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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
64/202

60ネキ 虎の尾の上で踊って龍の逆鱗もタッチする

 前回のあらすじ



「マスター、オリハルコンとか言ってますけど……用意してるんですか?」


「さすがに僕の能力でもDP(ダンジョンポイント)のコスパ悪いからキっツい。っていうかなんでクリアの御褒美にそんな良い物置かないといけないのさ」


「この期待に満ちた笑顔を裏切るのですか?」

(モニターに映ってるタマを指さしながら)


「それは馬鹿面って言うんですー」


「寝てる時のマスターと大差無いですが、そうですか」


「……え、マジで?」



 ――――




「……さて、第3階層から趣向が変わってくるわけだが」


「どういう風にしたんです?」


「シルバーゴーレム軍団通り抜けられるのは転生者ぐらいだし、此処から思い切って転生者向けに作ってるんだよな」


「その転生者向けという罠が、あのマルバツクイズですか」


 モニター越しには大きな〇 と描かれた壁と × と描かれた2つの壁がタマの前に立ちはだかる。


「どっちか好きな方飛び込んでくれればいいよ。転生者なら絶対乗ってくれるね」


「はぁ……左様ですか。あ、律儀にも飛び込みましたね。〇ですか」


「ま、どっちも小麦粉なんだけどね!」


「セッコ……」


 勢い良く飛び込んだので、当然タマは全身粉まみれとなる。


「怒りませんかね、コレ」


「それがなんか、してやられたか! みたいなリアクションして次に進んだんだなコレ」


「随分と乗りの良い人ですね? 悪い方ではないのでは?」


「どっちだってイイさ。今からくたばるんだし」


 そしてまたしても、同じようなマルバツ壁が出現する。

 今度は着ている服を脱ぎ、服はポーチに収納、更にポーチをマントで包んで小包を作り、壁に向かって駆けるタマ。


「うぇ!? コイツいきなり脱ぎ出したよ!?」


「服が汚れるなら当然の判断では? 服の上からでもそうでしたが、とても素晴らしい肢体ですね」


「身長もデカいが胸もスゲーなコイツ。ま、どっちも溶き卵なんだけどね!」


「さすがマスター。趣味が悪過ぎます。卵に飛び込んで笑ってるこの方も中々ですが……芸人なんでしょうか」


 卵塗れの下着姿一丁でタマは次のトラップへと歩いていく。

 そして当然マルバツ壁があるわけだが。



「小麦粉からの卵と来て普通の奴ならもう予想着くけど、さて」


「天ぷらですか」


「奥には当然のように180℃の油が大鍋に入ってます……って、躊躇なく行きやがったぁぁぁ!?」


「……気持ち良さそうに揚げられてますね。まるでお風呂のようです」



「高温の油が平気とかコイツ耐熱スキルでも持ってんのかよ……というか芸人なんじゃないかマジで……」


「回避しない所に芸人魂を感じます」


 頭を抱えるロッジの様子を勿論タマは知ることも無く、しっかりカラッと揚がったら身体に着いている衣を落とし、新しい服に着替えて奥に進んでいく。


「クソッタレ! なんで監視ゴーレムのレンズに油が跳ねるんだよぉ!? 肝心なところ録画できなかったじゃん!」


 本日台パン2発目。しかも初発より本気の模様。


「今日本日付で私マスターのこと、ダンジョンではなく性欲マスターって呼びますね」


「僕の年だとこれくらいの性欲は普通なの!」


「浮気者……(ボソッ) カスですね」



「次! 次のトラップ! 下に置いてあるバナナの皮、と見せ掛けて上から1tの鋼鉄タライ!」


「首折れて死にますよね? ……ああ、殺すための罠でした」




 ゴォアァァァーーーーン!




「な〜んでタライの方が凹んでるんだよぉ! 超絶石頭か!?」


「矢と槍が効かないなら打撃も当然なのでは?」


「硬いエネミーには打撃ってお決まりあんでしょぉぉぉ!」


「今度はただの上り階段ですか? 随分と急ですね」


「ああ、もう登りきる頃か。それはね、ポチッとな」



 ロッジが手元にあるボタンを押すと同時に階段が収納され、いきなり急な坂へとすり替わる。


「ははは! さすがにコレには対処できないで下まで転げ落ちたか! 馬鹿め」


「……に、してはケラケラ笑いながら登り始めましたよ? アトラクション扱いされてませんかコレ」



「うっそーん……此処は悔しがるところで……どうやって登ってんのコイツ。まだ坂戻してないのに」


「監視ゴーレム、ズームイン。……指をめり込ませて滑らないようにしてるみたいですね? ダンジョンの壁ってダンジョン内ではオリハルコンと並ぶ硬度なんですが、詰まるところ、この方はオリハルコンを素手で砕ける。と」


「何だよそれ! そんなんチーターやチーター!」


「勿論下り坂の飛び出す仕掛け刃も全く効いてませんね」


「初めての客がこんな無敵の塊とかないっしょ……」


「で、次は第4階層ですけど、迷路と毒エリアでしたっけ?」


「うん……見えない所で壁と区別付かないゴーレムが動いて迷わせるシステム。ついでに普通には分からないけど気持ち低くなってる地形があって空気より重いガス、まあ、二酸化炭素とかその他神経ガス。で、無味無臭にしてあっから迷ってるうちにガス溜りでお陀仏。と」


