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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
96/202

番外ネキ 奴隷商潜入調査編(序章その2)

 前回のあらすじ


「キャラ違うっつか別人じゃねーすか? まぁマリーさんの姉なのは凄く解るけど、部下とか困惑しないの?」


「普段から私はこういう人間だと教えこんでるからな、普段出す必要が無いだけで」


「団長をあれほど虜にするとは……タマ様、恐ろしい人!」

「団長どっちもイケるって公言してますしね」

「団長万歳!」




「うーんとてもよく調教されてんなぁ(遠い目)……うつ伏せ……苦しくないすか?」


「気力が満ちる」


「さいすか」



 ――――


 ─カツン。─カツン。


 感知式の魔力灯が暗い地下通路に灯っては消え、2人─。


 リリーとタマは地下通路をゆっくりと進んでいく。


 特に会話すること無く、時に枝分かれした道を右へ左へ、初めて来る者を迷わせるような同じ作りの道を進み、遂に上へと繋がる階段へと到着する。


「……天井塞がってんだけどぉ?」


「何分、古いからな。知ってはいても開けられる物では……ん? 付近の埃が取れている。誰か通ったのは確実……だが、扉がッ! 重いッ! ……鍵の話はしていなかったが、私でも開かないとはどうしたものか……」


 常人より遥かに高い腕力を有するリリーが出口の天井を押すも、一向に開く気配は無い。


「出口間違えたとか?」


「いや、そんなはずは無い」


「そいじゃ、此処で良いんだな? 俺がやるわ、代わってくれ」


「頼もしいな」


「まー、馬力が取り柄だからねっ……と? 生意気に硬ぇじゃんか?…… オラッしゃーい!」


 頑なに開くことを拒否していた天井も抵抗の甲斐性虚しくも耐え切れず“ビッシィ!”と派手な亀裂音の後、ギ、ギギギ……とゆっくり開き始めた。


「ま、ちょいと硬かったけど開くじゃんよー。錆びてたんか?」


「いや、誰か来ているからその可能性は薄いと思うな」


 そして地上に這い出た2人の前には目を点にして顎が外れそうなほど驚いているダイモン大臣、そら見たことかとドヤ顔のアイダホ王、しっかりと武装して勇者モードの苦笑いしているヨシヒコの3人が居た。


 ――――到着前の扉の向こう側――――


 此処は王城の数ある地下室の内の一部屋。

 城に飾る予備の鎧騎士の飾りが数体置かれているだけの物置に近い何の変哲もない部屋。


 地下道と繋がっている以外は。



「はぁ……ヨシヒコ君と同じくらいの奴ねぇ……」


 眉をひそめてとても信じられないとアイダホを胡散臭げに見るダイモン大臣。


「本当に居たんだっつの! リリーちゃんがなんか知り合いらしいから頼んでこっそりと呼んだから来てくれるって! ……多分」


「ヨシヒコ君のような逸脱した化物のような実力者がぽんぽん居てたまるかいな。 それこそ無名のBが。調べたら最近までフカシの方に居たとか何とかじゃないか……ああいや、ヨシヒコ君のこと悪く言ったわけじゃないから……」


「その辺は理解してますよ。お気になさらずに」


「だからここに呼んで信じてもらうんだよ。はーもうダイモン頭固すぎ」


「あのなー。お前みたいに脳筋思考の王様持つとワシたちが疑うのが当然なの!」


「とりあえず信じないならそこの扉に施錠魔術やら結界やら掛ければいいんじゃない?(鼻ほじー)」


「おーし。 言ったな? コレで下から出てこられなかったらその程度として通路を部外者に教えた責任とか取ってもらうからな」


「ほげっ!? 地下通路なんて誰も使わんしい別に良いだろ!」


「良くないわぁ! どっから情報漏洩するかなんて解らんのじゃぞ! さーて、お前に一杯食わすために多重施錠に抗魔力結界と……」


「施錠しスギィ! 吾輩でも出られんやつじゃん!」


「とーぜんじゃ。 さーて、ゆっくり待つか!」


「き、汚ぇ……」



 ヨシヒコほっぽらかしでコントをかましつつ待つことしばらく。


 不意に、扉が微かに動く音がする。


「お? 来たか」


「無駄じゃ無駄。 どんだけ施錠したと思ってるんじゃ」


 耳くそをほじりなから平然としているダイモンの言葉どおりに、ズ……ズ……と、微かに動く気配はあったが直ぐに静かになり依然として扉は開くこと無く固く口を閉ざす。


「ほらな? ヨシヒコ君と同じならもう少しは粘r“ビッシィ!”


