37ネキ ニンジャと草
前回あらすじ
安くて美味い。つまり最強の剣
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――どこにでも居る忍者系一般高校生の話――
やあ。皆元気にしてるかな。 ん? 俺が誰かって?
俺の名は耕一。
まぁ、この世界で漢字なんてないし、発音と言うかイントネーション? が気持ち違うのでコーイチって言った方が良いかな。
おっと、つい潜伏任務してると独り言っていうか誰か聞いてるわけでもないのに説明的に考えちまうな。あまりにも暇なせいかもしれない。
何が暇かって言うと最近この街に来た転生者、まー世間様では星の落し子だとか何とか言われてるけど俺らは転生者って言う方がしっくり来るよね? 旦那に頼まれてその転生者の監視をしてるわけさ。
一概に転生者って言っても割と全員が善人ってわけじゃないんだよ? 善人の方がかなり高いけど別段好きにしていいって言われたし。(俺は)
だから本当に好き勝手やる奴も居るんじゃない?
まー実際好き勝手やって魔王になった奴も居るし此処の大陸の魔王は転生者じゃないかな?
魔王さん所の国の食べ物に味噌なんてあるから間違いないと思うねー。偶に流してるみたいでここにも流通してくることがあるよ。
旦那に頼み込んで速攻で確保してもらってるけど、大変美味しゅうございます。見た目のせいで敬遠されるのは仕方ないのかねー。
美味しいのにねー。
って言うかこの世界やたらと魔王と勇者居すぎない? それは神様のみぞ知るわけだろうけどまぁ、俺にはたくさん居ようが居まいが関係無いがね。
聞いた話他所の大陸にも割と居るって言うし。
あ、此処の大陸の魔王は親人間派みたいだから物騒な話は聞かないよ。他所の大陸は知らないけど。
そいで今も任務中でニンニン。えーと、タマさんだっけ?
ちょくちょく影から見てるんだけど寝てます。 めっちゃ寝てますね。
さて、暇なついでに俺の話でもしてやろうか
俺は転生してからすぐこの街に来て旦那と知り合えたから凄いラッキーだったな。
俺をすぐスカウトした旦那の目利きもスゲーけどな。って言っても転生の際に神様が一通りのこの世界の常識やら何やら教えてくれたんで転生して何も知らないで困るってのは無かったねー。
常識とある程度の資金とお決まりのチートとか言われるスキルやらくれる親切な神様だったぜ?
ところで俺の死因が気になるかい?
なーに。 別段珍しいわけじゃないさ、俺はどこにでも居るような少しだけ人より人間離れした忍者の家系の息子で唯の高校生だったさ。
ある日、いつものように住宅の屋根から屋根に飛び移りながら学校に向かってたんだよ。
そしたら道中で空き巣を見つけてな? 懐から縄を出してササッと縛ってやろうと飛びかかった瞬間
俺は雷に打たれて死んじまったわけ。
死んでどっこい起き上がってみると知らない白い部屋に1人若い男の人がいたんさ。 まーそれが人じゃなくて神様だったんだけどね。
なんでも神罰落とす際に俺が横から来たもんだから俺に当たってはい。コロリ。
そっから話によく聞くお決まりの手違い補填の転生さ。ちょっと変なスキルも普通の忍者職スキルと同時に貰ったけどある意味ニンジャらしくて今では好きだぜ?
はい俺の話は終わり。んで任務のタマさんの監視に戻るわけだけども
もういいんじゃないかなぁ……コレ。
だってあの人基本日中寝てるしー、夜も寝てるし。マルたちに誘われたら偶には仕事(依頼)行ってるけど比率で言うと9割方寝て過ごしてるよ……
いつの間にか公園のヤッシー屋のマスコット兼看板娘みたいになってるしって言うかパワー半端ないなタマさん! あの木の実かなり硬いのに缶詰め開けるかのように平然と開けたな!?
あの木の実って別名ゴブリン殺しの木って呼ばれてるんだよね。
理由は簡単。木の実目当てに揺らして鉄並の硬さでいい重さの物が頭に当たればどうなると思う? アイツらはあんまり頭良くないから直撃して木の横で倒れてたりするんだよね。
えッ。今目から何か光線? 出したよあの人ぉ!? 凄く細く一瞬しか出てないから街の人たちには解らないみたいだけど、俺には解るね。
神様がくれるスキルが弱いなんて無いんだよなぁ……絶対アレ本気出したらヤバいと思うよ。
……えーと、タマさんの総評。
性格、ワイルドというか雑。 見た目とのギャップが凄い。良く言えば気持ちのいい性格なので此処に来て1ヶ月くらいだが割と既に人気者。酒飲みと子供達からの人気が高い。
好きな物、多分酒。ギルドでおっさん達とよく酒盛りしてる。
後中古剣が好きなのかな? 宿に運ぶのをよく見る。
転生者はアイテムボックス持ちだし、彼女もそれに収納してるとは思うが武器屋で仕舞わないのは何故だろう?
