29ネキ 俗に言う青板版だと湯気が消えるよ
前回のあらすじ
宿の名前ぇ……
――――
「おー、此処がマルの親父さんがやってるって言ってた宿か」
現在さっさとマル達に合流、寄り道せずに例の宿に着いたのぜー。
「はい。ちょっとズルいかもしれないですけど僕らも安くで利用させてもらってます」
「身内ばんざ~い!」
「……みんなアルさんを綺麗に無かったことにしてないかしら?」
だってなぁ……部屋から出ようとした時さりげな〜く俺らに混ざろうとしてたけど、すげー速度で後ろに回り込んだメイドさんに首根っこ掴まれてそのまま猫みたいに持ってかれてたもんなぁ…… 何者よあのメイドさん。
マルに聞いたら、「いつものことですよ」 って言ってたしうん。うん。
おれはきにしないことにした。
にしてもですねー、ここ一応異世界なんだよねー。
……「だるまさんがころんだ」(以下だるまに略)亭はまぁ〜質の良さそうな宿って感じでめっちゃいいんですよ。
ファンタジーしてて俺は好きだよ。
……その横に見える銭湯っぽいのはなんじゃろうか? “ゆ” って書いてるよ “ゆ” って。
煙突も見えるし。銭湯だよなぁ?
「あ、タマさん、横に見える建物が気になるんですか? あの建物は「セントウ」っていう公衆浴場で、宿屋の一部なんですよ。宿に入ってる人は無料で使えます」
「へー」
銭湯かぁ……
銭湯やんけ! 銭湯だったよ!?
「まず先にタマさんの宿登録してきましょうか?」
「早くお風呂はいりた~い!」
「そういえばタマさん荷物ほとんど無いって言ってませんでした?」
「ん? ああ、食いもんとかお金は持ってないけど、自身の着替えとかそういうのは腰とか服に付いてるポーチに入ってるからね。そこんとこ大丈夫よ」
そんな会話してるうちに宿の受付に。
「いらっしゃいませ、ようこそ。「だるまさんがころんだ」亭へ。 マル様御一行とお話にありましたタマ様ですね、ようこそいらっしゃいました」
えっ、俺の情報入ってるの。
「話?」
「既にオーナー様、いえ、ヘクマ様と言ったほうが解りやすいでしょうか? マル様の御友人がいらっしゃるので準備をとの連絡が入っております」
「はー、速いねぇ……」
「ええ、伝達の速さが売りですから。さておき、立ち話も宜しくありませんし登録のち、当宿自慢の公衆浴場「セントウ」に入られてはいかがでしょうか? その後夕食の用意ができておりますので」
「そういや、一泊幾ら? 此処」
「料金ですか? 通常だと一泊大銀貨5枚ですがタマ様の場合無料になっております」
「えっ。なんで?」
確か大銀貨千円……五千円でしょ? 日本換算で。 あそれでもここすげー安いな?
「オーナー様から「どうせそのうち戻ってくる。とりあえず適当な理由を付けて誤魔化しておけ」と言われて私も少々困惑しておりまして……あ、今のはどうかご内密にお願いします。私も適当な理由が思いつかなかったものでして……」
「あ、そう。よく解らんけどいいか。あ、登録はどうすんの?」
宿代タダにしてくれたのも礼の内に入ってんじゃろか?
でも戻ってくるってなんじゃろな?
「はい。登録に関しては既に手回ししておりますのでこの鍵をお渡しして完了です。 御部屋番号は2階の211となっておりますので、鍵をなくさないようにお気を付けください」
早いぃ! 親父さんが凄いのかスタッフがプロなのかどっちだ。
「それでは、各自荷物を置いたら下に集合して「セントウ」に行きましょうか、僕は平気なんですけど入らないと二人に怒られるので……」
「ほら! マル! 早く荷物置いていくわよ! さっさとしなさい!」
「おっふろ~おっふろ~」
「マルたちの部屋番は?」
「あ、はい。僕たちは 一階の 117 118 ですね」
「おっけ。 って言っても俺置く物無いから此処で待ってるさね」
「はい。では僕たちもすぐに戻ってきますね」
そしてまぁ、特に長く待つこともなく集まって隣の銭湯まで来たんですよ。
「えーと? 宿に入ってる奴は無料だったんだっけ?」
「はい。普通は2銀貨必要ですが、鍵を入る時に「バンダイさん」という人に見せればそのまま中に入れます。あ、青色の布が男性用の入り口で、赤の布が女性の入り口ですね」
まんまシステムそのままっすね!
