番外ネキ ゴリ(略 (後編)
前回のあらすじ
訓練場の謎の大震動で、報告を受けた城の兵たちが駆け付けリリーに事の経緯を尋ねる。
「リリー様! 訓練場で何があったのですか!?」
「まぁ、来るだろうなとは思っていた。迷惑を掛けて済まないな、だが杞憂であるぞ。ただの兄上の貧乏ゆすりだ。見ろ」
「え? あぁ……ローズ様でしたか……訓練に熱が入るのは良いことですが……その……」
訓練場で未だに1人激しく腕立て伏せを敢行しているローズ。
丁度この位置からだとタマが見えていない。
「兄上には後程私から注意しておこう、上への報告も全て私がするから諸君らは私に“追い返された” とでも言っておけ。責任は持つ」
「はっ! お気遣い感謝します! では我々失礼致します!」
綺麗な敬礼と共に踵を返して持ち場へと戻る兵を見て、復帰してきたタルティがボソリ。
「……前科がありますからねぇ……団長。とりあえず団長のせいにしておけばそれで誤魔化せるから何とも……」
「タマ殿の説明が逐一面倒だからな。 適当に兄上のせいにしておくに限る。危うく私も部下たちの前で尻餅をついてしまうところだったぞ?」
「おーいリリーよ! 聞いてくれ! 今の短時間に5000ほどできたぞ!」
「兄上か、ではその勢いのまま2万回の挑戦にしてみたらどうだ?」
「団長、ついでに1動作の間に飛んで捻ってワンセットにしましょうよ」
「おお! リリーもタルティも何という良いアイデア! では早速挑戦である!」
来たと思えば直ぐに戻って腕立て伏せ飛び跳ね捻りと謎のトレーニングに熱が入る。
「さすがリリー団長ですね」
「いや、タルティの追加メニューの機転もなかなかだぞ。さて、もうすぐ魔道士が飛んでくるはずだが……」
――――
「「「よろしくお願いします! タマお姉様!」」」
「へーへー宜しく……お姉様ァ!? 」
「強く美しく!」
「団長が認めるほどの!」
「プライドの高い男共を軽くあしらい!」
「これはもうお姉様と呼ぶしかないのでは!?」
「やめてくれ小っ恥ずかしい。それこそリリーさんのこと呼べばいいじゃねぇか……」
「団長の前では怒られますので!」「前でなければ別に構わないと!」
「じゃあ俺もそれ! 普通に呼んでくれ!」
「「「分かりましたタマ様!」」」
「……で、今度はリリーさん所の面子なんだけど、相手しなかったタルティさんたちはやらんでいいのか?」
「そりゃもう。見るだけでも学ぶことはありますし何よりいかに騎士とて驕ってはいけない。と、とても良い教訓になりましたからね。言っても解らないなら身体に叩き込むのです」
「へぇ。穏やかそうに見えて割と良い考え方してんじゃん。俺も大好きだよ、そういう考え」
「ええ。ゴリ……団長がべた褒め、あのリリー団長も御墨付きを出す人なんてまず居ませんからね。その時点で察するべきなのですが……おっと、我々は下がりましょう、それでは」
「ん。さて、待たせたな」
「「「いえ! 大丈夫です!」」」
「……随分と訓練されてんだな」
「ええまぁ、団長の訓練の賜物だと思います」
「私たちは副団長が存在しませんからね」
「皆足並み揃えて連携できるよう教えられてます」
「何より、強く美しい人の下で指揮されるのが何とも……」
「ああそう、すげぇなリリーさん所。で、今度はどうするのリリーさん」
「うむ。正直私も驚きだが震脚で地揺れとはやはり世界は広い……と、そうだな。紙風船ではタマ殿の本懐は出ないであろうからこうしよう。聞け! 団員たち! タマ殿と組手を行って彼女を転倒させることができたら諸君らの願いを1つ、なんでも叶えてやろう! 勿論、私ができる範囲で、だ!」
リリーの高らかな宣言の後、団員たちの瞳全てが飢えた野獣のソレへと変貌。中には本当に飢えた獣のように涎を垂らす面子まで発生。
あまりの豹変ぶりにタルティ組が若干引いている。
