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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
73/202

69ネキ 各自の夜

 前回のあらすじ



 忍法畳返し……空から見ててくれたか?


 ありがとう、コーイチ……お前の得意だった技、使わせてもらったぜ……

(ここで空にサムズアップしている半透明のコーイチが映る)






 (いや、あの、俺そんなの教えてないし、まだピンピンしてんすけど……




 ――――



「いやー、足元見て剥がせそうかな? とか微妙だったけど上手くいって良かったわ」


「あの……タマさん……今のは?」


「ん? ああ。 俺の友達にな、床起こして飛んでくるもん防ぐ技使う奴が居たんだよ。まー、見様見真似だけど結果オーライだ。それ、とっ!」


 起こした岩塊君には申し訳ないが邪魔なので16文キックにて此奴も粉☆砕!


「おっアイツ治ってんぞ」


 指指(ゆびさ)す向こうにはゴーレムが無くなった腕を再生しようとしていた。


「タマちゃん今しれっと岩蹴り砕いたよね? 砕いたよね?」


「フル、先ずはあのゴーレムから撃破しよう! タマさんならまた岩が来ようが大丈夫なはず!」


「ホヒッ! そうだな、アイツから仕留めたらァ!」


「ちと遠いが……動かないなら好都合。 フル! 爆弾は運んでやるから用意しろ!」


「任しときなァ! ビビらせてくれたお返しだ、 8連の3つ! 計24の大サービスだ!」


「目標固定、ゴーレムの胴各所! 〔付け狙う風(ホーミングウインド)〕!」


 フルティンがありったけの魔力を込めた爆弾を、スミャッキーの風の魔法が迎撃のため撃ち出される岩をうねりながら躱してゴーレムの所へと運び届ける。


「ホヒッ。吹っ飛びなァ!」


 そしてワイヤーボムの射程に入った瞬間─

 フルティンがボムを起動。起爆。


 3つの爆弾の音が重なり瞬く間に8連の爆発をゴーレムへと叩き込む。


 爆発は確実にコアまで届き、破壊に成功した。 五体目も他のゴーレムと同じく糸が切れた人形のように崩れ落ち、活動を停止。


「ホヒッー……ホヒッー……さすがに補助掛かっててもコレはキツいぜ……」


「だがいい仕事だフル。これにて依頼完了だな」


「〔魔力譲渡(マジックリカバリ)〕……どうだフルティンさん、少しはマシになったと思うが」


「お? 何だコレスゲーな。 力が戻ってやがる」


「帰る分には問題ないとは思うよ。 便利に見えるけど、使う魔力と比べて5割しか譲渡できないんで効率悪いんだよね」


「いーや、ダルさが抜けるだけでもめっちゃありがてぇわ。やっぱり回復使える奴が居ると安定感あるよなぁ」


「まぁ、我らは狙われると辛いのが弱みなんだけどね」


「タマさんがしっかり護ってくれたおかけで怪我は無し、か」


「……で、タマちゃんよー、さっきの起こした岩やら砕いたのってどうやったんだ?」


「うん? 簡単なことよティンさん。 俺丈夫。力強い。そんだーけ」


「……つまり魔法が使えない代わりにそこまで鍛え上げたということか?」


「大体そんなところかね? スミャッキーさん。あ、一応武器はあるよ」


 久方ぶりに手甲を展開して盾にする。殴ったり投げたりした方がはえーからすっかり忘れてたね! いっけね。


「ほう! 面白い手甲だな! 見せてもらっても?」


「ええよ」


 俺の周りをぐーるぐるとスミャッキーさんが回り始める。


「ふむ、材質はなんだろうか? ……あの手甲からどうやって格納しているのか……ブツブツ……」


「まーたスミーの悪い癖が始まった。俺は倒したゴーレムでも拾ってくるかね」


 ――――

 ――



「あーでもない……こーでもない……」



「まだやってんのかよ! また変なゴーレム来る前にさっさと帰るぞ! タマちゃんもノーラスさんたちも此奴に付き合ってやんなくていーから!」


「なんか止めづらくて……なぁノーラスさん」


「うむ」


「俺も」


「気にしなくていいんだよ! おらっ! 帰るぞスミー!」


「ん? おお! すまんすまん。面白い物を見るとどうも気になってな! さて、帰るとしようか」



 帰りは別段敵に出くわすことは無く(そもそも接敵するようなルート通らない)ダンジョンから帰還。

 広かったけど階層あるわけじゃないし時間的には夜かな?


