22ネキ 犬神滑りこみ
前回のあらすじ
頭突きと留守
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「マル君、今3刻あたりなんだけど、今から森に向かったら夜にならない?」
「ええはい。森の手前で野宿して、朝なったら森に入ろうと思ってます」
ちなみにこの地域 時 じゃなく 刻 読みで時間表記してたりする。
なんでも魔法で時間のズレない時計が広場にあったり、各家庭にあったり割とメジャーな一品。
魔法の力ってすげー!!
でもめんどくせー! 違和感すげーよ
まぁ、今の時間は午後三時だね。
ところで朝(転移)から何も食べてないから、腹が減ったっちゃ、減ったけど、まぁ我慢できる感じ。
……最悪、美味しくないけど石ころでも隠れて拾い食いしよ。 はぁ〜石恋し。
ん、で。また話しながら東門に戻ってきたんだけど
ど!
なんか居るぅ。 遠目に見てアレ絶対例のテンションおかしい3人組じゃん?
街中歩いてこの世界の人の恰好見てたりしたけど、狼毛皮被ってるのはあの3人しか覚えないんだよなぁ……
「どうかしましたか? タマさん?」
タマが足を止めたので、3人が立ち止まる。
「あー……例の3人が門のとこで見えたんでどうすっかなー。って思ってたとこ」
「え? ウソ? ……ほんとだ。遠くに居るのが見えるわね……」
「ほんとだ~。よくみえましたね~」
少女二人が人ごみの中でピョンピョンと飛び跳ねて遠くを見ている。う〜ん癒される。
さて。俺はさっさと出発して飯が食いたい。あ。ちなみに荷物は皆腰に小型アイテムボックス? っていうの持ってるらしく、存外安価で買えるって道中聞いた。
入るのは50㎏(単位は地球と同じなんだね。それも聞いたら大昔の星の落とし子が広めたってさ、へー)
……時間はなんで刻読みなんじゃろな?
おっと逸れた。
まぁ50kgも重さ無しで運べるなら日用品食料なんて相当持てるしね。時間は止まらないみたい。
これも基本、落し子だけが時間停止の容量ほぼ無限のアイテムボックスほぼデフォルト持ちだから特別視される要因みたいねー。
俺?
俺のアイテムボックスは体重で一杯だから使えないんだよなぁ。
体重をボックスに入れてる転生者とか聞いたことないぞ?
まぁ、それでも慣れるから適応力ってすごいっすね、はい。
おっと、本題はあの3匹をどうするかだったわ、う〜ん……ちょっと遊んでみるか?
そう思いちょっとした悪戯心が出る。
「まぁ、とりあえずギリギリ見えないように近寄って後はサッと行こうか。俺にいい考えがある。(ニヤリ」
「はぁ?」
「何かあるんですか?」
「え~なになに~?」
「まぁ見てなって、君たちは普通に歩いて門通ればいいからさ、すぐ俺が後ろから来るよ」
先に3人を先に歩かせ、俺はいい場所を探し始める。
「お? ……此処は人もすぐ通らなさそうだし、崩してもいいかな? どっせい振動地面流化」
さりげな〜く、そして堂々と怪しい行為をしてないかの如く片足に力を加え高速微振動的なヤツで地面を踏んで柔らかくする。
ドコドコ〜っとな!
え? 何? 踏んで地面が柔らかくなるかって? ……しょうがないにゃぁ。 説明しよう!
俺はこの超重生活によって暇な時、(山中ずっと暇してたけど)体重のON offを使って何かできないかーと修行(遊び)を行っていたのだ!
そして今、足元からちょっと前(完全に足元だと俺も沈むからね)を耕して柔らかくしてるのさ!!
えっとねー。原理はねー。 地面に持ち前の馬力で超震動与えまくって、畑の土っていうかわたあめみたいな感じにふっかふかにしてるところ。
練習しまくって震動の指向性と深さとかだいたい調節できるよ。最初は手加減間違って、地震起こして作業中のガンテツにドチャクソ怒られたけど……
さて、踏み終わったからちょっと確認……うん、大根とかカブ植えたら良く育ちそうね。いい感じの柔らかさ。 人植えてもバッチリ。
そいで三人は……げっ、もう目の前まで行ってる!! おらー! 走れ走れい!