「え? ちょ、俺そんなにやる気ねーのにそんなこと言っていいのかよリリーさん?」
「フフ、問題ない。酒場での話の時、シンシアで色々な石の話をしていただろう? その時のタマ殿の楽しそうな様子からか結構な石好きと見ている。そら、物で釣るようで申し訳ないが前金で受け取ってくれ。なぁに、王都保有のダンジョンから希に出るのだ。タマ殿が勝てばソレの倍、進呈しよう」
リリーから投げ渡された煌めく塊を受け取りタマはひと舐め。
「ペロッ……コレは、オリハルコン! え!? コレの倍くれるの? よっしゃ! やるー!」
肩をぐるぐる、首をゴキゴキ、タマの方も随分とやる気を出したようだ。
「タマ殿側は転倒、団員たちは動けなくなるか降参するまで、だ。怪我の心配をしているようでは甘い。どうせ魔法で治る。今のうちにタルティに呼ばせておく、さて……それでは、始めよッ!」
そしてタマVS戦乙女団員全員の大乱闘がブラザーでスマッシュする。
悪の組織の戦闘員ばりにタマへと飛び掛かる者。
通常の2倍飛び上がり、二刀流、更に普段の3倍の回転を加えて“2×2×3=12倍のパワー”となりタマへと突っ込む者。
3人一体となり流れるような連携、ストリームでジェットな攻撃を行なう者。
鎖付の爆弾を取り出し、戦い方を教えようとする者。
まぁ、やるんなら本気でやろうか! その方が楽しいだろうと笑う者。
マッハで蜂の巣にしてやんよと掛る者。
いい的よ、あなた。
etc……
その他諸々多彩な攻撃で以ってタマを転倒せしめんと挑むが戦乙女団員全てが一人一人丁寧にタマに投げ飛ばされ訓練場の壁に貼り付けられる結果となった。(鍛え方が違うので皆無事です)
――
「「「参りましたぁ!」」」
治癒の後、タマに向かって何故か土下座をする戦乙女一同。
「いや、いいんだけどよ? 俺も物で釣られたわけだから。んで、ほら、立ってくんね? なんかばつが悪いじゃんよー」
「総員! 立てぃ!」
「「「「はい!」」」」
「あー、リリーさんありがとう。助かった」
「気にすることはない、むしろこちら側が感謝したいくらいだ。皆も良い経験になったであろう?」
「ええはい。お気を悪くしたら申し訳ないですが、戦い方が団長とは違ってとても男らしくて素敵だと思います」
「避けずに全て受け止め反撃に転じる……格好良いです」
「技の団長に力のタマ様……あぁ、お二人が並ぶととても映えます」
「どちらがお強いんですかね?」「あ、私も思ってました」「私も」「私……
「団長! 宜しければタマ様との組手を見学させていただきたいです! 宜しいでしょうか!」
「……ふむ? 言われて見れば確かに気になるところではあるが……タマ殿?」
「えー? 俺はあんまし乗り気じゃ……「4個」やる!」
かくして団員の不意の一言によりタマVSリリーとなる事態へと発展した。
――
再度魔道士がひーこら言いながら直した訓練場に2人。
なんとなく“オーガの構え”を構えているタマだが─
やや迫力に欠け、両手を上げて「がおー」とやっているようにしか見えない。
対峙するリリーは剣に手をかけたまま鞘からは抜かずに静に構え、佇む。
事の成り行きを固唾を飲み見守るタルティ組と戦乙女団員たち。
しばらく静寂が続いていたが、タマがそういやこの人マリーさんのお姉さんだよな? じゃあ自慢のろんぐへあーをファサッたら来るか? と思い出し、物は試しと半ば実験的に実行された。
「リリーさんリリーさん」
「真剣な組手で会話などあまり感心しな……ッ!」
「ほぉ〜ら、おいで、おいで〜」
“オーガの構え”からの“まねきねこの構え”一見冗談にしか見えないが、リリーの表情に焦りが浮かぶ。
ホントに効いたよ! と内心思いつつ続行。
「な、なんですかあの構えは!?」
「団長のクールフェイスに焦りが!?」
「団長が焦っている!?」
「おいで〜 おいで〜」(ファサーッ ファサッー)
