133ネキ キャット・リボルビングステーク
前回のあらすじ
Q
そういえばタマさん袋持ってないのに扉結構ひっぺがしてますよね?
A
道中食い歩いて無くしてるんやで。
――――
迷宮入り最深部にて直立、悠久の時を経て、巨大な鉄巨人こと“門番”の兜の奥、淡い桃色の光1つ。えもいわれぬ起動音にて灯る。
右、左、上、下。 視覚装置の作動を確認のため、“番人”の目が十字を切った。
それと同時に─
タマとダイチに電流走る。
「っ!? おいダイチ!」
「ええ!」
「ダイチ!? タマさんも!? え、なに? もしかしてアイツヤバそうなの!?」
「「ド○やんけ(ですな)!」」
「……はぁ? ど、ド○ぅ……?」
「“グポーン!” だってよ、マジ? 俺初めてあの音聞いたわ」
「拙者も右に同じく! 初生“グポーン”ですぞ! いやはや素晴らしい! テンション上がりますなあ!!」
「は? え? ぐぽ……なに?」
「推察するに“番人”の起動音と視覚装置の確認動作に反応、興奮した模様」
「なんで?」
「さあ? こういう時にダイチに聞いても「“浪漫”ですぞ!」とか言うから……」
「あぁー……成程いつものヤツね」
目頭を押さえて天を仰ぎ、キャッキャとはしゃぐダイチにリーフが問い掛ける。
「で、聞きたい所は結局相手していい奴なの?」
「あ、ハイ。それはそれ、コレはコレでござるからやっちゃうでござるか」
「ああそう……」
「別にスルーして先に行きゃ良いんじゃね?」
「それもアリっちゃ有りですが一応拙者たち、調査名目故の攻略でして……更に不躾なお願いになり申すが、拙者たちでどうにもならなかった場合にお願いしたい所存にござる」
「んー? 俺ァ別にえーよ。ほいじゃ隅に寄ってるから、なにかある前に呼んでね……よっこいせ」
「有り難きにござる」
「ん、私たちでやるんだ?」
「簡単に説明すると、拙者“たち”で倒せることが報告目的でござるからな」
「なる」
「リーフー、“番人”がもう来るぞ〜」
「やったるにゃー」
「はいはい、見てるわよ。……じゃあ、こいつはどうかしら!」
挨拶代わりに“番人”の頭部へと矢にしては遅い弾速の矢を放つリーフ。
「ほいほーい……“影槍”!」
合わせるようにナハトの足元の影が伸び、鋭い影が撃ち出された。
初撃、矢が。 次弾に影の槍。
矢の形に圧縮されていた風の魔法が炸裂し弾ける。
影の槍が“番人”の胸部へと差し迫る。
しかし、同時着弾により多少仰け反ったものの、結果としては“それだけ”に終わってしまった。
弾けた風の刃と影の槍のどちらも“番人”の表面に傷をつけるに至っていない。
「まぁ、そんなもんかしらね」
「ん、ボスなだけはある。結構強めに造ったんだけどな……」
「“猫掌底打”!」
いつの間にか接近していたケッタが“番人”の脛に掌底を打ち込む。 そして軽やかにバク転離脱。
鈍く響く音が空間内に響いて、装甲に亀裂が入り多少バランスを崩したものの、すぐさま体勢を立て直す“番人”。
それと同時にケッタが毒づく。
「にゃッ!? めんどくさっ!」
亀裂ができた部分がゆっくりと塞がってゆく。
「自己修復搭載とか珍しいでござるなぁ……流石というかなんというか」
「ケッタのパンチでこれとかどうすんの? 思いっきりやる?」
「ノンノン。ここはスマートに拙者たちのチームワークで賢く行くところでござるよ……と、いうことで〜……気になるあの子も丸裸! これでまるっとおみとおし! ん〜“鑑っ定”!」
両の手で♡の形に手を合わせ謎の怪しい体勢にて“番人”を覗き込むダイチ。
「……」
それを非常に訝しげに半目で見るリーフ。
「ふむふむ……ほうほう……な、なんとぉ!」
「……前から聞きたかったんだけど、あんたのソレ必ずやんないとダメなヤツなの?」
「いえ、全く(キリッ)」
「……やる理由は?」
「伊達と酔狂にござるよ!(キリリッ)」
「あーうん。そんなヤツだったわねアンタ。……で、今ケッタが相手してくれてる“番人”をアンタが言うスマートに倒す方法は?」
「ズバリ! “DO☆KU☆BA☆RI”作戦にござる!」
「なんかその関節どうなってるかわかんないポーズはいいから、説明しなさい」
「アッハイ。“ど”うにかして“く”ろうせずに“ば”っち“り”なんとかなるだろう作戦でござる」
「雑ぅ! ……ハァ〜……子細は?」
「胸部の中心に行動を統括する部分があるのでそこにアルドをブスリ♂と、差し込めば魔力遮断を起こして回路が止まるので動かなくなるでござるよ」
「アンタはもー最初っからそう言えば良いのに……」
「で、どうやって刺すの?」
「はいナハトいい所突いたでござる! それを今から説め……」
「“番人”そっちに向かってるにゃよー!」
「おおっと!」「きゃ」「おっ」
止まっている標的を発見し、そちらに目標を切り替えた“番人”が腰に携えていた剣を抜き、地を這う横薙ぎにてダイチたちに攻撃をする。
リーフとナハトを脇に抱えて軽やかにダイチが回避。
「ナハトが足止め! リーフは“番人”の妨害! ケッタは適当!」
離れた所に2人を下ろした後、剣を抜いてケッタの加勢をすべく“番人”の周囲を動き回る。
当たれば間違いなくただでは済まない質量の攻撃を、ケッタは軽やかに、ダイチは時に剣でいなして躱す。
暫く“番人”からの攻撃を躱していると、準備を終えたナハトから合図がかかった。
「拘束準備おけー!」
「いつでもいいでござる!」
「りょ! んんんん……“影沼拘束”!
