9ネキ 教えてガンテツ
前回のあらすじ
お酒おいちい。
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さてさて、例の宴会事件から時間が過ぎ、今は昼時くらい? である。
もう親友だよガンテツとは。
人間なァ、酒飲みゃ一発で誰とでも仲良くなんだよォ! (偏見)
あの後からの記憶が曖昧でどっかにぶん投げたジーパン探すのが大変だったけど……
ま、 今はガンテツが来たくらいの変化で、集落は相変わらずクソが付くほどののんびり具合だ。
ほいで此処は隠れ家的な鍛冶工房みたい。 国の方でできない仕事が定期的に発注されるから、その仕事を消化するために此処に鍛冶をしに来るとかそんなん。
此処でしかできない理由が炉に秘密があるとのこと。え? あの日サロが?
なんでもSランク冒険者っつー奴に頼んで火山の内部と魔法で直結しーのどうのこうの。
此処の火山の炎でないと融解しない金属があったりするんだってよ。
解りやすく言うともうTheファンタジー定番のオリハルコン。言わずもがな最強の金属として名を馳せている。……らしい!
あっコレ豆知識なんだけどめっちゃ美味しいよ。旨み成分が凄い。もーすげーうまい。めっちゃグルタミン酸が含有されてるわきっと止められない止まらない。
調子に乗っておつまみ過ぎて「仕事ができなくなる」ってガンテツにハンマーでぶん殴られましけどね……
俺が石諸々食べられること教えたら驚きはしたが、いろいろ食わしてくれたんだぜー。
なーんかこのヒゲ、実は凄腕の鍛冶師らしくて、凄い鉱石もたくさん持ってて、色々と味見させてもらった。最高でした。
そんな感じでガンテツが仕事してるの横でのーんびりみてたり雑談してたりな日々。
今は此処の世界のことについて聞いてる。
「なーガンテツのおっさん。此処の世界ってどういう風になってんの?」
「あぁ? どういう風たぁ……質問の意味がいまいち解らんが、まぁ、適当に説明するならそうだな、大きい大陸は5つだ」
「五つ?」
「うむ。まず、ワシの住んでるドワーフの国がある此処。 シンシア大陸。 他は……名前しか思い出せん。正直自分の住んでる所と仕事以外に興味ないんでな。
そういうのは人里行ったときにでも図書館に行って詳しく調べてくれ」
「いや、めんどくせーから行かないけど。他は?」
「今言ったシンシア大陸。そしてマチルダ大陸。メークウィン大陸。ランランチップ大陸。バレーショ大陸だ。まぁ他にも小さい陸地はあったりするが、大きいのがこんなもんじゃな」
「へー」
なんだかよくわからんがポテト感が凄いな。
「そいでお前さん。そんなことも聞く辺りここいらに詳しくないのか? こんな当たり前のことを聞くなんて世間知らずにも程があるぞ?」
そう言いながらもガンテツは槌をひたすらに振るっている。 昨日はあんなぶひゃぶひゃ笑ってたのにだったのに今はできる職人にしか見えねーわ。
俺は確か……ダブルピースしてた気がするけど気のせいだろう。
間違いなく。
「え? だって俺、5歳だよ? 5歳。 ピッチピチやぜ? そら何も知らないさ」
「なーんじゃ、5歳か。なら知らなくてもしょうがないわいな……はぁ!? 5歳ぃ!?」
「マジマジ。たしか5年前に付近の森に落っこちてきて、そっからこの集落で岩トカゲとかのんびり狩って過ごしてたもん」
「はぁ? 落っこちてきた? ……まさか、あの5年前のスネゲの流星の事件か?」
「わかんねーけどそうそう多分それ。落ちてきたの俺。アイアムアめてーお。神様の野郎が間違って落としてやんの。っていうか落ちてきたときチラッと見えた国ガンテツのとこだったんだ。へ〜」
「はぁん!? 神様!? お前ぇ、もしかして星の落とし子なのか!?」
「何それ、落とし子? 俺以外にも神様にこの世界に落っことされて来る奴いんの?」
「いや、そんなのはお主だけじゃろ……あー知らんのか、じゃあ説明してやるわい。星の落とし子ってのはな、たまに神様が特別な力を持った人間をこの世界に落とすことを言うんじゃ。ちなみに今仕事で打っとる剣は勇者のやつでその勇者が星の落とし子じゃ」
へーへーへー。俺以外にもやっぱ居るんだ転生者。
っていうか勇者居るんだ。
「ほんでお前ぇさんがその落とし子だったなんてなぁ。びっくりじゃわい。つーかよく落ちてきて平気じゃったな……」
「だって俺人間じゃねーし」
「そんなもん鑑定鏡使ったら見えるわ。なんじゃ鉄人って。岩人のとこにおるから種族も岩人かと思ったら違うではないか。
ふむ? ストーンマンは岩人とはあまり言わんの? ならお主の種族はアイアンま「て つ じ ん でいい。そういう読み方してくれ。頼む」 お、おう……よーわからんが分かったわい……」
危険が危ない。何故かその呼ばせ方をしてはいけないと本能が警鐘を鳴らす。
メタルマ……あっこれは脱げなくなるからこっちも駄目だわ。
「は、話戻すぞい。で、ついでに能力も見てみたらお前さんとんでもねー化け物じゃないか。流石のワシでもそんな奴がワシの工房の冷却油に浸かってたらビビるわいな。
にしても、なんじゃ、お主のATK けつばん って。
他の能力値も表示されないのが多いし全く意味が解らんわ」
ファッ!?
