142ネキ この2人組、相性が良すぎる!今まで出会ったどのチームよりも!」「小指が赤い糸で結ばれてるコンビかチクショオ!
前回のあらすじ
頚椎がイかれるので良い子も悪い子も真似しちゃダメだゾ!
――――
店の扉を開けた瞬間、謎の幼女型ロケット弾頭幼女が飛来。
曖昧ではあるが、子供のようだったので咄嗟の判断で甘んじて受け止め、勢いを殺しつつも怪我などさせないように優しく抱えるタマ。
それでも数メートル程派手に転がり、やっと止まったかと思えば─
「あっあっあーッ! 本物や! やっぱりほんまもんの姐さんですやん! 待ってましたよ! オイラいい子で待ってしたよーッ!」
「お、おう?」
「やれやれ……何かの台かと思えば自らの発射台とは……それと、随分と遅かったな。お主」
ふい〜、と溜息を吐きつつ初老の風貌でありながらも、筋骨隆々のカイザー髭紳士がタマを出迎える。
「ん、あぁ。 あっちこっち遊びながら来てたもんでよ……ん? いいセンスの髭のアンタ、初めて会った気がしないんだが……?」
「初めても何も……ふむ? そう言えばお主にこの姿を見せたのは初めてか。我だ、アルドだぞ」
「は? 俺の知ってるアルドはもうちょっとこう、大きくて “おぎゃあ!” とか鳴く友達なんだけど?」
「おまっ……幾ら頂点生物を自負しても生皮生爪剥がされて叫ばない生き物はおらんだろ……」
「あ? その言い方だとマジでアルド? 何、よくある「人になれま〜す」とかいうやつ?」
「よくも何もそんな芸当できる事が希少なのであるが……とにかく人目につく。まずはそいつを腰に下げたままで良いので中に来い。立ち話もなんだ。ゆっくりと腰掛けてからでも色々と説明してやろう」
そして謎のロケット幼女を腰に下げたまま店の中へと、そしてアルド用スペースにて、
……かくかくしかじかどらごんせつめいちう……
「……なぁーるほどな。しっかし……随分と良い見た目になってんなぁ」
「ふむ? 特に意識はしておらぬ故、“人ならば” の感覚で自然と望ましい姿になるのではないか?」
「ん、で。 俺の膝に行儀良く乗ってるこのすげー可愛い子が、“ぎーと” って……マジ? しかも女の子だったんか」
「あい! オイラです!」
「マジも何もお主の飼い蟹のぎーとなんだよなぁ……正直、我も請われた通り人化けを教えてすぐ様覚えたこやつに驚愕を隠せぬ……ちなみに、こやつ達が進化する前に、お主何かやったか?」
「んー? んー……いや別に……あー。 もしかして……“毛玉” か?」
「毛玉?」
「いやたしかぎーとに餌やってる時に、すげ〜タン? か、わかんねぇけど喉に絡むな〜とかでガーッとやって吐き出したら出たんだわ。“赤いグミ” みてーな、なんかゴムゴムしたやつが」
「ふむ、仔細を」
「そんでおもしれータンも出るもんだなぁ……って拾ってまじまじ見てたら“グミ” をぎーとが欲しがったんで投げたんよ」
「それから?」
「そらもういきなりパクー と口ん中に放り込んだと思ったら、うおっまぶしっっ!? て感じに光って、それが収まってた時には見た目変わってたんだよね(ぎーとの喉を撫でながら)」
「(ゴロゴロゴロゴロ……)」
「あー、まぁ……十中八九ソレであろうな。我らもな、栄養の過剰摂取を長く行うと、お主の言ってる事と同様にエネルギーを圧縮して余剰排出する事があるのだ。ましてやお主のように山で美味いからと言ってボリボリ希少鉱石を貪っておればそら出るだろうな……」
「へぇ……じゃあ余った栄養で進化したちゃったとかそんなんか」
「大方そんなものだろう。全く……お主に従順だから良いものの、我に引けを取らぬぞこ奴達は……」
「こんな可愛いビックリドッキリメカみたいな可愛いぎーと沢山居るとかすげーじゃん、まだまだあの中に居るんだろ? どんくらいいるん、ぎーと」
「オイラが一番上なのは間違いねっすけど、正直オイラもオイラ達がどれくらい居るか解ってないんすよね。下のオイラに好きにさせてるのが楽なんで……」
「なるほど沢山……と。なんてすげーヤツなんだお前は! しかもこんなに可愛いくなりやがって! よーし! 撫でてやろう! いょ〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!」
「あばばばばばばばばば(歓喜)」
「よ〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし! うむ、この流れで飴ちゃんの1つでもやりてぇところだが、持ってねえ!」
「飴ちゃんならあるわよー」
工房の奥からひょいと顔を出したシトリがぽいっちょと飴ちゃんを3つパスする。
「何っ!? 助かる! よーし、3つくれてやろう! そらっ!」
「ぴゃっ!?」
雑に放り投げられた可愛らしい個別包装の飴ちゃんを1つはそのまま咥え、別方向に飛んだ飴ちゃんも待機しているぷちが2人で1人をはね上げて空中で飴を蹴る。 そして更に別働隊のぷち。
次々と軌道を変えて無事、2つとも同時に頬張り、立派な頬袋……ちょっと飴ちゃんでかくないっすかね?