」
ナハトが叫ぶと、“番人”の足元の影が突如大きく広がった影は沼となり、“番人”は自重にて膝下まで沈みその場から動くことを許されなくなる。
咄嗟の判断で剣を地面に突き立て沼からの脱出を図るが、小さな風切り音と共に侵入してきた小さな“矢”が 弾ける。
─それは“矢”ではなく“矢の形に押し込められた”風の爆弾であった。
突き立てようとしている剣は大きく弾かれ、更に数発の連続した暴風弾が間髪容れずに炸裂、足元が悪い事も相まって力が入りづらく、容易く無防備な状態に貼り付けられてしまい、腕を少しでも動かそうものなら追加の暴風弾のおかわりが延々と飛んでくる。
細かく仰け反りを連発する“番人”のその隙を逃さずダイチが切り込み、飛び上がって“番人”の胸部へと1太刀、否、2345……同じ箇所へと何度も切り込み傷が塞がるより先に傷を大きくしてゆく。
「ビン! ビンビンビンビン!」
そして。
「チクッ♂!」
チクリとは程遠い勢いにて深深と彫られた切り込みにアルドが突き立てられた。
「ケッタ! “思いっきり蹴り込む”でござる!」
「あいにゃー!」
ダイチから合図を受けると同時に、ケッタの背後にはリーフが放った“矢”が数本、迫っていた。
同士討ちか? 否。 宙に飛び上がったケッタに追従するように“矢”が曲がる。
その“矢”がケッタの靴裏で弾ける。 それをケッタは“蹴り”、さらに跳躍、空を蹴っての三角飛びを披露。
高度も十分に跳躍した頃、毛色の違う“矢”が飛来。 そしてそれは爆発と言っても過言ではない炸裂を起こし─それを足場に爆発的な加速で“番人”へと急降下を行なった。
勢いを全く殺さずに反転、“番人”の胸部に刺さっている剣へと狙いを定め、
天を往く猫の流星脚が炸裂。
寸分たがわず正確に押し込まれた剣は必殺の杭となり“番人”の行動を司る中枢装置を貫通。勢い余って背部から切っ先が覗くまで深深と穿った。
中枢装置を破壊されたことによりシステムダウン、蹴りの勢いも相まって大きく仰け反り、倒れる。
─“番人”は、動かない。
「YES! 上手く行ったでござるな! ナイスラ○ダーキックにござるよケッタ、これには本郷さんもニッコリでござるな!」
「猫、南無三……にゃ」
礼を以って締めるケッタ。と、離れていたナハトとリーフが合流し、観戦していたタマも合流。
「上手く行ったみたいね」
「おつおーつ」
「リーフの風球ナイス配置だったにゃ〜」
「当然よ、つかそんな芸当できるアンタも大概だからね」
「文字通り影の功労者たる私も讃えろー?」
「ナハトもえらいにゃー。流石だにゃ〜」
「フッフッフッフッ……」
「うーす、お疲れ様さーん。みんなやるじゃーん」
「あ、タマ殿、拙者の申し出を快く受けてくれてありがとうございましたにござる。見事皆のチームワークにて此処も攻略でき、王のほうにも良い報告ができそうでござるよ!」
「いやぁ、俺としても楽しかったしまた誘ってくれてもええんやで?」
「はは、これはタマ殿の助力が必要な時は是非お願いしたいですなぁ……早速なのですが、1つお願いをしても?」
「ん?」
「ぶっ刺したのは良いものの、抜くことを考慮していなかったのでアルドを“番人”から抜くのを手伝ってください」
「いや、構わねえけど……なんで土下座なん」
「お願いはDO☆GE☆ZAスタイルに限るでござるからな」
「アンタホント頭切れるのにそういうところ抜けてるのどうなってんのよ……ハァ」
“千変万化の迷宮”、BOSS撃破により、CLEAR!