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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
2章 冷やし中k……新人冒険者始めました
44/202

43ネキ タマ また奢る&カイザーひげマッチョと幼児とリュックと

  前回のあらすじ

 

  手首のスナップがいい音出すコツ



 ――――――





  タマお手製の紙鉄砲の大音量がギルドの室内に響き渡り、皆が驚き飛び上がり、何事かと周囲を見回す。

 

  エール(所謂ビール)を運んでいた店員は注文をしていた冒険者に頭からぶちまけ。


  今から飲むぞとジョッキを(あお)った冒険者は鼻から飲み炭酸の刺激に悶絶し床を転げ。


  敵襲かと構え剣を抜く者、座ったまま数センチ浮き上がる者、その他諸々の惨事があったが省略しておこう。


  特に運ばれている食べ物などの被害が一番だったぐらいか。


「うおっ、 いい音出たな!?」


  紙鉄砲なんて久しぶりに作るもんだからいい音出すようについちょっと力込めてしまったわ……

  紙鉄砲の方は……あ、破れてーら。 自身の馬力の高さを考慮してなかったね、

   反省反省。 てへぺろっ!


  ……うん。 てへぺろは無い。


  閑話休題。

 やっべー……周囲を見回してみたけど大惨事やん。 皆こっち見てるし!


  受付のおねーさんは……何だろうコレ。

  漫画的表現で言うなら頭の周りにヒヨコが回りながらフラフラしてる感じ。 実際のところヒヨコなんて見えんが。


「おーい、起きてー」


  そこまでカウンターの向こうが遠いわけではなかったので身を乗り出しペシペシとおねーさんのほっぺたを優しくで叩いておこしてあげる。


「う、うーん……ハッ! 私は今何を!?」


  あ、起きた。良かったー……山賊たちみたいに耳血流してなくて……

 結構焦ったわ。 一番近くに居たからね。


「お、起きた? その……やらかしといてアレだけど、すまんね?

 ……そいで、分かってもらえた? 山ではこれよりもっと大きい音出したんよ。街まで聞こえるくらいの」


「ええ……はい……まだ耳がキンキンしますが……貴女の言ってることが事実なら辻褄が合いますね……」


「何かあっさり信じてくれるんだね」


「信じるも何も体感しましたし、これより大きい音が出せるということであれば不可能ではないかと……あー。まだフラフラします……」


「まだ治ってないところ悪いんだけど紙もう1枚くれない? ああ。今度は鳴らすわけじゃないから」


「あ、はい。どうぞ……鳴らすわけじゃないのに何故もう1枚?」


「さんきゅー。 えーと……ほいほいほいっと、はい。あげる」

 

「え? 私にですか。これは……先程の奴ですね?」


「うんうん。 そしてソレの端っこをこう持って」


「こう……ですか?」


「そうそう」


  俺の方は破れた紙鉄砲を持って動作を真似させる。


「そして……手首を降るようにして振り下ろしてみ?」


「あ、はい。 えーと……こう!」


  おねーさんが紙鉄砲を振り下ろすのと同時にスパンッ! と小気味の良い音を立てて紙鉄砲が広がる。

  うん、いい音。


「……ちょっと楽しいですね、コレ」


「で、その広がった所折りたためば、また音が鳴るって作り」


「はぁ。音が鳴るのは分かりましたけど、コレはなんです?」


「紙鉄砲っていう子供の玩具だよ。俺の所の……あー。何処から来たとかは長くなるから流してくれると有難い」


「カミテッポーですか。聞かれるなとおっしゃるなら詮索はしませんし、冒険者なんて脛に傷持つ方なんてザラですしね」


「でさー、自分でやっといてなんだけどさー。俺だと説明するの難しくて何とか収めてほしいんだけど……」


  そう言って俺は注目されてる中おねーさんに周囲の惨状を見てもらう。


「あ。あー……はい。では、コホン……皆さーん! 少々大きな音が出てしまいましたが、こちらの方が意図しないほどの音が出てしまったことによる事故でーす! ですのでお気になさらずにお願いします!」


「えーと、そういうわけで、ごめん、大きな音出して俺が悪かった! 許してくれ」


  暫くの沈黙の後、ボソリと1人が喋った。

  エールの滴る男が。


「おい、でけーねーちゃん。あんたランクは?」


「え? 俺はEだけど……」


「Eつったらまだ駆け出しじゃんか……登録は最近か?」


「えーと、大体ひと月前になったばっかだよ」


「お? ひと月でEに上がったのか? 割と早いじゃねえか」


「腕っ節だけはあるからね。マナーは無いけど」


  殆ど寝てた気がするけどそれは言わないどこ。


「ははは! 俺らみてーだな! でもそんな綺麗な顔して何で冒険者なんかになったんだ?」


「おじさんそりゃあ……自分の好きに生きられるからだよ。働くのは嫌いじゃないけど、毎日働くのは嫌いだからね。好きな時に仕事して好きな時に好きなことする。生きるも死ぬも自分の責任。我儘だろうけど俺にはピッタリだと思うからなったのさ」


