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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
2章 冷やし中k……新人冒険者始めました
29/202

28ネキ  親方っていうよりセバスチャン

 前回のあらすじ


 正直ちょっとだけ酒盛りしたかったわ


 ――――



 ほいほい。


 昨日行ったばかりだし、特に迷わずにすぐ着いたな。

 門番のゴーンさんに軽く会釈しつつ中におじゃましま〜す。


「タマさん、親方は昨日の客室で待ってます」


「なー、アル君。気になってたけどなんでお父さんのこと親方って呼んでんの?」


「あ、はい。それはですね……小さい頃から商人としての師匠も兼ねてたので、父上っていうより親方って呼ばされるうちにそっちの方がしっくりきちゃったんですよね……」


「なるほろ」


「だから弟のマルは親方のこと、父さんって言ってますよね?」


「んだね」


「あ、着きましたタマさん。では、親方の言いつけでタマさんにだけ会わせてほしいとのことなので、僕は席外しますね……」


「どした?」


「あー……まぁ……まだ僕は怒られてる最中で……息子の恩人の前でそれはちょっと……ってことでして……」


「……何回森抜けやったんだ? 君は」


「お、覚えてません……ただ、次発覚したら覚悟しろよとは言われてました……ハハッ」


「兄さん……」 「「アルさん……」」


 女子二人からも冷たい視線投げられてますぜ……顔は似てるのにな。中身はうん。


「あ、タマさん、じゃあ僕らも、兄さんと一緒に別の部屋に行ってますね。右に二つ隣の部屋ですので、僕らはそこに居ますから……」


 言われずとも察して気遣いする弟よ。

 そらお前モテるわ。



「ああぁぁ、マルぅ……親方が、親方の仕置きが怖えよぉ……」


「兄さんは懲りないことにかけては凄いですね……」


「ほら。アルさん! マルに縋り付いてないで向こう行くわよ」


「れっつごー駄目おにいちゃん〜!」


「あ、タマさん是非親方に会ったら僕の仕置き軽くしてもらえるように頼めませ……



 女子二人にそのまま引っ張られて連行されたわアイツ。

 てか二つ隣って言ったけど遠いな! 家がデカいからそんなもんなのか? まぁ解らん。 俺は俺で呼ばれてるわけだし中に入るかぁ。



 客間の扉がギィと鳴り、部屋にタマが入る。 


 中で待ってたのはアルやマルを歳取らせて渋くしたような、白髪? 銀? 解らん! んで、モノクル眼鏡の商人っていうより執事ですやんお前って感じのおじさん、否、オジサマだこれ。

 座っておらっしゃる。


 その人物はタマを一目みて一瞬、少しだけ見開くが、すぐに何事もない振る舞いに戻る。


 割と街中歩いてても普通に綺麗な人や冒険者おったし、マリーさんも美人の方だし別段、俺そうでもないと思うんだけど、やっぱ初見驚くのデフォなんだろか? まぁ、なんでもいいわ。


 ところで……カッケー。モノクル似合い過ぎてやべ〜…… おっと挨拶せな。


「こんにちは。はじめまして、俺がタマっていう者です。俺になんの御用で?」 


 片手を上げラフスタイルの挨拶をしながら歩みよる。


 挨拶が軽い? HAHAHAHA! これに関しては相手が王族だろうが関係ないね。 

 野蛮? 不作法? 知らん知らん。

 こちとら無作法者よ。



「……お初に御目に掛かる、私はヘクマ。ヘクマ・タージェルという者だ。まずはあの息子を助けていただき感謝する。少々どころではなく懲りない馬鹿息子だが、それでも息子だ。……本当にありがとう」


