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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
81/202

77ネキ エスパーと言えばいいのかNTと言えばいいのか多分クレイジーサイコ

 前回のあらすじ



 汗水垂らしながら働くって良いよね(但し乗り気の時のみ



 あ、俺汗かかないわ。うん。

  熱中症?

 俺はともかく、石工のおっさんズは倒れる気配無いんだよな。キチンと親方の合図で休憩しよるし、異世界人って頑健なんだな。

 休む必要は無いっちゃ無いけど一緒に休憩してお茶飲んで話したらそら仲良くなるわよ。


 勿論定時! 解散! な親方カリスマあるわコレ。 今日のノルマ決めて終わったら時間じゃなくても今日は終わり! だってさ。


 さて、今日は皆で親方の奢りで酒飲みに行くんだぜー。

 職業冒険者? いいえ。俺は酒飲み、です!


 ――――


 所変わり。


 いきなり王都アイダホのアリゴ城謁見の間。


 そこに居るのは壮年ながらも未だ筋骨隆々の肉体を持つこの国の王、キング・アイダホ。

 王の座する玉座から少し離れて立つのは右腕的存在の大臣であるダイモン。


 そして2人の前に片膝を突いて頭を下げるのは王の一族に古くから仕えてきたブランブラ家、その現当主。

 ティラ・ティラリが祭りに使用するコロセウムの建築状況の説明をしていた。


 現状の進み具合を報告され、少しの間を置いて、王が豊かに白髭を蓄えたその口を開く。


「……作業は概ね好調である……か。ティラリよ、面をあげよ。許す」


「はっ。ありがとうございます」


 ゆっくりと伏せていた顔を上げて、真っ直ぐに王を見つめるティラリ。 そして、王は─



「は〜! もーめんどくっせ! やめやめ! おじいちゃん肩凝るわこりゃ! ティラリちゃんは知り合いなんだからさ。もっとこう、気さくに話してもいいんじゃない?」


 フランク過ぎるジジイだった。


「……はぁ……まぁ、貴方にしては持った方ですかね。コレで身内以外が居る場面ではしっかりしてるからタチが悪いんですよなぁ……」


 眼鏡を外して目頭をマッサージしながらダイモン大臣が頭を痛そうに呟く。


「ダイモン(じぃ)どうした? 顔色悪いよ? もう歳かな?」


「あんたもジジイやろがい!」


「あっいっけねー。そうだったわー(てへぺろー)」


「相変らず、いつものアイダホ様とダイモン様ですわね……」


 半ば呆れる感じで溜息つきながら礼をとくティラリ嬢。


「ティラリちゃんもさ、様なんてつけなくてアイダホじいちゃんとか老害ダイモンとか気楽に呼んでくれていいのよ?」


「さすがにそれは畏れ多いかと……」


「おいアイダホ、今しれっとワシのこと老害とか言わなかったか?」


「言ってませーん。ダイモンがクソジジイで事あるごとにネチネチ吾輩に小言を言う害悪大臣だなんて言ってませーん」


「悪化してるじゃねえかこのクソキング! 今日もどうやら決着をつけないといけないようだな」


「お? やんのかやんのか?(シャドーボクシング) 良いだろう、今日も吾輩が勝ち越してやろうぞ」


「2535勝2534敗4476引分だろがい! まぐれで勝ったぐらいでいい気になるなよ? ワシが勝ってやるからな?」


「「チェスでな!」」


 ティラリをほっぽって玉座を下り、ダイモンがいつの間にか用意していたテーブルと椅子に腰掛けてチェスゲームを始める王と大臣。


 ……大丈夫なんだろうかこの国。


 まーた始まったよと言わんばかりの表情のティラリは熱中して外の言葉が入らなくなる前に王に一言伝えて退出することにした。

 この流れは毎度のことなのでもう慣れている。


「……それではアイダホ様、邪魔しては悪いでしょうし、これにて私はお(いとま)させていただきます」


「おーう。ごめんねティラリちゃん。工事終わったら祭り始まるまで自由にしてていいからさ。そんで吾輩もそのタマって奴この目で見てみたいわ」


「どうせお前のことだから止めても抜け出すの分かってるから言っとくが、変装だけはしっかりしろよ。王が街にちょくちょく遊びに行ってるのバレたらワシらがすんげー処理大変なんだからな?」