「ステータス、オープン!」
ガンテツから謎のワードが飛び出し、俺は自分のステータスを確認する。
そういえば初日以来全然見てなかったわ……
――――――
ネーム・ タマハ
種族 ・ 鉄人(固有種
ATK けつばん
DEF ―
VIT くぁwせdrftgyふじこlp
INT E
MGR ―
AGL D
LUK D
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わーい。すごい楽しいことになってるぅー。幻のモンスターでポケットかな?
本人である俺もわけわかめ。
……賢さ下がっとるやんけ? ステって下がるの!? ねぇ!?
「あっほんとだー面白いことになってるー。(棒)……ガンテツのステはバグってないの?」
「そもそもステータスがまともじゃないのなんておかしいんじゃよ。鑑定の神様が管理しとるもんじゃし、ほれ。ワシのステータスも見せてやるわ。オープン」
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ネーム・ ガンテツ・アニード
種族 ・ 鍛冶人
ATK A
DEF B
VIT B+
INT A+
MGR C
AGL C
LUK B
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エッ。
エッ。
INT(賢さ)A+? めっちゃ賢いですやん?
「ガンテツ……頭……良いの?」
「なんじゃお主、まさかワシが頭悪そうに見えとったんか?」
「うん!」
今日一番の極上スマイル。親指もバッチリ立ててある。
「ブッ叩くぞ馬鹿たれ! 頭悪くて鍛冶師が務まるかいな! 知識あってこその一流鍛冶師じゃぞ!!」
めっちゃ怒られた。
「はぁ。もういいわい……そんな訳でお主のステータスがおかしいんじゃよ。」
「はぁ」
「これでもワシA冒険者でもあるんじゃがのう……じゃが昨日お前さん見て冒険者として自信なくしたわい。……ちなみBで一流くらいはあるの」
「あ、俺やっぱ割と強い部類なの? 薄々は思ってたけど、この火山に敵になるの居ないし」
「な〜にが強いの? じゃ! 強いも何もステータスが鑑定できないなぞ自身より遥かに強い相手しかおらんじゃろうて。
それにな? オリハルコンを熱せずに噛み砕ける奴などとは戦いとうないわ。ワシ、コレより強い金属知らないよ?」
「へー、俺やっぱすごかったんだ。ちょっと鼻高」
フンス と鼻を鳴らす。
褒められるとやっぱちょっと嬉しい。 ……あれ? 褒められてない?
「まぁ、一番の救いが化け物も化け物なのが、岩人の奴らみたいにのんびりした性格だったのが幸いじゃな。意思の疎通も問題なくできとるし。 お主が理性無きケモノだったら今頃国どころか大陸が危なかったわ」
「大丈夫大丈夫。そんなめんどくせーことしないし。んで、俺ガンテツより強いはずのに鑑定できないんだけど? 一応 “自身鑑定” ってのは持ってるけど……」
「そらお主 “鑑定” 持ちじゃなきゃ相手を見ることができんわいな。
後、“自身鑑定” は誰でも持っとるし自分に関係することしか見る事ができんわい」
「まじかー……ところで俺って魔物?」
「うんにゃ。言語が話せて意思が疎通できて種族の後に“人”が付きゃまず人類じゃよ。
お主の場合も “人” がついとるから亜人の一種かなにかじゃろ。
よく魔物が進化して高等種族になって亜人種の仲間入りするなんてよくある事じゃしな」
俺魔獣じゃないヤッターーーーー!!
亜人だって!! 超嬉しい!!
「ほーん。……あっ後ガンテツ、俺が風呂浴びてる時平然としてたけど……ホモなの? 一応スタイルには自信有りけりですが?」
「誰がホモじゃボケェ! 明らかに自分より強くてどう出てくるかわからん奴を目の前にして興奮なんぞできるかっつーの!
それにワシから見てお主はいささか身長が高すぎる。
そしてなんじゃその胸は。無駄にデカいもんぶら下げおって、邪魔でしかないじゃろ。全くそそらないわ」
「えっじゃあ、ガンテツってどんなタイプが好みなん?」
「はぁ? 好みじゃと?
……まぁワシに限らず、ドワーフ族は身長が低くて童顔で、体に凹凸がない女性がめちゃくちゃ好みじゃな。
というか、基本ドワーフ族の女はみんなそうじゃぞ……」
「えー……ガンテツたちってみんな男はペドかロリコンなの?」
「ぶち殺すぞこの鉄女ぁ!」
「ひゃっ。ごめんごめん冗談やてHAHAHA」
「全く……これで効いちゃいないんだから質が悪いわい……」
作業を続けていたガンテツから特大ハンマーがぶん投げられ、甲高い音を出してタマハの頭に命中。
残念ながらガンテツブロスは例によって効いちゃいないが、そんな感じで集落の午後は過ぎてゆく……




