過夏の憶い出
一夏のある日は
1人の少年から
1人の少女から
大きな。大きな物を奪い去ってしまいました。
それはあまりに少年少女にとっては
大きな。大きなものでした。
海の見える大きな丘の上の事だった。
「俺さ、泳ぐのが好きなんだ。」
真夏の快晴、37度を超える猛暑の中、褐色な少年は背中を岩にもたれかせ呟いた。
「知ってるよ。」
少し色白な少女は、ニコリと笑って少年の前にしゃがみ、少年の瞳を見つめた。
「祭りも好きだ。一緒に焼きそば食べたり、恥ずかしくて言えなかったけど、お前の浴衣。すげぇ似合ってた。」
少年は懐かしそうに、少し寂しそうに言った。
「あの時言ってくれれば良かったのに。祭りの為に、わざわざ着付けしたのよ。」
少女は嬉しそうに、少し呆れた様に首を傾げた。
「けどやっぱ、泳ぐ方が好きだ。だけど、特にお前と一緒に海で泳ぐのは大好きなんだ。」
少年は少し笑みを浮かべ、左手で頭をわしゃわしゃとかいた。
「それは知らなかったな。ありがとう。」
少年の言葉に嬉しそうに少女は思い切りの笑顔を少年に見せた。
「いっぱい喧嘩もしたし、ひどいことも言ったし、言われた。けど、俺。お前と海で泳いでる時が一番楽しかったんだ。」
少し照れた様な表情、だが少し嬉しそうな表情で少年はそう言った。
「一緒に泳ぐって、君はいつも早すぎて私は浮き輪にういてるだけだったじゃない。」
少女は口元に手を当て、クス。と笑った。
「出来る事なら、またお前の浴衣姿が見たい。お前と一緒に屋台で焼きそばが食べたい。いろんな事でケンカしたい。お前と海で泳ぎたい。
もう一度でいい....お前に....逢いたい。」
少年は背中をもたれかせていた岩の方を向き、手に持っている紅の花を岩に。少女の名が刻まれた墓跡に手向けた。
笑顔で我慢し続けていた少年の目には大粒の涙が溢れ出ていた。
「私も。あなたと話したい。あなたに触れたい。もう一度。もう一度だけでもいい。
あなたに、逢いたい。」
少女の頬に大きな水滴が伝った
少女は見ることも、触れることも許されないその体で。
墓跡に大粒な涙を流し続ける少年を抱きしめた。
名もなき島の。ある夏の事であった。
当たり前の日々日常の中に何か忘れてませんか?
何か、大きな物を。
今日は家に課題を忘れました(¬_¬)