番外ネキ お昼寝の女神様
それは─
何年後かは分からないが、いつかの未来。
太陽と果実酒の都市。フカシ。昔は普通の街であったが、成長を遂げ、今では王都と規模を同じくする第2の王都とも呼ばれる都市。
その都市の特産品はヤッシーと呼ばれる太陽の恵みをその果実に詰めるだけ詰め込んだ甘くてとろける果汁のなる木。
そして、その果実から造られる品々で栄えた都市。
昔は唯の公園の植木だったが、ある女神様の好物だったために、街の人が植えに植えて、いつしか街には無くてはならなくなった都市の繁栄とは切っても切れない木。
その都市にある特にこれと言った特徴もない普通の民家。
その中の、親が子に絵本の読み聞かせをする普通の光景。
その物語の、よくある物語の内容。
――――
―― ながれぼしの おひるね めがみさま――
むかし、むかし、とてもむかし。 フカシのまちがまだ、としではなかったころのはなし。
あるひ、フカシのまちに、ひとりのめがみさまがまちにやってきました。
めがみさまはしょうたいをかくしていましたが、とてもやさしく、とてもつよく、とてもあかるく、すぐにまちのひとたちとなかよくなりました。
まちでめいわくをかけていたさんびきのいぬたちも、めがみさまにかかればあっというまにかいしんして、まちのためにはたらくようになりました。
あるときはヤッシーをまちのこどもたちにわけあたえ、そのおいしいきのみのしるは、こどもたちをしあわせにしました。
みちがゆがんでこまっているおじいさんやおばあさんにはみちをたいらにしてあるきやすくしてあげました。
おさけがすきなおとなたちとは、いっしょにおさけをのみ、ともにさわぎたのしみました。
いつしかどこからかきためがみさまは、まちのにんきものになっていました。
そんなめがみさまは、とても、とてもおひるねがだいすきでした。
さんさんとふりそそぐたいよう。 めがみさまは、いつもからだいっぱいおひさまをあびてきもちよさそうにねていました。
ですがあるひ、フカシのまちにわるいオーガーたちがたくさんせめてきました。
とても、とてもたくさんせめてきました。
とてもたくさんいたのに、さらにもっとおおきなオーガーのおやぶんもいっしょにせめてきました。
オーガーたちにおどろき、まちに、すんでいないひとたちはあわててまちをすててにげました。
まちのひとたちは、まちをすててはいきていけないので、まちにのこり、たたかうことにしました。
ですが、人とオーガーでは、ひとはオーガーにかてません。
しぬかくごでオーガーたちをむかえうとうとしたとき、めがみさまはまちのひとたちにしんでほしくなかったので、じぶんのしょうたいをあかすことにしました。
おそらにもどり、そらにかがやくほしをひとつ、つかみ、ほしとともにおちてきました。
そしておりてきためがみさまは、ひかりかがやくほしのハンマーで、わるいオーガーたちをつぎつぎにこらしめていきました。
こらしめたオーガーをそのままにしては、だいちがくさってしまうので、ほしのハンマーでつくったかげに、こらしめたオーガーをしまうことにしました。
おおきなわるいオーガーのおやぶんも、つよくうつくしいめがみさまにはかなわず、こらしめられ、かげにしまわれてしまいました。
かぞくも、こどもも、みんな、みんないなくなるはずでしたが、めがみさまのおかげでだれひとりもいなくならなくてすみ、まちのひとたちは、それはもうよろこびました。
めがみさまにも、とてもかんしゃしました。
ですが、めがみさまはじぶんのしょうたいをばらしてしまったので、かみさまのくにに、かえらなければいけなくなりました。
めがみさまはまちのひとたちがだいすきでした。でも、じぶんはかえらなければいけません。
また、わるいものたちがきてもじぶんのかわりにまちをまもれるように、ほしのハンマーと、つくったじぶんのかげをおいていくことにしました。
めがみさまはいなくなってしまいましたが、ほしのハンマーと、めがみさまのかげは、いつまでも、いつまでもまちのへいわをまもりました。
そして、おおきな、おおきなまちになったフカシですが、いまでもめがみさまのかげは、わるいものたちをこらしめます。
わたしのだいすきなこのまちが、ひとが、いつまでも、いつまでも。
へいわにくらせますように。
と。
「……はい。女神様のお話はここで終わり。女神様の残した輝く星のハンマーは街の中心に像と一緒にあるし、今でも女神様の影は本当に居て、わるい魔物や人たちを懲らしめてるそうよ?」
「すごーい! ね、おかーさん! おおきくなったら僕も女神さまみたいにかっこよくなれるかな!?」
「うーん、どうかしらね? 女神様みたいにはなるのは難しいけど、都市の治安を守る3匹の子分の犬たちに倣った三頭犬隊に入って女神様のお手伝いすることはできるわよ?」
「うん! おおきくなったら僕も女神さまの子分になってまちのへいわをまもるんだ!」
「クスッ……そうね。なれるといいわね。貴方ならきっとなれるわ。さ、もう遅いから寝なさい。明日もガッコーでしょ?」
「うん! ねる! ね、おかーさん、あしたも女神さまのお話、聞かせてね!」
「勿論よ。おやすみ。私の可愛い坊や……」
「うん。おやすみ。おかーさん……」
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――
「へっくち!」