スキル。たぶん怪力スキルと光線スキル。神様になんてお願いしたんだろうね。
ただしその怪力が表示バグってるので並の怪力スキルじゃないと思う。あの神様がそんなことするのかね? 聞きようが無いのでスルー。
以上の観察から俺の考察は完全に人が良いタイプの転生者。
でも頼まれたら断れないタイプではなく、自分の意思優先のタイプだね。
仲良くなればかなり融通してくれる人種だと思う。
それ見越してか解らないけどさすが旦那よね。
後は旦那に全くの問題無し且つ、味方になれば非常に頼れる。で報告して終わり!
まーどうせ近日中に挨拶するんだし、挨拶考えとこ。いやそれにしても前世の方にもあんな黒髪美人見ねーよ。転生後もほぼ前世に似る見た目だとは神様教えてくれたけど、あんな美人居たかね? 世界の時間軸が違うから考えてもしょうもないか!
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いやほう! 俺だぞ。 タマさんですよー。
本名より何かもうこっちの方が語呂良くていつの間にか気に入ってしまったのよー。 つーか本名語呂悪くて嫌。
此処に飛ばされてすっかり馴染んでしまったけど、そういやガンテツの所に戻らないといけないんだよなー……
家に遊びに行くって約束したしね、約束は守らないと針千本飲まされますよ。とても美味しそうな喉越ししてそう。(俺に限る)
此処で少しお金貯めて旅しなきゃいけないかな? はー寝てる間に大陸渡って起きたらガンテツの前に着いてないかな。
とか言うのは半分冗談でせっかく旅するんだから楽しんでいかなきゃね。ランクとやらがEにでも上がったら次の街行くか。
あー、よく入る道具箱も欲しいし今更急に働こうかなって意欲が湧いてきたぞ。 仕事探しにお馴染みのギルド行って良さそうな仕事探すか。
……薬草採取は遠慮します。タンポポだろうがトリカブトだろうが草じゃんよ!
分かるかよあんなん!
あ、ちなみに俺には毒とか関係ないです。
はがねタイプは毒無効ってモンスターでポケットでもなってますやん? よって無効。
なんで分かるのかって言われたらそれは、山にいる頃道草食ってたら(物理的に)ガンテツに─
「えっ お前さっきから何食ってんの? それ矢に塗ればワイバーンも殺す殺竜草っていうヤバい草なんじゃが」
「割とスパイシーな匂いがしたので食えるかなって思って……あ、結構おいしかったからサラダスティック感覚でもいで食ってたんだけど……食べる?」
「食べるかボケェ! 今さっきワイバーンも死ぬって言っただろがい! ワシを殺す気か!? あ、でも使い道は有るから1束この瓶に入れてくれ」
「あ、要りはするんだ……瓶? もしかしてこれ素手で触ると?」
「皮膚に汁が付いたらそこから毒が回ってじきに死ぬ」
「怖っわ!」
「平気且つそれを食ってるお主の方がワシゃ怖い」
「さいすか。ところで鉱脈もうそろ?」
「あ? そうじゃよもう少しでミスリル鉱脈に着くぞい」
「おっしゃ、掘るぞー!」
「食いもんが絡むとアグレッシブだのお主……」
─ってな事が有りまして、経口摂取しても平気っぽい。
その他勿論毒針などもこのもちプルお肌に刺さる余地は無い。
ストレスフリーが美肌の秘訣よ!
ほいでそんなこんなでまーた酒飲んでるオッサンズに挨拶しつつマリーさんが暇そうにしてたから寄ってみたのよ。
あ、聞かないでも掲示板に依頼書貼ってあって、剥がしてカウンターまで持っていってもいいんだけど。
めんどくさい。
俺は飯屋でも店員さんにおすすめ聞いてそれ頼む派なんだよ! 餅は餅屋だからオススメにそうそうハズレは無い。 はず。
「ちわーす。適当な依頼探してるんだけど良さそうなの有る?」
「こんにちはタマさん。なんて言うか良いタイミングですねー。有りますよ、タマさん指名で依頼が来てます」
「俺?」
「はい。えーと、依頼主はタージェル商会からで荷物の輸送の護衛ってなってますね」
「わざわざ指名で?」
タージェル商会って言うと……たしか、あのセバスチャンみたいなマルの親父さんだよな?
「ええ。噂を聞いて、ランク以上に仕事をするという理由で依頼になってますね。さすがタマさんですね」
「そりゃどうも。ところでお幾ら貰えるん」
「あ、はい。大事な取り引きなので成功したら金貨2枚……えっ!? 高い! さすが商会……太っ腹ですね」
「乗った! 受けといてソレ」
「はい分かりました。では後日日程が決まり次第連絡しますのでこまめにギルドに来てくださいね」
「おっけー」
さて、なんか棚ぼたした事だし公園にバイト(寝に)しに行こ。




