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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
2章 冷やし中k……新人冒険者始めました
46/202

45ネキ 走れ耕一

 

 前回のあらすじ


 買い物しようとしたら何か火急の用らしい




 ――――――



 時は少しばかり(さかのぼ)り朝方。

 フカシから冒険者基準で半日ほどの距離にある「東の森」と呼ばれる場所。


 大した魔物や魔獣などは出現せず、街から近いこともあり初心者行き付けのスポットとして薬草採取から魔物討伐まで人気の場所であった。

 だが、最近生息するはずの無い危険度の魔物、「オーガー」の出現により現在は原因究明までBランク以下の者は立ち入れぬ場所になっている。


 第1発見の時は運良く実力者同伴、第2発見は警戒態勢の調査ののち、三体が確認されこれも即座に討伐が行われた。


 現在は三体同時出現以降音沙汰が無いが、依然原因が不明のままなので万全を期した視界がよく通る明るい間のみ、少数による調査が行われていた。


「ふぁ〜ああ」


「朝早いのは分かるが欠伸(あくび)とは感心しないぞ」


「わーってるさオロロソ。でもあれ以降何も音沙汰無いんだからいいんじゃないのぉ?」


「確かに三体討伐以降何も起こってはいないが今日は俺たちの当番だ。原因が分かるか日が暮れるまで森を探索するぞ」


「はいはい。真面目だねえお前はいつも……ん?」


「お前も気が付いたかペドロ」


「ここからなーんか雰囲気ってか空気が違うというか……良くない気がするねぇ」


「ああ、もう少し奥まで進んでみよう。勿論直ぐ引き返せるような準備はしておけ?」


 会話をしながらも足を進めていた二人。

 だがお互い森のある所で足を止め、違和感を感じとる。


「なぁ……この森のこの場所に()()なんてあったか?」


「森の奥と言えど洞窟があれば入って中の様子の報告もあるはずだろう」

 

 しばらくして2人は謎の洞窟を発見。


「その報告が昨日は無かった。と、なると?」


「ビンゴ。だな。ツイてるじゃないかペドロ」


「うへぇ、なんて嬉しくないツキだ。まぁ、「中見ませんで帰ってきました」なんて報告したらカッコ悪いし嫌だけど覗いていくかねぇ……」


「待て、何が居るか解らん。此処で〔隠蔽(ハイド)〕を掛けてゆっくり進むぞ」


「あいよー。しっかし便利だよなぁ魔法は、俺にも何か教えてくれよ」


「一見、呪文だけ唱えているように見えるが頭の中で詠唱してるから二つのこと以上同時に考えなきゃいかんから大変だぞ? それで良いならみっちり教えてやるが……〔隠蔽(ハイド)〕。

 そして今掛けてやった魔法だが、話の裏で、

 “闇の神よ、我が魔を糧に我が姿、我が影、我を証明せし全てを隠す力を貸しあたえたまえ。”

 ……って思ってたんだけど、難しい魔法はもっとややこしいぞ? それでも良いか?」



「あ、やっぱいいです。オロロソさんは頼りになる相棒なんで俺が覚える必要は無いです。俺は俺の得意なことするさな」


「そう言うとは思っていたさ。さて……洞窟に入ったは良いがコレは明らかに異常だな」


「ああ。()()()()()()。この先はもっと広いぞ……」


「しっ! 待て ペドロッ! 暗くて解りにくいが遠くで何かが動いてやがる。……これは……奴らだ」

 

 広間になっている洞窟の奥からは数えれぬほどのオーガーの群れが所狭しと足音を響かせ出口に行進して来ていた。


「げぇ!? あれ全部オーガーかよ! となると此処はダンジョンか?」


「どういう理屈で昨日の今日で出現したか解らんが……! 奴ら、ゆっくりだがこっちに向かってきてるぞ!…… 駄目だ! 数が多過ぎる、これは……()()()()!」


「昨日の今日のダンジョンで氾濫(スタンピード)だぁ? そんな阿呆な話きいたことがないぞ!?」


「聞いたことがなくても今実際に起こっている! 急げ! 幸い見たところそこまで足が速いわけじゃなさそうだ。

 森の入口に停めている馬まで急いで戻るぞ!」


「了解! 馬には悪いけど風になってもらおうかね!」


「ダンジョン出るまでは音出さないように急げよ」


「あんな数に囲まれたらお陀仏だし当然!」



 その後、死に物狂いで走り(馬)、ギルドに報告が入るや否や街全体に魔法による避難勧告と冒険者の招集が放送され、街が騒然となる。


 そして現在、連絡を受けたギルド内。





「所長ッ! 今朝突如出現したダンジョンよりオーガーの群れ、多数です! 数は把握しきれないとのこと!」



「今すぐ偵察に向いてる冒険者は出てきたオーガーの数の把握して戻ってこい! 但しBランク以上の奴だ。 確かへクマさんとこのラトローがまだ街にいるはずだ、引っ張り出して使え!」