「うーむ日をまたぐ予定だったが思ったより早く達成できたな」


「ホヒッ。そうだな、俺としては今からギルドに行くの面倒いんで明日集合とか考えてんだが、皆はどうよ?」


「私はフルに賛成だな」


「俺らも同意見だ」


「俺も構わねえよ」


「OK。それじゃぁ明日、正午きっかりに集合といこうじゃねえか、それじゃ解散だな」


 そして確実に帰路につき、各々解散していった。



 ――――


「……なぁ、ノーラス」


「どうした? お前にしては今日はやけに静かだったな」


「彼女……デカかったな」


「ん? ああ……そういやお前女好きだもんな、彼女の胸でもずっと見てたのか?」


「それの話もあるが、面白ぇ人も居るもんだなって思ってよ。勿論ちょくちょく見てはいたが()()()()()()()()()()()()()()()()()()(ふところ)でけえなァって……」


「はー。お前が言うなら間違ってないだろうな……やっぱり此処(アイダホ)は色んな奴が居るもんだな。ま、明日も会うし見すぎて引っぱたかれるなよ?」


「彼女に引っぱたかれたら月まで飛びそうだから機嫌損ねるようなことはしねぇよ」


「はは! 起こした床砕いたのは今思い出してもすげぇよな!」


「ホントな。あんだけいい見た目してんだ。多少身長あっても声掛けてくる奴が居そうだよな」


「そして月に飛ばされる。と」


「ははは! さて、いつもの酒場で1杯呷っていくか!」



 ――――


「うーむ……あの手甲の仕組みが気になる……明日製作者を彼女にでも聞いてみるか……ブツブツ」


 器用に流れる人混みを避け独りごちながら歩くスミャッキー。


 ――――


「ゴーレム爆発させんのはいいけど、やっぱ屈強な野郎の尻に爆竹挟みてえなぁ……」


 宿にて使用した爆弾を整備しながら危険なことを呟くフルティン。


 ――――



 さて。

 各々解散ってことで夜だし良さそうな飯屋(酒場)探してブラブラしてたんすよ。


 お? 何やらオサレな店発見! 突撃!


 ……BAR(バー)? うん。 BARですな。 この世界ファンタジーなくせに銭湯あるくれーだからな。どうせ先駆者の仕業だろうな。


 まあ行くけど。


 タマが店の店のドアを開けるとチリン、チリンといい音の鈴の音が小さく鳴る。

 他の客の迷惑にはならないように、されど来店を報せる絶妙な音量の音だ。


「……いらっしゃい」


 そしてマスターと言わんばかりの老紳士がカウンターに佇んでいた。


 勿論他の客もちらほら居るが、皆、一瞥(いちべつ)しただけで直ぐに各々(おのおの)自身の飲み物を飲み始める。


「俺は此処初めてなんで、勝手が分からないが座っても大丈夫か?」


「……一見さんでも問題は無いよ。……ここに入った理由は?」


「あぁ? そりゃあ。 店のセンスが良かったからな」


「……カウンターの席、空いてるよ」


「おう。あんがとよ」


「……注文は?」


「アンタのオススメ」


 タマの注文を受け、マスターは背後に所狭しと並んでいる瓶から二つを選び、流れるようにそれでいて、眺めていて飽きない美しい動作で作られていく。


 純度の高そうな、透き通る氷塊が剣技と言っても差し支えない動作で砕かれ、カクテルが完成。

 グラスはマスターの手元から意思があるかの如く此方に滑り、タマの前でピタリと止まった。


 勿論注がれた琥珀色の液体は一滴たりとも零していない。


「……ブレイブ・ブル。“勇ましい雄牛”って意味だよ……」


 タマは受け取ったグラスを摘むように持ち上げ、1口含み、ゆっくりと喉を通す。


 グラスを置き、「カラン」と、氷が崩れる音がした(のち)、溜息を吐くように鼻から息を吹き出して、一言。


「……甘ぇ。が、()()



「……どうも」



 各々の冒険者の夜は更けてゆく。














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