40ネキ グレイ〇ヤは踏んだらダメに決まってるだろ
前回のあらすじ
さんぞく たち に ゆくて を はばまれた !
――――――
“一般的忍者男子高校生の独り言”
やぁ。
しがないニンジャのコーイチさんだよ。
現在はそろそろ街に着くかなーって感じ。いやー、 街出てもう2日だけど早い気がするね。 実際後半速かったけどさ。
え? さっきまで山賊に襲われてなかったかって?
うん。そうだね、そういえばそうだね。
山を挟んで2日で隣街で、丁度山の所で襲われたんだけど、 あれは─
昨晩の出来事でしたね。
彼らはどうなったかって言うと。
馬車の中に簀巻きにされて寿司詰めピラミッドだよ。
……何があったかちょっと振り返ってみよう!
――――
――
―
「へへへ……おっと、下手に動くと良いこと無いぞぉ? 既に周りは囲んであるからな。誰だって怪我はしたくねぇだろ? 俺たちはこう見えても紳士だからな。ま、野郎2匹は適当に獣の餌になってもらうが、諦めてくれや」
リーダーらしき男が短剣を舐めながらニヤリと言い放つ。
うーん、お決まりの絵に描いたようなThe 山賊すっねー。
しかもなんかいつもの3倍くらいいるんじゃないすかね? 珍しいねー。
そして皆めっちゃタマさん見てる見てる。
嬢ちゃん2人も外に出て戦闘態勢になってもらってるから見られはしてるけど……若いからかな? 見てるのは多少居るけど殆どタマさんに釘付けっすな。
で、当のタマさんはと言うと。
……あー、めっちゃ嫌そうな顔してる。
そらそうっすよね、あ。こっち見た。
ぶん殴っていいかのジェスチャーしたけど待って。タマさん、ステイ、ステーイ。あんたが殴ったら多分生きてないから。
「コーイチ、こっちでの山賊ってどういう扱い? 人?」
「人権0っす。魔物と同じ扱いで且つ殺しても罪にはならないっすよ。尚、生け捕りだと高評価っす」
「なんで?」
「隷属の首輪とかいう便利な物がありまして、生きてりゃぁ使えるんすよ」
「へー、そんなのあるんだ」
「おい! 何をごちゃごちゃ言ってやがるんだ!? 生け捕りとか聞こえやがるが、テメェら状況理解してんのかぁ!?」
「生け捕り……はっ倒しても何人か逃げる……」
タマさんがボソボソとなにか呟いていた。
ポク、ポク、ポク、ポク…… チーン。
「あっ。良いのがあったわ」
「えっ。なんすかタマさん今の間は?」
「コーイチさぁ、こう、何か音とか空気の震動をシャットアウトできるのとかあったりしない?」
何かめっちゃいい笑顔しながら手で空気を切る動作をしてるんだけど、俺の勘がヤバそうと警告した。あいやコレ絶対やべーやつだ。
「[絶音]っていう自身の周囲の音消す暗殺用のやつならあるっすけど……」
「マルたちも保護できる?」
「勿論できますが「よっしゃ! じゃあ頼んだよ、鼓膜とか衝撃とかヤバいと思うから」
「えっ」
待って。待って待って? 今この人鼓膜やら衝撃ヤバいとか変なワード聞こえてきたよ?
動作も何か仰け反りながら息吸ってるし!
なんでそんなドラゴンがブレス吐く時の動作みたいな深呼吸の仰け反りモーション取ってるんすか!?
取り敢えず坊ちゃん掴んで嬢ちゃんたちの所に飛んで保護っと!
保護も確認できたので、コーイチが手でOKサインを出す。
「あっ!? どうやって動きやがった野郎!? おい! お前たち、何かやられる前にやっちま─
「ずぇアッッッッ!!!!!!!」
突如、山に響く轟爆音。
山が震え。
木々の葉が散り。
就寝中の獣も飛び跳ね。
鳥は飛び起き慌てて飛び立ち、音の爆心地付近の生き物は、あまりの音に小さな物は絶命、大きな生き物も漏れなく対応出来るはずも無く─鼓膜が弾け気絶。
勿論、その大きな生き物に人間という山賊たちも含まれている。
音の発信地、否。爆心地には衝撃波に吹き飛び、木にぶつかった者、かろうじて離れていた故にそこまで吹き飛ばなかった者も1人残らず全員が耳から血を流し横たわっており、死屍累々の風景が広がっていた。
「……っふう〜……スッキリ! ま、死んでねーだろ……多分。 うん、多分」
現在被害現場で元気な生き物は物はタマ、コーイチ一行とついでに馬車(馬込み)のみ。
マルたちは何が起こったのか解らずフリーズ。
「ちょ、ちょっとタマさん!? いきなり何してんすか!?」
「おー。スゲーなコーイチ、そこだけバリア張ったみたいになってんじゃん? どんな仕組み?」
山賊たちが吹っ飛んだ威力なわけで、当然地面もかなり抉れている。 コーイチを中心にして円状に綺麗な地面がそこだけ残っていた。
「あ、コレはですね、空気の震動を自分を中心に完全に止めて音が出ないように……って! 大惨事じゃないすかコレぇ!」
「いやー……ね? 怯めばいいかなくらいで吼えてみたんだけど。 ど! 思ったより力んじゃった。へへっ」
「ええ……ここは威圧とかそういう奴じゃ無いんすか……あーハイ、魔王とかじゃないから持ってないっすもんね。ハイ。ん?……“でも” 思ったよりってことは?」
「もっとイケルゾ!」
「いや、親指立てて舌ペロしても周りは死屍累々っすからね?あざといのがちょっと癪っすけど」
「あ、あの……コーイチさん、コレは……?」
あ、坊ちゃんも再起動したっすね。うーん、どう説明しますかねー?
