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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
86/202

82ネキ 天下い……ゲフンゲフン、腕自慢大会はーじまるよー

 前回のあらすじ


 公衆の面前で可愛い子にフランクねじ込み衛兵に連行される王。


 被害者のヨシヒコによる弁明でしょっぴかれずには済んだらしい。



 ――――


『さぁさぁ! 遂に! 遂にやって参りました毎年恒例の腕自慢大会! 今年は冒険者ランクで言うところのBクラス階級の大会で〜す! 玉石混淆、この大会で有名になった者も数しれず! 今年はどんな新顔が優勝するのかー!?』


 大会アナウンサー、アンジュの高らかな放送と共に花火が打ち上がり、コロセウムに溢れんばかりの観客、地を揺るがさんほどの歓声をもってアイダホ腕自慢大会が今年も開催された。



 はい! こちら現場(控え室)のタマでありんす。


 ……おげぇ。 自分でふざけて気持ち悪いからやめていつもの感じでいくわ。


 いやぁ、王都で遊んでたらあっという間に一月経ったわ。


 こないだの公園ですれ違った親子が此処の王様だったり片や転生者でオトコの娘だったり。

 オトコの娘って都市伝説じゃなかったんだな、この世界何でもありなんだなってつくづく思うよ。


 飲んだ帰りに自分は王様だって言う酔っ払いジジイが転がってると思ったら本当に王様だったし、どっか衛兵探して引き摺ってたらアイダホのじーさん探しに来たヨシヒコに勘違いされて襲われるわ、何だかんだ誤解が解けて仲良くなったら王城こっそり呼ばれてじーさんに頼まれてヨシヒコと一緒に真っ黒の奴隷商人の所潜入してぶっ潰してきたり。


 出場者への個別取材とか、その他諸々。



 そしたらもう大会当日ですよ。


 あ、奴隷潜入は付け角着けて、鬼の姉妹っていう王様が考えた設定がウッソだろお前ってぐらいクリティカルに決まりました。


 ヨシヒコ君本当に性別間違いだよなぁ?



 それはさて置き、この大会トーナメント方式で出場者、48人!


 割と居るのか居ないのか俺にはわからん。

 インタビューに来たアンジュさんに聞いてみたけど受付の時に適当にやってるように見えて身分証のランク基準にして振り分けた50人で残った1人が本戦。 らしい。


 そろそろ1人で思い出に更けるのも置いといて。


 選手1人1人に個室貸してもらえるとかすげーな、リッチやん。


 見回したところ結構いい広さだし、これが単純計算で48でしょ? 構造気になるし挙句飲める水出るわシャワーあるわ俺此処に住める自信あるもん。


 大会始まって今日の日程に俺の試合あるから始まるまでは此処で待ってくださいとのこと。


 ボクシングの選手みたいに試合開始直前までシャドーしたり、椅子に腰掛けて瞑想。 なんてのは当然しないです。

 魔道具に映し出されている試合の様子眺めながら腰のポーチからおつまみの宝石やら鉱石やらポテチ感覚でポリポリゴーロゴロ。


 お行儀? 何ですかねぇそれは。前世に置いてきましたよそんなん。


 お? スミャッキーさん出てるのね大会に。おーおーおー対戦相手あっという間に燃えカスじゃんよ。スゲーな。

 と、まっ黒焦げになってくたばったと思った相手が逆再生映像のように復活しよったで? ……え? なになに……戦いの場には結界があり、絶命した者や致命傷を負って勝敗が決した場合にスタッフが “時戻し” の結界を起動させますので安心してしのぎを削ってくたばってください?

 うーん、初見の人にもわかりやすい実況ありがとうございますアンジュさん。さすがですな。



 あ、そうそう。開会式の時のティラリさんの呪文で本当にワンダバダバ音しながら古いフィールドが砕けて新しいフィールドが隆起して完全に入れ替わったのは感動したね。浪漫溢れ過ぎて好き。


