18ネキ ゴブリンと和解せよ
前回のあらすじ
かみさまふぁきゅー
――――――――――――――
さーさー、暇してる時にこの事態はラッキー!
何じゃろないったい。
少し急いで走り様子が見えるまで近寄ってみる。
お? あの緑色した如何にもな奴もしかしてもしかしなくてもゴブリン? あ、マジだゴブリンだ! おおー! やっぱファンタジーですねこの世界。六年生きてて初めて見たわー。
思ったよりゴブリンゴブリンしてる。
禿頭で、猫背で、鷲鼻で、目つき悪くて、まばらな歯で、錆びた剣とかこん棒持ってらっしゃる。
おー……ちょっと感動。
とかボヘーっと眺めてると、馬車と一緒に倒れてる馬が1匹のゴブリンにぶん殴られて動かなくなり、他のゴブリンが馬車の中から何か引っ張り出すのが見えた。
……人? あ、普通の人や。 馬車乗ってた辺りやっぱ商人ですよ。みたいな見た目してる。
若いなーてっきりおっさんかなとか勝手に思ってたけど青年ですやん。
「だ、誰か助けてくれー!」
こんな平原で助け求めても誰も居ないっちゅーねん。 そのまま食べられて馬と仲良く腹の中だと思うんだよね。
こう、都合よく誰か助けに来ないんかね……
……あ。 俺がいるのか。
此奴助けたら街か何かの場所教えてくれるのでは?
ふと打算的に考える。
まぁ……仲が良い奴なら即座に走ったりするけど、いかんせん他人だしねぇ。
こう、歩道にうっかり出た子供とかをとっさに庇って轢かれるような奴は本当に尊敬すべきだと思う。 そういうのが勇者とかに転生したりするのがテンプレよね。
あ。まって待って、要らんこと考えてるうちにこん棒でぶん殴られそうアイツ。
剣で斬りかかろうとしてるやつもいるし死んでしまったり大怪我なんてされたら俺治療なんて出来ないし。くっそー、魔法くれとかも言っておけばよかったかね。
「とーりーあーえーずー…… ゴブリンズが壁になりそうだし、やるか?」
走っても間に合わなそうなので、適当に地面の土や石を握ってーの、グッと握り固めてーの。適当に団子を作る。団子ができたら後は簡単。
相手の足元に向かって団子をシュウウウウウウ!
「あ、あ……も、もう駄目だ……こんなことになるなら親方の言いつけ守って近道なんてしなけりゃよかった……」
「ギャギャギャ!」
こん棒が青年に振り下ろされる刹那──
「「「ミギャッ!!?」」」
「!?」
投擲した団子がゴブリンたちの足元に命中し、そのまま炸裂。爆発と土煙が巻き起こった。
青年の周りに居たゴブリンたちは弾けた土砂礫に怯んで転倒。間一髪青年はこん棒から逃れることができたようだ。
「けほっ。けほっ……」
「おーい。怪我はないかー? って大丈夫そうやね」
「人!? どこから!? って、もしかして今のは貴方が?」
「そう。俺俺。まー偶々近くに居たから駆けつけてみたら大変そうだったから、とりあえず助けに来たよ」
髪に埃が絡むのは地味に嫌なので、煙よけに収納式の便利なフードですっぽり顔を隠す。
あ。ちなみにさっき投げた団子の仕組みは簡単。
粉を握って固めて壁にぶつけてごらん。結構散らばるで。
コツはまぁ、握る力の具合なんだけど石や土でやるのは俺にしかできないから省略。
凄い簡単に用意できる(地面さえあればいいしね)から目つぶしや怯ませに重宝するのよー?
「あ、ありがとうございます……今のは? ……見たことが無いんですが、魔法か何かですか?」
「ん? あー。そうそう、魔法魔法。細かいことは教えられないけどね」
魔法? んなわけねーじゃん。
これぞ忍法ナンデモマホウノセイ!!