そういや俺性別変わってましたね、ついつい青行きかけたわ。
「では、後ほど入口前で集まりましょう」
「おっけー。おっと、俺は赤の方だったな」
あっぶねー。ま〜た青の方行きそうだった。
「タマさん早く一緒に入ろうよ~! こっちこっち!」
「あ、ちょ。アイダ!」
アイダちゃんに手を引っ張られ、そのまま連れていかれ……ない。
「ん~ッ! う、動かない……」
「おっと、すまんすまん。行こうか」
HAHAHAアイダちゃん。押しても引いてもびくともしないんすよ……
「タマさんとても体重ありそうに見えないんですけど……」
「そんなこたぁーねーよミリーちゃん。結構体重あんだぁ、俺。 ま淑女()が重いのはどうかと思うけどな。HAHAHA」
「笑って言うことじゃないと思うんですけどね……」
ホントな。 100Kgはどうなのよ髭神ぃ。
そんなこんなでロッカールーム(着替え室)でササッと服を脱いで置いてあるタオルで髪を適当にまとめる。
まぁ一人の時とか山で偶然見つけた温泉入る時はそんなことはしなかったけど、普通は水に漬けっぱなしだと痛むしマナー悪いからダメだぞ。
というかみんなやってるから見よう見まねの真似しただけだったり。
俺ぇ? 炉をサウナにするような奴が水如きで痛むような柔な髪質しとらんわい。
見なさいこのすーぱーきゅーちくるを!
言い方悪いけど強度的にワイヤーですよ。
ワイヤー。 今出す話じゃないけど仕事人遊びできるね?
「……おっきい」
「お~!? 凄い!」
「ん? おう」
そんなに凝視するもんですかね。自前で持ってるでしょうに二人とも。
「やっぱマルも大きいほうがいいのかな……」
そう言って自身の胸とタマとアイダの胸を順繰りにみるミリー。
うーん、俺はよく解らんが適当にフォローすっかな?
「ミリーちゃん」 「はい?」
「マルはお前だからいいんだ。 そこに胸の大小が入る余地は無い。もし、奴が大小で判別する奴だったら……」
「「だったら?」」
お、アイダちゃんも反応してきたな?
「ぷすーと」
「「ぷすー?」」
「刺せ」
「「ァッ……なるほどぉ……」」
俺は親指をグッ と立てサムズアップをする。そして二人が妙に納得したかのように目からハイライトが消えてコクコクと頷く。
ん? コレなんか間違ったかな……?
……まぁ、いいか! 風呂はいろおふろ! ガンテツの工房風呂ねーんだもん。
サッと湯か水浴びるだけで済ましてるし、 しゃぶしゃかよアイツ。
――――――同時刻男湯湯船前――――――
「つッ!?」
何故だろう、暖かいはずの浴場内で、不意に猛烈な寒気が僕の背中を襲う。
直ぐに寒気は収まり、何事も無く、湯気が周りに立ち込る。
「な、なんだったんだろうか今のは? まぁ、早くお湯の中に入ってしまおう……」
――――――――――――
さすがにシャンプーなんてもんは置いてないっすけど体洗う石鹸とかは置いてあるっすね。
此処、割といいトコなんではなかろうか?
サッと体と髪を洗って……ながぁぃ!アタイの髪洗うと時間かかるぅ!
