34ネキ ダンジョンに行きました 後編
前回のあらすじ
メ○ルスライムに半端な攻撃しても miss!! 判定になるのは普通だし……ね?
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「おおー、スイッチ踏むと矢が飛んできたりするのか、面白い仕掛けだなー……どういう仕組みなんじゃろか?」
はー! 定番ですよ定番の罠。
まぁ、当然の如く効かないんですけどね。
俺に限っては針天井だろうが、奥から転がってくる岩だろうが全部躱せる(ぶっ壊す)自信ありまくりだからなぁ。
……あ、落とし穴は怖いんで勘弁してください。やめろそれは俺に効く。
「おおー。じゃねぇよ!? 今飛んできたのは矢だぞ 矢! なのになんでアンタは刺さってないんだ!?」
ラトローが正気に戻りタマに問いかける。
ふむ? これは遂に例のセリフ実行する時かな?
この俺の尋常ならざる丈夫さを誤魔化すために考えた最強のパワーワードを!
ちな、ガンテツに評価してもらったらめっちゃ渋い顔してたけど及第点はくれたからイケるじゃろ。
幾ら点が低くてもなぁ! 赤点じゃなければセーフなんすよ。多分。
「ん? なんで刺さってないかって? そりゃあ、鍛えてるからな」
ラトローに向かって俺はドヤ顔でフロント ダブルバイセップス からのフロント ラットスプレッドの綺麗な流れでポーズを取ってアピール。
筋肉達磨なぼでーではないのでただのポーズだけだが。
「はぁ? 鍛えて?」
「あー……タマさんタマさん、多分ラトローさんに説明足りてないわよ……えっとね、タマさんはこの街に来る前は山で鍛えたらしくて、修行で体を鉄のように鍛えたらしいわよ。見た目は解んないけど間違いなく目の前に居る彼女は並の戦士より硬くて丈夫だと思うわよ?」
ナイス説明だミリーちゃん! 手間がスゴい省けて楽になったわ。
前にミリーちゃんたちに聞かれた時に鍛えてたら丈夫になったって言ってたからね。
「……その強さでF? ……割と詐欺ってない?」
「まぁ、僕たちは妥当ですけどタマさんは完全にそぐわないランクだとは思いますよ」
「間違いなく詐欺よね」
「……解った。 改めて評価を変えよう。こんな新人が街に居るなんて思いもしないわな、悪いがタマちゃん、マルたちのこともあるから自重して合わせてもらえるか?」
「んー? 構わんよ、俺だって登録したの最近だ し? 仕様上詐欺もいいとこだと思うわ」
「まー、それはそういうシステムだからアンタがおかしいだけだと思うぜ……冒険者志望の奴は普通なれる年になったらすぐ登録するのが当たり前だからな。まぁいいさ、とりあえず進もうか。
初心者用のダンジョンとは言っても矢以外に種類はある。 見つけたら教えるさ「カチリ」……っておいぃ!?
タマちゃん早速なんか押したでしょ! 壁が下がってきてるよ!?」
「あっゴメン。壁によりかかったらなんかまたスイッチ押してたみたい……」
そして少々距離があるマルたちとタマの間に天井から壁がゴリゴリと一行を分断せしめんと降りてくる。
存外に速度があるらしく走って滑りこんで向こうに行くことは無理そうだ。
いや、走るのが面倒くさいとかそんなのじゃないっすよたぶんきっと。うん。
そうこうしてるうちに、ゴウン…… という音と共に壁が降りきってしまい、タマだけが分断されてしまった。
「……あちゃー。ソレ系は特徴が無いから落ち着いて見ないと解らないんだよね……」
「タマさん大丈夫ですかね?」
「まぁ、此処のダンジョンの仕様からして少し待てば開くとは思うが、これもいい経験だ。他所のダンジョンだとこういうトラップでも死因になったりするから絶対に油断はするなよ?」
「あの……ラトローさん」
「ん? どうしたミリーちゃん」
「壁……もう動いてるわよ?」
「……は? そんな馬鹿な? すぐ開くっつっても早々開きは……」
ズゴゴゴゴゴゴゴ……
「い、よいしょーーーーーーーーー!」
重い音と共にタマに無理やりこじ開けられ、壁。御開帳。
「はああああああああ!?」
「あ、開くもんだな。まぁ、閉まるってことは開くよな?」
「……ちょっと待ってタマちゃん。今、どうやって開けた?」
「え? いや、普通にこう、下に指突っ込んでガーッっと?」
「いやいやいや。オカシイオカシイ」
「……ラトローさん、今更だけどタマさんの馬鹿力は尋常じゃないわよ」
「まぁ、僕らも最初は驚きましたけど、慣れますよ」
「つよーい!」
「ただいま」
そんな感じでマルたち一団の下に戻ってきた俺。
「お帰り……なんかもうおじさん驚きすぎて疲れてきたけど、Aの人たちも割と人間離れしてたりするから同じ類だと思えばいいね……タマちゃん絶対Aランクまで上がると思うよ……」
「まー、上がればね? 俺は毎日適当に過ごせればいいから」
「欲無いんだねぇ……さて、気を取り直してこっからはみんなでゆっくり進もうか。見れば解る罠しかないからね。
まー、無理そうな罠なら……「壊すか?」……だとさ。 頼りになり過ぎるFだねぇ」
そんな感じで先とは違って全員離れずにラトロー指導の下、罠を見つけては確実に解除し、魔物との戦闘ではタマが足止め役でマルたちに倒させたり、 並んでる宝箱を見つけて、ラトローはまぁ当然解錠成功し、マルはラトローに習いながらなんとか成功して、
タマは鍵とかめんどくさかったので。
で。
サッカーキックの後、華麗なストンピングで無事宝箱を砕いて開けることに成功した。
中にはラトローたちのは傷薬、所謂ポーション。塗るより飲んで効くのかは定かではない。医者にでも聞いてくれ。
タマの方はお金(大銀貨3枚くらい)が入ってた。 硬貨3枚に対して箱デカすぎひん?
