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第3話 少年は出会う

嫁と劇的な再会を果たしてから2週間が過ぎ、嫁もだいぶ村に馴染んできた。この世界の言葉も片言で話せるようになってきたし、俺と一緒に行動していたことでステータスもだいぶ上昇して紙装甲ではなくなって子供達と普通に遊べるようになった。中身が大人だからか幼児たちの面倒見の良いお姉ちゃんという立ち位置を確立できたようだ。大人達の評判も良くて旦那である俺も鼻が高い!評判といえば、俺に対するみんなの態度もだいぶ変わったなと思う。以前はこう腫れ物に恐る恐る触れるような感じだったのが、そんな事実はなかったかのようなボディタッチや会話を交わすようになった。同世代の連中に至っては俺に狩りの仕方を教えてくれという。なんつうか、こうも見事なまでに手のひらを返されると問い詰めにくいというかなんというか。…まあ、原因は分かってるんだけどな。

端的に言えば、俺の生活態度の変化だ。今までは誰に何を言われようが、ほぼ24時間狩猟に没頭していた俺が嫁を連れ帰った日から村の掟に則った生活をするようになった。嫁と一緒に夜もしっかり寝てるからバッドステータスの不眠症は無くなって隈も取れた。これには最初村の連中はこぞって天変地異の前触れかと騒いで鬱陶しかった。ウラルに至っては俺を偽物呼ばわりして刃物片手に何度も襲ってきやがった。その度に地面に縫い付けてやったがな!俺にベッタリだったトウカ姉は最初こそ嫁に対抗心を燃やしていたが、2、3日経つ頃には嫁と茶飲友達になっていた。…女の子の友情ってよくわからん。

まあそんな騒ぎも落ち着いて俺の嫁は俺を更生させた救いの女神とまではいかないが、吉兆の存在として見られている節がある。人当たりもいいからこの村唯一の雑貨屋の女将ララポ(ドワーフ50歳)を筆頭にちょっとしたファンクラブ的なものができているのを俺は知っている。

擬態中の嫁は変わらず10歳前後の少女だが、本来の彼女、つまりドラゴンとしては一段階成長した。


アキ(グリーンサラマンダー)

ブリード:ドラゴン

ジョブ:唱術師Lv.5

筋力:80

敏捷:100

耐久:75

魔力:200

スキル:ウィンドブレスB、念話S、鑑定S、恵みの歌B、浄化の歌B、激励の歌C

テイマースキル:擬態(人)

称号:転生者、女神の寵愛、淑女の癒し

備考:前世 狩屋 秋子 享年42


サラマンダーはドラゴンじゃないと突っ込むのは無しな。頭にグリーンってついてんのは、風属性だからという事らしい。四足歩行は変わらずだが、羽毛で覆われていた体も今は黄緑色の鱗に変わった。あと特徴的なのが左の側頭部にインディアンの羽飾りみたいな飾り羽ならぬ飾り鱗。擬態した時も羽毛だった場所が鱗に変わったからライトスケイルアーマーみたいな感じでちょっとかっこいい。今まで気にかけていなかったけど嫁のジョブの唱術師っていうのは歌に魔力をのせて効果を発動させるジョブで主に後方支援で活躍するものだと賢者のオルトラじっちゃん(ヒューマン80歳)は言っていた。ちなみにじっちゃんには嫁がドラゴンであることはバレてる。嫁を紹介した時に擬態を看破されてしまった。じっちゃんは鑑定より上のスキルである審美眼を持っているからいずれバレるとは思っていたけど。まあそれはともかくとしてじっちゃんは子供達の勉強の世話をしたり、村人の悩み相談や病人の看護と手広く活躍している。村中のみんなが一番の信頼を寄せている賢者は嫁の正体を他のみんなに教えていないし、これからも話すつもりはないらしい。なんでか聞いたらニヤリと笑って答えてくれた。

「この村でずっと暮らすなら皆に教えた方が良かろう。じゃが、お主らはいずれこの村から旅立つ。ならば余計なことは言わず、暮らせるうちは人として暮らせる方がその子も嬉しかろうて」

