56ネキ 平地の賊は窃盗団でいいのか? (後編)
前回のあらすじ
賊集団「旅の集団カモフラなう」
「ん? 今すれ違った馬車護衛少なくね?」
「御者に野郎2人に……女? お! あいつ大きいけどめっちゃ上玉やん!」
「カモ?」「カモだね」「襲う?」「襲おう」
「こっちは16人だ余裕っしょ」「よし、決定、折り返して襲うべ」
「「「おーーーーー!」」」
逃げて。盗賊団超逃げて。
――――
いち、にー、さん……うん。めんどくっせ! 数えるのやめやめ! 全部ぶっ飛ばしてから勘定しーよう。
まぁ当たり前っちゃ当たり前だろうけど、半分くらいは俺スルーして馬車の方に行こうとしてんな。
とりあえずと言わんばかりにタマは分離し始めた1団の馬に向かってサッカーキックの要領で足元の地面を抉り強かにブチまける。
蹴り飛ばされた土や砂利は散弾が如く馬たちに命中、当たっていない馬には足元の地面を掬っておにぎりを作り投擲、足下周辺に着弾、破裂で次々と野郎共を落馬させてゆく。
「おい! あの女魔法使いだぞ! てめぇら気をつけ─
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「おわ!?」
次の瞬間、本隊の方にも人間投石機宜しく馬達にガッチリと石のように固められた土、または結構な大きさの石塊。
当たれば勿論、当たらずとも地面にぶつけるように投擲されているので、馬に乗っていた盗賊団は全て落馬、下馬せざるを得なくされた。
――
おーし、馬たちにゃー可哀想なことしたけど、こないだみたいに声で全方向攻撃したらパパルナさんたちの馬もびっくりしそうだし、投げる物が無ければ作れば良いのだ!
え〜と確か、環境利用闘法? だっけか。うん。どっかのハゲの地面さんもそういうのやってた気がするわ。
つーわけで、すぽぽぽぽーいっとな。
本人の変に柔らかい擬音表現とは別に、着弾箇所はヒャッハーモードから一転、大混乱の阿鼻叫喚。
別働隊は多めに投擲されたせいで騎乗していた賊は馬から投げ出され、無傷な者は存在していない。
本隊の方はボスの指揮により馬は全滅したものの、馬を盾にして負傷者は0に抑えていた。
「クソッタレなんだあの女! なんて魔法撃ってきやがる…… 道理で護衛が少ないわけだ、畜生! 怪我した奴らに手ぇ貸してやれ!」
「頭ぁ!」
「どうした!」
「あの女が此方に走ってきます!」
「あぁ? なんだ、魔力切れか? 魔法使いが男数人に勝てると思うなよ。野郎共! やっちまえ!」
「「「あいあいさー!」」」
─旗が、立った。
それはもう綺麗な旗が。
魔法使いさんは陸上競技のスタート直後の様な前傾姿勢でドコドコ走っては来ない。
絶対に来ない。多分その人魔法使いじゃないですよ。
素晴らしいほどの判断ミスを冒し、ショ〇カーの戦闘員宜しく綺麗なフォームでタマに飛び掛かるボス含め賊たち。
まあ勿論というかなんと言うかお約束と言うか。
コインジャンプパンチで全員漏れなくノックアウト。
(乱闘兄弟での赤髭配管工の↑+B)
あっさりと16人居た盗賊団は妖怪土掛けネキにより全滅。
土と言いはしたが、魔法と差し支えない威力と速度で飛んでくる土砂は大変な凶器である。多分パイでも十分な威力があると仮定しよう。
死者が出るパイ投げなど、恐ろしイベントはさて置き、タマは転がってる野郎共の手足を取り敢えず全部踏み折ってゆく。
え? 酷い? この世界盗賊様には人権0らしいからね。人様の財産や命取ろうとした時点で魔物や獣と変わりゃしねーよ。
って言うか行くとこ行きゃ回復魔法とかあるし、死んでなきゃ人によっては切れた腕生やせるし、本当に死んでなきゃ問題ないしな。
便利ぃ。
まあ一番の理由は俺こういう輩嫌い。
生きるために奪って殺すのは獣だから許される、生きるためにやるならお米育てろ。
お米食え! お米! あ、この世界麦みてーなのが主流か。
そんな雑なことを考えながらタマがポキポキタイム(勿論阿鼻叫喚)をしていると、パパルナさんの馬車が安全を確認できたので戻ってきた。
「……草原狼の時もそうでしたけど、やはりタマさん傷一つ負ってないですね」
「パパルナさん、一つ忠告だが、Bランクの冒険者が人より並外れて強いって言ってもタマの姐さんと絶対に一緒にするなよ……この人はいずれAランクになるぞ……」
「土魔法凄かったですもんね……」
「あの人は魔法なんか使っちゃいない。そこにある物を投げつけただけだ」
「えっ」
「狼に噛まれても平然としてたし、あの人とんでもねー人だよ。パパルナさん本当にツイてたな? あの人がいる限りこの馬車の安全は約束されてると思うぜ。俺らも含めてな」
「傍から見ると気のいい大きな女性にしか見えないんですけどね……」
「そうだな。転がってる賊見ると俺は真っ当な仕事やってて本当に良かったと思ってるよ」
「正直に言う。堕ちてもあんな感じにはなりたくないですね……」
「ああ。手足しっかりと折ってる辺り……あ、あのうるせー奴顎踏まれた。南無」
「ヒェッ……」
「おーい。ナーブさーん! コイツらどーする〜?」
「街が近ければ衛兵に突き出して小遣いにでもなるんだが……このまま獣のエサでいいんじゃないか?」
「おっけー。じゃあ使えそうな物だけ貰っちゃうか」
「そうだな。タマの姐さんは休んでてくれ、物漁りは俺らが引き受けよう」
「ん。分かった……馬は?」
「この際だから潰して肉にしてしまおう、パパルナの旦那、此処でまた肉の加工していくか?」
「私は全然構いませんよ。寧ろ旅してるのに商品が増えるなんて笑っちゃいますよ」
「ははっ。本当にな、俺も同感だ」
「おーい! 此処で加工してくなら抜いた臓物と賊埋める穴掘ってくるぞー?」
「助かりますタマの姐さん! 穴できるまでに物色しときますんで!」
「おっけー!」
そんなやり取りの中、ボソリとパパルナが呟いた。
「うーんどっちが盗賊なんだか分からないですね、ま、彼らの自業自得ですけど……さ、器具広げて加工の準備しますか!」
「掘ってきたぜー!」
「「「「早すぎるぜタマの姐さん!?」」」」
その日、賊たちは土に還った。