 モノクルオジサマ、もといヘクマさんが開口一番頭を下げてくる。

 やっべ超綺麗なおじぎじゃん……


「あー、いや。俺の方も偶々だったし、こっちとしては……俺の事情アル君から聞いてる?」


「うむ。山中生活の最中、シンシアから此処、ランランチップまで転移させられたと聞いておる。そんな陣もあるとは、私でも知らなんだ。災難でしたな」



「まー。やっちまったもんはしょうがないし、しばらくこの街で生活でもしてみるさ、適当に」


「そうか。偶々とはいえ、息子が助かったのは事実。……できれば何かお礼がしたいのだが、要望はあるだろうか?」


「んー? ……要望ねぇ……強いて困ることは飯くらいなんだけど、まぁ運良く初期金も手に入ったし何とかなるだろ……あっ、あったわ」


「ふむ?」 


「お勧めの宿教えて。そういや泊まることなーんも考えてなかったわ、わはは」


「……宿、とな? その程度でいいのかね? 普通はこういう場合、多少なりとも金銭のやり取りぐらいはあるが?」


「えー? 要らねー要らねー。助けた代わりに街の場所とついでに運んでもらったんだからそれで良いでしょ。俺としてはいい宿聞ければそれで事足りんだわ」 



「……随分と無欲なのだな」


「無欲ぅ? 聖人じゃねーんだかそんなわけないじゃん。

 俺ァ腹いっぱい飯も食いたい、めいっぱい寝ていたい、好きなことやって遊びまくりたいわ。 

 俺は我儘で欲の塊なんだよなぁ。アル君助けたのも俺がやりたかったからやった。だから特に貰う必要は無い」 


「……うむ、解った。其方の意見を尊重して、宿屋の情報で手打ちと願おう。 

 ギルドの方からさらに奥に行くと宿屋街がある、少し歩けば

 “だるまさんがころんだ 亭”

 があるはずだ。そこは私の経営する宿なので、私の紹介と口頭で言えば良くしてくれる」


 だっ、だるまさん? えっ、何? 


「……だるま?」


「ああ。宿の名前に関しては建設の際友人に決めてもらったんだよ。尚、特に意味は無いそうだ」


「あ、そうなん」 


「……さて、わざわざ此処に呼んで済まなかった。此方から向かわせてもらおうと思ってたのだが、また入れ違いになっては申し訳ないからな」


「いんやー? 別に構わんよ、宿の場所教えてもらったし俺は早速行ってみるさね。ヘクマさんのお勧めの宿がどんなもんか気になるし」


「フフッ。私が言うのもなんだが、いい宿だぞ」


「おっしゃ! じゃあお(いとま)させててもらうわ。あっ、他に要件とかあります?」


「いや、無いな。部屋に居るマルたちも其処に泊まっている、一緒に行くといい。案内に丁度良いだろう」


「あいよー。……いる部屋出たら左二つ目だっけ?」


「うむ」


「ほいじゃ、失礼しましたー」  



 タマがパタンと扉を閉め、周りを軽く見渡し、左に進んで行った。 


 部屋遠いな! あーカーペット高そう……足擦らないように優しく歩こ。





「…………」



 一人客間に残り、タマの足音が遠ざかるのを確認したヘクマは、自分しかいないはずの部屋の中で会話を始めた。



「……出てきて良いぞ、コーイチ」


「あいよー旦那」


 ヘクマの呼び声と共に、天井裏から口元を布で隠し、音もなくしなやかにへクマの元へ降り立つ。


「アルの話から黒髪、と聞いてもしや? とは思ったが、だるま亭に反応した辺り、やはり彼女は転生者か」


「そっすねー。黒目じゃないけどめっちゃ可愛かったっすねー。俺天井裏待機じゃなかったら食事に誘いに行きそうでしたもん」


「私の鑑定では人間種ではないのは確認できたが、彼女はなんの亜人なのだ? お前の鑑定なら見えたはずだが」


「あーはい。旦那、それなんですけどね。 彼女、シンシアに居たって言ってましたでしょ?」


「うむ。」


「彼女、シンシア大陸のみに生息してるストーンマンの亜人ですよ。アレで」


「ストーンマンと言えば、ゴーレムに似たあの?」


「そーっすね。間違いないっすよ。いーやでも何がどうしてああなったんすかねー規格外もいいとこすよー」


「ふむ? ステータスは見たが、AとDの前衛型ではないのか?」


「いやいやいやいや! Aなんてトンデモナイ! なんすかステータス

   “けつばん と くぁせdrftgyふじこlp” 