1度ガンテツに切ってもらおうと試したけど、うん。
当然ハサミが死んだ。切るに事欠いて俺の歯で無理くり切ってみたが(バッサリは怖かったから5㎝くらい)寝たら次の日に戻ってやんの。
日本人形並でね? 伸びるの。
ちょっと切ったやつはガンテツにあげたけど、切っても戻るってことが解ったので切ることは無くなりました。
逆に言うと伸びもしないのよね、この長さから。
そして湯船にゆっくりと浸かる。懐かしの感覚に思わず声が出る。
「づぁ”あ”あ”ぁぁ~~~~ッ」
あ゛〜やはり風呂は良いなぁ。銭湯とか異世界とかそんな疑問は湯に浸かればふっとぶぜ。
あ~溶けそう。 はぐれメ〇ルになりそう。
のんびりしていると、二人がこっちに向かってきた。
「おーす。先入ってるでー」
「いい処でしょ、此処。タマさんにも気に入ってもらえてよかったですよ」
「あ”~そうだねぇ……できれば片手に酒が欲しいとこだけどな」
「お酒好きすぎでしょ……」
「わはは……そうだなぁ。ん? アイダちゃんは?」
さっき一緒に来たはずでは?
「えっ? アッ」
「いえ~い! 広い~!」
其処には湯船で泳いでるアイダちゃんが居た。犬かきですなアレは、なかなか可愛い。
「ちょ、止めなさいアイダ!? みんな見てるでしょ!」
「えー!?」
「いいから、もう!」
意外に他のってか、女性客居るんすね。
結構見えるけどみんな微笑ましい顔で笑ってたわ。みんな優しい。
そんなこんなで俺はの〜んびりしつつ二人はコントしつつで十分あったまったので外の入り口に出てきた。
あ、中に牛乳売ってましてね、僕金貨1しかなくてお願いして奢ってもらったんすよ。
あ゛〜……ンマイッ!
ほこほこと湯気を出しつつ外を散策し、すぐにマルを見つける。
「あ、来ましたか、じゃあ、宿の方に向かいましょうか」
「おっけーそれじゃ「あーーーーーーーー!」
「見つけたぜぇねえちゃん! いや、姐さん!」
な、なんだ!?
急に大きな声がしたので振り返ってみると例の3人が居た、犬皮の。アッメンドクセ。
「……なんだお前ら? 姐さん? んでなんか用か?」
とりあえず今回は話くらいは聞いてみようか。風呂上がりで機嫌もいいし。
「「「弟子にしてください!」」」
……。
「「「「は?」」」」
俺含めマル達一同が同じくぽかんとする。
「俺たちを倒したときから只者じゃねぇとは思ってたんでさぁ!」
「ここいらじゃ見ねぇオーガー倒したのも姐さんって聞きましたし!」
「俺たち姐さんの強さに惚れましたぜ!」
「「「ってことで弟子にしてくだせぇ!」」」
そう言いながらなんか土下座でよく解らない理屈で弟子入りを頼み込んでくる3人。
俺は真ん中の……えーと、解らん、誰だ。
とりあえず肩に手を置き、答える。
「そうか、お前らの気持ち、よく解った」
「「「じゃあ!?」」」
「却下だ却下! んなもぉん! めんどくさい以外にねぇわ! アイダちゃん! こいつらの足に〔泡〕掛けてくれ!」
「はいは~い!〔泡ぅ〕!」
「「「え?」」」
「お前らッ、森へっ、お帰りッ!」
タマが魔法のかかった3人をひょいと掴み、カーリングよろしくブン投げる。
「「「おわあぁぁぁぁぁぁっぁ~~~~~~~~~……」」」
そのままスススィー と通りの向こうに流れていく3人。
つーか通行人綺麗にアイツたち避けてんな、すげー。
遠くに行くのを確認した後、俺はアイダちゃんの方に向かって少し屈み、手のひらを出す。
「アイダちゃんアイダちゃん」
「いえ~い!」
そして俺の意図を察しパァン! といい音を立てて手を叩いてくれる。 ホントこの子察し能力というかノリ良くて好きだわ。
「「タマさん、あの……」」
お、二人も再起動したか。
「めんどくちゃい。 さ、宿に戻るか!」
「あ、はい。まぁ、すぐ隣なんですけど」
「そういや晩飯出るって聞いたけど?」
「あ、それはですね、此処「だるまさんがころんだ」亭は宿だけじゃなく食事場も兼ね備えてまして……




