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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
2章 冷やし中k……新人冒険者始めました
26/202

25ネキ  ついでに鬼さんも挟め

 前回のあらすじ 


 カニタマ(実はまんざらでもない)さんのオーガー3分クッキングの時間だオラぁん!




 ――――――――――――――――――――――


 ーとある新人少年冒険者の話ー


 彼女とは昨日ギルドで出会った。

 とても不思議な人だった。


 最初顔を見た時は、顔立ちの良さに言葉が出なかった。

 女性ではとても身長が有り、スタイルも素晴らしく、そして瞳はとても綺麗な緑色で、まるで宝石のような瞳だった。


 髪も艶のある腰に届く黒髪で、話には存在を知っていたが、初めて見た時内心驚いていた。

 髪の色にも驚いたが、何より彼女の性格に驚いていた。

 ギルドで初めて紹介された後は、仲良くなるのに時間はかからなかった。


 何処かの国のお姫様と言っても信じられる程の見た目なのに、どこにでも居るような友達の感覚。


 それが僕の彼女の第一印象とその後に受けた印象。


 ――――――

 ――――

 ――



「まー見とけって。3人はあの鬼さん以外に何か来ないか周りに気を付けといてな?」


 そう言うと、タマさんは盾を軽く打ち鳴らしながらオーガーの気を引き付けるように、ゆっくりと向かっていった。 


 魔物のことに関しては勉強しているのである程度の知識はあるつもりだ。


 容姿的特徴から種類は緑鬼(グリーンオーガー)で間違いないだろう。 依頼の際、不測の事態が起こった時には如何に冷静に被害を抑えるかが肝だと、先輩の冒険者たちから口酸っぱく聞かされている。 


 いきなり森の奥から此処付近に生息していないはずのオーガーを初めて見た時、表には出さなかったが、相当に焦った。

 グリーンといえばC程の冒険者が5人~で狩るのがセオリーだ。

 まず初心者の冒険者が立ち向かって良い相手ではない。


 最悪、女性三人を逃がすために僕が注意を引き付けて、囮になりその間に街まで逃げてもらい、増援を呼んでもらおうと考え、すぐに実行しようとしたが……僕の思惑は外れた。 


 なんと、タマさんが「任せろ」と言ってきたのだ。


 タマさんの腕力が強いのは解っているが、いくらなんでも人がオーガーより力が強いはずもなく、無茶だ。と言葉にしかけたが、タマさんの目を見て、僕は言葉をだすのを止めた。

 

 僕のお父さんや、いつもお酒ばっかり飲んでるギルドマスター。他にもいつも為になる話をしてくれるBランクの先輩冒険者さんたち。 優しく、でも、とても力強い。タマさんも全く同じ目だった。


 お父さんによく

「マル。お前は人を見る目がある。いいか? お前は自分の直感を信じろ。そうすれば、お前はきっと大成する」

 とは言われていたが、正直まだ僕はよくわかっていなかった。

 男である僕がオーガーに向かっていかなければならないのは当然のことだ。


 だけど……何故だろうか。自分でもよく解らないが、タマさんの言葉の通りに任せるべきだと体が勝手に動いた。 


 今、彼女は悠々と歩き、オーガーに向かい対峙している。 

 今の状況では彼女の背中しか見えないが、僕にはその背中がとても格好良く見えた。

 僕も彼女のようなあの格好良い背中をミリーやアイダにも見せることができるようになるだろうか?

 ……いや、成る。成ってみせるのだ。二人とも僕の大切な人だ。何があっても守ってみせる。


 物心ついた時から自然にそう思っていた。 今はまだ駆け出しだが、いつかはどんな障害からも二人を守れるようになってみせるさ。 そしてその思いは、固く誓って僕の心の中に隠しておく。

 まだ口に出せるようなものではない。 今は、そのためにどうすればいいのかを背中で語るタマさんを見て心に焼き付けよう。



 ―――――――――――――――――






 アッハイ。


 小腹が! 空きまし  た!