 に止めの - って!? これ俺の推測どおりならやべぇっすよ!?」


「なんだ、その けつばん と くぁ? フジ?」


「あーそっすね。発音できませんもんねコレ。 まー旦那に解りやすく説明しますと、意味不明ってことっすよ。

 ステがバグるなんて俺も今日初めて見ましたわー、あんなんゴ○ラっすよ。熱線くらい吐けるんじゃないっすか。ハハッ。

 まぁ、とにかくドラゴンが歩いてるようなモンじゃないっすかね」


「ふむ。……話した限りの印象では暴れるようなことは無さそうな性格だったが」


「そりゃーそうですぜ旦那。 邪神でもない限りそんな性分の奴は転生してこないっすよ。

 俺もさっきのやり取りで感じた限りでは、彼女、趣味人系の人種ですねー。

 邪魔でもしなけりゃ実害はないと思いますよ」


「ふむ……」



「後ステータス隠しの首のチョーカーの出所からして、彼女ガンテツさんと知り合いなんじゃないっすかね?」


「確かアニード氏と言えば、世界一と名高い名工のはずだが」


「鑑定に銘が出ておまけに文面の最後に

 “最高の友に贈る一品。我らドワーフ族の加護があらんことを”

 って説明にでましたし間違いなく凄く仲が良いと思いますよ。

 っていうかドワーフ族は竹を割ったような性格が多いですし、マルたちとの会話ちょくちょく聞かせてもらってるけど、裏表の無いタイプなんじゃないすかね。俺の推測ですけど」


「お前の鑑定は特別だから推測もほぼ間違ってはいないだろう。……だが何故人間種ではなくストーンマン種なのだろうか?

 外見はどう見ても人間種だが」


「そりゃー旦那、俺が神様に聞いたうろ覚えの話でよければ教えしますけど、神様ってのも案外人間臭くて、その世界に似てる者があればそれになぞって転生させるらしいですぜ?」


「ふむ、詳しく」


「まー、簡単な話。楽できるってぶっちゃけてましたね。完全新規の種族とかは手間がかかるそうで。

 俺だって前世は“シノビ”の血筋だったらしく俺もそれに憧れてたんで晴れてこの世界で「ニンジャ」に成れたんでさぁ。 

 あ、俺は旦那に仕える今の生活、好きですぜ?」


「うむ。コーイチ、お前には感謝している。その話の通りなら彼女はストーンマンに似た性質がある。と?」


「じゃないっすかねぇ、昔の御伽話で彼らを怒らせて滅びた国があったって話ですからねぇ……

 それでも人間に減らされて今はシンシア大陸のドラゴンマウンテン? って所に生息するだけっすが」


「仮に彼女に子供が居たとして、攫いでもしたら?」


「まぁストーンマンに限らず親ならブチ切れる案件でしょうよ……アッ、ストーンマンなら本当に熱線吐いてきますやん。怖ッ」


「まぁ、仮の話だ。それにストーンマンは心優しき良き隣人として知られている。マルの顔を見ればすぐに解る」


「ほーんと、旦那の息子たちいっつも思うんすけど豪運の持ち主ですよねー。親の旦那に似たのでは?」


「フフッ。多少私に似ようとも運までは似ないさ。二人の持ち前の運なのだろう」


「さいすかー。俺も彼女のことちょっと気になるんで今回の貿易護衛の面子に誘ってみたらどうです? 

 マル君も誘うつもりなんでしょ? 一石二鳥ですよ。俺が」


「……確かに面白いやもしれんな。この件はお前に任せるとする。では、頼んだぞ」


「あいよー」



 返事をするや否や、黒装束の青年は影に溶け込み、姿を消してしまった。



 そして今度こそ一人になったヘクマはボソリと呟く。



「……はて? アルがタマ君から私にお願いしたいことがあると言っていたが……宿屋のことだったのだろうか? まぁ、良い。今日はしたたかに絞ってやろう」




 ――



「えーと……二つってこんな遠かったかな? 道中メイドさんっぽいのに確認取って此処なのは間違いないけど……」


 異世界メイドさん初めて見て実はちょっと感動してたり。

 ……はて? 何か頼まれごと忘れてたような?



 そう思いながらドアに手を掛け、その瞬間俺は思い出す。


「あっ。アル君の減刑の口添え忘れてた」



 あー……まぁ……   


 いいか。良いわ、許せ。 



「おいすー。今終わったぞー」


「あ、タマさんお疲れ様です。父さんとは…………

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