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異世界転移

「今日からS級コーチの講習会かぁ...つい去年引退したばっかってのに、次はコーチかよ。」

そう言ってトレーニングウェアに着替える。

宿泊しているホテルのテレビからスポーツコーナーのニュースが流れきた。

「次の代表の監督は誰かと予測される中、日本サッカー協会は、元日本代表の不知火隼人氏を推薦する考えを示しました。」

「おいおい、佐藤のおっさん!オレまだ資格取ってないってのに、そんなこと言っちゃって大丈夫なのかよ...」

テレビから流れてきた名前は、正真正銘、自分の名前だった。去年引退を表明してからは悠々自適な生活をしようと意気込んでいたが、昔世話になったサッカー協会の理事から代表コーチを頼まれ、その資格を取るために講習合宿が行われるホテルに来ているのだった。

「まぁ、ゆくゆくは監督になるつもりではあるけどさ。それにしたって順序ってものがあるでしょ...」

そういってテレビを消し、ベッドに腰を下ろす。

「講習会が始まるまで後3時間はあるし、少し寝るか。」

そう言ってベッドに倒れこむ。目を閉じるとすぐに意識は遠のいていった。


「...あーよく寝た。今何時...だ...」

時計を見ようとしたその時違和感に気づいた。

まず、部屋の色が違う。

オレの泊まっていた部屋は、天井が透き通るような青空ではなかった。

次に、部屋の広さが違う。

壁がない!なんで壁がない!?

周りは当たり前の様に家々が立ち並んでいて人も歩いている。

そして何より、何でオレは地面に立っている!?!?

「え?さっきまで寝てたよね?というかここどこ!?え???????何これ???」

オレはパニック陥っていた。そりゃそうだ。だって、起きたらまったく知らない景色があるんだもん。あー、これは困ったなぁ☆

「んな呑気なこと言ってる場合じゃねぇ!」

自分で自分の心にツッコむ。その声に驚いた通行人たちが振り返る。それに気付かないくらいパニックに陥っていた。

「いや、とりあえず落着こう...まず、ここはどこで、なんでオレが飛ばされたのかを考えよう。」

そう言って辺りを見回す。

特に何の変哲もないただの街。

日本というより、ヨーロッパに近い感じだろう。

「あぁ、懐かしいなこの感じ。スペインにいた頃に似ている。」

現役時代はスペインの有名クラブで活躍していたため、この街には不思議と親近感が湧いた。

「といっても、いきなりスペインに飛ばされる訳もないだろうし、ここはいったい...お?」

周りを見渡していると、視線の先にサッカーをしている子供達を見つけた。

皆、楽しそうにボールを追いかけている。

周りの大人たちも微笑ましい様子で見守っている。

「どこにいっても、サッカーは愛されてるんだな...よし。」

そういって、子供達がいる方向へ向かうと、子供の蹴ったボールがこちらに飛んで来た。

「お兄さん、危ない!!」

そんな声が聞こえたが、オレはそのボールを容易く胸で受け止め、足先でボールを足首に吸付けた。

皆、驚いた様子でこちらを見ていたが、この懐かしい街の雰囲気に流されてか、オレはリフティングを始めた。

まずは腿で数回ボールを蹴り上げ、次はヘディングに。そこから足元に落とし、蹴り上げたボールをその場で一回転し、再び足元に収める。

すると、周りから歓声が湧いた。

大人も子供も皆、楽しそうにこちらを見ている。

「これで、フィニッシュ!」

そう言って最後は、空高くボールを蹴り上げ、音も立てずにボールを足元に収めた。

より一層、大きな拍手と歓声が起こった。

子供達に詰め寄られ、リフティングのコツなどを教えてくれとせがまれる。

そうしていると、1人の女性に声をかけられた。

「あの!貴方はサッカーが得意なのですか?出来ればお願いしたいことがあるのですが。」

「ん?まぁ得意っちゃ得意だよ。ずっとやってたし。それよりもさ、聞きたいことがあるんだけど。」

「なんでしょう?」

「ここ、どこ?」

「はい?」

女性は不思議そうな顔をする。

そりゃそうだ。突然そんなことを聞かれたら誰だって戸惑う。

「ここは、二ホアニア王国です。豊かな自然、活気に溢れた街、そして、何よりもサッカーが好きな人達で溢れた国です。」

二ホアニア...聞いたことの無い名前だが、どこか日本に似ている気がする。ということは、もしかしてこれは...

「オレ、異世界に飛ばされてる!?!?」

「ひっ!?」

「あぁ、ごめんごめん。突然大きい声出して。しかしそういうことか...いったいどうすりゃいいんだ...」

突然異世界に飛ばされてサッカーをしたのはいいが、肝心なことを忘れていた。

「あ、講習会どうしよう。」

「えっと、何を仰っているのかよくわかりませんが、貴方はここに住んでる人間では無いのですか?」

「そういうことだ。出来ればこの街とか、この時代の詳しい話を教えてほしい。あ、そう言えばさっき、お願いがどうとか言ってたな。何だったんだ?」

ふと思い出して女性に尋ねる。

すると、彼女は満面の笑みでこう言った。

「私達の国のチームの、監督になって下さい!」

「はい...?」

そうして、オレの第2のサッカー生活は異世界で始まった。

女の子だらけです。

がんばるぞい。

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