78ネキ リリー現る
前回のあらすじ
楽しく工事なう
この世界偉い所漫才コンビばっかですね?
ギルド酒飲みおじさんとクール副所長……
チェス大好き王と大臣……
ゴリ兄に嗅覚ヤベぇ妹……
どっかのダンジョンマスターとメイド……
なぁに……こんなものどうって事ないさ
だっで……ジャ〇グスッ……尻がッ!
――――
「……速すぎる」
タマを雇用した次の日の親方の報告で、タマの活躍を耳に入れてはいたが、半信半疑ながらもいざ作業の様子を見たティラリの口から思わず言葉が漏れた。
通常は魔法なり何なりで整形してポン。
─で出来上がってゆくのだが、この岩石は些か事情が違う。巨大な岩塊から切り出すと前述はしたが、切り出しの方法とは
紐で切り分ける。 である。
少々説明が雑把過ぎたので少し詳しく説明しよう。
紐とは言っても、魔術にて耐摩耗性に優れるを練り込んだ特殊な紐で削るように切るのである。 紐を輪にし、回転する魔道具に設置して水で冷却しながら切削するという仕組みである。
切削で切り出す仕様上、1つの岩石板を作るのにもそれなりの時間を必要とする。
が。
タマにはそんな常識は通用しない。
目からの熱線ビーム、今回は熱線カッターと呼称した方が良いか。
その目が赤く光ればあら不思議。カット済みチーズである。
後はひょいと持ち上げスタコラサッサと設置予定地へ。
当然だが運んでいる岩石板は屈強な石工たちが丸太を使って転がしながらゆっくりと運ぶ代物だ。 再生する必要が無ければ実力のある魔法使いなどがちょいチョイと“ 石壁”を出して横倒しにしてしまえば済むのだが、フィールドの50M×50Mクラスとなれば大魔法使いでなければ難しいであろう。
もっとも、何故魔法使いを雇わずに何故昔ながらの方法かと言うと、
“コストパフォーマンスに非常に優れている”からの一言に尽きる。
簡単な話、3年に1度作り直す必要があるが、作ってしまえば微細な魔力で完全復活するフィールドと、破損の度に巨大な岩塊を生成ではランニングコストが雲泥の差なのだ。
毎年補修係が雇えるわけではないし、そもそも依頼料が莫大なのでまずそれは無い。
昔ながらの方法にはやはりそれ相応の理由がある。
上部から付けられた印に沿って切り離しては運び、切っては運びの簡単に聞こえはするが、1M厚の5×5の岩塊は
重い。
彼女の馬力がおかしいだけである。10万馬力かそれ以上、読んで字のごとく鉄腕。 空は飛べないが。
科学の子と比べるよりは、
“強い! 絶対に強い!!” の理不尽さ極まれりであるから金色蝙蝠の親戚かもしれない。
真実は蝙蝠だけが知っている。
閑話休題。
作業も昼休憩に入ったので、石工の親方のもとへ歩み寄るティラリ。
「ご苦労様です。……この目で見るまでは信じていませんでしたが、彼女とんでもないですわね……」
「お、ティラリ嬢じゃねえか! 見てくれよこの進み具合! 嬢が連れてきた姐さんが凄すぎてもう後二、三日で出来上がっちまうぜ!」
「ええはい。細やかな所も非の打ち所のない仕上がりですね」
「ったりめぇよ! そんな雑な仕事する奴は俺がぶっ飛ばすからな。……で、今日は何の用だい?」
「いえ、半信半疑でしたので確かめに来ただけですから、特には……彼女どうにかして雇えませんかね?」
「あー駄目駄目。 俺もお嬢と同じこと考えたんだけど姐さんに強制は無理だわ。俺らと同じ匂いがすんだよ。気に食わないことは飯が食えなくされようが絶対に請けない頑固さ? まぁ、アレだ。
お嬢、姐さんは肩を並べるのは大歓迎してくれるが、頭から押さえつけられるのは許さねぇ。見てわかるように姐さんの腕っ節は尋常じゃねえぞ。 ……ま、脅すようなこと言ったが俺も会って数日なのにこのザマよ! 娘みたいな歳のねーちゃんのことをいつの間にか姐さんと呼んでやがる! いやぁ面白れぇ! ……おっと、長話しちまったな。それじゃ、また後日見に来てくれよ。こんなに仕事が進むと気持ち良くて口が滑らかになってしょうがねぇや」
気分良く大きな声でガハハと笑いながら昼食を食べに戻る親方。
「飯だっつてんだろが! 食って休んでから動きやがれタコ!」
「サーセンしたぁ!」
まだ道具を持ち作業をしている若い衆の尻を蹴り飛ばしていったが
「な? 言ったべ? ケツに火がついてない時は蹴飛ばされるって」