 なんかね、ちょ〜っとカッコつけて任せろなんて言ってみたが、要はあの鬼君の角が気になって食べてみたいので、任せろ! って勢いで言っちゃったなう。


 鬼君。君、ちょっと気になる角してるね!

 先っちょ(角)だけでいいから、ね? 

 お代として貴様には塩くれてやる!


 おっと間違った。 


 死をくれてやる!  

 お前なんかカラーリングがゴブリンみたいなんだよ。 普通赤とか青じゃね? 鬼って言ったらさ?


 顔がすごく怖い緑のおっさんやん。


 そーら。おーにさーんこーちら。 て(盾)の なーる ほーうへ。


 大きく盾を鳴らし、俺の存在を鬼に更にアピールする。

 マルたち3人の方に行かれたら走ってカバーするのめんどくちゃいからね。アッピルは大事。いいね?


「ガァァァァァァ!」 


 オーガーがあっさりと挑発に乗り、タマへと駆ける。 と、同時にその大きな拳を彼女を小さな虫をのソレの様に、無惨に叩き潰すべく振り下ろす。


「タマさん! まともに受けちゃ駄目ぇ!」 


 ミリーの叫び声が響く。 


 タマが声の方に振り向くと、マルがしっかりと2人を連れて俺から離れているのが確認できた。 


 うん。マル君マジで優秀だな……

 とりあえず俺はミリーの叫びに、 ニッ っと笑って返事とした。 


「前! タマさ


「あん? おっ


 オーガーの方へ向き直るが既に拳は盾の間、無防備ない彼女の頭へと─


 次の瞬間 。



 肉が潰れ骨が砕ける鈍く重い嫌な音が森に響く。  


「ゴォァ!?」  


 しかし、タマを叩き潰したハズのオーガーの方が叫び、ひしゃげた自身の手の激痛に表情を歪ませる。


 そして意図しない痛みに怯んで数歩ばかり下がり、タマを睨みつけた。


 いーやー、そりゃあ君、鉄の塊を考えなしにぶん殴ったら拳痛めるでしょーよ? 自業自得なのになんで俺睨むのさ。


「……嘘。オーガーの一撃をまともに受けたのになんともない……?」


「丈夫だって言っただろ? ミリーちゃん。早く街に帰ろうか? ついでにコイツも土産にな」


 真面目な話、バトルの駆け引きとかよく解らんのでさっさかゴリ押して終わらしてしまおう。


「さぁ〜て、一発殴られたら? 一発殴り返して良いよなぁ!」 


 そう言うど同時にタマはオーガに突進。 


 しかしオーガーは痛めてない方の手で反撃を試みる。 


「ガァァァァァオ!」 


 向かってくる俺を弾き飛ばそうと腕の横薙ぎのがタマに激突。 かと 思えたが


「つ〜か〜ま〜え〜た。 かーらーのー? そぉい!」 


 シールドクローで腕を挟んで受け止め、更に別のクローで胴体を掴んで、そのまま力任せにに地面に叩きつける。 

 豪快な音と共にオーガーが仰向けに叩きつけられ、


 殴ったら~~とは言ったが、必ず俺は殴るなんて言ってないからね! 


「ゴァッ!?」


 そして間髪入れずにオーガーの首にクローシールドが差し込まれた。


 余談だが、掴んで投げた方の盾とは反対側の方である。 盾は絞めた時の接触面が()ではなく()()になるようにモードチェンジしてある。

 まぁ、解りやすい話が、投げたほうがペンチで差してる方がニッパーすね、はい。


「ゴ?」 


「ごめんな。もう帰りたいんだ」

 

