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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
77/202

73ネキ 白雷の百合

 前回のあらすじ


 ナハトとリーフは立ったままクロスカウンターの姿勢で気絶

 ガンテツとドンテツとケッタは犬……もとい、猫神家の要領で3人並んでそれぞれ樽に頭を突っ込み、足を上にして爆睡

 ダイチはぎーとを膝上に抱えて組体操のサボテンのままで、

 シトリは酒瓶を抱えてくうくうと穏やかに。


 様々な寝相で店の中は混沌と化していた。


 皆、アルドに起こされた時には昨晩の記憶がなかったらしい。


 皆も、飲みすぎには気をつけよう!



 ――――



 起床! そこら辺で飯! 後はまぁ、街の散歩!


 右よーし。左よーし。ゴリラよーし。ヨシ!


 特に何事もなくギルド到着。おー、やっぱり規模がでかいから人の多さよ。 酒場の併設もあって昼から飲んでる奴が居るのは何処も同じようなもんなのな。


 えーと、俺が昨日話してたカウンターは、あっちか……


「ホ、来たかタマちゃん。大体時間通りに皆揃ったな」


「え? 早く来てたのか皆」


「そうでもないぞ。私が1番で次にフル、そして次いでノーラスさんにカトラスさん、そしてまた直ぐにタマさんの順だ」


「私らも今丁度来たところさ」 「だなー」


「それでは皆様揃いましたので、貸出した袋とそれぞれの冒険者証をお預かりいたしますね」


「そういや受付さんよ、俺らが倒したゴーレムの中で1匹だけ毛色の違う奴が居たぞ。多分ゴーレム狩りを怪我させた奴なんじゃねえか?」


「え? 新種……ですか? そういった報告は聞いておりませんが……」


「うん? ゴーレム狩りがしばらく安静にしなければ行けないということで私たちに話が回ってきたのではないか? 私たちが遭遇したゴーレムは普通のと比べて 目が2つ、腕がやや大きくなっていて、ただ腕をぶつけてくるのではなく、細く崩したうえで竜巻のように発射してくる個体だったが?」


「目が2つ……ですか? では少々お時間いただけますか? 鑑定の精度が高い職員呼んで鑑定をしてきますので……」


「ああ、頼む。……皆もいいかな?」


「ホヒッ、いいんじゃね?」


「俺も」


「別に私たちも急いではないしな」


「うんうん」


「ありがとうございます。それでは、調べて参りますので、鑑定が終わり次第こちらからお呼び致します。しばらくお待ちください」


 袋を抱えた受付は小走りで建物の奥へと駆け込んでいく。


 皆適当に腰掛けて待機しており、俺はって言うと、飲み物運んでる人呼び止めてなんか頼もうかなー? ってところで受付のおねーさんが小走りで戻ってきたのでやめといた。


「皆様大変お待たせしました。鑑定の結果、フルティンさんが仰った通り、“マジック・ストーンゴーレム”ではなく“ストーム・ストーンゴーレム”という新種が確認されました」


 へー違う奴だったんだアレ。


「新種だぁ? そんなん居るんだったら俺らが向かう前に説明とかあるんじゃねえの?」


「フルの言う通りだが……説明は無かった。勿論ギルド側がそんな不手際をするわけないと思うが……ふむ。お嬢さん、宜しければゴーレム狩りの怪我の要因を聞いてもいいかね? 思えば我々はそれを確認していなかったな」


「あ、はい。彼らはゴーレム2体を同時に相手取り、片方の飛んできた腕を避けた瞬間岩石片に巻き込まれた。と、報告にはありますが……」


「ふむ、ありがとう。……新種が今回初……ゴーレムが巻き込まれ……2体を同時に……」



 特徴的なマスクに指を当て、考える人の姿勢でしばらく沈黙していたスミャッキーが突如閃いて、指をパチン! と弾く。


「解った! 別段難しいことではなかったのだ」


「俺らにも分かるように説明してくんない? スミー」


「まぁ、こういうことだ。我々が遭遇した新種は本当に偶然であって、ゴーレム狩りの怪我の理由はゴーレム同士の飛ばした腕が偶然ぶつかり合って砕けた(のち)降り注いだから、奴らは埋もれたに違いない。 ダンジョンの床壁は破損しないからな」


「なーるほど。それなら納得がいくわな。……ん? 確かにダンジョンの床壁は壊れないよな……?」


 チラリとフルティンの視線がタマへと向かう。


 そしてスミャッキー、ノーラス、カトラスもタマへと視線を集める。


「あれ? タマさん床起こしてた……よな?」


「俺たちそれで助かりはしたけど……」



 4人から向けられる疑惑の視線。



 だが、問題ない。 こんな時こそ慌てず騒がず、



()()はそういう技だから(キリッ)」


 眉間に力を込め、迫真の表情で、ゴリ押す。



「アレが技なのかタマちゃん……」


「そうだ。鍛えた肉体に不可能は無い」


 鍛えたって言っても、筋トレとかではなく焼入れとかですかね。

 言葉って難しいね!


「フル、世界は広いのだ。それこそSの奴らは人かどうか怪しいではないか? 魔法が使えないと言っていた彼女だ、それこそ私たちが想像もつかない努力をしてきたのだろう……」


 なんか凄いいい方向に解釈してもらって有難いんだけど、食って寝て遊んでた記憶しか……余計なこと言わないどこ。 ラッキー。



「おっと、そうだったな。人の詮索は冒険者としてナンセンスだったな、すまんかったタマちゃん」


「あんなもん俺にとっちゃテーブル返すようなもんさ。気にすんなって」


「お、おう……そうかよ。アンタ半端ないな……」


「お陰様で夜歩いてて柄悪い連中にたかられても首根っこ捕まえてポーイよ」


(いつものノリで口説かなくてよかったー!)

