その背番号の意味は
vsパルスロスト戦⑤に当たる部分です。
シズクの回想から、試合に戻ります。
「シズク!」
名前を呼ばれ、ハッと我に帰る。まだ試合中だ、今は悩んでる時ではない。
ルナからボールが飛んでくる。ふわりとしたボールを眺めながら、ふと、心にある疑問が浮かんだ。
なぜ、点を取った時が1番楽しいのか。点を取るだけが全てではない。GKやDFといった選手は、あまり得点に絡まない。それでもサッカーを楽しそうにプレーする。
分からない、私には分からない。
ボールが飛んでくる、どうしたらいいのか分からない、あぁ、何も考えずにプレーが出来たらどれほど楽だろうか...
「思いっきり、楽しんでこい!」
その言葉が、シズクの脳裏でフラッシュバックした。
ボールを胸で受け止める。ルナがこちらに向かって走ってくる。いつもならここでパスを出して、ルナにシュートを打たせればいい。
ジャンヌもそのプレーを最も警戒していた。自分がマークしているこの選手から、パスが渡った相手への対応に、全力を尽くさなければいけないと。
しかし、シズクの足元に落ちたボールはルナの元へとは届かなかった。
「えっ...?」
ルナもジャンヌも驚愕の声を上げる。
シズクが選択したのは、ルナへのパスでもなく、ユリアへのパスでもない。
ボールを持ったシズクは、そのまま
相手ゴール方向へ向かってターンした。
ターンだけでジャンヌを抜き去り、相手GKと1対1になる。GKは慌てて飛び出してくる。しかし、時既に遅し。
GKを嘲笑うかのように、ふわっとボールが頭上を越えていく、ループシュート。テンテンと転がるボールはゴールネットに優しく包まれた。
シズクはボールの行方を見送って、自陣へ振り返る。そこにいる仲間達に向けて、渾身のガッツポーズを決めた。
「うおぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!!!」
会場が大歓声で揺れる。
「同点!同点ですよ!!!」
カナデも隣で飛び跳ね、全身で喜びを表す。
シズクはチームメイト達に揉みくちゃにされながら戻ってくる。そして、不知火の元まで行くと、泣きそうな顔でこちらを見る。
「シズク。」
一旦言葉を切り、シズクを見つめる。
「サッカーは、楽しいか?」
目から涙が溢れたのを、不知火は見て見ぬふりをした。シズクは必死に目をこすり涙を隠そうとする。不知火さん、そう言って俯いていた顔を上げた彼女の顔には、満開の桜が咲いたような、美しい笑顔があった。
「点を取るって、サッカーをするのって、こんなに、楽しいものだったんですね。」
泣き笑いのその先に見えたものは、祖父の姿か、あるいは、自分の心の氷を溶かしてくれた、サッカー馬鹿の姿だろうか。
「まだ時間は残ってる!もう1点取って絶対に勝つぞ!」
「「「はい!!」」」
再びコートに選手が戻る。孤高のFWの背中には、11人の選手の想いを背負った背番号11が輝いていた。
ついに同点!
シズクは1枚殻を破り、いよいよvsパルスロスト戦も終盤へ!