……。
いや、これはガンテツが俺の特技は真面目に説明すると相手が混乱しかしないから、もう全部魔法って事にして誤魔化せって教えてくれたんだよね。
いやーさすがガンテツ。ガンえもんって呼ぼう。
ちなみに本当にそう呼ぶとスゲー嫌がる。 「お前も勇者と一緒で訳の分からん呼び方でワシを呼ぶんじゃない」
ってさ。
勇者ェ……
おっと昔の話に話題が逸れたね。今はゴブリンだ。
「いきなりで悪いんだけど、ゴブリンは俺がなんとかするからさ、倒れてる馬車の中に隠れててもらえる?」
「え? あっ、はい!」
しょーじき守りながらとかめんどくさいからね。入り口の前ブロックしとけば大丈夫やろ、多分。
そんなこんなで隠れさせてると、ゴブリンたちが復帰して俺の周りを囲い始めた。
……もしかして此奴ら、こうやって囲んだり武器持ててる辺り、存外賢いのでは?
試しにちょっとくらい話しかけてみるか?
「やぁ、突然邪魔して悪いけど、言葉が解るならこのまま帰ってくれない?」
ガラにもなく適当に言って話しかけてみる。
普通囲まれると危機感とかそういったものがあるだろうとは思うけど、残念だけど俺にはそういった物は備わってない。
自分の頑丈さは今更だしね。
「ギエエエエエエエ!!!!!」
あっ。要らんこと考えてる間にみんなで殴り掛かられてた。
「あっ!? 危ない!!」
商人が叫ぶ。
ゴン! ゴン! ゴン! ギャン! ゴン! ゴン!ギャン!!
打撃音と少しの剣撃の音が響く。
……。
うん。俺は何を思って話しかけてたのだろうか? 初めて見るゴブリンにちょっとテンション高くなっておかしくなってたかもしれない。
良い子のみんな〜!
一つ良いことを教えてあげよう。
ゴブリンにタコ殴りにされると。悟る。
ハイ、人型の獣っすね此奴ら。ヤドカリのほうが賢いんじゃない?
早速反撃といきたいところだが、潰すと汚そうだしなぁ。いや、潔癖ではないけど……あっ。
そうだ。いいこと思いついたぜ。
殴り掛かられている最中おもむろに一匹掴んで
「ギャ?」
上 に 投げる! 投げる! また投げる! とにかく投げる!
ぽいっ! ぽい! すぽぽぽーい!
「「「ギャーッ!?…………」」」
「うむ。おっけーおっけー」
ぽんぽんと手をはたき宙を眺め、俺満足。
奴らは星になったのだ。
「よし。終わったからもう出てきて大丈夫よ? 馬車起こすのやったげるからさ」
「え? ゴブリンたちはどこに? って、倒れた馬車起こすのなんて無理ですよ」
「ほいっと」
商人? さんが出たのを確認して倒れた馬車を起こす。
うん、車輪は大丈夫そうね 、そして散らばった荷物をひょいひょいと集めーの。
あ、適当に積んでるだけですよハイ。
「わっ!? 凄い……あ、すいません荷物まで積んでもらえるなんて。僕もやります」
二人でササッと荷物を積み直し、寝てる馬を起こしてもらう。
死んでなかったよこの子。
こん棒で殴られてたんこぶ作っただけだったわ。馬にたんこぶってファンタジー現象は初めて見たけどな。
「じゃあ、俺はこれでどっか行くね。俺が偶々近くに居て助かったな。 あ~でも町行きたいな〜でも遠いだろうな~仕方ないけど歩くかぁ……(棒)」
そういって手をひらひら振り、適当な方向に歩き出す。
勿論、町など知らない。大根演技だと自分でも思う。
「あ、あの! よかったら町まで乗ってきませんか!? 護衛という形で、後で親方にお願いして報酬も出してもらいますから!」
ヤッタゼ。 大根でも巧くいくもんすね〜。
「え? 乗せてくれるの? じゃあ、お願いしようかなー」
そう言いながら被りっぱなしでいい加減うっとおしかったフードを取ってファサッーと髪を出す。
「えっ!? 女の人!?」
は? 今更!? 普通おっ前、この俺の服の上からでも主張する立派なお胸で解るだルォ!?