「おー痛て……」
よくあることのようだ。
「順調のようですし戻りますか……」
ティラリがそう呟いて戻ろうとした瞬間、
「親方! 俺上で予選見たいから今日は切り上げない?」
「おっ!? イイなそれ姐さん! 聞いたかお前らぁ! 今日は止めて予選見に行くぞぉ!分かったらさっさと汚れ落として着替えて上に上がれぇ! いいか!? 臭いまま上がってきた奴はケツ倍に腫らしてやっからなあ!」
「「「アイアイサー!」」」
危うくずっこけて階段から落ちそうになった。
「俺いちばーん! よっしゃ上がりー!」
現場の横に建ててあるシャワー完備の更衣室に突撃し、サッとカラスの行水でタマが着替え半ばで出てくる。
「フゥー! 姐さんセクシー!」「ありがてえありがてえ……」
「俺らも続けー!」「早くしないと親方にドヤされっぞ!」
「順に並べー!」「上がったら上で待機だぞ!」
順に綺麗になった奴らと共にゆっくりと地上に向かうティラリに挨拶をして追い越してゆく。
「こんちゃーすティラリさん!」
「「「お疲れ様ですお嬢!!」」」
ドコドコと駆け上がり、次弾の野郎共も順次駆け上がる。
ティラリが地上に上がる頃にはいつの間にか追い越していた親方が点呼を取っていた。
「おーし、揃ったな。それじゃ俺に続きやがれ!」
親方の号令で石工の団体は周りに迷惑にならない程度に早足で観戦席入口へと早足で駆けていってしまった……
それをやっとこさ地上に上がり遠目に見送るティラリがボソリと漏らす。
「……雇ったの失敗だったかしら……でも工程は何倍も早く進んでますし……文句の付け所はありませんから、まぁ……いいでしょう」
やってるものはやっているので取り敢えず良しとしておくことにした。
─所変わり、アリゴ城例の謁見の間。
王の威厳たっぷりで構えるアイダホ王であったが、来客の顔を確認するなりでろんと姿勢を崩してフランクに客がを迎える。
「おひさー、ヨシヒコちゃーん。どう? そっちの国上手くいってるー? 忙しいだろうけど今年も来賓として来てくれてありがとなー。あ、魔王ん所から“カリントウ”と、“リョクチャ” 届いてるんだけど食べな食べな?」
どう見ても夏休みに孫が遊びに来たおじいちゃん感覚である。
本当に王様なんだろうかこの人。
「どうもお久しぶりです、アイダホ王。人員に物資、感謝してもしきれません……」
「お? 革命上手くいったのね」
「はい。王様の助力が無ければとても僕1人の力では到底無理な偉業でした。……本当にありがとうございます」
「ま、吾輩ヨシヒコの国の王は大嫌いだったしー? 吾輩も得、ヨシヒコも得でお互い幸せじゃん?」
「ありがとうございます」
腰を深く折りアイダホに何度も感謝のお辞儀をするのは勇者ヨシヒコ。
選ばれた者のみが抜けると伝えられる伝説の魔剣 “ジカビヤ・キ” を操り冒険者で言うところのSランクと同等の権限を持つ“勇者”の称号を持つ者である。
“炎の勇者”と呼ばれる彼だが、その容姿は華奢であり、長めの髪、色素が薄目で黒ではなく茶色で、その穏やかな物腰と口調、高く綺麗な声も相まって、まず初見では男性と認識されない。
勿論アイダホやダイモンもヨシヒコのことは初見で女性と勘違いした。
「まーまーまー。ほら、堅苦しくしてるとダイモンジッジも頭痛そうにしてるし、祭まで城下でも彷徨いてワシと遊び回ろ? と言うか護衛ないとそこに居る眼鏡が煩いからさ?」
「アンタには王の威厳とか無いんかいな……」
「ヨシヒコはベストフレンド。よってノーカン(キリッ)」
「ほんまこの王様よ……ヨシヒコ君、この王様は言ったら聞かないから悪いとは思うけど面倒頼まれてくれるかね? 最悪そこら辺に放置してても別段死なないから」
「あ、あはは……相変わらずですね……」
苦笑いしつつもダイモンのお願いを聞くヨシヒコ。
かの……ゲフンゲフン、彼は頼まれるのと断わりづらい男である。
更に! 所変わり。
コロセウムで予選を見て楽しんだ後、とっぷりと日も暮れて夜になったので帰路につきながらもウロチョロし、例のBARで1杯やって帰るかと思い店に寄ってみると、店前で待ち構えていた見知らぬ女騎士がタマに声を掛ける。
「今晩は。此処に来ると予想していた」
「……どちらさんで?」
やべー奴とやべー奴が出逢ってしまった。




