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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
2章 冷やし中k……新人冒険者始めました
39/202

38ネキ シンシア(ガンテツのとこ)勇者現る

 前回のあらすじ



 美味しい仕事で棚ぼた


 ――――



  フカシの街から少々の村等を挟んだ隣の街。

 街の名前はジャーマ。


 その街のとある大きな商館にてモノクルを掛けた紳士風の執事風の男、へクマ。

  そしてその前に柱を背にして立っている全身黒装束の怪しい男、コーイチ。

  その2人の会話。



「……で、タマ君は私の出した依頼を受けたのか」


「すんなりと。でもこんな試すような必要あるんすかね?」


「彼女が居着くにしろ出ていくにしろ実力を把握しておくに越したことはない」


「はぁ。用心深いことで」


「私は臆病者だからな」


「へーへー面白い冗談なこって……ついでに言われた要件で、駆け出しが護衛してるしょっぱい荷馬車が実は偽装で金目の物が多く積まれてる馬車がこの街に来るらしいって噂も流しときましたが……こんなん信じるアホ居るんすかね?」


「フフ……実際割と居るのだよ。美味しい思いをしようとするしょうもない奴らがな」


「はぁ……本当にしょっぱい物しか積まないんですけどねえ」


「何。嘘は言ってないさ、お前の(アイテムボックス)に商品を入れて此処に来るわけだからな」


「確かに御者しますけど……」


「実際のところ私の趣味だ。いつものことではないか」


「毎回まいっかい噂流してアホを衛兵に突き出すのが趣味なのは解りますけどやるのは俺なんですがね?……へいへい、じゃあ準備してきまさ」


「うむ、頼んだ」


「へーい」


  返事と同時にコーイチが影に消える。



 ─それとは別に所変わり、大陸を飛ばしてシンシア大陸。


  鉱山都市ヴィシソワーズ、 ガンテツの工房。



  カウンターに(たたず)(だいだい)髪のツインテール少女。外見地球換算だと小学の高学年程度だろうか? 親の手伝いの店番かもしれない。

  ちょこんと座り楽しそうに気持ち左右に揺れる仕草がとても可愛らしい。


  不意に工房の入口のドアに付いているベルが鳴り、来客を知らせる音を鳴らす。


「こ〜ん〜に〜ち〜はー! 拙者拙者、ダイチでござるよー! 相変わらずとても愛らしいですねシトリさん! ガンえもんはいるでござるかー?」


  やってきたのはダイチと名乗る青年。続いて3人、1人はスレンダーで金色の髪のエルフの少女。

 1人は活発そうな赤髪の猫系獣人の少女。

 1人は薄紫色肌で前髪が長く目元が見えないがおでこに小さな角が2つ生えている魔族の少女。


「ダーイーチー! アンタガンテツさんに失礼だからその変な呼び方止めろって言ってるでしょ!」


「こんちにゃ〜! シトリさん今日も可愛いにゃ〜」

 

「こんにちはー」


「あら! ダイチちゃんたちじゃない。ガンちゃんならもう暇してるとは思うけど……ガンちゃーん! ガ〜ン〜ちゃーん!」


  シトリと呼ばれた少女の呼びかけに、(しばら)くして返事が返ってくるのと同時にガンテツが奥の作業場からのそりのそりと姿を現す。


「なんじゃいシトちゃん。……ってこの騒がしさはお前らしかおらんわな、ダイチ」


「お久しぶりでござるガンテツ氏。今日もモサモサのムキムキですな」


「ダイチ!?」


  ダイチと呼ばれる青年がエルフの少女に軽く頭を叩かれそうになるが、それをひょいと躱す。


「ほっとけ。ワシらはこういう種族なんじゃ」


「まぁ、親愛のジョークですぞ。ところで今日はお願いしてた物を取りに来たでござるが、進歩どうでござるか?」


「わーっとるよ。ほれ、お前さんの剣じゃ。自分で言うのもなんだが、並ぶ剣は無いに等しいぞ。つーか無い、うん無い」


  そう言いガンテツはいつの間にか持ってきていた布に包まれている剣をダイチに投げて渡す。

   受け取りに失敗することもなくダイチは綺麗に受け取った。


「おー適当に投げたのによく受け取ったのー。つーかいつまでやっとるんじゃ」


  未だエルフの少女とダイチの攻防は続いていた。

 半ばから完全に殴打になっていたが変わらずダイチは綺麗に避けて続けている。素晴らしいダッキングテクニックである。



「ダイチちゃんとリーフちゃんはいつも仲良しね〜」


「シトリさんっ! これがッ! 仲良いようにっ! 見えます、かッ!