「えーとねー、坊ちゃん。この惨事はタマさんの大きな声が原因でしてねー」
「……私たちが無事なのはコーイチさんが?」
お、ミリー嬢ちゃんも再起動しましたか。
「そっすよー。こっちには何も聴こえなかったと思いますが、まぁ、ご覧の有様で」
「おおー……」
アイダ嬢ちゃんだけ感心してないっすか?
「まーまーコーイチ。やっちまったもん是非も無いからネ、こいつら起きてもいいように縛って馬車に積むか? ……って荷物中にあるんだっけか」
「あんたが言うんかい! (あ、いや、実は荷物は全部俺が持ってるから馬車は殆ど空なんすよ)」
(えっ? じゃぁこの仕事お前1人でいいじゃん)
(マル坊ちゃんたちの練習も兼ねたというかそれがメインですね)
(この転がってる野郎共は?)
(あ、それは本物です)
(正直お前1人でなんとかできたんじゃ?)
(あくまでもマル坊ちゃんたちの鍛錬がメインなので、タマさんが暴れてくれれば僕が隠れやすいんすけど、ど! まさかこう来るとは思ってなかったすねー)
(あー。あー……何かすまん。ちょっとね、あいつら気持ち悪かったから逃がすもんかと思って……つーか1匹も逃がすつもり無かったから)
(ガン見されてたからお察しはしますけど……)
「取り敢えず……積まない? 後紐とかもってない?」
「そっすね。捕縛用の縄ならいっぱいあるっすよ」
俺はそう言ってアイテムボックスから縄を出す。忍びの嗜みっすな。
「おっ。じゃ、早速縛るかー!」
「待って待って。タマさん強い強い! 中身出ちゃうぅ! 今死ぬと価値下がるっすよ! 俺が縛りますんで、ソレを馬車に積んでくださいっす。あ、坊ちゃんたちは縛る前に倒れてる野郎共の武装とか良さげなやつ適当に剥いでくださいっす」
「あ、はい」
うーん。これじゃぁ坊ちゃんたちの練習にならなかったっすねー……
1人、2人ぐらいは相手させて経験積んでもらおうと思ったんすけどね。
う〜ん旦那にどう説明すっかなー?
ま、ありのままでいっかー!(達観)
大漁ですしプラマイゼロでしょ! ま、忍者スキーに悪い奴はいないってことで納得しときましょ。
つーか唯の咆哮でアレはヤバ過ぎますよ。
んで、本人談だと体が鉄ですって。
わ〜こんなバグキャラ転生者も居るんすねー。世界って面白いですわ〜。
そうこう思いながらササッと縛りに縛り、中に積みきれない奴らはタマさんの案により馬車の外に吊るされて運ばれることになりました。
……車輪丈夫なタイプ持ってきてラッキーでしたね。
こう、なんて言うか吊るされた奴ら見て「保存されてる玉葱みたいだなって」笑ってましたわ。
いや、僕らもちょっとシュール過ぎて少し笑いましたけども。
まー後は山降れば特に何事もなく着きますよ。
今は移動中で時折 道中すれ違う人たちにギョッとされて何があったか聞かれますけど、山賊だと言えば納得してくれるんすよね。
本当にこの世界山賊の人権ないのになんでやるんすかねぇ?
楽して稼げるからっすかね?
あー。今回は、相手が悪かったと思いますけど。 いや、悪すぎっすねはい。
「なぁ、コーイチ」
「はい?」
「帰りの山でも襲われるかな?」
「さすがにこんだけ捕まえたら無いと思います」
「ちなみにこれ儲かる?」
「こんだけ捕まえたらかなり」
「そっかー……儲かるかー」
「あっこの人絶対山賊狩りしようとしてるっすよ」
「だって、ねえ。 こんなぷりちーウーマンが夜1人で歩いてたらカモでしょ誰だって襲うわ」
「うわっ。自分で言ったっすよこの人! しかも間違ってないから質が悪い」
「いえーい」
「昨日会ったばかりなのに随分と仲良くなりましたねー」
「あ、坊ちゃん。アレですよ。タマさんが砕けた感じで話してくれるからとても話しやすいんすよ」
「あ、解ります解ります」
「よせやい! 褒めても何も出ない……あっそうだコーイチ。 あれ出せアレ。小腹が減った」
「アレって言って俺が出すって言うと……竹輪?」
「おやつにはなるだろう」
(ついでに俺用にさり気なく鉄アレイ出せ)
「あっはい。どうぞ」
「さんきゅ。マルたちも食べようぜ?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「確かこれって魚のすり身焼き固めたコーイチさんのとこの食べ物よね……」
「おーいし〜」
「うん。旨い。コーイチって餓死しないのでは?」
「いや、竹輪オンリーだと飽きるっすよ」
(今、坊ちゃんに見えないようにナチュラルに鉄アレイ食いましたね!? 歯どうなってんすか!?)
(え? 単純に鉄より強いんじゃね? あっ奥さんいい鉄使ってますね、美味しい美味しい)
(違いなんてあるんすか!?)
(良いのは 美味しい)
(はぁ……人外してますね)
(慣れればとても快適よ。むしろこっちが良いの)
(そっすかー)
そんなこんなで街の門まで着いたんすけど、当然門番さん飛び上がって驚いて衛兵まで駆けつけてきて騒ぎになったんすけど、事情を説明して全部山賊だと解れば寧ろ歓迎されましたね。
良くこんなに捕まえたな。と。
あ、後この街で早速騒動に立ち会った人経由でタマさんの二つ名が付いたっすよ。
「山賊吊るし」 と。