(ツイてたなカトラス……)



「さて、あまり長い時間カウンターを占拠しては他の冒険者に悪いので、待たせてすまなかったがカードと褒賞金を貰っても良いかね?」


「あ、はい。迅速に依頼達成していただきましたので、一人頭金5枚に、新種のゴーレムの納品も兼ねまして追加で3枚合計で、1人につき8枚となります。どうぞ、冒険者証と一緒にお受け取りください」


「ホッホー! 羽振りがいいじゃねーか!」


「結構な良い仕事だったな」


「毎日こうならいいんだがなぁ」


「ほんとほんと」


「さ、帰るかー(おやつ……武器屋探すか?)」


(みな)、受け取った様だし解散といこうと思うが異議は?」


「「「「無し」」」」


「では、解散といこう、また何か縁が有ればその時は宜しく頼む」


「依頼達成お疲れ様でした、またいつでもギルドにお越しくださいませ」


 そしてそのまま各々解散し、俺も街に遊びに行こうかなと思ったところでスミャッキーさんから声が掛かる。


「タマさん、呼び止めて申し訳ないが、詮索云々と言っていた私が貴女に尋ねるのをどうか許してほしい」


「ぬー? なんぞ?」


「その不思議な手甲の製作者を聞いても良いかね?」


「あ、コレ? 俺の友達にな、ガンテツっつードワーフのおっさんが居るんだよ。そいつに作ってもらったから仔細は俺も分からんでな。んで、なんで俺がここにいるかって言うと、俺、元はシンシア大陸に居てな? そっからうんぬんかんぬん(略)」


「うーん、大陸越しの転移などあったものなのだな……なるほど、ガンテツ氏なら納得がいく。 呼び止めてすまなかった、ありがとう」


「ま、いーってことよ」


「急いでいないなら、今回開催される腕試しに参加してはどうかな? タマさんの実力ならばいい所行くと思うのだが」


「うーん、見物でいいかな」


「そうか、ではコロセウムに行けば楽しめると思うぞ。今は本戦のふるいのために予選で色々な奴が集まっている、見るだけでも楽しめるし、賭けなどもあるぞ?」


「へぇ。面白そうじゃん、行ってみるかな」


「興味を引けたのなら何よりだ、では、私もこれで失礼しよう」


「おーう。ありがとよスミャッキーさん」


 お互いに手を振って別れた後、早速暇潰しでコロセウムの見物とでも行こうかね。



 そしてタマはのんびりと例のコロセウムへと向かう。



 ─所変わり、王城の敷地内、訓練場。


 騎士と言えば通常、男性である。 が、今剣を抜き、全員が一糸乱れぬ動きで型の稽古をしているのは全て女性の騎士。


 アイダホ騎士団第三団、戦乙女(ヴァルキリー)の面々である。


 その部隊員の稽古を、愛剣を地面に突き立て、柄に両手を置いた状態の姿勢で、眼光鋭く団員を見つめる白銀の鎧、その鎧に引けを取らぬ、風に揺れる白銀の髪。


 絵画のように美しくも凛々しい“白雷の百合” リリーが訓練をしていた。


「─総員、止まれ!」


 彼女の号令と共に、ピタリ。と動きを止め、全員が剣を鞘に納める。


「時間だ。そろそろ兄上が来る。各自、身体を休め、今日の疲れを残すな! ゆっくりと風呂に入り、早めの就寝をせよ! 夜更かしは許さん! 以上、解散!」


「「「はっ!」」」



 揃った足並みで訓練場を団員が後にするのを見届ける最中、ローズが到着し、リリーに声を掛ける。


「やーやー、リリーの所は時間に正確でイイねー。助かるよー」


「ふむ。兄上、時間通りだな」


「聞いてくれよリリー! 昨晩な、遂に私が追い求める筋肉に出会ったのさ! そしてそれがマリーの知り合いだというから面白い! やはり我が妹達は優秀だなぁ!」


「また兄上の筋肉癖か……ん? マリー? あの子の知り合いだと?」


「うむ! しかも、失礼を承知で腹筋を触らせてくれと頼んだら二つ返事で許してくれたのだよ! いやーやはり至高の筋肉を持つと者は女性であってもなんと懐が大きいのだろうか!」


「……触らせた? 筋肉の魔物のような兄上に?」


「ああ! 物怖じ一つ見せずに私と会話してくれたとも! 身長は私に並ぶほどの長身!」


「ほう」


「威風堂々とした歩き!」


「ほう」


「宝石のような緑の瞳に、それに負けない顔の作り、髪は珍しい黒の濡れているかのような艶めき、そして何よりあの素晴らしき筋肉! ああ! 休暇があればもう一度会ってみたいものだ!」


 ローズの言葉に、リリーの瞳が輝き興味を示す。


「兄上、その女性はまだ街に滞在しているのだな?」


「フンンンン! ん? 昨晩のことであるから居るとは思うぞ?」


 いつの間にか上半身の鎧を脱ぎ捨て、ポージングをしているローズ。


「道理で兄上の手から素晴らしい残り香がすると思った。それ以外は大変汗臭いので死ねばいい」



「ははは! いつもながらキツいなあリリーは!」


 引き続き言葉は交わしながらも猛烈な勢いでスクワットを始めているローズ。

 そして続々とローズの団員が訓練場に来はじめた。



「それでは私も失礼しよう。兄上、珍しく有益な情報感謝する」


「ははは! 遂にリリーも筋肉の素晴らしさに気が付いてくれたか!」


「いや、微塵も……フフフフ。仕事が空き次第、その御方、探すしかないな……じゅるり……」



 人知れず垂れた涎を親指で弾きながら拭き取りつつ、彼女の眼光は爛々と輝いていた。









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