 甲高い亀裂音がダイモンの言葉を遮り、突如魔力結界が瓦解。幾重にも施されていた錠が順に弾け扉が少しずつ開き始めた。


「ちーす。三()屋でーす」


「タマ殿、その何とか屋というのは?」


「ああ、“いきなり失礼します”とかそんなんだから真似しない方が良いよ」


 日曜の魚介家族の裏口から来る酒屋さんの名台詞だからね。

 通じるんだったら“ウィソノ! 野球しようぜ”とか言っても良さそう。



 ――――



「どうもこんにちはおねーちゃん。 まぁ、吾輩たちのこと覚えてるかな?」


 立つのが面倒でちゃっかり椅子とテーブルを持ち寄り腰掛けていたアイダホがひらひらと手を振ってタマに挨拶をする。


「あーん? 俺を呼んだとかいう此処の王様ってのが……なんだ。こないだ藁に埋まってたじーさんかよ……そんで? そっちはあんたの娘だっけか?」


「いやーそうだと嬉し「違 い ま す」……だそうで」


「あ、そ」


「それでは王よ。私はこれで失礼します」


「あ、ありがとねリリーさん。今度暇ある時にまた飲もーぜー」


「よし、明日休暇を取ると今決めた。済ませなければいけない用事を済ませてこようそれでは」


 言うが否やリリーは半透明の残像状態で受け答えをし、既に扉から外に出た後であった。


「残像って喋れるんだな……リリーちゃんマジやべ…… おっと、ちょうどよく話しても問題無い面子になったし、自己紹介しとこーか。まず吾輩が此処の王様、アイダホ。本当は18世とか付くけど面倒なんでアイダホおじちゃんでいいゾ! んでそこに立ってる可愛いけど男。勇者ヨシヒコ“君”な。吾輩はちゃん呼びだけど。隣の国、地理的に言うとフカシの横、キャサバ国の人やね。そこら辺は今からややこしくなるから置いときーの。君と同じ星の子、ま、転生者だね。最後にそこで顎外したまま固まってるジッジーが大臣のダイモン、呼び方は耄碌(もうろく)とか老害でいーよ!」


「同い年だろがボケェ!」


「あ、戻った」


「ったく……それにしてもアンタ、どうやってあそこまで固めた扉を開けたんじゃ? 魔法で解除したようには見えんかったし……あんたはどんな特別な力があるんじゃ?」


「ん? いや、別に。こう、ちょっと硬かったからこじ開けただけ? だよ」


「……は? アンタの言い方だと小細工なしの力技で開けたようにしか聞こえんが……」


「うんそう。強引にグワーッと」


 少しの間だけ思考していたダイモンだったが、考え終わると同時にゆっくりと横に倒れ込み、両手で顔を覆う。 そして、ボソリ。


「軽く言ってくる辺り化物じゃんよ……なんでこんなに美人の娘がしれっと化物してるの……ワシ凹むわー……結構渾身の施錠結界を硬い瓶の蓋感覚で開けられるなんて……」


 塞ぎ込んでめそめそしくしくと泣いているダイモンをよそ目に。


「ところでしれっとヨシヒコちゃんのこと転生者とか言ったけど全然驚いてないのな?」


「いやー。びっくりだよ? 転生者とか王様とか割とそこら辺にポンと転がってるもんだなーって」


「どっちかって言うと吾輩達の方が言いたいセリフじゃよ。公園でぷーすか寝てるおねーちゃんが転生者とかびっくりすんわ」


「公園? あ、あー。そういや公園で会った気もするな!」


「ところで吾輩バッサリ聞いちゃうけどおねーちゃん人間?」


「んにゃ? あーそっかヨシヒコ? が解るのか。ま、別段隠す必要もねーし、そうだな、そこの鎧の置物の持ってる剣でも渡してくれよ。 怪しいと思うなら離れててもいいし」


「よし来た受け取れ!」


 飾りの鎧から躊躇無く剣をもぎ取りタマへとぽーいと投げるアイダホ。そして難なくキャッチするタマ。


「あっさり武器渡すのな。んでこれ無くなってもいい物?」


「別に飾りが1本紛失しても別に。そんで武器使う奴なら普段から携帯するだろうし、刃もついてないしな、ソレ。で、その剣とねーちゃんの人間の話との関係は?」


「ん? コレをな、あーん」


 鞘をポイ捨てし、錆一つない煌めく刀身をタマは躊躇無く、齧り、咀嚼し始めた。


「お? いい鉄使ってんじゃん」


 その様子に復帰したダイモン含め3人が驚くこととなる。


「ほあっ!? 鉄食っとる!」


「歯どうなっとるんじゃ!?」


「お腹壊さないんでしょうか……」



 そんな3人を尻目に剣を美味しそうにモッチャモッチャ咀嚼しながら一言。


「この年季入った滑らかな歯応え。うーん、でりしゃす」




 ヨシヒコ、気になる所ズレてるで。

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