4ネキ 初めての戦闘と甘味
前回のあらすじ。
人間離れっていうか人じゃなかった。
後、周りの物とかなんでも鑑定できるわけじゃなかったわ
ほんと自身の説明書みたいな感じ。
そんな都合の良いわけじゃねーのな。
――――
まーさておき。 どーすっかなー? 行く当て全然無いしな……
国っぽいのは落ちてる時見えはしたけど、落っこちてから方角なんて全然分かるわけねーし森の中だし山くらいしか見えねぇんだよな。
……山?
そうだな、山登れば周囲見渡せるんじゃね?(安直な考え) うむ。ないすあいでーあ。
そうと決まりゃ登るか! 山!
「と、その前に……」
川べりに落ちている石の中から鉱石らしき石を厳選して拾い、両ポケットいっぱいに詰め込みーの。
実はさっき自分のステータスを見る下りの合間に唯の石ころを摘んで食べてみたのよ。
結果。
味がしねぇ…… 平たく言うと、美味しくない。
乾パン味? もずっと食ってりゃ大概だが、全く味がしないというのはかなりキツイわ。
石なら何でもいいというわけではなさそうね?
川縁で楽しそうにズボンのポケットにみっちり石をため込むお姉さん。もうパンパン。
自身で言うのも何だけど、凄いシュールですよコレ。
そんなこんなで森の中からでも見える謎の山(なんかもう山頂の形竜の頭っぽいし絶対アレがドラゴンマウンテンだろと思いつつ)目指しポケットからおやつをかじりつーつの数刻。
先ほどまでは見えなかった野生動物もちらほら見えるようになってきた。
たぶん自身が居たエリアだけ特殊なだけではなかったんだろうか。
聖域? わからんそういうことにしとくわ。
あーそういやこの世界やっぱ、ふぁんたじいだし魔物とか居るんだろうな。
おなじみのゴブリンとかオークとか言われるのも居るだろうし出会ったら問答無用で襲ってくるんだろうか?
襲ってきたら確かに怖いではあるが、腹をくくらねば喧嘩などできるはずもなかろう。
実際人間殺す気でグーで殴ったところで、プロでもない限りそんな簡単には死なないんだぜー?(暗黒微笑)
いやっまぁ、超痛いけど。
おっと前世の話に逸れたな。 今は見た目以外は人外か。
のんびり歩きつつボヘーッとしてると、不意に、遠くから木々をバキボキとへし折りながら何かが此方に向かってくるような音がした。
「ブギィィーーーーーーーーッ!!」
「うおっ!? 猪!? でけぇ!?」
ほぼ真横から現れた猪。
そう。猪なのではあるがいかんせんパッと見でもサイズがおかしい。
車に例えると4tonダンプくらいデカいんじゃなかろうか。
おまけに牙もすげーデカくて鼻も船でいうところの衝角のように突き出している。
何だろう。雪国の除雪列車みたいな感じだ。すごいかっこいい。猪のくせに。
まぁ、そんなこと考えてるうちに真横かつ半ば不意打ちみたいなもんで俺は見えてても避けられるはずもなく。
俺は猪? に撥ね飛ばされ、あわや大惨事に―――――――――――
大質量が衝突、バギャリゴシャア!! と無理な力が掛かったせいで何かへし折れる嫌な音が鳴る。
「ブギャァッッ!!?」
ならなかった。
どちらかというと猪のほうが悲惨な結果になってしまった。
えーと…… 何というか例えるならおもっくそ硬い金属の壁にぶち当たってつんのめりそのままゴロンゴロンとどっかに転がってったわ……。
衝突の瞬間、奴の鼻先が俺の二の腕にぶつかるのが見えたけど、しなって次第に過負荷に耐えられんで、ひしゃげ曲がり勢い止まらずに俺を基点にでんぐり返る感じでそのまま明後日の方向に転がっていった感じ。
え? よく分からん? 俺もなんだよなぁ……
いやまぁ、自分でも何が起こったのかよくわかららんしアレが転がって見えなくなってからハッと我に返った感じである。
おもむろに腕を上げ片方の腕でぶつかったほうの二の腕を触る。
……うん。無傷だ。 揺らせばタプタプする。うーんちょっと楽しい。
それと同時に自身に疑問が湧く。
俺クッソ重いよな? で、よく分からんスカルァ〜波? ああ、電磁波か……まぁ、そんなんで重量弱めたら軽くなるんじゃないのか? さっきの激突を思い出す感じでは、自分が全く動く気配がなかったわ。
此処で俺は適当に一つの仮定を立ててみる。
自身は重力の影響は弱められるが、もともとの重さは変わってない。
そのため他所の力に関しては重いままなのではないかと。
つまり、かける力は優しくできるが、かけられる力に関しては軽減効果が無いのかと。
そう考えれば先ほどの事象に納得がいく。
つーか考察がめんどくせーからそうしとこう。
試しに、そこらの木の根に乗ってみたりしたが沈む気配はない。 たぶん仮定はほぼ間違っていないだろう。俺天才か?