 ……ああもう当たりなさいよ!」


「グーはヤバい! グーをやめてくれたら止まるでござる!」


「落ち着いてリーフ。……後でダイチが誰も見てない所でギュッてしてくれるって」


  そうボソリと魔族の目隠れ少女が呟いた。


「ッ!?」


  瞬間。


  ピタリとリーフの猛攻が止まり、特徴的な耳が少し赤く染まり─


「……デキてるの……みんな知ってるよ? じゃ、ダイチ、後は話続けて。私は逃げる」


「ナハトーッ!」


  そう言うがと同時に綺麗なクラウチングスタートで店の外に駆けていくナハト。だが店のドアは丁寧に開け閉めしていく。 次いでリーフがそれを追う。が、店のドアだけは静かに開け閉めしてナハトを追うリーフ。


「元気じゃのう」


「若いわねー」


「ナイスでござるがナハトにも後でお願いされる案件ですなコレは……さて置きガンテツ氏。具体的な出来を聞いても?」


  保護の巻いている布を取り払い、剣を鞘から抜き、光に当てて刀身を光らせてみるダイチ。


 ――――


「 超 “絶” 地剣 アルド」 Rare ー


 世界最高峰の鍛冶師、ガンテツ・アニードが特別な道具を用い、人智では及ばない素材を剣に仕上げた最強の地龍の名を冠する唯一無二の一振。


  素材にオリハルコン、アース・グランドドラゴンの爪、鱗、牙などを使い錬成の際鉄人の粉末を混ぜ新生超合金タマハルコンとしてこの世に誕生した。

  常に非破壊属性を持ち、同属性の物質以外では傷はおろか刃こぼれ一つ起さない特性を持つ。


  又、魔力の絶対的な指向性が持たさており、使用者が剣の柄から流す魔力以外一切通さない。

 魔法や実体を持たぬ者すら切断可能。




 ――――





「ブラボー……確かに二振りと無さそうな逸品でござるな。鑑定の結果、“アース・グランドドラゴン”という何やらとんでもワードが見えたでござるが……ん?鉄人? 鉄人と言うと28号的な何かでござるか?」



  静かに唾を飲み、緊張するダイチに対しガンテツはハナクソをほじりながらさしたることも無いかのように答える。


「28ィ? 数字についてはなんも解らんが地龍についてはまぁ、そうじゃよ。その鉄人はワシの親友(マブダチ)じゃが、そいつにお使い頼んだらグランドドラゴン泣かして素材を剥ぎ取ってきやがったんじゃよー。ハッ、非常識且つあまりにも馬鹿馬鹿しすぎてもう慣れたわい」


「えッ!? 何それ怖いでござるよ」


「ちなみにその剣に奴の爪の垢とかの粉末混ぜたら新合金できた」


「ええー……鉄人は何者でござるか?」


「ガンちゃんはい。ティッシュ」


「おお、シトちゃんナイス。……何者も何もお前さんと同じ星の落とし子だそうじゃ」



「ファッ!?」


「何年か前にスネゲの森に流星があったじゃろ?」


「朧気でござるが……聞いたことはあるでござる」


「アレ。ソイツ。 ソイツが落ちてきた」


「ファッファッ!?」


「なんでも神様とやらがちょっと間違ったらしい」


「大気圏はちょっとでは無いと思うでござるよ?」


「大気圏だが何だかなんでもいいが落ちても怪我1つ無かったらしくて彷徨(うろつ)いてたら岩人(ストーンマン)の集落に建ててあるワシの工房に住み着いとったわ。それが確か出逢い」


「メテオになって無傷とかどんな塾長なんでござるかね……ん? 鉄人ってことはその岩人と関係あるんでござるか?」


「さーな。自分でも岩人の突然変異云々(うんぬん)とかは言ってるおったが細かいのはよく知らんし本人もどうでもいいって言っとったぞ」


「突然変異で転生でメテオとか中々面白い御仁でござるな……ちなみにやっぱり岩人みたいにゴーレムゴーレムした外見でござるか?」


「お、良い所に気づくの。それがな、岩人要素が欠片も見た目に無いんじゃよ。完全にちょっと変わった人間種みたいな風貌じゃな」


「ほう。できれば仔細をば」


「お前さんと同じ黒髪じゃろ?」


「ふむふむ」


「えーと、本人は180とか身長申告してたがアレは190……は有るな」


「かなりの高身長でござるな」


「あー、目はお主と違って(つや)めく緑の目じゃな」


「宝石のようなお目目ということですな」


「実際それに近いと思うぞい。ドラゴンとかの目が鉱石質みたいな感じと同じじゃと思う。顔立ちは整っておってかっこいい寄りかの?」


「さてはイケメンでごさるな?」


「歯がワシらと違って鮫のように全て鋭利に尖っておったな」


「ギザ歯属性とはワイルドそうですな」


「ワイルドもなにもアイツ、普通の物も喰えるが爪やら角やら鉱石とか何でも喰いよるぞ。硬い方が好みではあるみたいじゃな」


「何でも食べるとはガっちゃん宜しくガ○ラですかな? じゃぁ光線も出たり……なんつって」


「あーよくわかったな。出すぞ」


「ファー!?」


「そうさな、光……と言うよりは熱じゃな、ま、どっちでもいいわい。 やろうと思えば目でも口でも吐けるとか」


「ガ()ラでゴ○ラでござったか!?」


「えーと、後特徴は……あっアイツ胸周りが普通の人に比べて凄げーわ。服作る時に苦労したわい」


「ゴリラマッチョですと!? うーむ、確かに空から墜落して平気となると納得がいくでござるな……」


「まぁ、やったら力は強いわ、特に深く考えず行動するわ、風呂上がりに下着一丁でタオルのみで彷徨(うろつ)くわ、山の野生の魔物のボスみたいになってるわ野生じみててゴリラと言われてもしょうがないの」