俺が村を出ようとしていることもバレていたみたいだ。

「聞かずとも分かる。古来より異界より転生せし者は味気ない安寧よりも刺激溢れる旅路を好むからの」

ホント、じっちゃんは賢者の名に恥じない理解力を持っていてすごい。あと興味を引いたのは昔から異世界転生者が存在していたことだ。嫁から天界の転生システムの話を聞いた時にもしやと思ったけど、割と俺たちの世界からの転生者って多いのかもしれない。世界を巡ってそういう人たちと出会うのも面白いかもな。

じっちゃんの協力のもと俺たち(主に嫁)はスキルアップに勤しむことにした。テイムでつながりのできた俺たちは一緒に行動してればほぼ自動的に経験値が加算されて行くんだが、これじゃあレベルが上がるだけでスキルが育たない。嫁のスキルは魔力を込めた歌。魔力が少なくて魔法が使えない俺では教えることができない。だからじっちゃんの教えはとても助かった。てか、じっちゃん歌うますぎ。オペラ歌手としても食っていけんじゃね?おまけに新しく激励の歌とか覚えさせるとか多芸にもほどがあんだろ。歌スキルを使用する際には嫁も擬態を解除しているのだが、じっちゃん曰く擬態の状態でスキルを使えば魔力の成長値が倍近くになるらしい。ただ今は2つ以上のスキルを同時に使用する感覚に嫁が慣れていないからそれはできていない。

嫁ほどじゃないにしても俺も苦労している。もちろん龍鱗スキルの扱いにだ。嫁の擬態と同じ割合で魔力を消費するこのスキルは少しでも意識の向け方を間違えるとあっという間に全身が刺々しい鱗に覆われて人外ルックスになってしまう。擬態した嫁みたいに見た目鎧!って感じにしたいんだけどな。理想には程遠いぜ。じっちゃんのおかげでだいぶマシにはなったんだぜ?魔法の専門用語がわからない俺にも分かるように嚙み砕いたりしてさ。おかげでいきなり全身じゃなくて、顕現させたい箇所に最初出てそこから全身に回るようになった。あとは全身に回らなければいいんだけど留めるのがなかなか難しい。嫁もそうだけどこればっかりは数をこなしてコツを掴むしかない。ガムシャラにやっても意味がないことはじっちゃんが口を酸っぱくして言っていた。

「論理的でも感覚的でも構わん。自力で掴んだソレをモノにすることが大事なのだ。闇雲にやってなぜ掴めたのか分からねば意味はない」

じっちゃんは俺たちの感性を尊重する教え方をしてくれる。伊達に注意力散漫な子供達を教育しちゃいない。俺はもともとそうだったが、転生してからはより一層物事を感覚で捉えている節があるから、理詰めで教えられたら今頃頭がパンクしていたと思う。


そんなこんなで修行の日々を送っていたわけだが、月に一度の行商の日にちょっとした騒ぎが起きた。その日、俺と嫁は子供達の弓矢練習用の標的射出装置を村の端の作業場でララポの息子のドリル(ドワーフ20歳)と作っていたんだが、村の中央広場から怒鳴り声が聞こえてきた。なにやらもめているようだったから気になって見に行くことにした。野次馬の大人たちが邪魔で見えやしねえから家の屋根を嫁をおぶって渡って行く。俺に対する怒鳴り声も聞こえたような気がしたが無視した。騒ぎの中心が見える位置に到着するとようやく何事かわかった。行商人のクク(オーク28歳)に俺に次いで狩りの腕前がいいルード(エルフ114歳)が食ってかかっていた。どうも毛皮の値段交渉に難があったようだ。ルードは完全に血が上っているみたいで周りの制止の声が聞こえちゃいない。このままじゃ村に行商人が来なくなるかもしれないし、クク兄には魔法の巾着袋を貰った恩もある。ちょっくら仲裁に入るか。嫁にここで待つようにいうと跳躍。一番近くにいたガロン(オーガ40歳)の肩に着地する。いやはや、伊達に鍛冶場で汗を流してないな。着地しやすいのなんのって。

