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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
6章 すったもんだシンシア
194/202

番外ネキ 今日はなんの日? そう、「今」俺が決めた……そう、サラダ記念日……何っ!?貴様ッ(以下略)

 


 ─季節はめぐり、冬。


 しんしんと雪が降り積もり、全てを銀世界へと変える季節。


 そんな事はお構い無しに人の活気と鉄の響く音に煙が上がる都市(まち)、ヴィシソワーズ。


 活気衰えぬ中、変な上り旗を背負った謎の商売屋の声が聞こえ─?



「え〜、雪かき屋、雪かき屋でございます。昨晩の豪雪、結構な量でしょう。屋根に昇ってめんどうな作業がしたくない! さあ困った! そんな時こそ雪かき屋! お値段銀1! お時間とりませんよ〜」


「とりませんよー」


 謎の雪かき屋コンビがよく分からない謳い文句を言いながら歩いていると、ドワーフの主婦であろう1人が雪かき屋……もといタマに声をかける。


「あら、タマちゃんじゃない。こないだはありがとねぇ〜、今日はどうしたの? 雪かき屋?」


「あ、クワルさんちーっす」


「今日もなにか面白そうな事やってるじゃない? 雪かきってあの屋根の?」


「そう、あの屋根の、ついでにつららとりも込み込みっすよ」


「ほんとぉ!? それならぜひお願いしたいわ! いやね、ウチの人ったらタマちゃんのおかげで仕事場広くなったら今度は熱が入りすぎで家の事ほっぽりまくっちゃって大変なのよ〜、溶けて固まったつららも危ないしでちょうどよかったわ」


「買い物の途中すか?」


「今からってぐらいね、お外寒いからねぇ、やっぱりおっくうになっちゃうのよねぇ」


「奥さん奥さん、今ならなんと買い物お家に届いちゃうサービスもあるんすよ? 俺で良けりゃ付き合いますぜ」


 タマの合図で意図を察しぎーとのリュックから数体のプロペラ飛行部隊が展開する。


「あらヤダ! じゃあもうお願いしちゃうしかないじゃない! タマちゃんとこホントいい子だわ〜」


「へへ、可愛いお嬢さんの買い物は進んで手伝えって俺に言われてるもんでね」


「も〜お世辞も上手いんだから! タマちゃんの優しさウチの人も見習って欲しいわ!」


「まま、グステンさんも熱が入ってるでしょうし、そこでそっと美味い飯でも叩きつけてやるのがいい女ってもんすよ」


「そうね! せっかくウチの人もやる気出してるんだし私も頑張っちゃおうかしら!」


「姐さん姐さん、今なら市場に行商来てるらしっすよ。べジプリリなんたらしょうかいがせーるちゅうだとか」


「おーホントおめぇは賢いなぁ(なでなでぐりぐり)」


「うぇっへへへへ」


「だそうですがどうします?」


「あらヤダ! ベジプリおじさん今日来てるの!? 行くわ行くわ! ご近所さんにも教えなきゃ!」


「ぎーと」


「あいあーい。さんかーい!」


「あら! 連絡までしてくれるの? もーホントいい子なんだから! ほら、タマちゃんしゃがんで! いい子いい子!」


「へいへいお褒めに預かり光栄にございますぜよ……よっこいしょ」


「きゃっ」


「お急ぎでしょうし、このままお待ちくださいだぜお嬢さん」


「じゃあ甘えちゃおうかしら?」


 ーーーーー

 ーー



「─で? そのまま買い物手伝って集まった奥様方のネットワークで広がりに広がってなんやかんやでもう都市中の雪を集めたと??」


「そそ。だいたいそんなかんじ」


「しかしお前さんいくらぎーと使ったからって都市から集めた雪仕舞うにしてもどうやっ……アッ」


「なんだ気が付くの早いじゃんガンテツ? そそ。ドンテツの所行って宝物庫から借りてきたんだよ、え〜と、“ 次元共同袋(ウロボロスぽーち)”だっけ?」


「はァァァ~~~~~~~~あ!! そうじゃな! 確かにぎーとにソレを持たせたら双子どころじゃないから相性抜群じゃな!! 一応? いちおう言っとくがソレ国宝な? 国宝。で、なんて言って借りたんじゃ?」

