がらなければ攻撃にいけないので。あ、でもそうなるとドリブルもシュートも重要になってくるような...うーん、1番重要な...」

「オレはさ、走る事だと思うんだ。」

カナデの言葉を遮り、不知火が選手達を見つめ発する。

「それを理解できてる選手は、試合終了前、同点のこの状況を打開出来る力がある。」

ベンチから立ち上がると、この試合最後になるであろう指示を出した。

「全員、走れ!!!!」

現代サッカーにおいて、何よりも重要なのは『走ること』だと、自分は思っています。

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