161ネキ この人一応偉いんですよ
前回のあらすじ
Q あんな簡単に床ぶち抜いて良いんですか?
A そういううっとうしいと言うかちょっとアレな人はこの仕事やってると尽きないのでスッキリするからむしろOKです。みんな裏である度にガッツポーズしてます。(職員談)
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人と鉄の響く街──
これ要る?
今回はカットカット。
ドワーフさん達の国!
王城! 王様の居るところ!
玉座!
あら説明終わり!!
─
「やぁやぁ、こんにちは! わしはキング・ドンテツ! わかりやすく言うと、ここの国の王様だ! よろしくね!」
「…急に虚空に向かって何を叫んでいるんですかな、王?」
聞かれてもいない自己紹介を突如始めたヒゲを、付近に立っていたヒゲがたしなめるように質問する。
「え? いやちょっと…暇だからいつ聞かれれても良いようにフレンドリーな自己紹介でも考えとこうと思った」
「ええ……? 怖、この王」
「いやー別に他に聞いとる者おらんし……別に良いじゃろ? チューテツ」
「…はぁ〜…あのさぁ兄ちゃんさァ、そこ座ってる時は王様王様するって話じゃんよ」
「いやマジで何もしないのが1番つれぇんだわ、わかるじゃろ?」
「わかる。わかるよ兄ちゃん、でも仕事なんだからキリッと構えてさぁ…」
「嫌じゃい嫌じゃい! 早く今日の分終わらせて外遊びにいきたーい!」
「い つ も の 」
2人が取り留めのない会話をしていると扉の向こうからノックがされ、伺いが立てられる。
スっと目付きと態度を切り替え 先程の駄々ヒゲはどこいったと言わんばかりの威厳と貫禄のある表情にて許可を下ろす。
「良い。開けよ」
「本日の御報告、宜しいですかな?」
扉がゆっくりと開けられ、フィンチ眼鏡をかけたヒゲが書類と思わしき紙束を持って現れる。
……どいつもこいつもヒゲじゃねえか!
閑話休題。
「なんじゃスーちゃん、今日の報告かいな」
「スーちゃん言うなといつも言うとるやろがい! テンレスと呼べテンレスと!」
「あーはいはいすまんなテンレス」
「……ったく、なんやチュー、今日はもうそういう感じなんかいな」
「あーもう無理無理、兄ちゃんこうなったら他所様来ない限りスイッチ入んねぇもん」
「まぁいつもの事さかい、ほならちゃっちゃとおわらせよか」
「判要るやつか?」
持参している紙束を舐め湿らせた指で弾きテンレスは言う
「んーや今日は口頭で済むだけやつやな、ちゃっちゃか述べてくか」
「いつも助かるぅ〜」
「調子の良い奴やで…ほなまずは前々から学校の方に冒険者呼んで話やら何やらさかいなんやがな? 費用の方をどうにかしてくれへんかって学校から話来とるわ」
「あ? そんなん国庫から出せ出せ。貯まるばっかりだから使わにゃ勿体ねーだろ、財務らには事後承諾でいいぞ。子供のお守りするんだから冒険者共に出す奴も色濃ゆくしとけよ」
「ほいほいおーきに。ギルドの方から岩山大蟲の追い返しの完了報告来とるわ」
「あ〜もうそんな季節か…懲りねーわなあの蟲も…いつもは街も騒がしくなるのに…なんだ? 今年は散歩道が変わったのか? 追い返したら追い返したで味しめて今度は体のいい散髪屋扱いしやがって…ま、儲かるからえーんじゃが」
「鼻をほじるなほじるな、いや別段巡回路が変わったとかは聞いとらんな…なんでも1人が追い返したから用意してた発破がめちゃくちゃ余ったからどないするんや? ってギルドから聞いとるで」
