81ネキ 邂逅と眠れる獅子(だが名はタマ。
前回のあらすじ
陽当たりの良いベンチに腰掛けることに関しては他の追随を許さぬタマ。
まさにそれは公園のベンチに腰掛ける青いツナギのいい男にも勝るとも劣らぬ堂々っぷり……
――――
ヨシヒコとタマ(爆睡ちう)邂逅す。
今この出会いから始まる壮大な物語が─
「ヨシコちゃんこっちこっち。ベンチ空いてるよ」
「あ、はい」
特に始まるわけでもなかった。
アイダホとヨシヒコはベンチに腰掛けて買い込んだ食べ物を咀嚼し始める。(主にアイダホが)
「かーっ! この濃ゆい味付けの肉! うーん冷えたエールでも買っとけばよかったわい」
「モリモリ食べますね……」
「……で、周囲に怪しいの居る?」
「……いえ。小声なら聞かれる心配はないかと」
「あ、そう。ほんであのおねーちゃん鑑定した?」
「一応は。……まぁ僕も目を疑いましたけど……」
「さっくりでいいから聞かせて」
「はい。まず彼女は魔物寄りの人ですね。僕も初耳なんですけど、岩人の変異個体だとかなんとか」
「文献とかで話には知ってるけど、シンシアにちょろっとだけ生き残ってるあのゴーレムもどきの? おっと、もどきは失礼だったな」
「ええ。それで……
はいカット。
「で、聞いた話そんなやべー奴がそこで寝とるけど大丈夫なの?」
「まぁ……とても悪い人に見えないですし、その……悪い人は何となくですけどそんな匂いがするんですよ」
「ヨシコちゃんサラッと凄いことできるよね。やっぱり落とし子すげーわ。そいで、どうする? 起こす? 吾輩の直感だと触らない方がいい気がするぞ」
「僕もアーウィンさんに賛成します。直感って大事だと思うんですよ」
アイダホとヨシヒコが会話している途中、ヨシヒコたちの位置とは反対側から男が1人、何食わぬ顔で寝ているタマへと近寄ってくる。それに、ヨシヒコが気付き、
「……アーウィンさん、あの人嫌な臭いがします」
「お? 悪いことしてそうな顔してんな」
「あのタマって人に近づいていきます」
「……物盗りだなありゃ、現行犯したら取り押さえるか。ヨシコや、気が付いてない素振りするんだぞ」
「勿論ですよお父さん。このお肉美味しいですね」
超絶可愛いスマイルで親子を演じるヨシヒコ。
その愛らしい仕草にジジイのハートは撃ち抜かれた。
「……ヨシコちゃんマジで生まれてくる性別間違えてない? 今からでも吾輩の養子なる?」
「……元来この顔です。……養子は、遠慮します」
そうこうしているうちに物盗りの男がタマへ接近し、慣れた手つきで小さなナイフを使いポーチの帯ごと切り離そうと画策する。
が。
タマのポーチへ手をかけた瞬間、男の手を掴むのと同時に鼻提灯が弾けた。
そして、ゆっくりと目を開け、射殺すような視線を送る。
どうやらご飯袋だったようで大変に御立腹らしい。
「ヒッ」とあまりの威圧に完全に萎縮した物盗りであったが、時すでに遅し。
「……おぅ……この手は何だ? 人様の大事な物盗ろうとしたんだから腕の1本勉強代として払ってけよ」
次の瞬間。手に力を込めて割り箸を握り折る要領で男の骨がへし折られ、とても嫌な鈍い音がヨシヒコたちの所まで響く。
余程の激痛なのか、腕をへし折られた男は「あぎゃっ……」と呻きその場であまりの痛みにしゃがみ込む。
が。
間髪容れずに襟首を掴まれてタマに立ち上がらされる。
「どうだ? 勉強になったか? な っ た か ?」
激痛と威圧の両方に晒された物盗りの男は涙を零しながら壊れた機械のようにひたすら無言で頷き続けるしか無かった。
「騒いでたらついでに顎のも砕いてたところだったぞ。ラッキーだったな? ……チッ、気分良く寝てたのによォ、今度やったら指の先から四肢の根元まで新しーい関節沢山増やしてやっからな」
そう言い放ち、男を下ろして手の甲で追い払う仕草をする。
下ろされた男は折られた腕を庇いながらも一刻も早く此処から逃げたくて半ば言うことを聞かない脚に鞭打ちフラフラとその場を後にする。
彼女のポーチを奪うということは眠れる竜の巣から財宝をくすねると同義である。
食い物に関してはやたらと沸点が低い主人公とはどうなんだろうか……
物盗りが去ったのを見送った後、タマは、
「……あー気分悪ぃ。どっか散歩すっか」
男が逃げた反対方向、つまりはヨシヒコ側へとのっそりポケ手猫背で近づいてき、ヨシヒコたちの前をすれ違う。
先の下りを見ていたヨシヒコたちに内心緊張が走るがチラリと一瞥しただけで特に何も無く前を通り過ぎていってしまった。
タマが完全にヨシヒコたちから見えなくなり、緊張が解かれる。
「……ふぃー。いや、ありゃヤベぇわ。怖すぎ、吾輩もビビったわ……」
「あ、僕もですよアーウィンさん……“目で殺す”って、ああいうことなんですね……」
ヨシヒコさん。その人、目からビーム出るんですよ。
「吾輩直感は大事だと再認識」
「この世界、広いですね……」
「吾輩の経験則で言うならああいうのは友達になるに限る」
「仮にどうやってなるんですか?」
「同じ釜の飯食ってと同じ樽の酒で乾杯」
「ええ……? そんなもんですか?」
「だって吾輩まどろっこしいの嫌いだし……ん、タマ? あのおねーちゃんの名前タマって言った?」
「え? はい。本来はタマハさんらしいですけどね、語呂が悪くてその名前で呼ぶのと嫌がられるとかよく分からない鑑定の出方してましたけど……」
「成程、多分吾輩知ってるわ。外見も聞いた話と同じだったし」
「と言うと?」
「いやさ、祭のコロセウムで使うフィールド馬鹿みたいに早く完成させた奴居たって報告あったからさ、って話」
「はぁ……」
「ま、それは置いときーの。買ってきたヤツ冷めるから食べちゃおう? 通り過ぎた時に向こうから鑑定掛けられてないでしょ?」
「特に何も……」
「じゃあ吾輩らは飯を買い込んで公園に来たただの親子さ。気にすることはないよ」
「そうですかね……」
「そんなもんそんなもん。ささ、食べて食べて」
「ふひひほひほははひへふははひ!」
「おっと、失礼。ほらこの極太フランク食いなされ!」
「むーっ!?」
極悪な王様も居たもんだ。(いいぞもっとやれ
一方その頃。
「あの親娘が持ってた焼きトウモロコシっぽいの美味そうだったな……探すか」
タマがモロコーシ探しに出掛けていた頃、アイダホは
「私たち衛兵ですがお父さん、公園で娘さんに何してるんですかねぇ? とりあえずお話詰所で聞きますから」
「ほあ!?」
「もーッ! もーッ!」(新しいフランク押し込まれ)
通行人に衛兵を呼ばれていた。




