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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
59/202

55ネキ 海は海賊 山は山賊 街道に出る賊は?(前編)

 前回のあらすじ


 綺麗な水源に便をすると 死ぬ。



 ――――


 おはよーす。 今日もいい天気ですね。

 現在は森抜けて(意図しないショートカット)3つ目の街、えーと何だっけ……名前。


 そうだ。確かムキモとか言ってた気がする。

 そんで、俺の銀色の冒険者証。スゲーなこれ、マジで。

 街入る時も、人に物聞く時も(ギルドの場所)そんでギルドに入ってからもこれ見せると、それなりの対応できっちり対応してくれるんだもんよ。


 やっぱりこれ1枚で身分を証明できるってのはパないな〜。

 それだけギルドってのが信用あるからなんだろうけど。



 そんで受付のおねーさんに「王都まで行きたいんだけど何か丁度いい仕事無い?」って聞いたらこの街から王都の方角に出る荷馬車の護衛募集があったんで、受付の人に頼んで依頼料半額以下の大銀貨50で良いからねじ込めないか? と聞いてみたら寧ろ依頼側の方がそんな安くBランクの冒険者に依頼できるなら是非。 だってさ。


 歩くのもいいけどたまにはこうやって楽もしたいよね。 いややっぱり楽するべきだったな。

(テノヒラクルー)


 と。いうこと、で。

 現在は結構大きな4頭引きの馬車の御者席の横で頬杖ついて半分眠りながらのーんびりと旅の最中よ。


「いやぁ、Bランクの方にこんな安く依頼できるなんてツイてますよ、私」


 そう言って俺に話しかけてくるのは依頼主兼御者のパパルナさん。

 乗せてもらう際に戦闘以外はからっきしだということはしっかり伝えてあるので、寝てても問題ないのだ。

 荒事専門のための俺だ。 いやほんとこんなので金稼げるから天職だわ冒険者って。


「んあ? まー俺も王都の方に行きたいから乗ってるだけで向かってくれるし、めっちゃ有難いよ」


「いえいえ、何度も言いますがBの方に頼むとなると金2はお渡しする案件ですよ?」


「俺自身が別に良いって言ってるからそれでいいんじゃね? それだけ掛かるとしたなら浮いた半分後ろとアンタの横に居る“獣の牙(ワイルド・ファング)”とかいう人たちにあげりゃいーじゃねーか。荒事用の俺よりずっと仕事してるぞ?」


「……これは驚きました。どうやら私は本当に当たりクジを引いたようですね……その美しさと言い本当に冒険者かと疑いますよ」


「……俺たちもあんたみたいな冒険者は初めて見る。初めての同業者と依頼を合同で受ける際、正直ランクが差があると内心下に見られるのが普通だが……そんなこと言われたのは初めてだわ」


「あ、そうなの? 俺田舎もんだからそういうのわかんねーわ」


 へー。 知らんかった。 フカシの街は偶に突っかかってくるやつは居たっちゃいた(直ぐ居なくなった)けど大体皆良い奴らばっかだったけどなー、何処の世界にも差別とかそんなみみっちいことするの居るんやな。


 そしてパパルナさんの隣にいるおっさん? 確か名前はリーダーのナーブさん(パパルナさんの横)と、馬車の後の見張り席のコルヌさん、そんで今は馬車の中で交代休憩中のプレザさんとクルークさん。彼らは全員Cランクの冒険者で皆斥候職なので見張り役に向いてるとのこと。そして覚えきれた俺カシコイ!(自画自賛)


 護衛の形態は、彼らが索敵、もし魔物や賊などに襲われるなら、俺が出動。 とかそういう流れ。


 フカシの方に居た時、CとBでは壁があるってオロロソのおっちゃんが言ってた気がする。


 確かにペドロのおっさん俺に何回も大回転されられても腕折れてなかったもんなー。 心も折れなかったしあんまりにも土下座が綺麗過ぎたんで俺の方が折れたけど……やはり諦めないって大事だよ。

 あ、やめろ、三馬鹿は俺の回想に出てくるな、なまじさっきのこと当てはまる分クソタチ悪いわ。


 3人仲良く俺の回想でコサックしてる馬鹿を追い出しつつ。

「だって俺の方がナーブさんたちより強いとしてもだよ? 仕事の内容とは関係無いじゃん。俺にアンタたちみたいに周りに気を配って索敵しろって言われても、無理。そんでそれは俺にできないことをナーブさんたちはこなしてるわけだから尊重して当然。 寧ろ俺の考えとしてはこういう仕事は斥候の方が大事だと思うぜー」


 欠伸(あくび)をかきながら素直に思ったことを述べる。

 ん? パパルナさんのとナーブさん達が鳩が豆鉄砲食らったような顔してら。 ……んー? なんか変なこと言ったか俺?