「なんじゃあ!?ってナツキか。ワシの肩は遊具じゃないぞ!」

「ワリ。ちょっとクク兄助けに行ってくるわ」

「は?あ、おい待て!」

待たねえよ。ガロンが懸念してるのはアレのことだろうけど、躊躇とかしている間に刃傷沙汰になったらどうすんだよ。人命優先。

俺はガロンの肩から飛び降りると、人の隙間を縫うように走っていく。こういう時に子供の小さな体は便利だ。対して苦労することなくルードの真後ろに到着する。

「なにもめてんの?」

俺がそう問いかけるとクク兄はホッとしたようなルードは神聖な何かを見るような表情でこっちを見る。ルードは4、5年くらい前にこの村にやってきた元冒険者で、怪我が原因で引退したとはいえ狩りの腕は確かだったし村にもあっという間に馴染んだ。ただ、エルフ的にもまだ若いくせにちょっとジジくさいというか、村の子供たちに対する接し方が完全に好々爺だ。だからというか、彼が相手に食ってかかるほど怒ることは滅多にない。それが何故こんなに激怒しているのか?その理由は。

「おお、ナツキ様!良いところにおいで下さいました!この悪徳行商人のオークめが貴方様とクリュウ様の毛皮を買い取らぬと申しているのです!」

うん、親父と俺を敬いすぎて信仰の対象にしているということだ。クリュウは俺の親父の名前な。ルードが来てすぐの頃だったか。俺は親父と狩りに出かけてたんだが、その時にルードが身を隠しながら俺たちの後をつけてきていた。気配感知で気づいていたし邪魔するわけじゃないから放っておいたんだがな。俺たち親子の狩りの手際とかそういうのを見て、彼が元いた土地で敬われている狩りと豊穣を司る男神カグートの生まれ変わり、もしくは加護を受けた者であるという答えに至ったらしい。このまま狂信者にならないか心配でならない。

「あー、うん、ちょっと落ち着こうな」

良い年したエルフが毛皮を買い取らないだけで取り乱すなよ。一方的に詰め寄られて理由も話せていなかったクク兄が安堵のため息を漏らしている。

「いやあ、助かったよ。こちらの方が血走った目で迫ってくるから、もう怖くて怖くて…ブゴっ」

クク兄泣いてんじゃねーか!この事は後で親父に報告、説教地獄に堕としてやる。あとルードの飴は半年間受け取ってやらん!

「それで、毛皮が買い取れない理由は?」

「それなんですがね、ナツキ君はメルティアの街の話は覚えているかい?」

もちろん覚えている。物作りが盛んな街で材料があればなんでも作れる職人街。俺たちの村で獲れた毛皮や骨の大部分が防具や武器の材料としてここに行き着くらしい。てか、品質とか他の村よりもずば抜けているからあるだけ買い取ってくれるってこの前話していたような…。

「メルティアの街で何か問題でも?」

買わない理由を話す前に出てくるって事は何かしら関係があるって事だろう。

「さすが、ナツキ君。理解が早くて助かるよ」

聞けば、現在メルティアの街では糸が不足しているらしい。たかが糸と思うなよ?糸が無ければ防具を含む服飾関係の作業ができない。毛皮や反物があるのに物が作れない。それにメルティアが取り扱っている糸はただの糸じゃない。クク兄の一番の顧客がメルティアの職人達だから彼らのために糸を積極的に仕入れようとしているのだが、なかなか良いものが見つからないらしい。ふむ、素材にうるさい職人好みの糸か。

「その糸って元々はどこの村が作ってるんだ?」

「それについては僕が説明するよ!」

クク兄の後ろからヒョッコリと姿を見せたのは鮮やかな赤い髪をポニーテールでまとめた女の子。歳の頃は16ぐらいか。妙に湾曲してはいるが先端に魔石がはまっているから杖?を背中に背負っているから術師か。服装はローブの上に胸当てを当てただけの軽装で防御より動き易さを重視してるって感じだ。

「はじめまして、ナツキ君。君のことはククさんからよく聞いてるよ。僕はクリストローゼ。長いからクリスって呼んでね。冒険者をやっている。今回は護衛依頼として彼に同行しているんだ」

ハキハキと喋ってくれて好印象だが、…護衛依頼ねえ。見た感じ彼女以外に冒険者らしい姿は見当たらない。クク兄は馬車は使わずに魔法の背嚢に荷物を入れて自分の足で移動するから他の荷物が別の場所にあってそれを護衛しているわけでもないだろう。