「あーはいはい爆薬余りね…鉱山なり討伐なりそっちで安く卸す也好きにしろっていっとk……ん? 1人? 余り???」
「あーアレや、ガンテツさんトコの子や」
「あー…あ〜〜〜〜……(納得)」
「ほんま規格外な子連れて来よったなガンテツも」
「なんなら今この国、世界指折りで安全な国だと思うヨ」
「ははは確かにやってる事はS字のそれさかいに、やけど娘さん1人で指折りはないやろ〜」
「ん? あ〜言ってなかったな、地龍様が人に化けて今この国に住んでるぞ」
「ははは今度は地龍サマかいn…地龍?」
「地龍」
「ワイバーン?」
「NO。ドラゴン」
「ハイ? グレート?」
「グランド」
「チューテツはん……?」
「……()」
嘘は言っていないとの旨でチューテツは黙って首を横に振る
「あ、そうそうガンちゃんトコのリュックのかわい子ちゃん居るでしょ」
「ああ知っとるで…」
「酒樽宿借は?」
「知らんなら俺らじゃないわな」
「あの子実はそれの? グランド? 種らしくて? 地龍様と同じで人に化けてるらしいのよね?」
「ほぇゃ?」
「わかる、わかるよ〜テンレス。ガンちゃんトコの帽子の店番さん居るでしょ?」
「あぁまぁお前捜す時にガンテツはんとこで見たわn…もしかして?」
「はいそのと〜り〜あの人がそうね」
「ほんまか…? 言い難いやが、地龍サマがあない物分りが良くて丸くて穏やかな感じだったか……? 話に聞いとる限りその、こう…なんというか…」
「それもわかる。めちゃくちゃわかる。確かにそう、生き物として頂点なんだから普通そう。でもな、性格矯正されたから今の地龍様マジで敬う所しかないから大丈夫」
「矯正ぃ?」
「ガンちゃんから聞いた話地龍様と喧嘩して性格治してあげたらしいよぉ〜⤴︎︎︎、その岩山大蟲追い返した子がぁ〜⤴︎︎︎⤴︎」
「おいおいおいおいおいおい」
「そうだよねぇ〜地龍に喧嘩売って生きていられるかつ考え方も変えさせるんだもんねぇ〜、んで、結果仲良くなって友達〜で、ここにお住みになさってるって訳。ついでにリュックの子はタマちゃんの子分、地龍様も引けは取らないらしいから実質地龍様3人! しかもわしらの味方! ね?安全でしょ」
「いやいやいやいやいやそんなん戦力あったらどっから戦争売られようが負けへんやんけ、なんなら覇権取れるがな」
「あ〜やめとけやめとけ、そういうの好みじゃないらしいから俺らは快適な生活と居心地を差し出しとくだけで良いんじゃ。現に岩山大蟲の件みたいに火の粉は喜んで振り払ってくれとる。それで良い。十分なんてもんじゃない」
「他所の国には…」
「馬鹿お前言うわけないだろ! 面倒くさいなんてもんじゃないぞ!秘密だ秘密! わしらはなんか強い冒険者が国に住んでるだけ! それで終わり! 良いな!? 地味に国家機密だぞ!」
「ほなら冒険者とか住民にも根回ししとるんか?」
「いやぶっちゃけ本当だとしてわしが言ったら信じられるけど町民が言っても単なる噂でしかないからへーきへーき、現にタマちゃんちょっとめちゃくちゃ強い人くらいに思われてるしめちゃくちゃ流暢に言葉話して街から受け入れられてる人が実は魔物の頂点の一角なんて思うわけねーじゃん」
「あーまぁたしかに、突拍子もなにもって感じやんな」
「それにね、3人ともめちゃくちゃ人間出来てるからなーんも問題ないと思うよ。いや2人は人外なのにそこらのゴロツキより道徳心あるから笑っちゃうね、あいやぎーとちゃんは結構喧嘩っぱやいけどタマちゃんが抑えてるから大丈夫」
「まぁあんさんがそこまで余裕こくなら信用して良さそうやな」
「ま、そんな感じで次の報告よろしく」