「こんな美しくも高潔な冒険者が居たフカシの街とは……国境付近の田舎だと好き嫌いせずに稼ぎに行けば良かったですな……」


「全くだ……冒険者全員アンタみたいな考えしてくれてたら報われる奴らもたくさんいるのにな……」


 え? 何で二人とも上向いて目頭押さえてるのさ?


「高潔とかそんな大層なもんじゃねーから。俺なんて気侭(きまま)に生きれるから冒険者やってるだけだし」


 その言葉を聞いてナーブが更に感極まる。


「あの、どう見たって俺より年下、しかも出会ったばかりの貴女にこう言うのも失礼かも知れませんが、“姐さん”と呼んでもいいですか」


 ヴぁッ!? 何故にそう呼ぶ!?


 半眠りから一気に覚醒してナーブさんの方を見る。何で? 斥候職ってそんな不遇なの? 当たり前のこと言っただけでこんな会ったばっかの人にも敬われるぐらいカースト低いの?


 ……変に断っても数日一緒なわけだから気まずくなるだけだし、何より彼らに働いてもらわないと俺が寝れんし……


 脳内会議ちう…………良し。


 三馬鹿より全然話通じそうだし、可決!


 ……ダルダルシタイカラアマンジタワケジャナイヨ?



「ナーブさんがそう呼びたいのなら……好きにしてくれ。でも俺の方はアンタたちを呼び捨てにしないし、さん付けで呼ぶぞ?」


「有難いですよタマの姐さん。俺ぁ冒険者やってて今日が転機だと悟りましたわ」


 横でパパルナさんもうんうん頷いてるし……


「パパルナさんも何でそんな感動してるんすか?」


「あ、すみません……いやぁ正直今まで大して襲われるような長い距離を往来してこなかった理由がですね、雇った冒険者さんたちの態度がタマさんやナーブさんたちみたいにいい人柄じゃない方ばかりでしたので……一稼ぎするために今回馬車の改造までして王都までの長距離を依頼したわけなんですが……今回は私もナーブさんたちと同じように転機だと同感してたんですよ」


「……じゃあ、ナーブさんたちをこれから専属で雇えば?」


「「……」」


「「それだ!」」


 お互いに顔を見合わせて指差しで大きく叫ぶ。



 えぇ……お互いどんだけクジ運悪かったのさ。



 そうしてパパルナさんとナーブさんは専属契約の話をして、勿論俺にもお誘いが来たけど目的が王都なので丁重にお断りした。

 大陸の向こうにいる友人に会いにいく約束してるって説明したので、残念がってはいたけどきちんと分かってくれて何より。


 ……意思の疎通が綺麗にできるのに敬ってくれる人って良いもんだな……(ホロリ)



 そんなこんなで特段数日揉め事無く旅して、飯食って(夜はナーブさんたちが交代で見張り 俺は熟睡) 偶に寄ってくる草原狼っていう魔物が夜のおやすみタイム邪魔してくれたんでブチ切れてボス格にダッシュして上顎と下顎掴んで真っ二つに千切ったり、戦意喪失した群れをナーブさんたちがヒャッハーして毛皮の臨時収入じゃー!とか言ってハッスルしたり。

 この件でナーブさん以外からも姐さん言われるようになった(白目) 次の日ナーブさんが教えてくれたけど、「あ、この人には勝てねえわ」って思ったとかなんとか。



 あ、お肉はしっかりと血抜きしてパパルナさんの商品の香草、まぁハーブとかそんなもんすね。俺に細かい種類はわからん。

 で、臭みしっかり取って煙で燻してしっかりと水分抜けばウルフジャーキーっつー冒険者御用達の保存食がたくさんできる。できた。


 些かクセは有るけどガッツリ利かせた香草のお陰で普通にイける、ほんで水分抜く分硬くなるんで、俺は割と気に入った。旨い旨い。


 これもまた売れるんだそうで、ついでに俺達も好きなだけ食っていいってことでモッチャモッチャしながら移動してたんですよ。


 そんな旅の途中、馬に乗ったたくさんの集団とすれ違った後のこと。



 後の席に着いてる連絡用の伝声管から伝わり、前の御者席に危険を報せる声が響く。



「すれ違った一団、切り返して此方に向かってくるぞ! やはり賊だ! 姐さん、頼みます!」



「ンにゃ!? 仕事か? 任せろ!」


 いつもの謎鼻提灯を弾けさせて、タマだけ馬車から降り、派手に着地(カッコつけた)し、奴らの行く手を仁王立ちで阻む。


 俺は後で拾っていただくとして、馬車に攻撃されたら元も子もないからそのまま逃げてもらう手筈。




 さ〜て。 仕事しますか!


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