「ジャング○キング……」


「毎度お前さんからは意味わからん言葉が出るのう、慣れはしたが。ま、そんなふざけた奴だがなんだかんだ今じゃ親友の盃を交わした親友(マブダチ)じゃよ。あそこにいる間毎日馬鹿騒ぎして楽しかったのー」



「ガンテツ氏と酒盛りできるとは相当な酒豪ですな? 髭モサのマッスルドワーフとワイルドマッチョゴリラな大男が肩組んで酒盛りしてるのが想像できたでござる……おほぉ暑苦しい」



「いや、勘違いしてるようじゃが、タマの奴は女じゃぞ」


「やはりムサイゴリラな御仁、略してゴムサイ……ってづええええええええぇ!?」


  ガンテツの工房の外まで響くダイチ驚愕の声。


  近くで猫じゃらし遊びをしていたシトリとケッタが驚いて飛び上がる。


「え、ちょちょちょ、もっかい確認取っていいでござるか!?」


「なんじゃ?」


「黒髪で?」


「腰まである類を見ない艶のある黒髪じゃよ」


「高身長で?」


「人間種基準だとそれがスタイル良いんじゃないかの」


「緑のお目目で?」


「本人の自覚はないがわしらから見てもとってもチャーミングじゃよ」


「ギザ歯でイケメンで?」


「まぁ、可愛らしい系統ではないな。凛々しい作りじゃ」



「胸周りが凄い?」


「そういえばお前さんたち(人間)は大きければ魅力的に見えるらしいの?」



「風呂上がりにパンツ一丁?」


「ざっぱな性格だからのー。アイツ羞恥心ねーわ」



「さ、最後に。み、見た目年齢は?」


  ダイチが震える声で尋ねる。


「んあ? うーん……ワシら基準は解りにくいだろうし、ダイチたち人間種で言うなら19~20ぐらいじゃないか?」



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁお! 黒髪ロングギザ歯おっぱいおねえさんとか超絶レアな御仁ではござりませんかーーーーー!? ガンテツ氏! 今、今彼女は何処に!?」



「だーッ! 近くで叫ぶんじゃないわい! タマなら神とやらが送る場所間違ったとかでどっかに転送されて仕舞いおったわ。そのうち此処に来るじゃろ、約束は守る奴だからなアイツ」


God is (神は) dead(死んだ)!」


「大袈裟な……」


「ガンテツ氏! しばらくの間この都市を拠点にしてそのタマさんとやらを待たせてもらいますぞ!」


「構いやせんが、説明して嫁たちに殺されるなよ」


「だ、大丈夫、大丈夫……彼女たちは理解があるのでタブンダイジョウブ……」


「嫁なんて1人で充分なんじゃがのう……」


「世の中には不可抗力というか、なんと言うか気が付いたら嫁が増えてましてね……」


「そうか……頑張れよ、若いの。女性は強いぞ」


「はいでござる(遠い目)」



 ――――で。


  所戻りランランチップ大陸フカシの街ホクホク公園の日当たり抜群のベンチ。



  「へーくしょぁ! わっしょい!」


  謎鼻提灯を弾けさせ、くしゃみと共に起きるタマ。


「あ゛!? なんだ!? 三馬鹿の奇襲か!? ……居ないな、また寝るか……」


  言うが否や早速原理のよく分からない鼻提灯をぷぅ作り、再び船を漕ぐタマ。


  シンシアの勇者が血涙を流していたのは知る由もなく、今日も寝て過ごす。

 

 そ 。


   し。


   て。


   またまた所変わって今度はドラゴンマウンテン。


 謎のリュックサック幼女とカイザー髭のダンディの会話。




「フフフ……遂に! 遂に人化の術が完成したぜぇ!」


「普通は永く生きる間に憶えるモノだが、そんなにあの女が好きかね」


「だーまらっしゃい! てめえの鱗剥ぐぞこの野郎! 髭マッチョ! ヒゲ!」


「全く……飼い主に似ると言うかなんと言うか、飼い主も飼い主で配下も配下だの……」


「待っててくださいね姐っさーん! これで念願のナデナデしてもらえますぜぇ〜!」


「はァ〜見た目は可憐なんだけだどなぁ……見た目は」


「ああん!? 今何か言ったかおおん!?」


「いや、では行こうかと言ったのだ。我も久しぶりの人化だ。この姿、人々の記憶にあるかのぅ……」


「おらっしゃ行くぞー!」


「急ぐな急ぐな。人の体だと……」


「んぎゃっ!?」


「ほら、コケよった。ほれ、手を貸してやる、立てるか」


「ふえぇ……」


 ヴィシソワーズの都市に、未曾有の災害が降りかかろうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルといい主人公の名前といい、ガンテツが出て来た時点から主人公所縁のこの世界での新金属(鉱石)としてはタマハガネ(not玉鋼表記)の名で出て来ると思っていたらまさかのタマハルコンでしたか…
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