「ほいほい、とんでもないことサラッとばらしやがってからに…ん? あ〜さっき話に出てたタマちゃん? って子のことやがな、なんやどっかしらの貴族様の1団ぶっ飛ばしたさかいに比喩じゃなくわざわざ顔に泥まで塗られた故今度は軍連れてきて実力行使に出る前に身柄をこっちに引き渡せ、さもなくば戦争もやむなし…これ圧力…?圧力かけてはる書状があるな」
「ばっ、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!! おまっ!? それ最初に教えてよ!? 何処のどいつだそんな大マヌケ!?」
「えーと他所の国の…なんやミーズモ国はわかるが大貴族ウカッツ? なんやよう知らんわ、よう自分から大貴族言えるのコイツ…」
「知らん知らんそんな何処の馬の骨かわからん自称大貴族なんか! チューテツ! お前ちょっと文飛ばして国挙げてミーズモの王に経済圧力かけて馬鹿の愚行辞止めさせろ! ちょっとでも渋ったら流通マジで根こそぎ止めてよその国にもミーズモ擁護しようもんなら流すの減らす様に裏まわしとけ! ここの連中にもだ! 聞かなかったらもう武具卸してやんねーぞ! ってな!」
「へいへい」
「テンレス! お前はそれ細かく調べあげてその馬鹿絶対国に入れないよう門番ガチガチにさせとけよ!」
「お、おう急に真面目になりはったなお前……」
「真面目も何もあの子は人の形取ってるだけの「龍」なの! 地龍様改心させられるだけの生き物なの! そんなの怒らせたら目に見えるだろ!」
「せやかてさかいさっき人間出来てるからとか言うてはんかったか?」
「出来てるよ!もうめちゃくちゃ出来てるよ! でも「敵」には別なの! 「龍」には権力とか意味ないの! 脅しでビビってると思ったらそんな事ないから! なまじ逆鱗触ってたらとんでもないからな!? しかも刈った草がまた生えてくるなら今度はどころか土から無くすかみたいに考えるタイプみたいなの!……ところでタマちゃんはなんでその貴族様とかぶっ飛ばしたんだ?」
「ん、え〜と、と通りで子供らが遊んでる所にその馬鹿の一団が通るため子供を1人蹴り飛ばしたから全員それ以上に蹴り飛ばした……らしいわ」
「よし! 干せ! 我が国の宝を蔑ろにする奴らはいなくてヨシ! ついでにちょっと裏ギルドに手回して領民全部抜いて来い」
「費用は?」
「惜しむな!」
「おぉさすがワイらの王、暴君様や……ほな後でチューテツはんと勝手にやっとくわ…他の報告は明日でええか」
「気が利くテンレスちゃんわしは好きよ」
既に出たチューテツの後を追い、テンレスも玉座の間を後にする。
「……ヨシ、じゃあそういうことでわしは……ガンちゃん冷やかしに行こ♡」
そして王は王で……街に遊びに出掛けた。
「ガンちゃ〜ん、暇ァ〜?」
「そーかそーかわざわざ工房内迄入ってきて言うことがそれか」
ガキンッ!
「熱ッ! 熱いよガンちゃ〜ん」
「そら防護服も着ないと熱いだろうな」
ガンガンガン!
「熱つつつつつ!ヒゲ! ヒゲ焼けちゃう! シトリさーんガンちゃんが虐めるんすよ〜」
「あら〜、お菓子べる?」
「食べる食べる、あこれ城から持って来たんで後でガンちゃんとやって」
「わ〜ありがとうドンちゃ〜ん」
「ういーす、シトさん頼まれのお仕事終わったぜ〜」
「ぜー!」
「あらタマちゃんぎーちゃんおかえり。おやつ有るわよ」
「やったぜ、お。ドンテツのおっさんも来てんのか、脱走?」
「いや今日は終わったからガンちゃん冷やかしに来たんじゃよ〜」
「あ〜、解る」
「<お前もう帰れ!タマも賛同すな!」