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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
93/202

番外ネキ ゴリラサンダー(略 (中編)

 前回のあらすじ



 どっちも部下に愛されてんだけど如何せん兄上はモーションが酷い。


 多分ゴースト系相手してるとトレーニングしながら除霊してそう


 伝説によると溢れる陽のパワー筋肉から精製される、“汗塩”。


 それは如何なるゾンビ等アンデッドに対する効力を持つとか何とか多分気のせい。


 市販の聖水<//<汗塩



 筋肉は神聖な物だった……?(錯覚)





 ――――



「あれ? 団長またリリー団長の所と合同演習ですか? 俺たちは華があって構いませんが……」


「私たちは団長が“やれ”と言えば喜んでやりますけど……2番の人たちが言うようにこの間やったばかりですよ?」


「確かにこの間も我が妹の所と訓練はしたな!」


「まぁ、確かに先日兄上の所と訓練を行ったな」


「だがしかし! 本日はいささか違うぞ諸君!」


「うむ。偶にはこういった趣向も面白いであろう。……と、いうことでタマ殿! 出てきても大丈夫だ!」


「ちょっと違う……?」


「タマ……殿?」



 イマイチ状況が理解できていない団員達の前に、物陰に隠れていたタマが猫背ポケ手でゆっくりと歩いてくる。


「おいーす。なんでかよく分からないけど俺が呼ばれました」


「でけぇな!?」


「筋肉狂の団長がなんで女性を呼んでるんだ?」


「いや、お前別に団長はホモじゃねえぞ。筋肉さえありゃ見境無しだ。この間のパトロールでもゴリッゴリの男だと間違うほどの女性冒険者の筋肉褒めてたし。勿論俺ら平謝りだったぜ……」


「え? じゃ、あの眠そうなねーちゃんが団長の筋肉センサーにかかる人だってのか?」


「あー……そういや待機組は知らなかったよな。少し前の夜回りで、出会った腹筋がどうのこうので団長暴れた話は聞いてるだろ? その腹筋のねーちゃんだぞ、あの人」


「へー。あの人か……最近ちょっとした噂の“公園の寝てる人”じゃね?」


「マジだ。公園の人じゃん……でも何で訓練場に呼ばれたんだ?」





「まあ! なんて素敵な人なのかしら!」


「団長がゲストとして呼ぶだけあって美人……」


「身長に負けないスタイルの良さ……羨ましい」


「凛々しい団長とは違って野性味溢れるのもまた良し。ですね」


「私知ってるわよ、噂の“眠り姫”でしょあの人。起きてるところ初めて見たけどあんなに綺麗な瞳だったのね」


「素敵な人なのは解りますけど、今回の合同演習と何か関係が?」





「やはり初見の団員たちも彼女のとても有難く素晴らしい筋肉に困惑を隠せないようだな!」


「「「いや、全然」」」


「タマ殿は私の妹の友人でな、先日知り会えて今回の訓練にお越しいただいた。兄上の認定はどうか知らんが相当の実力者だぞ。私が太鼓判を押すほどの、な」


「「「団長が認めるほどの!?」」」



 いやー。


 俺もねー、昨日いつものように公園で寝てたらねー。


 ――


「申し訳ございませんタマ様! 騎士団の方からギルドに謎の圧力が! 圧力がぁァァァ! 何卒! 何卒御指名の依頼を受けてくれませんか!」



「……ふぁー?」


 恒例の謎鼻提灯が弾け、気分よ〜くプースカ寝ていたタマであったが、息を切らしながらダバダバ駆けてきたギルド職員に起こされてしまう。


「……え? 何? 全然聞いてなかった……もっかい言ってくんね?」


「あぁ……すみませんでした……スゥー……はぁー。 はい、改めてタマ様にお願い案件がですね、騎士団の方々の訓練にタマ様御指名での依頼が今朝入りまして……金額の方は弾みますので受けていただけないでしょうか……?」


「なんで?」


「いや、我々も何故タマ様なのか……居場所も大体此処に居ると聞いて来ました」


「やーだ。めんどい」


「そんなこと仰らずに何とか……」


「俺が受けねーと困ることあんのかぁ?」


「えーとですね……まぁ色々とありまして……」


「あっそう。他当たれ、しっしっ」


「あー言います言います! 待ってください! 簡潔に言うとですね、今回依頼の騎士団の方々がギルドに貼られた難度の高い依頼やその他誰もやりたがらない割を食う依頼を消化してくれなくなるんですよ! だからそっぽ向かれると困るんです」


「……ほん? で、その御指名とやらの名前は?」



「第三騎士団のリリー様と、第二のローズ様からだそうです」


「はぁ」


 マリーさんのにーさんねーさんがなんの用じゃろか。 確かおにーさんは腹肉云々で、リリーさんとは飲んで楽しく話してたか。


 うーんリリーさんからこうまでして依頼があるってことはなんかあんじゃろか? 蹴るつもりだったけど、ま、受けてもいいか?