「連絡用の魔道具持たせますね!」


「失くさせるなよ! アレは高いんだ!」


「所長」


「なんだいノーンちゃん」


「へクマ殿の所の冒険者と言えば側近のコーイチ殿がAランクあったかと」


「そういえば居たね! で、へクマさんとの連絡は?」


「はいどうぞ。通信用の魔道具です。へクマ殿と既に繋げております」


「有能! ノーンちゃん大好き!」


「お褒めは有難いのですが今の状況で愛を囁かれましても」


「ジョーク通じないんだからもう! はい。此方サクル、へクマさんか?」


「……うむ、サクルか。此方も既にコーイチの連絡により大方の状況は把握している」


「お互い部下が有能なこって。じゃあ細かい説明は要らなさそうだね」


「此方も大方把握はできるが、不備があるとまずいのでこの通信機とやらに直ぐ繋げるといい。私の方もできることを手伝おう」


「助かるよ。持つべきものは金持ちの友達だね」


「ふふ。碌でもないお前が今やギルドの所長だ。して、作戦はどう考えている?」


「数が分からないのもあるけど、何よりオーガーが固まってるってのが面倒だ。近接は分が悪すぎる、街の壁を防衛ラインにして壁の上から出来得る限り魔法打ち込んで減らしてからの総力戦になるだろうね。こっちのAランクはほぼ職員で魔法型だしそれが今の無難かな?」


「ふむ……ん? サクル。今コーイチから連絡が入ったぞ。そのオーガーの大軍が森から出切ったようだ。数は約1000ほどらしい」


「うえっ!? 1000!? ってかなんで解るのさへクマ!」


「何、部下が優秀なだけだ。偵察くらいなら街に置いている分身とやらで問題無いらしい。戦闘力は本体にしか無いのが玉に瑕だとは言っていたがね」


「有能過ぎでしょ君んとこの部下。もしかしてオーガーの1000体くらい何とかなったりしない?」


「今聞いてみたが何とかなるみたいだぞ?」


「えっ!? じゃあ早く呼んでよ! ってか1000体なんとかなるってそれもうSクラスだよね?」


「そう言ってくれるな。コーイチには仕事上あまり目立ってほしくないのだ」


「目立つ目立たないの場合じゃないの! 頼むよへクマ!」


「まあ落ち着けサクル。私とてその方法しか無いならコーイチを目立たせたくないとは言わん」


「え? 他にいい方法あんの?」


「あるぞ。誰一人として犠牲にならない方法が」


「何何教えてへクマ! 人死にが出ないなら俺の貯金でもお前の靴でも舐めるから!」


「そういう大事なもののためなら自身のプライドを軽く捨てるのは昔から変わらんなお前は。まぁ、お前になら教えても構わんだろう。最近街に来たタマという冒険者を知っているな?」


「え? 勿論。街に来た初日から面白いことしまくって今や公園と酒場(ギルド)のアイドルでしょ? 僕らと肩組んで酒盛りしてくれる女の子なんて普通居ないよ? いつの間にか三バカ君たちも飼い馴らしてるし本当に面白い子だよ」


「それは又今度酒でも酌み交わしながら聞かせてくれ、面白そうだ。で、そのタマ君の話に戻るが、彼女は星の落とし子だ」


「え……マジィ? 年の割に冒険者になったばかりだし、オーガーを傷一つ無く正面から倒したらしいから変だなーとは勘ぐってたけど、それなら全部合点が行くわ。星の落とし子なんて隣の国に居る「炎の勇者ヨシヒコ」とかでしょ? あの人間辞めてる」


「彼女に協力を頼めればオーガーの1000や2000など物の数ではないだろう。が、問題はコーイチとタマ君の二人ともがニッコロに居るのが問題なくらいか」


「今サラッと凄いこと言わなかった? そいで二人ともニッコロだって!? オーガーの群れは出処近いせいで遅くても12刻には来るよ!」


「今は……ふむ。7刻か。コーイチの脚なら問題は無いが、タマ君がどうかだな」


「取り敢えずこちらの方は間に合わない場合想定して全力で迎撃する用意してるから何とか頼んだよ!」


「うむ、任せておけ。人1人の人死に無く街を守ると言う伝説を作ってみせよう。2人のうちどちらかが。だがな」


 そして切られる通信用の魔道具。


 一呼吸ため息を吐き。へクマは目を閉じたままコーイチへと念話を繋げる。


(で。聞こえていたなコーイチ。目立ちたくなければ何とか彼女の協力を得るのだ。さもなくば私の隠密と英雄の2つの職に就いてもらうぞ)


(何サラッと過労死まっしぐら宣言してんすか!? 旦那の仕事だけでも大変なのに有名になったらその仕事が更にやりにくくなって大変なことになるッすよ!)