「クッ……何という“魅了”! だが、私はそんな物に屈しないぞ!」
「団長ォ! 言ってることとやってることが別ですぅ!」
「魔法耐性が馬鹿高い団長が誘惑されてるですって!?」
「あぁ! 羨ましい!」
ゾンビのようにフラフラとタマの誘いに抗えずに、遂にリリーはタマのもとへと到達、そしてゆっくりとタマへと抱きつき、誰にも聞こえないほどの小声でぽそり。
「……おぉ……此処に有ったか楽園」
あぁ、この人やっぱあの人のお姉さんだわ……
hshsされながらタマ納得。
「団長が堕とされた!?」
「バキャナ!」
「そんなことが!?」
「貴女たち! 驚く前にやることがありましてよ!」
「私は花を!」
「私は何時も隠し持っている映像記録魔道具を!」
「今です!」
一糸乱れぬ見事な連携で“笹食ってる場合じゃねえ!”と言わんばかりの勢いでスライディングを決めながら一部の極まった女子が乗り込んでくる。
「うおっ! 何だァ!?」
「すみませんタマ様しばらくそのままで! 花撒き班! 撒いて! 撒きまくるのよ!」
「うおおおお! キマシ!」「キマシ!」「キマシ!」
「記念碑よ! 此処に記念碑を建てなさい! いえ、塔! 塔にしましょう! こんな団長もう見れないわよ!」
そして勢いのまま怒涛の撮影会。 正気に戻ったリリーに錐揉み回転打ち上げされるまで後数十秒。 だがやりきった彼女たちの顔はとても清々しい表情だと敬礼で見送った待機組の戦乙女の面子は後に語る。
――――おまけ――――
所変わりシンシア、ダイチ一行。
「のおぉぉぉぉ! 嫌でござる! 嫌でござる!」
「はいはいもういい加減に違うダンジョン行きましょーねー。タマさんって人いつまで経っても来ないしもう出発するわよ」
「リーフ! どうかご慈悲を! 何卒!」
「アンタねー、もうここ付近のダンジョン全部間引きしたじゃないの! さすがに二周目とかは許さないわよ!」
「いーやーぁー! 攫われるぅー……」
「ダイチ、お尻痛くなったら治してあげる?」
「にゃっしゃろーい! 出発にゃー!」
リーフに首根っこを掴まれズルズルとヴィシソワーズを出発したダイチ一行。
それを見送るガンテツ一家と2人。
「おーう、また来いよー。タマの奴が来たら連絡よこしちゃるわいよー」
「ダイチちゃんまたねー!」
「ばいばい……」
「頑張って座り心地上げてこいよー」
「達者でな」
ダイチ、強制連行にてヴィシソワーズ、出発。
「国籍変えるぅぅゥ! あ、白でござるかリーフ」
「そいやさっ!」
「アウチ!」
ナイスストンピング!
――――まだまだ続くよおまけのその2――――
「うーんいい物件みーっけ! よーしガッツリ改造するぞー!」
「魔王国と王都の間の共有ダンジョンですか」
「上には上がある事を痛感しましたので、あんまし酷いことやってると罰が当たるからね(白目) 死なやすですよ、死なやす。しばらくはアレに怒られないようにダンジョンするさ。さーて、どんなゴーレム作ろっかな」
「マスターって何でも召喚のに先日からゴーレムに傾倒してますよね? 何か理由がお有りで?」
「理由ってかなるかは分からんけどプラモとか大好きだったんだよね、俺。最近余裕出てきて思い出したよ」
「ああ、模型のことですか。それでやたらとゴーレムのデザインが凝ってると思いました……私の服もマスターの趣味で?」
「……ドールも嗜んでたから……ね」
「マスターのくせに良いセンスしてます」
「ハイハイそりゃどーも……さて、リフォームが終われば両方の王様にでも挨拶してくるかな? “悪辣なダンジョンにはしないけど潰すつもりなら解らないぞ〜?”ってね」
「あの人にあっさりぶっ壊されましたが、なんだかんだ言ってマスターのゴーレムかなりの強さですよね? まぁ? 私には敵いませんが?(ふふーん)」
「俺の相棒が主人扱いしなくてどうしてこうなった……」