タマさんの所ポーションじゃなくてよかったですね?(絶対割ってた)
まぁ、開きゃあいいんだよ開けば!
せっかくの高トルクぼでーだ。使わな損でしょ、 勿論のことラトローが何か言いたそうな顔をしていたが、サムズアップで返しておく。
そんなこんなで足止めを食らうこともなくダンジョンの最下層、6階、所謂ボス部屋の前にたどり着く。
Bの経験豊富な先輩も居たこともあってか。スイスイと進んでしまった。
そもそも落とし穴を実装していないダンジョンが悪いという事にしておこう。
扉の前でラトローが一同を止め、一旦説明をする。
「さて、この扉の先にはボスの魔物が居る。出るのはランダムで俺も何が出るかは解らん、ちなみに他のパーティが戦ってる時はヤバそうな時だけ参戦して、基本邪魔しないのがマナーだ。
思いやりと譲り合いが基本の心得だな……それじゃ、開けるぞ。さ~てなにが出るかな……と」
大きめの扉はラトローが触れると、ゴゴ……とひとりでに開き、部屋の中央に居るボスの姿が確認できる。
そこには青い半透明のスライムが居た。
ただし。ソイツは3×3m級のやたらと巨大なスライムだった。
「アレは……ボス・スライム か。地味にめんどくさい相手当てたねぇ……」
「ラトローさん、ボス・スライムはどのような魔物なんですか?」
「ああ、マルたちは見るの初めてか、そうだな……まず見て解るように奴はただのデカいスライムだ」
「大きいだけなら対処法も同じじゃないの? 魔法ですぐ終わるわよ」
「ところがどっこいミリーちゃん。デカいってことだけで勝手がかなり違ってくるんだよなコレが。まず当然のように直接攻撃はあのたっぷりのゲル体に阻まれて武器が駄目になっちまう。
で、魔法撃てば良いって話になるだろうが、これもあのゲルの厚みが有り過ぎて威力が殺される。
そして極めつけは奴には雷系の魔法が効かないっつーいかにも効きそうなくせして無効っつー初心者殺しだ。
普通はこんな奴引き当てたりしないもんだがダンジョン核からの俺らに対する精一杯の抵抗かねぇ? まぁ、Bの俺含め場違いな奴が二人も居ればなぁ?」
ちらりとラトローに視られる。
「ノー。 ワタシ、バチガイジャナイヨ。ちょっとデカいだけの乙女よ?」
「あのねぇ……タマちゃん。宝箱を踏み壊して開けるような子は乙女なんて言わないの!」
「そんなー」
まだその件覚えてたんすか、ほんとごめんて。
「とりあえずセオリーは二手に分かれた後、攻撃を誘って奴の身体が薄くなった時にコア目掛けてデカい一発をぶち込めば手早く片付くんだが、初心者にはキツイよねぇ……
しかーし、この話は普通のパーティの話であって、ランク詐欺ことタマちゃんが居るし、簡単に倒せちゃうのがなぁ……まずは作戦説明するから、聞きながら準備して」
「はい」「解ったわ」「おっけ~」「あいよー」
「まず、前提としてアイツの厚い体をどうにかするんだけども、タマちゃん……できるよね?」
「もちろん」
「まぁ、方法は任せるよ。タマちゃんなら触手に叩かれても無事そうだし、包み込みにさえ気を付けてくれればいいよ。
で、アイツは核の付近が薄くなると一旦下がって再生して体積増やそうとしてくるから、そこをミリーちゃんの魔法で叩く。アイダちゃんは〔魔法増強〕でミリーちゃんの火力の手伝い、マルは魔法と同じタイミングで俺と一緒に駆けて奴に止め。
さぁ、後は巧くいくこと願って作戦開始といこうか。タマちゃんの引き付けに掛かってるよ!」
「おっしゃ。任しとけ! ん?……ちょっと今思いついたんだけど、あいつの身体削っても問題なし?」
「……削るって。どうするか解んないけど、できるならいいよ。もう君の無茶苦茶具合は驚いてもしょうがないしね、好きにしてちょうだい」
「見てのお楽しみよ」
「よし、じゃぁ、散開。作戦開始だ」
ラトローの言葉と共に、タマが前に突っ込み、ミリーとアイダは下がって、護衛にラトロー、迂回してマルが回り込む。
開始の合図と共に俺はいつものように盾を展開してるわけだけども、 今回はちょーっと使い方が違うのよー。
今回の形は元から長方形だけど幅はそのままで、さらに縦に長くしてる形。
いやマジで大きさが適当に思っただけで変わるんだけどマジでガンえもんと言わざるを得ない。 どうなってんのこれ? 脳波?
