138ネキ freedrink (フリードリンク)
前回のあらすじ
祭りは続くヨ!
あと、飲んでも呑まれるな。だ!
――――
─例の酔っ払いの件とは別の場所。
何処の町にもあるような大通りの十字路を利用した広場にて。
「銀の方こんにちは! 其方の方は如何でしたか?」
タマと同じ形で銅色の腕章を付けた冒険者の男が話しかけてくる。
「ぼーちぼちやんな。おっちゃん年下にも敬語とか使うタイプ?」
「あ、おねえさんそういうの気にしないほうか」
「上品は前世に置いてきちまったなァ」
「ぷッ……とっつきやすい方で良かったぜ」
「なんだ種類があるみたいな言い方だな?」
「ん? あーまぁ、その言い方だと知らないっつーか、本当に銀か?」
「田舎の出なもんで腕だけはあるってヤツよ、良かったらこの超絶田舎美少女の俺に教えてほしいですわよ」
「美少女ってアンタ、その身長で言うのかよ」
「はァー? もうどっからどう見てもちょっとクソでかいだけなんですけどぉー?」
「アハハッ! アンタみたいのなのも居るんだな! えーとじゃあ簡単に話すとだな、アンタみたいな話の解る面白いのも居れば自分より色の低い奴はゴミってのも居るんだわ」
「はーそんな如何にもな面白い奴居るんだ?」
「居るんだなこれが。だから目上様にゃ敬語で話し掛けるのが無難、ってわけだ。しかもアンタ黙ってたらキツそうな感じあるからな、まぁその両手に持ってる串と串見なかったらスルーしてたけどな」
「1本食うけ?」
「お、くれるのか。すまん……お? 美味い。何処に売ってたんだ?」
「あっちの通り行って突き当たり右の通りに売ってたわ。まぁ、ギルド払いだけどな!」
「あー俺も後で行くわ、良い店ありがとよ」
「つーかツケ利くってギルド太っ腹やんな?」
「そりゃアンタ、この楽しい日にいざこざ探して割って入るんだからそれくらい欲しいぜ。っても此処だけの話だからギルマス話が解るよな」
「まー贅沢言ったら俺ぁコレつまみに丁度良いとか思ってるけど流石にな」
「いや? 別に飲んだらダメ。みたいな決まりはないぞ?」
「まじ?」
「そりゃ冒険者なんて自己責任が脚生やして生きてるようなもんだから個人の自由よ。仕事がこなせるならどんな変人奇人だって冒険者やってんだから酒くらいじゃなぁ……つーかアンタイけるクチなのかよ」
「そらもう樽でイケらぁな」
「ハハッ、そんなに言うならあっちのほうでジョッキの早飲み大会やってるから行ったらど「えっ! マジで? 行く行く! サンキューな!」
飲めると聞き、男が言い終わる前に駆けていったタマ。
「あっおい……ホントに言っちまったよあのねーちゃん……あんなんで腕章つけられるってことは相当信用あるんだな……
全く、認可だした職員の顔が見てみたいぜ……」
残された男は顎髭を軽く弄りながら渡された食べかけの串をチラリと見る。
「えっーと、確か向こうの突き当たり、右とか言ってたな……」
―――
―
早飲み大会やってるほうの広場だヨ!
「さぁーさぁー現在のトップはベネ選手の15本! 他の飲兵衛たちも追い上げるがそりゃそうだ! 10もジョッキを飲めばもうお腹は一杯! このまま追随を許さず逃げ切るのか〜!? 我こそはと思う方! 飛び入りOKですので待ってるぜー!」
口と襟周りを麦酒でビショビショにしながらも酒飲みたちによる盛り上がりを見せる所にタマが大きな声で割って登場。
「はい、参加費は!?」
「とーぜん無料だから誰でもカモン! って、おーっとこりゃ綺麗なねーちゃんが突然の参戦かぁー!? って腕章付きとはこりゃ珍しい珍事だぁ!?」
「おうよ! ルールは!?」
「YES! ヤル気はバッチリなら誰だってOKさ! 席はあっち! ルールは時間内にジョッキを沢山飲めた方の勝ち! 現在のトップはベネ選手の18! お嬢さん名前は!」
「タマ!」
「OK! 突如現れたビューティーウーマンに会場も盛り上がりを見せるぜ! だがしかし残り時間は後5分! 今からの一気でベネ選手を追い抜けるかぁ〜!? 現在20! 止まらなぁーい!」
「はぁ? 5分と言わず今すぐ勝ってやらあな! 樽持ってこい! 樽! ……あっ、樽ない?」
「NO! NO! NO! 有ります! 樽! そしてなんという大見得だぁ!? これには会場もざわめくぅ〜!?」
そしてスタッフ2人掛りにて樽がタマの前に運ばれ、ドン! と重量のある音をたて置かれた。
それを見てタマは舌なめずり。
「うおー、マージで樽あんのかよ! じゃあ、イッキマース!」
槌も要らず素手にて鏡開き、両手で樽を持ち上げ、
「おおっ!?」 「マジでやんのか!?」 「いや無理だろ」
驚くギャラリーに、
「飛び入りかなんか知らねぇが今からの俺の22……ウエップ。……はぜってー無理だし樽なんてそもそも大見得……
飲む。 飲む。 飲む呑む飲む呑む。 飲む。
多少離れても聞こえるほど豪快に喉を鳴らし服に酒が零れることなどお構いなく一気に飲む。
─そして。
「ングっ、ングっ、ングっ……ぷっはぁーーーーー!」
空になった樽をそこらに投げつけ泡まみれの口を袖で拭き、見事1樽を本当に飲み干した。
これにはおいおいまさかと思ってるていた観衆も途中から無言になり、飲み干したのを確認すると少しの間目を点にし、
「う、うぉぉおおおお!?」
「ま、マジで樽空にしやがった!?」
「こ、これはやべえぞ! まさかの飛び入り参加で来た美人冒険者のねーちゃんがまさかの樽一気に飲みだーーーーーー! あれだけあった麦酒は何処にー!? これには隣のベネ選手も唖然! そしてそろそろTimeアーップが近い!」
「あ、おかわりある?」
「うぎゃーっ!? タマ選手化け物だーーーーーー! もう、優勝! 優勝でいいでしょこんなん! OK!?」
「イエーーーーーッ!」
「いいぞーーーーー!」
「すげぇぜーーーーッ!」
「祭りは最高だな! ケプッ」
その日、2樽を飲み干した女として町の飲兵衛界隈で伝説になったとかならなかったとか。