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「はぁ。クソーザ君たち、誰か待つのは構いやしないのだが、……道の真ん中は少々邪魔だと思うのだよ」
「こまけぇことは気にすんなって! サジャンさん!」
「いや、細かい事ではないと思うのだが……今はまだ良いが通る者が来たら退いてもらうからな?」
「おう! 誰も通しゃしねぇよ!」
「……君たちは、私の言葉をどう受け取ればそういう返答になるのだね……はぁ……」
「こんにちは。サジャンさん」
「こんにちは」
「ちは~」
「ん? おお、マル君たちか、こんにちは。今から依頼にでも行くのかい?」
「はい。東の森にオークが出たらしいので、4人で出発するところです」
「そうか、気を付けていくんだぞ。……ん? 4人? いつもの面子で3人しか見えないが?」
「あ、それはですね。今日、知り合ったタm「おおっと! お前ぇさん、さっきギルドに居たマルって奴じゃねぇかぁ!」
「さっき俺らに頭突きかましてくれたあのネェちゃんはどうしたんだぁ!」
「ちょっと俺たちあのネェちゃんに言いたいことがあるんだよ!」
「……タ? 今日知り合った? もしかして今日街に来たタマ君のことかい? マル君」
「……ええはい。そのタマさんなんですけd「おらーーっ! どいたどいたぁ!」
「!?」
やっべー!もう邂逅してますやん! 走る〜走る〜おれーた……おっとJAS⚪AC。走れ走れ!
はいそして!!
ズザザザザザーーッ! っとな! 某岩男もびっくりの華麗なスライディンングでお邪魔するぜー!?
「「「あ! さっきのネェちゃ─」」」
「アーッ!?」
「ビーッ!?」
「バーッ!?」
ヨシ! 綺麗に縦に並んでるもんだからちょうど良く掬いスライディングが決まったぜ!
かーらーのー。
「きのこッ!?」
「たけのこッ!?」
「きりかぶッ!?」
スライディングからの吹っ飛びで、飛ばされた3人は先程タマが耕した地面に頭から半身ほど綺麗に刺さった。
否、植えられた。
「いぇい! ないシュッ!」
片手を腰に、片手は人差し指を立て、天に向ける。
まぁ、サタデーでナイトでフィーバーの奴っすね。
「……今朝会ったばかりだが、早速馴染んでるようで何よりだよ」
「おーす。サジャンさん半日ぶり」
「……」
マル君たち3人が唖然としている。ん?どうした? ハトが豆鉄砲くらった顔して?
「ほら! 面倒なのは植え……埋めたし、さっさといこうぜ?」
そう言いながら3人の背中をぐいぐい押し進ませる。
「じゃあ、行ってくるねサジャンさん! たぶん帰ってくるの明日くらいだと思うよ!」
「……うむ。行ってくるといい。……さて、私は埋まった3人でも助けるかね……」
── 一方そのころ ──
ちょっと時間を戻して、
タマたちがアルの所に向かった後、ギルドの方では
「いや~。さっきのお嬢ちゃんすごかったねぇ! 見た目の割になかなかやるじゃん」
「……あ、所長居たんですか? ……ま〜た昼間から飲んでますね」
無精髭を生やした初老の眼帯の渋い酔っ払いおじさんがマリーに話しかける。
「ん? 酒? あー。書類の類はきっちり終わってるし、今日はやることもうないからね。酒飲むに限るでしょ!」
「まぁ、終わってるならいいんですけど? 見てたんですか?」
「お嬢ちゃんが入ってきた時から見てたよ。いやぁ、まさかあんなに面白い子が来るとは思ってなかったよ、それに。あの子たぶんめっちゃ強いよいやめっちゃじゃないわお化けだよおばけ」
「あ。やっぱ所長は見て解るんですね〜、私とかだとなんとなーくで感じるくらいですけど……」
「まー。君もまだ若いし、そのうちすぐ君のお姉さんやお兄さんのようになれると思うよ?」
「はぁ。ただまぁ、兄さんや姉さんは確かに凄いですけど、ちょっと特殊ですし……あ。ちなみにタマさん A A A D A D D でしたよ」
「ええッ!? ホントに凄い高いね!? 武闘派過ぎじゃない?」
「まぁ、3馬鹿を頭突きで黙らすくらいですからね……彼ら、起きたらどっか走っていっちゃいましたけど……」
「彼ら、悪い子たちじゃないんだけど、いかんせん人の話聞かなくてねぇ……実力はそこそこあるんだけども」
「受付の私としては話が通じないので来ないでほしいところです」
「まぁ、そう言わないでよ。……そいじゃ、僕はまた呑み始めることにするよ。えーと、タマ君だっけ? 彼女たちが依頼報告に来た時またひと騒動あったりして。ハハッ」
「あんまり呑むと体に差し支えますよー。一応所長なんですから」
「おー、心配してくれてありがとう。ところでタマ君から酒飲みの匂いを感じるんだけども、誘ったら付き合ってくれるかね?」
「さあ? 試しに誘ってみたらどうですか? あ、OK貰ったら私も誘ってくださいよ!! タマさんの髪、超凄いんですよ! はーもう、ずっと嗅いでいたい……(ヘヴン状態)」
「アッハイ。……君も兄姉に負けず劣らずアレだと思うんだけどね……」
「何 か 言 い ま し た か ? 」
「いーや何も言ってないよーさー明るいうちから飲むお酒はオイシイナー」
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「へーちょ!」
「タマさん風邪ですか?」
「いんや、ひいたことないよそんなん。 んで、その腰についてるポーチが気になるんだけど……」
「ああ。これは、アイテムボックスですよ。それで…………」