と、またそんなこと考えてるうちに触手攻撃が迫ってきてるっすな。
俺はそのまま触手を防ぐわけではなく、触手に向かって盾の広い面で振り払う。
横からしこたまタマの怪力で打ち据えられたボス・スライムの伸ばした触手はパァン! と音を立てて弾き散る。
そして突っ込んでくるタマに対して数本触手が伸ばされてるが、時すでに遅し。それは悪手だった。
伸ばしてくる触手をすべて薙ぎ払い、明後日の方向に散り飛ばしてゆく。
これぞ必殺達磨落とシールド!(タマのセンスが無さすぎ問題)
盾を左右にブンブンと振っていき、お構いなしにスライムの身体を削っていく。
「……うわーお。あんな無茶苦茶な方法でゲル削るなんて思わないよ。普通、伸びた奴に魔法なりなんなり攻撃して削いでいくんだけどねぇ……」
ラトローが小さくぼやくが、勿論タマには聞こえていない。
スライムの前に着く頃には、ほぼ核の周りに薄くゲルが付いてるだけとなっていた。
「おーし、そのまま止め貰っちゃってもいいかな……って、あっ!? 逃げんな!」
先ほどまでは全く動く気配が無かったボス・スライムだが、先ほどとは打って変わって驚くほどの速度で飛び上がって後退しようと、飛び上がった次の瞬間─
「待ってました! ミリーちゃん、今だ!」
「はぁぁ! “中級追尾炎槍” !」
ミリーの詠唱が終わり、溜めた一撃が空中のボス・スライムに見事命中する。
「ナイス! じゃあ、止めといこうかねぇ!」
言葉を言ったかと同時に後ろに居るラトローが掛け、アッという間にタマを追い抜く。
「速っ!?」
あのおっさんスゲェ速えな!? さすが盗賊職。
「はぁぁぁぁぁぁ!」「セイッ!」
ミリーの魔法が命中したボス・スライムがボテンボテン……と音を立てながら核だけの状態で落下するのと同時に、回り込んで隠れていたマルと、正面から走ってくるラトローの挟撃を受け、同時に剣と短剣をコアに直接突き立てられ、パキリとヒビが入り、力尽きる。
「……はいお疲れさん。ダンジョンクリアだよ。皆肩の力抜いていいよ。たぶんもうすぐ奥の扉が勝手に開くと思うから、そこに有る陣乗れば入口に飛ばされて帰れるよ。あ、因みに陣横に有る大きな結晶はダンジョン核だから絶対に触らないでね? 壊したら賠償凄いよ」
「はい」
「特にタマちゃん。君には言っとかないとなんかしそうだからね。気を付けてね」
「あ、ハイ」
「じゃあ、ボス・スライム回収して帰ろっか」
そして一行はボスの核とタマががぶっ飛ばして壁に付けたゲルの綺麗な部分を瓶に詰め、開いた扉に入り転送陣でダンジョンの外に転送される。
いやー……
核について忠告受けといて良かったよ。
マジで。聞いてなかったらあの結晶美味しそうだったから絶対おやつにもぎ帰ってたね、あぶねー……
「む、お帰り。 早いな? まぁ、Bの方も居るから当然ではあるか」
「あ、どうも門番さん、僕たちはこれで街に帰りますね、引き続きお仕事頑張ってください」
「ありがとう。気を付けて帰るんだぞ。踏破直後で疲れてるだろうからな」
その後タマたちは何事もなく街の南門に着き、ギルドに行き素材精算を済ませる(俺は体動かしに行ってただけだって言って何も受け取らなかったけどね)
にしても いつも酒飲んでるおっさんらが居ないな? 何かあったのだろか?
今日はマリーさん普通に仕事してるから違うカウンターで精算してるんだけども。
聞いてみるかな?




