番外ネキ ネキとジジイと男の娘(前編)
此処は王都アイダホの、大きな通りから外れて更に商店街からも外れた人通りの少ない地域。
空き家や廃屋などが疎らにある所にポツンと1軒。
知る人のみぞ知る酒場。
BAR “剣の錆”。通称、錆亭。
そこには既にだいぶ出来上がっているジジイとマスター1人。
「……開店前に貴方だから店に入れたけど……飲み過ぎだよ」
「いーのいーの! 出る時に書き置きしてきたから〜ダイジョーブぅ! 」
――――その頃の王城――――
「あんのアホキングゥゥゥゥゥ! 仕事ガッツリ残してるのに、なーにが“お酒飲みに行ってきます。許してにゃん(はーと)”だぁぁぁぁ!? ヨシヒコ君にゃ悪いけど彼にお願いして連れ戻してもらってきてくれ! 今すぐ! 駄々こねるうえにあのバカ無駄に強いからなぁ……彼じゃなきゃ言うこと聞かんし騎士に頼むのは仕事外だからナシとして……はぁーいそがし忙しい!」
ダイモンの血圧がガリガリ上昇。
そしてヨシ(ひ)コちゃん出動となった。
――そして錆亭に戻る――
「……お酒好きなのは分かるけど、強いのばかりだと酔うよ? もう遅いと思うけど」
「嫌じゃあぁぁい! もっと飲むんじゃぁぁぁ! 別にぶどう酒が嫌いなわけじゃないけど王城の食事の際グラス1杯とか少なすぎじゃ! 瓶で出せ!瓶でぇ!」
「……そろそろお客さん来るからやめにしとかない? 王様」
「もう一杯! あと一杯でやめとくか……zzz」
カウンターに突っ伏してイビキをかきながら寝落ちしたアイダホ。
それに対しコーテンは、
「……うん。いつものパターンだね……王様には悪いけど外で寝て、ね?」
ガタイのいいアイダホの首根っこを軽々と掴み、店の扉を開け、
「……よいっしょ、っと!」
遠くのアイダホ御用達藁山へとぶん投げた。
尚も爆睡中のアイダホ。それから話はタマの方へと戻る。
――
おはもす。
いや、今は夜か? 王都に来て楽しい工事も終わっちゃったし、寝る→飲む(遊ぶ)→寝る……の完璧なサイクルで日々を過ごしちう。
え? 働いてない? まだ貯蓄有るし……無くなりそうになれば考えるよ、うん。
働きたくないでござる。 絶対に働きたくないでござる。
それはさて置き……飲みに来る時に何回も見ててすんげー気になってた謎の藁山。
街の中に何でこんなのが? とかずーっと気になってたんだけど、今日はじーさん埋まってるじゃん。 え? なんで? まずは近寄ってみるか。
髪の色は濃ゆいけど、顔的にはおじーちゃん感がある。 単に老け顔なのか? 見てしまったものはもう仕方が無いので見て見ぬふりもできずに引っこ抜いて声を掛けてみることにした。
「おい、おっさん? じーさん? とりあえずじーさんでいいか。こんな夜中に外で寝たら風邪引くぞ? 何かあったのか?」
「むにゃむにゃ……ん? おや綺麗なお嬢さん、大丈夫、吾輩ぜーんぜん酔っぱってないからー。だって王様よ吾輩?」
……
酔っぱらいはね、大抵が
“自分は酔ってない宣言”するんだよね。
うん、このじーさん王様とか訳分からんこと言ってるし相当酔ってますね? うーん関わってしまった手前放置すんのもな……
よし。このまま適当に運んで衛兵にでも迷子として預けるか。よーしそうしようナイスアイデア俺。 酔っぱらいなんてもマトモに相手するだけ馬鹿見るわ。
はーいレッツゴー!
「ウェーイwww可愛い子にお持ち帰りwww」
「はいはい良かったなじーさん。もーすぐ迷子センターに預けてやっからなー」
抱き抱えるにはデカいし何より絡みがウザかったので首根っこを掴んでの“酔っぱらいが持ってるお土産の焼売スタイル”で運ぶことに。
ちょっと地面擦ってるけどまぁいいや。
さっさと衛兵に預けてお酒飲みたいし足早に運んでいると─
向こう側から人が走ってくる気配。
予想通りに人がこちらに来てすれ違うかと思いきや、俺と擦られているじーさんを見てびっくり。
急に腰のダガーを抜いて俺に敵意バリバリの一言。
「その人を……どうするつもりですか!」
「おん? アンタの家族か?だったら返し「た、たぁー助けて〜wヨシコやぁ〜いwww吾輩攫われちゃーうwww」
は!? いきなり何言い出しやがるこの酔っぱらい!?
「攫う!? なんてことを! 貴女が何者であろうと許しません! 少し痛いですが後で治してあげますので……ッ!」
そう言い放つと同時に俺に斬りかかってきやがった!
俺何も悪いことしてないのにこの糞ジジイィィィィ!
「ウェヒッ……ヒック!」