 そんなこんなでテレビ(映像が映る魔道具)見ながら数試合見つつ……一瞬で決まる試合もあれば泥試合極まるのもあって見てるだけでも時間潰れるわね。


 タマがのんびりしていると控え室の扉がノックされ、大会係員が部屋に入ってくる。


「失礼します。タマ様現在ご視聴になられてる試合が終わりましたら、タマ様の番になりますのでゲート前まで移動お願いできますでしょうか?」


「お? もう俺の番か。よっこいせ」


 おやつを食べるのを止め、軽く自身に付着している埃を落としつつ伸び、首と肩をぐるぐる回して軽くストレッチもどきでスイッチを入れる。


「直前まで休んでおられたのですか?」


「んー? 俺はコレでいーんだよ」


「左様ですか、失礼致しました。それではタマ様、案内致しますのでご同行お願いします」


「あいよ」



 外からの歓声で微かに揺れている通路を歩き、次第に耳に入る音が段々とハッキリ聞こえるようになってきた。

 係員は扉の前で止まり、開け閉めのためにそこで待機、待っている2人の耳には扉を挟んでも熱気な歓声が響いてくる。


 そして試合の決着を告げる更なる歓声、『ここで決着ーッ! 槍と剣、リーチの差で不利に見えたかピーター選手! ニコライ選手の怒涛の突きをいなし続け、攻めに攻め疲労しかけた一瞬の隙に肉薄! そして華麗な一閃が決まったぁぁぁ! ニコライ選手、致命傷により降参! よってこの試合次に進むのはピーター選手に決定ィィ! “一閃のピーター”の名は伊達ではありませんでした! そのピーター選手を中々寄せ付けない槍さばきを披露してくれた“乱れ槍ニコライ”選手にも拍手をー!!』


 大会実況のアンジュさんのよく響く声で双方の選手に拍手が贈られ、『それでは皆様フィールドの修復と掃除になりますのでしばしお待ちください!』

 から少しだけ待ち、


「タマ様、準備は宜しいでしょうか」


「問題無し」


「それでは、ご武運を」


 係員に送り出され、フィールドに立つまでの道中アンジュさんによる選手紹介が行われる。


『皆様大変お待たせ致しました! 次の試合の選手入場と紹介になります! 先ずは北ゲートから威圧感たっぷりに歩いてくるは冒険者 “粉砕鉄球” のゴードン選手でーす! 得意な得物は見ての通り肩に担いだ巨大な鎖付き鉄球! 予選ではこの鉄球を嵐の如く振り回し誰一人近寄れずに本戦枠を勝ち取りました! 本戦でも彼の鉄球により相手はなす術なく潰されるのかー!?』


『そして反対方向の南ゲートから登場するは大会では珍しい女性!

 冒険者稼業そっちのけで何よりもお昼寝を愛するジャイアントプリティーレディ! “眠れる鉄腕姫”! タマ選手の登場だぁーッ!』


 えっ!? 何その二つ名、初耳なんだけど!?


『猫背で眠そうに歩いてるからと彼女を侮ることなかれ! 得意な得物は巨大な両手盾! そして誰もが驚く剛力無双! 皆の頼れる姉貴分! 余談ですが大会の両選手が立っている場所の設営にも関わっているとかなんとか! 私個人はタマさんに賭けているので勝ってください! あっ勿論ゴードン選手も応援していますので悪しからず! 飲物を投げないでください! それでは両選手向かい合ってくださぁ〜い!』


「“鉄腕姫”だぁ? 女にしちゃ確かにデカいが俺よりチビ助じゃないかよ。その綺麗な顔がひしゃげる前に降参したらどうだ?」


「怖い顔して存外気配りができるじゃないかおっさん。だけど要らん心配さな」


「へっ。そうかい? 悪いけど加減してやるつもりは無いから、せめてもの情けで1発でペシャンコにしてやるわ。感謝しな、お嬢ちゃん」


「へーへー」


『それではお互い挨拶もできましたでしょうし離れてください! その後銅鑼の音で開始となります!』


 お互い距離を取った後、すぐ様開始の銅鑼が打ち鳴らされ試合が始まった。



 開幕から速攻でゴードンが遠心力を利用しての鉄球スイング。

 タマの身長ほどもある巨大な鉄球が彼女を粉砕せしめんと飛来する。


『おぉーっと!? ゴードン選手、銅鑼が鳴る前からの鉄球ぶん回しはややフライングではないのかー!? 取り敢えずグレーなので良しとしましょう! そして放たれた巨大な鉄球っー! タマ選手に迫るーッ!』


「恨むなよぉ! ペシャンコになりなぁ!」


「……この状況、 ……見えたッ!」


 ガイアが俺に囁いている……この鉄球、受け止めるべきだとッ!


 アレは機動戦士ハンマー。 ならば俺は水陸両用の爪が素敵な茶色いモビルなんとかスーツ!


『げ、激突〜ッ! タマ選手、ゴードン選手の投げた鉄球に反応できなかっ……いや! 違う! 違います! タマ選手、あの巨大な鉄球を両手で挟み込むように受け止めていたーーッ! 凄い、凄いぞー!』


 定石破りの回避せず真っ向から止めたタマの行動に会場が沸く。


「……やるな! 嬢ちゃん」


「嬢ちゃんなんてそんな可愛いもんじゃァ、ねぇよ。ほれ、返すわ」


『熱ーい! 受け止めて且つわざわざ相手に武器を返す漢っぷり! ココです! こういう所です! さぁさぁ、コレに対してゴードン選手どう出るーッ!?』









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