ふと猪が突っ込んできた方の道を見る。
多少山からは直行ルートは外れるが、木々がなぎ倒されかなり歩きやすくなっている様だ。
「俗に言うご都合主義かねぇ……」
そう一人呟き別段利用しない手もないので有り難く歩かせてもらおう。
後ついでに折れて転がってる牙も拾う。
サイズにして2m太さ30cm(適当目測)程度あるのだが重くない。
木の枝でも持っているかのごとくひょいひょい振り回せる。
いやー便利便利。人間だったら無理ですわこんなん。
そして何より拾った理由が 此奴はすごく美味そうなのだ。
自分の本能に従ってこれも歩きながらのおやつにするつもりだ。 石だって食えるんだ、牙だって食えるさ! 人外バンザイ!
さっそくかじってみる。 どう見てもちょっとやそっとでは傷もつかなさそうな逸品だが、問題なく咀嚼できた。
もう自身の咀嚼力に関しては突っ込まないことにする。ティラノもびっくり。
もーぐもーぐ。
あっアレだ。 こう、昔の駄菓子にあるミルクケーキ。
まんまその味だ!
甘ーい! うま――――!!
この世界に来て乾パン味しか口に入れてなかったのでテンション上がりまくりなう。
え? 隕石よろしくの時の土?
そんな野暮なこと言う輩は台所行って今すぐ小麦粉口に含んで味わって食べて、どうぞ。
そのまま牛乳卵含んでホットケーキでも焼いてろ。
まだ落ちてねーかなーと思い周囲を探すが残念。1本だけのようだ……
仕方がない、あきらめて進むか……あっでも今度あいつ見たら速攻でとっ捕まえて牙折っておやつにする。
そう決めた。ふふふ、甘味のためだよ。許せミルクケーキ君。
上機嫌で甘味を堪能しつつ、巨大猪君によって慣らされた道を歩き始める。
この体、腹は減るが喉が渇く気配が全くない、まぁそれも今では水飲まなくていいやラッキー! 程度なのだが。
歩きながら考えにふける。
ファンタジー定番の魔物体内に有るであろう魔石は食えるのか、と。
先ほどの牙の件で思考が食欲にもってかれまくりである。
勿論、 異世界に日本人が恋してやまない定番の味噌醤油米が恋しくないか? と問われれば即答でyes。 で間違いはない。
だが今現在人の時に食えなかったものが食えてなおかつ割と美味いのだ。
まだ食べたことのないものが興味をそそりまくりだ。
鉄から始まりはてはあるかわからぬ超有名どころさんのオリハルコン。夢が広がる。
ハハハハハハハハハハハハ!!
……いっけね、ついテンションおかしくなってしまった。
何しろ1日はたっていないが会話などしてねーからな。
(髭はノーカン)
ついつい脳内独り言も多くなるわ。
はーこういう時右手に相棒とか居たらお喋り出来たのにな。 今となっちゃ恋人にすらなれなくなってしまったけど !
(我ながら上手いこといったのでは?)
そういう自画自賛はおいときーの。
さてこの道。
均されているとはいえ元からの地形の起伏があるのでずっと向こうまで何があるか見えない。
ぼちぼち行ってみますかね。
さっきみたいにいきなり襲われても自身のスペックが思ったより、実は俺無敵やっちゃいました? ってくらいインチキなのが確認できたので、警戒とかそういうのはしないことにした。
これで自分がどうにもできなくて死ぬならそれまでのことだっただけよ。
しゃーないしゃーない。
このどこから湧いてくるかわからぬ自信と変な肝の据わり方も俺のチャームポイント(?)の一つということにしとこうそうしよう。
まま、閑話休題しつつ、さーてこの先鬼が出るか蛇が出るか猪が出るか。
というか猪が来い。今すぐ来い。列車受け止めるテ〇ーマンよろしく受け止めてやるから。今度は油断しねぇ。 なんなら子犬も捕まえて線路に置いといてやるわ。
そんなこんなで道をえっちらおっちらと歩いていく……
――――――――――――――
今日の生き物コーナー
大整地猪
第三の牙と化した鼻を使い、突進。
道行くものをすべてなぎ倒していく魔物。
そもそも普通サイズでさえちょっとした災害なのだが大きさ3倍=3匹分というわけではないので実際はもっとある可能性がある。
しかもこの種。森林と平地、戦う場所により討伐難易度が非常に変わる。
過去、人里に向かって進行するビッグドーザーを平地で迎え撃ち、巨大な落とし穴で罠に嵌め、魔導士数十人の魔法で仕留めたことができた。という記録が残っている。
森などでは突発的かつ、この魔物はすぐにはUターンしない。という特性があるため遭遇した場合は大概撥ねられているといった案件。
余談
鼻のフォルムが除雪列車よろしくシャープで一部の人間に非常に人気がある。
平たく言うとかっこいい。
尚、タマハは魔物の名前も知る由もなく、呼称がミルクケーキ君に決定された。
本当の名前を知ったとしてもたぶん呼称が変わることは無い。
南無三。