表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
98/202

番外ネキ 奴隷商潜入調査編 (前2)

 前回のあらすじ



 トゥンガリコーン……それは指に装備すると“死の爪(デスクロー)”となり、尻に装備すればその者は“毒蜂”となる恐ろしい装備品……



 その他“蠱荒羅の行軍(ユーカリ・デスマーチ)”や“狩猟(かーる)” “雄婆(オーバ)・チャンの獲物の血液滴る吠蛇干断(ぽたぽた)焼き” 終いには斬野琥(きのこ)と呼ばれる部族と墮怪呑琥(たけのこ)部族が日夜戦争をしているという……


 げに恐ろしき“断牙死(駄菓子)屋”




 ――――



 薄暗く、ポツ……ポツと小雨の降る空模様。


 拝啓、前世のお父さん、お母さん、僕は貴方たちに恩も返せず死んでしまいました。 ごめんなさい。


 でも、“生まれ変わり”という物が実在しましたので、気が付けば孤児だった僕を拾ってくれたこの世界のお父さんお母さん。2度目の人生ではせめてもの恩返しとして、両世界のお父さんお母さんから貰ったたくさんの愛を返すために、僕は出来うる限り世界を良くしていこうと思います。


 見ていてくださいね……四人とも……





 と、思っていましたが、




 ごめんなさい、この世界と地球のお父さんお母さん、やっぱり見ないでください。



 僕は今、首輪を嵌められて着ている物もボロ布のみ。下着すらありません。


 この世界にて(半分本当に)



  奴隷に……なりました。





 現在はお買い上げされまして馬車に詰められています。


 この状況でも気持ち良さそうに寝ているタマさんはとても豪胆だと思います。首輪の効果により力が半減させられている不安も、彼女を見ているとだいぶ和らぎます。


 ……話は変わりますが、下着を付けていませんのでとてもスースーして落ち着きません……自分とタマさんの服は別空間に仕舞っていますので、首輪を外せば着替えることは一応できます。


 体育座りをしていますがお尻が少々振動で痛いで……タマさんタマさん! (ボロ)が振動でズレてきてます! そのままだと見えてしまいます! ああ! 僕はどうすれば……いえ、ここは落ち着いて布の位置を元に戻し……



 “ガコン!”


 不意に良い大きさの石を踏みつけた馬車は、まるでソレに驚いたかのように飛び跳ねる。


「うわっぷ!」


 衝撃と同時にタマの鼻提灯も弾け、覚醒する……が。


「んあ? どうした? ……ああ、そういやそういう“設定”だったな(小声) ならしゃーなし。 おーよしよし、心配すんなー? ねーちゃんが居るからなー」


 やや勘違いをしたタマがヨシヒコを逃さず抱き締めてグリグリと撫でてやる。 ……ヘッドロックの方が正しいのだろうか? どちらにせよ痛みは与えぬ加減でヨシヒコは逃げられずに撫でくりまわされている。


 それにしてもタマ、随分とノリノリである。


 何がどうしてこうなったか少々時を遡ってみよう。


 ――――

 ――

 ―



「ジャーン! 特注で作らせた鬼人種(オーガ)変装セット〜」


 テーテ テーテ テテテテー!(大百科的な効果音)


「カチューシャに角ついてるだけじゃんか」


「ま、なんて言うかその通りだよタマちゃん、コレを……ダイモンに……こうじゃ!」


「なんじゃ!?」


 有無を言わさない早業でカチューシャの1つは最近頭頂部が寂しくなってきた頭へと吸い付くようにジャストフィット。


 そしてそのままカチューシャ部分は溶けるように消え、同時に形と位置も変化して出来上がったのは何処からどう見ても角が体の一部になったダイモンの姿であった。


 ただし、 “鬼” と呼ぶよりは“ゴブリン” と読んだ方がしっくりくるほどのちょこんとした可愛らしい角になっていた。


「プークスクス! 鬼っつーよりゴブリンやんけ! うひひひひ! ダイモン似合いすぎ! そのまま皮膚緑に塗っちゃう? うひひひひ!」


 しっかりと用意されていた大きな鏡で姿を映すのと同時に、腹を抱えて転げ回るアイダホ。


「凄い……ダイモンさんの種族が鑑定でも鬼人種(人間)になってます……」


「だろ? ヨシヒコちゃんくらいだとバレるけどまず人間とは思われないよ。 ひっ……ひっ……」


「手前ぇ後で覚えとけよクソキング……と、まぁこんな具合にこの魔道具自体が勝手に変化するので魔法に強いヨシヒコ君とかでも安心して変装できるんじゃよ。ほれ、きちんと拭いておいたからワシの後で悪いけど付けてみてくれ」


「あ、気にしてないから大丈夫ですよ……」


「コレを……こうか?」


 カチューシャを受け取ったタマとヨシヒコは早速装着。 装着されたカチューシャは装備者に相応しい形へと変化してゆく。


 ヨシヒコの変化した角は額から一角獣のように美しく伸びる反った黒く艶のある1本角。


 タマの方はというと……




「どっからどう見ても魔王やんけ! ってかタマちゃん魔王より怖いわ!」


「禍々し過ぎじゃろ……」


「うわっ……タマさん凄いです」


「え? マジ? どれどれ……おー! かっけー!」


 鏡へと映し出されたタマの頭部は左右非対称の天を衝き、黒く捻れた二本の迫力満点の角であった。


 鏖魔(おうま)で調べて頂くと大分理解できるはずであろう。


 それからは役作りのために少々体を汚し下着無しのボロ布1枚、本物の首輪と 何処に出しても恥ずかしくない鬼人種の美人“姉妹”

 の一丁上がり!



 そして近くの部屋で待機して居た奴隷の売り込み役の商人(王国裏で御用達奴隷商)モー・ミテさん打ち合わせをし、既に調べ上げて特定した裏マーケットにてタマとヨシヒコ、出品。


 随分とずさんな釣り針に見えるが獲物はドンピシャで掛かり、アイダホが此奴だと睨んでいたポティカス卿にお買い上げされ、現在輸送の次第。


 という流れがあった。


 禍々し過ぎる角が随分と気に入ったのか、かなりノリノリのタマである。 一方ヨシヒコは慣れない感覚と服の違和感にソワソワして、何処からどう見ても“不安に怯える気弱な妹”だ。


 

 馬車は可能な限り人目につかないように森を抜け、渓谷を通りドナドナされて約1日。



 ポティカス・ノータリィン卿の別荘地へと到着。


 トロイの木馬が可愛く見える“アリの巣コロリ”作戦、開始である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