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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
92/202

番外ネキ ゴリラサンダーキマシタワー(前編)

 王都アイダホ騎士団。


 1団から10の団まで存在する王都の子供たちの将来なりたい職業NO.1常連の夢のある職業。


 主な職務は治安維持、有事の際は兵としても起用される。


 治安維持の内容は衛兵などが鎮圧できなかった場合の出動、複数人でのパトロールによる犯罪の抑制である。


 1番から10番の団があるが、番数が小さいほど“強い”となるわけではないのであしからず。


 団によりかなりの差があり、


 1番団“斬鬼(きりおに)”率いる “突貫斬兵団”


 2番団“鎧砕(がいさい)”率いる “重装甲兵団”


 3番団“白雷(はくらい)”率いる “戦乙女”


 etc.....


 など、尋常ではないほどの厳格な選別を耐え切った者のみが各団へと割り振られる。


 今回のスポットは2番団と3番団の兄妹に当たることになる。



 ――――


「……ふぅ」


 今回は2番団との合同演習の最中、いつもの様に剣の柄に軽く手を添え団員の監視を行う“白雷”こと、リリー・ゴルド。


 凛々しくも美しい彼女がいつもと違い、ほんの少しだけ物憂げな様子は切り取ればそのまま絵画の如く。


「ハーハハ! どうしたリリー、いつになく君らしくないじゃないか!」


 彼女のすぐ横で腿上げ運動を行い、片脚が地面に着く前に反対側、そしてその反対という運動を超高速で行うあまり若干宙に浮いている恐ろしい筋肉の持ち主“鎧砕”こと、ローズ・ゴルド。


 兄の方は金髪で、妹の方は白金で髪色の似ていない兄妹であるが、一応血は繋がってる……ハズ。

 


「いや、兄上には関係の無いことだ。気になったのであれば謝罪しよう」


「その必要はなァい! 我が妹よ! 何せ君が生まれた時から君の兄だ。つまりは彼女、マリーの友である至高の筋肉(タマ君)のことを考えていたのだろう!? 私もだ! ああ! また是非拝みたいものだ!」


「チッ……本当に兄上は余計なことには異常なほど動物的勘が冴えるのだったな。なまじ割かし的を射ているのが腹立たしい」


「だがしかし私もリリーも仕事が忙しく会いに行けない! さて困った! どうしたものか!」


「……兄上と思考が被るとは私も地に墜ちたな」


「堕ちてなどいなぁい! 私がやや浮いているのだ! だから問題ないぞ我が妹よ!」


「いや、そういった意味では……兄上、何故魔法を使わず先程から浮いていられるのだ?」


「良くぞ聞いてくれた! 簡単な理由である! 落ちる前に上げる! 落ちる前に上げる! これにより筋肉に高負荷がかかりトレーニングの効力が増すのだ!」



「……兄上の“筋肉理論”はいつ何度聞いても頭が痛くなる……」


「ははは! リリーも頭脳の筋力トレーニングを行えば直ぐに理解できるようになるさ!」


「兄上、人はそれを“脳筋”と呼ぶのだぞ……」


「“脳筋”! なんとインテリジェンスに満ち溢れた言葉であろうか! やはり賢さ=筋力! なるほどフハハハハ!」



「兄上はブレないな……(遠い目)」




 ――団員たちの会話――


「やはり団長の妹の白雷殿はいつ見ても絵になるなぁ」


「……おい団長浮いてねぇか。アレ」


「ちょっと! アンタたち組手中に余所見してこっちの団長見てるんじゃないわよ!」


 戦乙女の剣戟を重盾で難なく受け止めつつ重装兵の1人がローズを指差す。


「おっとすまねぇ、リリー団長見てたのも確かなんだけどよ、うちらの団長、ちょっと浮いてんだわ」


「え? 浮いてる? ……うわっ!? ホントだキモっ!? 怖っ!」


「だろ?」


「顔は凄いカッコイイし、団長のお兄様だけあって美形なのに……」


「解るわー、団員の俺らもそれ解るわー……っと! 危ねぇ!」


「惜しい! あと少しで破れたのにィ!」


 重装兵の頭に付けてある紙風船を戦乙女の剣が貫くまで後数ミリ。

 咄嗟に仰け反り剣筋を躱す。 が、


「はい勝ち〜!」


「何ィ!?」


 剣の振りの勢いを殺さず重装兵を跳び越すように跳躍した戦乙女の剣が再度紙風船を襲撃、躱しきれずに潰れる紙風船。


 一方、別の組手ペアでは、


「悪いな!」


「えぇ!?」


 剣戟を受け流したまま盾のギミックアンカーを射出し戦乙女の頭上の紙風船を撃破することに成功した重装兵。


 訓練場の各所にて一進一退の攻防が散発していた。


 ――


「……組手の勝敗は五分五分、と言ったところか……」


「リリーの所は攻め方が変幻自在だねぇ!」


「兄上の重装兵もプレートアーマーが皮鎧に見えるほどの速度で反応しうるのが見事だと思うが?」


「筋肉の賜物であ〜る! コレで彼女がここに居れば彼女を見本にして筋肉の素晴らしさが布教できるのになぁ!」


「そうだな。 彼女が此処に居れば……兄上? 今、彼女がここに居ればと言ったか?」


「言ったとも?」


 ローズが腿上げ運動を止めたと思ったら今度はコサックダンスでやや宙に浮いている。

 びっくりするほどキモイ。



「その手があったか……兄上の脳筋思考でも天啓を授かるのだな。うむ、確か彼女はかなりの実力者だった。団員の訓練目的で来ていただくか」



「おお! 素晴らしき案だ我が妹! 此方の団員にも彼女の全てを正面から粉砕して進むかのような豪気な振る舞いを学んでもらおうぞ!」


「今回ばかりは兄上に喜んで協力しよう、此方でギルドに根回しはしておく」


「ならば此方はスケジュールを王に頼み込んで変更していただくよう手配する! 来客を呼んでの訓練がしたいとな!」


「それでは兄上」


「それでは我が妹」



「「ごきげんよう」」


 ――――


「訓練が終わったと思ったら団長が見たことない笑顔をしてやがる……キモっ」


「アァ……黒い笑顔の団長も素敵過ぎます……」

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