ハムスターなってますやん。
「もひゃもももい!(朝飯前だい)」
「おお〜っ! やるじゃねーか! いょ〜〜〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよr」
「ももももももももも(あばばばばばばばばばば)」
「なんだこれ」
馬鹿可愛がりを見てアルドがボソリと呆れの言葉を漏らす。
「あら〜、ガンちゃんの言ってた通りの美人さんじゃないの」
「あ、ちわーす、ヒゲの家ここだって聞いたんで……めっちゃ美幼女やん、ガンテツの妹さんかなんかっすかね? あ、飴ありがとうございますだぜ」
「やっだもう! ガンちゃん聞いた!? 妹さんですって! 私そんな若く見えるかしらぁ!」
「はいはい、シトちゃんはいつでも最高じゃよ……って! お前! タマ! 来てたんかいぃ!?」
どうやらシトリと工房の奥で作業をしていたらしく、次いでガンテツも手ぬぐいで汚れを落としながら店の方へと顔を出してきた。
「おーす。 いつ見てもかっわらねぇ髭面で安心したぜ俺ァ。元気してた?」
「こっちのセリフだっつーの! ……ったく、お前さんの事別に心配はしとらんかったが少しは心配だったわい」
「あっはっは! いや〜結構歩いてきたもんだわ!」
「土産話の1つはあるじゃろうな?」
「あたぼうよ! んでガンテツの横の可愛いこちゃんはどなたなんすかね。妹?」
「妹ぉ? そんなわけ無いじゃろ。ワシの妻じゃよ」
「初めまして〜。ガンテツ君のお嫁さんのシトリって言います。こう見えても結構なおばさんよ〜」
「いやいや、おばさん? シトちゃんがおばさんだったら世界の10割ババアだっつーの」
「やだもう! ガンちゃん言うじゃない!」
「……は? マジ? おめー嫁居たんか!?」
「娘も居るわよ?」
「妻子持ちぃ!? こんなちっさ可愛い嫁さんとかやっぱおめー正真正銘の幼女趣味やんけ!」
「バータレ! ドワーフは皆こんなんだっつーの! シトちゃんが特別可愛いだけなの!」
「うへぇ……じゃあ可愛い嫁さん持ちで有罪! ぎーと! や〜っておしまい!」
「あらほらさっさー!」
「あででででで! チビを使って豆を撃ち出すのはやめろ! 割と痛い!」
「撃ち方やめー!」
「ピーッ!」
部隊長ぷちぎーとの笛音と共にピタリとガンテツへの豆砲火が止む。
「しっかしまぁ……なんつーか……ただいまって言ゃあ良いのか?」
「ったく……来てそうそうこんなとは全く変わっとらんなお前さん……ああ。「おかえり」じゃな」
お互い突き出した拳をコツンと合わせニヤリと笑う。
「じゃあ帰ってきて早速なんだけど……住ませて♡?」
「はァ〜〜……今更1人2人増えたところで変わりゃせんわ……もう良い。今日は店じまいじゃ。シトちゃん悪いが外の「プレートならもう閉店にしてきてあるわよ」はええな!?」
「どれ……我もお主の旅の土産話が気になるな。是非聞きたいものだ」
「お手!」
「あい!」
「おすわり」
「あい!」
「イキってた頃のアルドの真似!」
「ぐわっはっはっはぁ〜〜! 我の息吹で塵となるが良い! どぅ らごぉんぶぅれすぅ〜〜!」
「おお……! やっぱお前ぎーとなんだな! いやぁ可愛い可愛いよしよしよしよし」
「あばばばば(勢いが速いので頭がブレる)」
「何教えこんでたのお主ぃ!? 敢えて似てないモノマネで我の黒歴史ほじくり返すのやめて!」
「あ〜騒がしい騒がしい……ったく、退屈しなさそうじゃわい……」
「でもその言ってる事の割にとっても嬉しそうじゃない? はいお茶とお菓子」
「シトちゃん流石すぎて怖い。はは、まぁ、顔にでとったか」
「ええ。 とっても」
「お! チェステーブルに置いてあんじゃん! やろうぜアルド!」
「お主ルール知ってんの?」
「やりながら教えてくれよ! ま、負けてるうちに覚えらァ」
「姐さんに負けはない! よってオイラが姐さんのコマとなる!」
「しれっと新ルールぶち込むのやめて?」
「はぁ〜騒がしい……」
「ふふっ……そうね。とっても賑やかで良いわね」
「フッ。そうじゃな……
…………
……
こうして、長い?旅路の末、無事旅を終える事ができたタマ。
物語も一段落……
と。 思うじゃん?
これがまだまだ続くんだなぁ!
一方その頃。 エルフの森に異変が起きたとの通達を受けたダイチ。
そして当たり障りなくダンジョンを経営しているロッジの下に……
「マスターマスター。お手紙が届いてますよ」
「はぁ? 手紙? バカ言うなよ」
「えーと……“力有る迷宮の主よ。此度は貴殿の力を認め、迷宮の主が集う催しに招待する。是非参加されたし” ……だそうですね」
「……はぁー? 意味わかんねぇな。なんだ? もしかして俺みてぇなダンジョンマスターが実は沢山居るので集まりしましょうよ! ってか?」
「概ね間違いない解釈かと」
「マジかよ」
一通の謎の手紙が届いていた。