(だから彼女に英雄になってもらえば済む話ではないか。報酬など糸目は付けん、人命が無くなればそれこそ損得の話ではない。何とか説得したまえ)


(サラッと言いますね。ま〜彼女性格上頼めば快諾してくれるとは思いますが俺はともかくタマさんはフカシに間に合うんすか? 昼には来ちゃうんでしょ?)


(それも含めお前に任せる。足が速くなければお前が担げば良いだろう)


(ええー? まぁ、とにかく今から念話通してお願いしてみますよ)


(うむ。街の命運はお前に掛かっている)



 ―――――



「と、いうわけで。助けてくださいっす」


「どういう訳だ。いや、オーガーが1000体とかはさっき念話で聞いたけども」


 現在は門に近かったのもあり、街の外に出て話をしている。



「まあ、平たく言いますと僕でも1000体くらい余裕で倒せるんですけど、仕事上目立つととても大変なのでお願いします僕を助けると思って目立ってください」



「はあ。 何ら構いやしねーけどこんなのってよくあんのか?」


「いやぁ、無いっすよ。そもそも氾濫(スタンピード)なんてダンジョンに魔物が増えすぎてダンジョン自体が自身の軽量化のために余分に溢れた以上の魔物を出し切ってスッキリする現象のことですから、人が入って定期的に魔物の調整すればまず起きるものではないっすよ」


  「へー。で、そのオーガーみたいな1000体くらいとかって起こったとして出てくるもんなの?」


「まさか! そもそも昨日の今日でできたダンジョンからそんなに出てくるのが異常なんすよ。とにかく、急いで一緒にフカシまで戻ってほしいです。あ、坊ちゃんたちは念話で留守番頼んでますから置いて行っても大丈夫ですよ。と言うよりオーガーなんてのは割とヤバイ魔物ですからね? 普通の人間からしたら岩の如き肌に一振で簡単に絶命する腕力。

 諸々置いときますがそれが1000体固まって街襲うのはヤバイんすよ。

 そしてそんなのが街に入ったら無茶苦茶になってタマさんお気に入りのベンチとか昼寝スポットとか無くなるっすよ」


「……何? 俺のお気に入りが……無くなる?」


 あ、食いついた。


「そりゃあもう酒場も無くなるし男は勿論、逃げきれない女子供も食われちまいます」


「……チビたちが、喰われる?」


「間違いなく」


 ほんの一瞬であったが、彼女の瞳が紅く染まり、髪がふわり、と熱による上昇気流で揺らめく。


「……よぉーし、分かった。英雄なんてのに興味は無いが俺の昼寝スポットを奪う奴は鬼だろがなんだろうが容赦しねぇ。勿論かわいいちびっこ共も喰わしてやらねえ」


 あ〜……地雷踏んだっすかね。コレ。

 今一瞬目の色変わったの超怖いよこの人……


「さて。じゃあコーイチ、頼むぞ」


「え? 頼むって何を?」


「悪いが俺はお前みたいに脚がそこまで速くないんだわ、つーか走るのがクソたるい。

 よってお前が俺を運べ。おんぶでもお姫様抱っこでも構わん」


「ええ……俺がすか」


「お前でも何とかなりはするんだろう? だったら運んで間に合わせろい。俺が走ったところで間に合うか分からん。うん、ていうか、運べ」



「あっ決定事項すか……じゃあお姫様抱っこなんて恥ずかしいのでは普通におんぶで……」


「はいよ」


 彼女は立派な胸部装甲があります。

 さすればモニュりと当然当たる柔らかい物がありますね?



 うおおおおおおおおおおおおおお!?

 当たる! メロンが当たる!! アンデスだコレ!

 そして結構重い! 重いから体重掛かって当たる!


「あ、やっぱ至極個人的理由で輸送に支障を来たしそうなので恥ずかしくてもお姫様抱っこで、運ばせていただきます」


「あ、あたんの気にしてんのか? 俺は気にしてないからおっぱいくらい輸送の駄賃としてくれてもいいのにー」


「こっちが気にするんすよ! あとタマさんにとても失礼なことを承知で聞きますが体重お幾つで?」


「100Kg。これでも最近まで持ち上げ不可だったから相当に軽くなったよ。重くもなれるが上限は知らん。重かったか?」


「100すかー。見た目肌色なのに全身金属ですからね。そりゃ有りましょうよ。持てないことは無いですがちとしんどいかと」


「あ、しんどいぐらいで済むんだ。じゃあ大丈夫だな。ほれ、早う抱っこしろ」


「ええ……タマさんに羞恥心は無いんすか」


「羞恥心より俺の昼寝スポットが無くなりそうで(はらわた)が煮えくり返りそうだ」


「タマさん! 熱い熱い! 物理的に熱い! 落ち着いて!」


「おっと、すまん。よし、走れコーイチ! 君に決めた!」


「街着いたら頼むっすよー………



 ――――

 ――




 走れコーイチ。 タマを抱えて。


 その後。


 避難してくる人々から美女を抱えて走る謎の黒ずくめの男の話があったのは勿論のこと。

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