  別段考えてなかったけどスラスラとそれっぽいことが言える自分に驚き。でも言ってることは間違ってないつもりだからね。

  我儘に生きる。 それが今世の楽しみさ。


  そしてまたしばらくの沈黙。


  先に口を開いたのはエール男の方だった。


「プッ……ははははははははは! 面白いなあんた! そんな顔してそんなこと言われるとは思ってもみなかったよ! ははは! 新人のクセして俺たちと同じ考えてたぁな、あー面白い! はははは!」



  お腹を押さえて俺に指差し大笑いする男。

  ふむ? 何か存外受けてくれたようで何よりだ。 ついでにいつもの鉄板ウケ狙いと行きますか?


「笑ってるとこ悪いんだけどさ、あんたも皆も喜ぶもう1つ面白いことがあるぜ?」


「はは……ん? もう1つ。と?」


「ほーいっとな」


  エール男に向かって先程貰った金貨2枚を纏めて投げる。 難なく受け取った男は手の中の金貨を見て驚きの後、タマを見る。


「こいつぁ?」


「酒と食べ物代だよ。 台無しになったやつの分も含めて皆で分けてくれ。 そして今度は存分に浴びてくれ」


  男に渡った金貨を指差し、タマがニヤリと言い放つ。


  すると男は感心したように


「こいつぁは流石に俺もびっくりの謝り方だ。ねーちゃんほんとに駆け出しかよ? 金貨2枚は駆け出しの財布から出る額じゃないぜ?」


「正真正銘Eの駆け出しさ。こうやって迷惑起こして()()()()()()()()()()()()()()()くらいのな」


  両手を上げて首をふり大袈裟にアピールをする。


  「ははっ、あんた面白いな! そういうことなら有難く頂くさ。おい! 聞いたか!? 迷惑料に金貨2枚分の飲み食いし放題だ。ついてないと思ったらツイてるじゃないか!」


  男の声に反応して歓声と口笛が所々からあがる。


  うーんまさか此処でも奢るとは思わなんだ。まーでも迷惑かけたからしょーがないね。

 うん。 人は奢られたら多少のことは許してくれるからね。

  あーでも金貨2枚は適当過ぎたかな? 1枚だとしょっぱく思われるかもしれないし……まーいいじゃろ。


  お金貰いに来た意味あんま無くなったけど良いか。

  あ、そうだ。帰る前に調査の人引き上げてくれるか聞こ。


「何か話逸れちゃったけどおねーさん、調査に向かった人たちって早く帰ってこられるかな?」


「え? あ、はい。魔物の仕業でないと解れば連絡の者を出しますので直ぐに引き上げてくるかと」


  よしそれじゃ後は適当な宿聞いて帰るかー。


  と、思ってた矢先


「失礼します! 衛兵所の者ですが、此方にタマ殿という長身で黒い長髪の女性が来ておりますか!」


  衛兵の人が声を張り上げながらギルドに入ってこられましたわ。


  え? 何? 俺?


「はい。なんでそ」

 

  別段やましいことは何もしてない(多分)ので直ぐに手を挙げて返事をする。


「おお! 貴女でしたか! 街に入る際に預けられた山賊の褒賞についてですが、今日はもう遅いのでお手数お掛けしますが、後日詰所の近くにある事務所までお越しいたたければ、お渡しすることができますので是非いらしてください! では、お騒がせしました。私はこれにて失礼します!」


  伝えることを伝えた衛兵さんは綺麗な敬礼とターンでギルドから帰っていってしまった。

 あー、そーいやお礼金貰えるんだったね?