「今バリバリ迷ってるエリア、ガス溜りですよね?」


「はいそうでーす! そこは一酸化炭素溜りでーす! でも効いてる様子ないでーす! イヤッホォォォォイイ‼︎」


「なんかもうヤケクソですね?」


「もうね、僕もここまで何も効かないと何かしらの理由で無敵なんだろうね。マリエみたいに機械なのか?」


「いえ。監視ゴーレムからのX線スキャンは透過できませんでしたが、転生者である以上生き物ではないのですか?」


「X線透過しないとか生き物なんすかね(遠い目) ……まぁ、ここに来て迷路がこんなに効くとは僕も思わなかったよ」


「ここまで快進撃でしたのに、彼女ここに来てグルグルしてますね。かれこれ1時間くらいですか?」



「そうか。身体にダメージを負わせられないまでも心はそうもいくまい。 さて、逆襲タイムと洒落こみますか」


「うわぁ。我がマスターながら性格悪そうに笑い……あいや性格右曲がりでしたっけ?」


「だ〜れが右曲がりじゃい! まっすぐだっつの! 先ずは……生卵攻撃だ!」



 ロッジの司令と共に、壁ゴーレムに収容されている小型ゴーレムがタマの隙を見て後頭部に卵を投げつけた。


 べシャリ。


 タマが何事かと思い振り向けば反対の死角から─べシャリ。


 そして不思議そうに首を傾げるタマ。



「うーん、セコい、すこぶるセコい。さすが私のマスター」


「なんとでも言え。 さーさー、今度は腐った卵をポーチに投げつけてやろう! 大事な物が入ってるであろうポーチが臭いのはげんなりするぞぉふぅははは!」



 ベチャッ。


   背中に命中し、狙いのポーチには当たらなかったが、匂いと着弾箇所から察し、タマがポーチを守ろうと振り向く。


 が、偏差射撃で腐った卵がポーチにクリーンヒット。

 コレにはタマもショックだったようでガクリと地面に突っ伏した。


 そして何とか立ち上がり、しわしわ顔になりがらも迷路をとぼとぼ進むタマ。


 その様子をロッジはモニターの向こうから大笑いで見ていた。


「はははは! 幾ら頑丈でも腐った卵はキツいみたいだなぁ!あ、それそれ! 生ゴミも追加だぁ! あ、ゴブリンの糞も混ぜとこ」


「汚っ……画面の向こう側大変なことになってますね……ドン引きですよ」


「あーはははは! だいぶ様になってきたな? 美人が台無しだぁ!」


 そして─

 迷路を延々彷徨っているタマにはしばらくゴミ攻撃が続いていた。



「もう顔以外はガードする気ないみたいですねー。 マイクから泣き言の1つくらい聴こえても良いんですけど……」


「ちっ。ならコレで

 “もうやだー! おうち帰る!”

 って言わせてやんよぉ! ゴーレム! 投擲物変更! 溶解弾、投擲!」


 ロッジの命令で、ゴミ、汚物から今までとは毛色の違う物がタマに向かって投擲される。


 ビチャリ!


 水風船のような物体は腕により防御されたが─



「まぁ、顔付近は防がれますよね。 ここに来てスライムの粘液ですか? 帰って洗い流されると思いますが」


「いや、()()()()()()()()()ほら、当たった所見てごらん?」


「これは……服が、溶けて?」


 タマの袖が破れたストッキングのようにボロボログズグズと溶けて腐ってゆく。


   コレにはタマも驚愕に目を見開いた後、膝から崩れ落ちてしまった。


 そして、ロッジは気が付いていない。マリエも然り。


 ─(うつむ)いた彼女の瞳の周りの空気がチリチリと焦げ、歯が、ギャリィン……と強かに噛み締めたので、独特の歯ぎしり音が小さく鳴っていたことを。


 彼女は、親友が四苦八苦しながら、文句を言いながらも、一生懸命自分のために作ってくれた服を駄目にされて。



 切れた。


   静かに、しかし盛大にブチ切れた。


 そっと、ゆっくりと地面を粉になるほど握り締め、ゆらり。と立ち上がる。


「……許さねぇ」



 ボソリ、監視ゴーレムにも聴き取れない声で呟く。


「そう! これこそ秘密兵器! ヴェノムスライムの粘液を改良し、毒性がゼロになる代わりに衣類に対しては絶対の腐食性を誇る溶解液さ!」



「女性を汚物塗れにしてひん剥くとか屑極まれりですね? クズオブクズです。スカトロッジ様」


「その先に付けてる単語を外せぇ!?」



「あ、マスター、糞に興奮するのは良いですけどテンション上がりすぎてゴーレムしまい忘れてま……ッ!? 小型ゴーレム、通信途絶! 直前の映像解析! 目標の瞳が紅く輝いた瞬間、ゴーレムが破壊された模様!」


「げぇ! バレた!? ええい、まだたくさん隠れている! 行け!当てまくって泣かせてやれ!」


「駄目です! 対象の反応速度、異常! 僅かにでも動いたゴーレム、全て目の輝きの映像から通信途絶!」


「な、なんだ!? 何が起こってるんだ!?」



「解りません! ですが、対象に何かしらの変化があったと推測します!」


 ─そして次の瞬間。


 地下7階まで轟き渡る爆音が轟き、ダンジョン内の稼働していた監視ゴーレムが音による過剰負荷で全機故障。ダンジョン内をビリビリと震わせた。







「ゥウオォォォォーーーーーーーー!」





 初号機が如く。


 タマ、激昂の咆哮す。


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