「パーティーは組んでいないのか?」

「ああ、うん。今回は組んでいないよ」

普段は決まったメンツとは組まず、その場その場で適当に組んでクエストをしながら街から街へと渡り歩いているらしい。今回はメンツが集まらずに1人だけのクエストとなったんだと笑い飛ばしていた。

「この依頼自体も特殊だから」

「特殊?」

この護衛依頼は職人ギルドが商人ギルドと冒険者ギルドに出した依頼の一端らしい。

内容は製糸を生業としているバラントの街の生産ラインを回復させるために必要な物資と糸の代替品の確保とその護衛。期限は半年。報酬は本人の希望額を可能な限り。期限と報酬を見る限りじゃ破格と言って良いだろう。ただ、失敗する確率の方が高いから乗り気な冒険者は割と少なかったようで彼女みたいにソロで護衛をする人が多いようだ。…村じゃなくて街だったか。生産ラインの回復って一体何が起きたんだ?

「バラントの街が誇る養蚕施設がモンスタースタンビートの被害に遭ってね。糸の原料の繭が取れなくなっちゃったんだよ」

おいおい、かなり深刻じゃないか。バラントの街は蛾の魔獣であるブランクモスを養蚕に用いることで多種多様な糸の生産に成功した街らしい。この魔獣の繭を加工する際に特殊な工程を踏むことによって熱に強い糸だとか刃物で切れない強靭な糸なんかにできるらしい。クク兄が請け負ったのは糸の代替品の模索。

それに売る先が無いんじゃ毛皮を仕入れてもあまり意味がないから今回は控えさせて欲しいと説明しようとしたところでルードの暴走が始まったということか。

「いやほんと悪かったよ。ルードの奴にはケジメつけさせるから」

他の狩人に連行されて行くルードを指し示してクク兄に謝ると今度はクリスの方に向き直る。

「手を出さないでいてくれてありがとう。あんな奴でもウチの腕利きの狩人なんだ」

多分だが、クリスはかなり強い冒険者だと思う。さっき見えた首元の冒険者タグはAランクを示すゴールドだった。説明が後になったがこの世界の冒険者は7段階のランクに分けられる。下からF E D C B A Sの順番だ。一般的にはBランクとCランクの冒険者が多く(ルードは元Cランク)、Aランクは国に10人、Sランクは国に1人いれば十分と言われている。つまり彼女は術師であるが、単独依頼も受けられるほどの実力者ということになる。そんな彼女ならルード1人黙らせることぐらいわけないだろ。

「殴りかかってきたわけじゃないからね。怒鳴るだけなら問題ないかなって」

「私のメンタルも守ってもらいたんだけど…」

クク兄が少し恨めしそうにクリスを見やるが、彼女は無視する。

「それに放置していた方が一悶着起きて噂のナツキ君に早く会えるかなって思ってね」

こらこら無邪気な笑顔で何をいうかこの小娘。あれか?あわよくば俺と手合わせしたいとかバトルジャンキー的な思考回路してんのか?

「ああ、違うんだよ。ククさんの話だと君は人とのつながりを大事にしているみたいだから、この騒ぎは君の人となりを見極めるにはちょうどいいと思ったんだよね」

下手するとクリスの信用問題に傷がつくと思うんだが、どうやら彼女は自分の好奇心に忠実な性分のようだ。まあこの若さでAランク冒険者やってんだから一癖も二癖もあるだろうとは思っていたがこいつは相当な曲者かもしれない。クク兄に至っては諦めの境地のような顔をしている。道中で俺の話をしたらしいから根掘り葉掘り聞かれたんだろう。