「……本当に30人も捕まえてたんですね」


「ん? ああ。嘘つく必要ないしねー」


  さー今度こそ帰るべ。


「おねーさんさ、俺適当な宿探してるんだけどオススメ無い? 普通くらいのやつ」


「宿ですか? それならギルドから出て少し行って右に曲がれば宿屋街になりますの、で空いてる所なら料金やサービスなどさして変わりませんから好きな宿で構いませんよ」


「おっけー。ありがと。それじゃぁお邪魔したね」


「はい。またのお越しを、あ。コレはいかがなさいますか?」


「紙鉄砲はあげるって言ったから好きにしたらいいよ。じゃーねー」


「お? 気前いいねーちゃんは飲んでかねーのか?」


「いやー。金貨2枚も落としちゃったからショックだし今日はもう帰って寝るわー」


「ははは! いや、あんた本当に面白いな! そんな言葉駆け出しの言動じゃぁないぜ?」


「そりゃどーも。音の件は悪かったと思ってるよ」


「なーに。ちったあ驚いたが、いいこともあった。もう飲んでる奴らもいらぁな」


  あ、ほんとだ。はえーな、そしてこの方法スゲーな。

 何処でも奢りはつえーわ。


  ギルド内では既に飲み会が始まろうとしていた。


「それじゃ、俺は絡まれる前に帰る」


「おう。あんたの顔と名前は覚えたぜ! こんな面白い奴は久しぶりだ! ははは」


  エール男に背中を見せて軽く手を振りながら声に応えて俺はギルドを後にする。


  えーと……宿は向こうって言ってたな。それじゃ行くか。


  えっちらおっちら歩いて教えられた方へ向かっていく。



 ―――――

 ―――




  「クク……そろそろだな。破格のオーガー1000体は養分用意するのに大変だったぜぇ……お陰で付近の獣やら人やら居なくなっちまったがな」


 誰? かと言われたら久方ぶりの登場のクローマクである。


「最近ではここいらの付近は(くら)ましの森なんて噂されてそろそろ危なかったですからね。誰か調べに来る前にちゃっちゃと一番近くのフカシの街乗っとっちゃいましょうか」


  横で会話するは此方も久方ぶりの登場のツカッパー。


「お、来たか、ツカ。計画の進展はどうだ?」


「はいボス。後はフカシの近くの東の森に此処のダンジョンと繋がるゲート置いて繋げれば私たちも通って襲撃の様子見れますよ」


「便利なもんだな、ダンジョンってのはこういうこともできるんだな」


「そうですね。入口と内部との場所が違うダンジョンの話は聞きますがこういうことだったんですねー」


「ロッジは外に出るつもりは無いらしいから俺だけで高みの見物といくか」


「そうですね。オーガー1000体の群勢なんて相手できるのはヨシヒコみたいな勇者クラスぐらいですからね」


「ツカ、そこら辺はしっかり調べてるんだろうな?」


「はい。居てもAランクが10数名ですし、それもギルドの職員がほぼですからね。街の出入りの監視はしっかりしてます」


「それじゃぁ、ヨシヒコみてえなバケモンは……」


「居ないですね。今のフカシには」


「良し、じゃぁお前たちは全員休んだ後乗っ取りの準備を始めろ。疲れてミスしたら目も当てられんからな」


「ありがとうございます」


「クク。礼は人が居なくなったフカシ街で金目の物漁った後で言いな。好きなだけ盗りゃあいいさ」


「さすがボス! 懐が広い!」


「フッ。ヨシヒコの野郎をブッ倒せれば俺はそれでいいんだよ」


「では持ち場に戻りますね。失礼しました」


「頼むぞ」


「ええ。抜かりなく」





  フカシに危機が迫ろうとしていた。




 ――――――――――

 ―――――

 ―――



 




  更に所変わりシンシア大陸



「此処があのヒゲの住んでる都市(ハウス)ね!」


「ここからだと都市がよく見える。変わってないようで何よりだ」


  高い場所からヴィシソワーズの都市を眺めるダンディと幼女の2人。

  いや、2匹 と言った方が正しいか。


  ダンディの方は服の上からでも解るほどの筋骨隆々とした逞しい体に茶髪オールバックが決まっているピンとはねた立派なカイザー髭がトレンドマークの紳士服ダンディ。


  髭を弄りながらの都市を眺める様はとても絵になる。


  そしてそのダンディに手を引かれている幼女は自身の体に不釣り合いなほど大きなリュックを背負っている。


  容姿は青いショートカットで背中のリュックに髪が干渉しないような長さになっており、服装はボーイスカウトのような半ズボンの動きやすい格好をしている。

  頭から2本のくせっ毛の様な触角が出ている程度ではないだろうか? 人と違う所は。

  どの角度から見てもとても愛らしいリュック幼女である。


「あの都市に愛しの姐さんが居るんだな!? 姐っすわっぁーん! 今可愛くなれた貴女のぎーと君が(会い)に行きますよー!」


  ダンディの手から離れ、坂道を駆け出す幼女。


「あ、待たんか! お主は人化して日が浅いうえに背中が重いからこんな坂だとまたバランス崩して……」


「にゃーーーーーーーーーー!?」


「あーあ。言わんこっちゃない」


  案の定石につまづき、何処までも転がりながら山を下る幼女。


「さて、我も下るかの。はー、人の姿だと道が遠くていかんわい」


「たーすーけーろぉーーーあーるーどーーーーッ!」


  尚も勢い衰えず転がる幼女。


「我は忠告はした。止まったら助けてやる」




「ちーーーーきーーーーしょーーーーーー……」


  まだ、 止まらない。

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