 

「いや? 雪かきするのになにかいい案ねえ?って聞きに行ったら“ こういうのがあるぞい!” って言ってきたから、じゃあ便利だから貸してって言ったら二つ返事でOKだったぜ?」


「もーそうじゃったそうじゃった。クソ王様(アンポンドンテツ)はそういう奴じゃった。ワシ失念」


「いや〜小銭は貯まるし雪も無くなって街が綺麗! いい事したねえ!」


「まぁ確かに突飛な割にはいい事したな。しかしタマお前集めた雪はどうするんじゃ? 街の外に捨てに行くのか?」


「そいやそうだな? ……固めて食うか」


 おもむろにタマが付近の作業台の上に袋を置き、両手を突っ込んで雪をこね始めた。


「こう、おにぎりを握るコツはですね、お口に入れた途端ふわっと解ける絶妙なバランスでの加圧がみそなんですねぇ〜。しかし! 俺にゃ関係あらへん! 圧縮圧縮ゥ! 雪を圧縮ゥ!」


「タマ君ソレおにぎりのくだり要る?」


「ててーん! なんか飴っぽい雪を固めた氷ィ〜」


 タマが取り出した圧縮した“雪 ”は、雪ではなく澄んだ水晶の様な物体へと変貌していた。


「はぁ〜結局お主が食うん……お? ちょっと待て」


「んぁ?」


 早速口に放り込もうとしたタマを制止して懐から片眼鏡式の“ 鑑定鏡”なる物を装着、ソレを鑑定()た。


 ーー


 “「久遠氷塊(クオンゴオリ)」 ”


 ・魔素を微量に含んだ雪が凍土地帯等で積もり、地殻変動等により地中深くへと埋没。

 悠久の時と尋常ならぬ大地の圧力をかけられた事により魔変異を起こし、結晶化した物質。


 ーー


 鑑定鏡を布で拭き、懐にしまい、天井を見上げて深いため息を1つ。


「お主さぁ……」

 

あんはよ(あんだよ)いはひにひいほの(意外にいい物)はのか(なのか)


「あ〜食え食え。その方が本当の産地に迷惑かからんから食っちまえ」


「ほん? よくわからんが遠慮なく……うむ。ひんやりと冷たく噛むほどに口の中が涼しい! こいつぁアレだな、たーしーか……あったあった。コイツを1口……ッ おぅ! 良いねぇ」


「あっこら貴様ワシの工房に酒を隠すなと言ったろうが! しかもイイヤツいつの間に買っとったんじゃ!」


「まーまー後で半分分けてやっからさ、イヤしかしキンキンに冷えたヤツも悪くねぇ」


「全く……ほんとに半分残せよ?」


「へいへい、さーてあと何個作れっかな〜」


「え? まだ作れんのソレ?」


「ん? 触った感じな? ……要る?」


「……2、3個寄越せ。色々使える」


「ええでよ〜ガンテツもコレで1杯やんのか?」


「バカちん、お前と一緒にするな。見た感じ使えそうだったんでな」


「マジぃ? 確かに固めただけの割になんか良さそうだったけどそんなに?」


「そんなに」


「じゃあ借りた土産に2つくらい持ってくか?」


「やめろやめろ、そんなアレ(ドンテツ)に要らん気を効かせないでいい。そんなもん献上でもしたらろくなとこになりゃせん」


「ん、わかった……ウメー(プハー)」


「人が真剣に槌振るっとる横でしたたか美味そうに冷や酒呑むのもやめような?」


「じゃあ仕事止めて一緒に呑むべ」


「はぁ〜もぉ〜……」


「おん? なんだ珍しく忙しいか」


「忙しいとは……言っておらん、じゃろがい!」


 ふぅ、と小さくため息を吐き、深呼吸。


 カッ! と目を見開き突如千手観音とみまごう程の腕を生や─否。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 金属の塊だったものがあれよあれよという間に武器としての刀身の形になり─