「へーへー。分かってる分かってる。ヨシヒコちゃんも呼んどるし出る時は連れてくからさ」


「別段お前が刺されたところで死ぬタマじゃないんだよなぁ……ヨシヒコにゃ悪いがワシらは王のお守り頼んで楽させてもらうわ」


「ダイモンも結構黒いよなー」


「そらお前が脳筋な分腹黒くなきゃ大臣務まらんわ……チェックメイト」


「ぬおおおおおおお!? いつの間に!? くっそ! もう1回!」


「かかってこいやクソジジイ。ワシが勝ち越してやろう」



 そして益々ヒートアップするチェスゲーム。


「……完全にスイッチ入りましたわね……帰りますか……」


「あ、ティラリ嬢や、孫のカエンがあんたに逢いたがっとたぞ。工事も超順調なんだし顔見せてやればカエンも喜ぶじゃて」


「カエンちゃん……がですか?」


「うむ。 今なら騎士たちの訓練場で訓練しとるはずじゃよ。行ってくるとええ」


「あ、ほい。 チェックメイト」


「はぁああああああ!? なんじゃその手はぁぁぁ!? 認めんぞ、 次じゃ次!」


「ふっふーん。吾輩に平伏すがよい」



 そして、更にチェスゲームは加速し、お互いの手と駒が高速すぎて見えなくなるほどに白熱する。


 もうしばらくは誰が呼び止めても止まらないパターンだ。


 最早無言で礼だけしてその場を後にしたティラリ。

 ダイモンの言っていた通りに練習場へと足を運ぶ。


 今の時間帯は戦乙女(ヴァルキリー)の面々が木剣で一対多の訓練を、ある程度の数でグループを作り実戦でも通用するような激しい戦闘が行われている。


 勿論ダイモンに言われたからと言ってカエンを探して声を掛けることはマナー違反であるから適当なベンチに腰掛けて訓練が終わるのを待つことにした。


 その様子を監督しながらも視界の隅に入れていたリリーであったが、スン……と、小さくティラリから流れてくる空気を嗅ぎ分けた瞬間、野獣の如き眼差しになったかと思えば、また次の瞬間いつもと同じような凛々しくと鋭い目付きに戻る。

 それはこの場にいた誰もが知り得ぬ本人しか分かり得ない微小な変化であった。


 その一瞬で今後の動きを計算した彼女は訓練をしている団員の中から1人に歩み寄り、声を掛ける。


「カエン。訓練を代われ。察するにお前に逢いに来たのだろう。許す。休憩のついでに話でもしてこい」


「あっ、リリー団長! えっと……ハイ! すぐに戻ってまいります!」


「直ぐに戻ってきては抜けたお前の代わりを務める私の運動にならないだろう? 私が満足するまで友と世間話でもしていろ」


「……ハイ! ありがとうございます!」


 団長の気まぐれが何かしら意味があることは団員には周知の事案であるのでカエンも他の団員も特に口を挟むことなく指示に従い、カエンは待っているティラリに向けて早足で駆けてゆく。


 その様子を見送ったリリーは待機している団員たちに向き直り、首をコキリコキリと鳴らしながら、


「さて、練習の成果が出ているか、少し揉んでやろう」


「「「ハイ!! 行きます!」」」


 次々と団員たちは全て嬉しそうに錐揉み回転しながら宙に舞った。 他のグループも参列に加わりカエンが戻る頃には全て錐揉みで打ち上げられていた。



 ――その頃のティラリとカエン――


「やっほー! チーちゃんどしたの!?」


 ベンチで待っているティラリに、燃えるような真っ赤な紅い髪の元気そうなポニテ少女が駆け寄ってくる。


「あら、カエンちゃんは訓練抜けてきて大丈夫?」


「へーきへーき! 団長がね、気きかせてくれたから大丈夫!」


「仲間が舞ってますがアレ大丈夫なんですか……?」


「団長アレでも手加減してるから……で、今日はどしたのチーちゃん」


「あ、そうでしたわね。簡潔に言うとアイダホ王に作業の進展報告の帰りにダイモン様にカエンちゃんに顔を見せてくれ。と」


「えー!? ほんと!? おじーちゃん気が利くぅ! ほーんと馬鹿兄ぃと違っておじーちゃんできる男よねー!」


「カエンちゃんのお兄様はそのうち戻ってくると言ってましたし、私の所よりできてるお兄様だと思うのですが……」


「片や爆弾魔で片や放火魔でどっちもどっちだと思うよ……」


「ふふっ。……変なお兄様持つと妹の方は大変ですわね」


「ほーんとねー! それでね! 最近ね………



 しばらくはキャッキャウフフと友との談笑を楽しみ、リリーが頃合を見てカエンに声を掛ける。


「どうだ。いい休憩になったか?」


「ハイ! お気遣いありがとうございます!」


「では元気なカエン団員は向こうに転がっている団員を起こすのを手伝ってやれ」


「ハイ! それでは失礼します!」


 リリーの指令に元気よく応え訓練場の方に駆けて戻るカエン。


 ソレを確認してリリーはティラリに一言。


「ティラリ嬢だったな。実にいいタイミングだった。お陰で香りを特定した、それでは私も団員たちを起こしてこようと思うので失礼しよう」


 そして足早にリリーも訓練場に戻りベンチには1人ティラリだけが残る。



「香り……? 特定……? 何のことでしょうか……」


 残されたティラリは顎に指を当て首を傾げるが、特に心当たりが無かったので気にせずその場を後にすることにした。

 その足取りは友と久しぶりに会話できたのが嬉しかったのか、その足取りは心做(こころな)しか軽やかであった。



 ――


「明日……昼周りで行きつけの場所の特定でもするか……おっと不覚、涎が。やはりこの程度の運動では抑えきぬな……」

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