141 邂逅と読んで衝突事故と書く
前回のあらすじ
「……シトリ殿、奴は多少なり動く素振りあったかね?」
「ぎーとちゃん? うーん、なんかね、お腹痛いの? とか聞いてみても、
“そういうわけじゃないんすよ……人で、言うところの第六感っすかね……大丈夫なんで……”
とか言ってずっと固まってるのよね……まぁ、ちびちゃん達はいつも通りガンちゃんの手伝いしてるんだけど……」
「ふむ……大方新しい発作の止め方でも試してるのではないか? 静かで助かる」
「そうかしらね〜、調子悪そうな訳じゃないからいいかしら〜」
――――
到ッ着!
圧倒的短縮ッ!
道中珍道中? ハプニング? そんなもの一切と合切すっ飛ばしての到着であるッ!
そういう所よくあるからね、ショウガナイネ!
“発着場” とやらは飛び立った港の街とは違い、高山都市。否。
城塞都市と言っても過言ではないそそり立つ城壁に囲まれ、尚且つ壁越しにでも確認できる城下、町並はまさに都市。
彡(-)(-)「ンゴー。(お疲れ様でした。それではまたのご利用お待ちしております)」
「ん? おーうすっげ楽しかったぜ! またなー」
黄金に輝く体躯を空になびかせ、泳ぐ様に美しく飛び去っていくワイバーン。
そこ、鳥顔とか言わない。 台無しになるから。
飛竜に別れを告げ、辺りを見回し都市への入口たる門を見つけ、向かうタマ。
飛竜の到着は見えていたはずだが、門番の男2人は特段驚いた様子もなく、タマが向かってくるのを静かに待っている。
「ちーす、慣れてんの? コレ?」
「おう! ようこそドワーフの国、ヴィシソワーズへ! 慣れてるっつーか此処の門はそういう所だからな!」
「ついでに特急便の飛竜が来る事もわかってるしよ!」
「そんでアンタが来る事もキングから伝わってるしな!」
「ま、一応身分証明書は見せて通ってくれよな!」
「おん? キング? あとほい」
「まーざっくり言うとギルドとギルドの間に当然連絡行くだろ?
連絡もなしに飛竜便は飛ばねえ」
「そういう事よ! お、銀か。 中々じゃないか! OK、通って良いぜ!」
「さんきゅー。そりゃ連絡も行くか」
(ん? 電話かなんかあんのか? ……ま、良いか! )
別段電話があろうが無かろうがどうだっていい。それがタマさんクオリティ。
すんなりと門番から通してもらい、都市の中へと入る。
「……おおー……」
港街とは一転して変わって見慣れぬ風景。
街の至る所から煙突が伸び、煙を吐き出し。
ドワーフの国であるから当然ドワーフが行き交い、ドワーフ以外にも人、亜人、はたまた見たことのない魔物を引き連れている者も居る。
人の活気。 鉄の響く都。 都市自体が山。山自体が国。
それが鉱山都市。
見たことのない光景に少しだけ胸を躍らせ、自然と口角が上がる。
そして元来の目的のガンテツの下へ戻ることを思い出し、頬を優しくピシャリと両の手で気合いを入れ、早速道行く人にガンテツの居場所を聞くことにした。
丁度よく近くに人族の住人が居る。
「すみませーん、おねーさん。ちょっといいすかね」
「あ、はーいなんでしょ……わひゃっ!? おっき……あっ、すみません失礼しました……」
「いーのいーの。よく言われんだよ」
「すみません此処で半巨人とかあまり見ないもので……ところでご用件はなんでしょうか?」
「俺ね、“ガンテツ” ってヒゲ……ドワーフと知り合いで、此処まで来たんだけどよ、何分来たの初めてだから道わかんねぇんだわ……タダとは言わないからさ、道だいたいで教えてくんね?」
「ガンテツさんとお知り合いなんですか!?」
「いやまあ肩組んで酒飲み明かしたくらいにゃ知り合いだぜ?」
「フフっ……体格差想像するとちよっと笑っちゃいました。すみません……」
「ほんでよ、待っとるから来いや! ……とか言われてたっけ? まぁ、そんな感じで遊びに来てんだけど早速、大きな迷子の出来上がりサ。パパ〜ママ〜何処〜? ガンテツのヒゲ何処〜……何処〜……ってみんなヒゲばっかじゃないか!(小声)」
「プッ、アハハ…… まぁ、ドワーフの皆さん立派なお髭がありますので……ガンテツさんの所でしたら近くまで案内しますよ。急いでいませんし」
「マジ? やったあ!…………
…………カットしよう!
ネキ移動中……Now Loading……
……
「……あ、見えてきましたよ! あそこの大きなお店がガンテツさんの家兼お店になってます」
「お! おーおー! 立派な建物やん! おねーさんありがとうね! これ道案内代として受け取ってよ!」
「あっ、はいどうも……ええっ!?」
銀貨の1、2枚でも頂けるのかと思いきや、雑に鷲掴みされた銀貨の塊(金貨地味に混じってる)を手に渡され、驚く暇もなくタマがガンテツの店へと駆けていってしまった。
「え、ええ……?」
手のひらに適当に盛られた硬貨を見て扱いに困る住人のおねーさんであったが、
「おお!? すげーチップ貰ってんじゃん! 今夜は旦那にいいもの食わしてやんな!」
「うひー! 俺なら迷わず酒にするね!」
一部始終を見ていたドワーフ達にツイてるねえ! ともてはやされたので、そうか……ラッキーだったのかと、無理やり納得して有難く財布に押し込む事にした。
ありがとう……半巨人のおねーさん。 と。
ちなみに今晩はご馳走だったそうです。
所変わりガンテツの店。
工房の扉をタマが押し、チリ……と、鐘が鳴るかと思いき「姐っさァーーーーーーーーーーーーーーんッ!!!」
「うおっほぉ!?」
カタパルトから解き放たれたぎーとがはち切れたペットボトルロケットの如く射出。 タマの腹部へと猛烈な頭突きをかます構図となる。
そうだね。 火球爆獄だね!
「なんだぁ!?」
「ぴゃぁぁぁーーーーーーッ!」
長くてやべー奴と。 小さくてやべー奴が。
遂に。
出逢った〜。 (うる⚪んのアレ)