「ゴガァァァァァ!!」 


 多少暴れはするが、そんなのお構いなしにタマは力を込め彼の首に付いてる首輪ごと強引に断ち切る。


 ん? 首輪? 此奴腰蓑(こしみの)くらいしか付けてないのになんでちょっとおしゃれな首輪付けてんだ? ……考えても解らんし、まーいいか。


「アァ……」  


 はい。南無三。 妖怪首御置いてけのコレが一番だと思います。


 簡単でいいね。ちなこのクロー、その気になれば開閉範囲180度くらいある不思議。さすガン。適当に言ったギミック全部乗せしやがるぅ! 帰ったら肩でも揉んでやろ。


 ……さて。


「おーい。終わったから来てもいいぞー」  


 盾の血を振り払い、収納しつつ3人を呼ぶ。



「……助かったのはいいけど、私は今見た光景がまだ信じられないわ……」 


「オーガー投げる人なんて初めて見た~……」


「ありがとうございます。タマさん。貴女のおかげで僕達は傷一つ無く生き残れました」


「いーってことよ。早速コイツも街に持って帰ろうぜ?」


「タマさん、持てるのは解るんですが……オーク3匹とオーガーを同時にどうやって持つんでしょうか……」


「あっ。縄は……無いよなー……」 「はい」 


「ん〜俺の方は当然……ポケットにはハンカチくらいしか……ん? ハンカチ?」  


 ため息を吐きつつおもむろにズボンのポケットに手を突っ込む。するとポケットから緑色の唐草模様の布が出てきた。


「あ!」  「え!? どうかしましたか!?」


「あーいや。すまん、驚かせた。持ってるのなんか一枚だけあったわ」 


「そのへんな模様の小さな布ですか……?」


「そうそう。これ、引っ張ってみ?」


 軽く丸めて一番近かったアイダちゃんにポイッとその布を投げる。


「引っ張る? ……!? わぁ。伸びる伸びる~! すごーい!」


「アレは魔道具(マジックアイテム)なんですか?タマさん」


「ん? そうだよ、多分。名前は……確かのびーる風呂敷。正直さっきまでポケットに入ってるの忘れてたわ。ちな凄げー頑丈だから雑に使える便利なやーつ」



「なるほど……そのアイテムなら確かにタマさんであれば全部持って帰れますね」 


「そゆこと。じゃあ早速アイダちゃん。乗せる前に洗ってもらえる?」


「あいさいさー! やっと私の出番~!」 


「じゃあ、まずはオーク持ってくるから…………



 ――――――――


 ―――

 ――




 時は少し戻り、森を越えて国境と国境のどこの領地でもない洞窟にて。


 厳つい体格に筋骨隆々の体中に傷だらけの男のもとに、背の曲がった小さな男が駆けよってくる。


「ボス!」


「どうした? そんなに慌てて」


「魔術班から、試験運用中の隷属の首輪の反応が消えたとの報告が」


「ほう? 何処で消えたか解るか」 


「はい。 最後の試験で向かわせたのが、隣の国の東の森でしたから……恐らくそこかと」


「………冒険者にでも見つかったか? まぁいい。すぐに回収班を向かわせろ。あの首輪はそう簡単に壊れねぇ。魔術班も一人連れていけば魔力反応ですぐにわかるはずだ、万が一街に持っていかれてるようなら即座に自壊させろ。 俺ら以外には呪いの品にしか見えないように作ってあるからな」 



「了解しました。すぐに向かわせます!」 


 指示を受け、小男は即座に来た方向とは逆に走ってすぐに消えていった。


 後に残されたボスと呼ばれた男が一人呟く。


「……まぁ首輪は戻ってくるだろう。収納不可と装備者が死んだら認識阻害の魔法もかけてあるからな。

 ……せっかく貰ったオーガーなんだが、また貰ってくるしかねぇか……」



 ―――――――――――

 ――――


 ―





「洗浄よーし。積み込みよーし。さぁ。街に帰るか!」

「お~!」


「……私は今日、自分の常識が覆されるとは思ってなかったわ……」

「大丈夫。ミリー、僕もだよ。世界は広いね……」



 巨大風呂敷を担ぎ、街に気分よく歩き始める。 


 あ。角は我慢できなかったんで洗浄とか撤収作業中にこっそり食べました。 

 まぁ、そこそこでしたね。 可もなく不可もなくって感じ。 


 まぁ…… 微妙。

 

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