「リリーさんとローズさんねぇ……ま、それだったらいいよ。で、それいつ?」


「ありがとうございます! えーと明日です! タマ様の所在地を教えていただければ早朝、職員が王城まで送り届けに伺いますので!」

(良かったー! 言伝で「もし彼女が渋れば正直に話してついでに私の名前も使うといい」 って聞いといて良かったー! コレで所長から給料減らされずに済んだよ……)


「明日かよ!」



 ――――

 ――



 とか、ありましてですね、皆さんの前に現れた次第にございます。



「つまるところ諸君たちはタマ君の素晴らしい筋肉をして更なる高みへ上がろうぞ!」


「兄上、意味が理解できん。 わかりやすく言うとだな、貴殿たちないし私の団員は我こそはと思う奴からタマ殿と組手していただけ。以上」


「リリー団長、わかりやすい説明ありがとうございます。ですがタマ様はお一人です。我々が複数人挙手すればタマ様に負担を強いるのでは?」


「良い質問だ、タルティ。兄上の所には勿体無い副団長だな。だが、それは杞憂だ。で、あろう? タマ殿」


「んー? 別に俺ァ何人居ようが変わらんし纏めて来てくれれば楽だわぁな」


 耳をほじりながら適当に応えるタマの姿に第二騎士団のプライドが少々刺激されたようだ。


「はあ? つまりアンタは俺らが束になっても勝てるってのか?」


「言っとくけど俺らはそこら辺の冒険者とは鍛え方が違うんだぜ?」


「副団長! 俺は我慢ならないっすよ!」


「俺だ! 俺がやるよ!」


 血気盛んなメンツが次々に名乗り出始める。



「うむ、兄上の所はやはりそうなったか、我ら戦乙女の総員! ここは下がって顛末を見届けよ! 兄上は宜しいか?」


「私は一向に構わないさ! 筋肉とは超回復によってより強靭となる! 私も混ざりたいほどだ!」


「いや、団長が暴れると訓練場がやばいんでダメです。団員たちがタマ様と組手している間何回腕立て伏せできるか挑戦しててください。……タマ様、コレを頭に着けていただきたいのですが……」


「……紙風船? ごめんしゃがむから着けてくんね? やり方解らん」


「……はい、できましたよ。ルールの説明ですが至極単純、風船が破れたら負けです」


「えーと、タルティさんだっけ? アンタは参加しないの?」


「名前を覚えていただきありがとうございます。 まぁ、私は無謀でも蛮勇でもないので(ニッコリ)あ、訓練場は専門の土魔法使いが居ますので派手にやっても問題ないですよ」


「おっけー。それじゃ「おい! まだかよ!」「タルティ副団長に着けてもらわなきゃできねーのかねーちゃん!」「その場から1歩も動かせてやらないからな!」



「……あァ?」


 おとうさんスイッチは残念ながら無かったが、おめでとう。

 タマスイッチはバッチリ入ったようだ。


「……」


 タマの目付きを見て目を手で覆い、内心やらかしたと思いそさくさと他の団長を引き連れリリーの所まで退避したタルティ。 賢明すぎる判断である。


 その様子をニヤニヤしながら見ていたリリーが、


「フフ……さすがタルティだな、兄上の補佐をするだけはある、ようこそ」


「いえ……臆病者とでも呼んでください……それでは、組手、開始ィ!」



 ─組手の開始宣言と同時に訓練場は一気に震源地と変貌を遂げた。



 原理は単純、人が立てないほど地面を激しく踏み砕き震動させたタマが一歩一歩、一人一人丁寧に立っていられない団員たちの風船を割って行っただけのことである。


 組手後、タマ以外に尻餅や四つん這いになっていなかったのは、いち早く察知して剣を突き立てて耐えたリリーと、己の限界に1人楽しく延々腕立て伏せをしていたローズだけであった。


 あ、元から地面に伏せていたローズはカウントから省いておこう。




 後日談になるのだが、この時隆起した地面の補修に専属魔道士が泣き、王都では地震騒ぎが起きたのは自明の理。

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