「ほれっ!」


 キィン! と弾き出された未だ赤色を保っていたソレは鍛冶場手伝い担当の飛行ぷちぎーとがやっとこでナイスキャッチ。


 そのまま保温用の灰へと持ち去って行った。


 散りばめていたその他工具もかき集めて放り投げれば整備担当のぷちが綺麗に受け取り整備もバッチリ。


 利便と労働力の化身やで。


 閑話休題。



「おわり! 今日の仕事おわり!」


「ひゅー! さっすが! 実はな、さっきのやつ()以外にも稼いだ小銭でかいこんだんだわ。 なんでもキャラバン来てたとかなんとか」


「わっるいヤツじゃの〜本当」



「早速1杯やる?」


「当たり前じゃろがい!」


「ほいほいそれじゃ〜ひと風呂の間に準備しとくわよ〜……そういえば最近結構物売りに来る輩多いけどなんかあんのか?」


「あ〜? そりゃお前年も明けて少し経っとるんだから行商なりなんなりくるじゃろ。儲け時じゃろがい」


「はぁ〜ん成程年もうこしてたのか〜……は!? マジ? クリスマスは!? 正月は!?」



「は? くりすますぅ? しょーがつ? 何言っとんじゃお前は」


「いや年末年始はそういう日があるんだよ、なんか偉い人が磔にされた日とか何とかで酒飲んだりチキン食ったりケーキ食ったり、正月は年明けた祝いに餅に雑煮に酒飲むんだわ」


「ええ……人が磔になってるの酒の肴にするお前んとこ怖……狂っとる」


「確かにそうだな? だがしかし、そんなのなんだっていいんだわ! とりあえず国を挙げてそういうのをする日だよ。そういうのはあって然るべきだ」


「いやお前そういうのが国ぐるみで簡単に出来ると思ったら大間違……アッ(察し)」


「じゃ、俺ノリのいい王様(ドンテツ)に直談判してくるから……あっ先に1杯やってて良いぞ〜! 酒は何時もの棚に追加してあっからじゃーな! ぎーと! ちょっと城まで頼むわ!」


「あいあいマム!」


 言うが否やぎーとのプロペラ隊に運ばれさっさと交渉に行ってしまったタマ。


「あーあーこりゃ余計な祝日増えたな。……ま、言っても聞かんしわしゃしーらないっ」


「ドンちゃーん、今タマちゃんが文字通り飛んで言っちゃったけど何かあった?」


「んー? 簡潔に言うと酒飲む祝日がこの国に増える話じゃよー」


「あら! 良いじゃない?」


「そうか? ……そうか?……まぁ良いか」


「はいガンちゃんタオルに着替え、お風呂沸いてるわよ」


「ヤダ今日も準備良すぎて怖い。助かるわい」


「いいえ〜」


 …………


 ……






 そういう感じで城に突撃したタマが提案した日をそういうの大好きな王様が却下するはずもなく大臣たちも合法的に酒が飲める日としてドワーフの国に

 “クリスマス”

  “大晦日”

 “ 正月”



 が制定されてしまったとか何とか。





 クリスマス? なんか偉い人のうんぬんかんぬんのとりあえずなんか甘いケーキに美味いチキン食って酒を楽しむ日だよ。


 大晦日? 年を越せたねぎらい的な感じで酒を飲んで祝う日だよ。



 正月? 新しい年を迎えられたからめでたい酒を飲む日だよ!



 当初はドワーフの国だけの催しだったが、意外に国の豊かさの誇示にもなるとの事でじわりと範囲と認識が他国にも広まっていってる模様。









 

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― 新着の感想 ―
[一言] >久遠氷塊 >結晶化した物質  っ!!?  溶けない氷!  て事は、これの上で食べ物を切れば食材を痛めずに調理可能!?  まな板にしようぜ!  かなりまな板だよこれ!  まな板の形に圧縮…
[一言] 明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします! タマさん雪かきわざわざしなくても、全身から全く手加減なしで高熱を出して国中の雪を溶かせるのでは? ……………あ!そーだ!…
[良い点] ネキがイケメン。いいぞいいぞ。 [気になる点] 大晦日は酒飲んでそばを食べ 年越しは甘酒もらって初詣 正月はお屠蘇でおせちをいただき 三が日は酒のあてに餅を食べる もしかして日本人はどわー…
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