「それで?他に何か用事でもあるのか?」

俺とクリスが話している間にクク兄は荷物をまとめ終わっているのに出立する気配がない。これは何かあると思っても不思議じゃないよな。

「ええ、実はさっきの糸の件でナツキ君の力を貸してもらいたいんだ」

俺の?大した力になるとは思えないが…あ。俺が思い至ると同時にクリスが詰め寄ってくる。

「君は精霊の大森林に入ることができるって聞いたよ!それは本当かい?」

あ〜、やっぱりそれか。もしかしてクク兄が探してるのって。

「エンチャントツリーの枝葉を入手することはできないだろうか」

ハア〜〜。マジでそれか。いやまあ俺もそれの場所は把握している。把握してるけど…正直嫌だな。行きたくない。

「ダメ…かな?伝承でしか聞いたことのない樹木だから、本当にあるとは限らないし探すだけ無駄かもしれない。それでも今のところブランクモスの繭以外で職人たちを納得させられる品はそれしか思いつかないんだ」

いや、あるよ。あるんだけど。クク兄の隠し切れない熱意に応えたいと思うが、場所が場所だけに二の足を踏んでしまっている自分がいるのも確かで。うんうん唸って悩んでいると思いっきり後ろから抱きつかれてバランスを軽く崩す。見れば嫁が物問いたげな視線を送ってきている。

『その娘何?』

フォウ!嫁が、嫁が嫉妬している!ああ、もう!不貞腐れた顔も可愛いなぁ!っとと、いかんいかん。落ち着け俺。嫁が可愛いのは当たり前。愛でるのは後回し。

「この人は行商人のクク。巾着袋をくれた人な。で、こっちは冒険者のクリストローゼさん。クク兄の護衛だってさ。この子は俺の嫁でアキっていいます」

3人を簡潔に紹介すると、クク兄とクリスは嫁に挨拶を返そうとしたところでピシリと固まる。特にクク兄が。

「嫁?」

嫁を紹介しただけなのにそんなに驚くことかね?ってああ、そうだった。俺今子供じゃん!成人前のガキがいっちょ前に嫁紹介するとか。いかんな、つい前世のノリで言っちまうな。嫁連れ帰った日も親父とお袋にそれやって目を点にしたのを忘れてた。まあ嘘言ったわけじゃないし、言っちまったもんはしょうがない。堂々としてればおかしくないだろ。

「ぷっ、あははははは!」

盛大に笑いだしたのはクリス。相当ツボにはまったらしく涙を滲ませている。

「ハア、本当に面白い子だね。こんなに笑ったのは僕も久しぶりだよ。よろしくね、小さな奥様」

子供の冗談と受け取ったかどうかはわからないが、とりあえずこの場は収まったと見るべきかな。詳しい話をするために俺たちはひとまず村長の家へ移動した。村長と親父、あとじっちゃんにも同席してもらって今回のクク兄の話を依頼として受けるかどうかを検討するためだ。エンチャントツリーがある精霊の大森林は部外者は立入禁止だし、村の狩人も許可無しで入る事は許されない。俺も今まで無断で入っていたから、この2週間生活態度を改めたとはいえそうそう許可が下りるとは思ってなかった。だけど予想外にもすんなりと許可が下りた。

「え、いいの?」

「構わんよ。ツリーそのものを切り倒されるのは御免被るが、枝葉だけで良いのなら特に気にする必要もあるまい」

むしろそれで職人たちが仕事にあぶれずに済むなら喜ばしい事だとじっちゃんは言う。

「ありがとうございます!」

「ただし」

頭を下げて礼を言うクク兄を親父が制する。

「森へ入るのは、ナツキと俺だけだ。クク殿とクリストローゼ殿は村で待機していただく」

「ええ、勿論です。クリスさんもそれで良いですね」

精霊に会ってみたかったなあ、とかこぼしていたがクリスも同意してくれた。俺と親父は採集の準備のために自宅へと戻る。その道すがら思わず重いため息を吐き出してしまい、親父に怪訝な顔をされる。

「なんだ、随分と乗り気じゃなさそうだな。前はよく入り浸ってた森に入るのが嫌なのか?」

「別に森に入ることが嫌なんじゃねえよ。ツリーがある場所が問題なんだよ」

そう、エンチャントツリーがある場所にいるアレが厄介なだけで他には問題なんてない。枝葉を集めるだけで良いんだからな。ハア、良いさ。久々の森だ。余計な事は考えずにチャッチャと片付けてやる!


願わくば面倒事も含めて何も起きてくれるなよ。

はい、3つ目も無事投稿できました。最後の一言は当然フラグです。何が起きるか楽しみにしていただければ幸いです。

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