131ネキ タマと球。成程アメリカンクラッカー
前回のあらす……きんにく。
Q ニューtonさんって?
A 。
自然筋肉哲学者、筋肉数学者、物理学筋肉者、天文筋肉学者、筋肉神学者。 有名な話として、ニューton筋力学の確立や微積筋肉分法の発見がある。筋肉暦1717年に増筋局長としてニューton比価および兌換率を定めた。
万有筋力発見の下りは、
ニューtonがいつもの空気椅子で窓辺から庭のダンベルの成る木を眺めていると、ゴトリ。ゴトリとダンベルが落ちゆくのが目に映る。
しかし、偶然通りかかった美幼女の真上にこれまた偶然ベンチプレスチャンピオン級のバーベルが!
これはいけないと窓をぶち破り質量を持った残像を出しながら駆けつけ間一髪! なんとか受け止めることに成功した。
この時、筋力が有ればいざと言う時、普段使いにも有用なことから、「万有筋力」を発見したのはあまりにも有名なエピソードである。
詳しくは「世界筋肉偉人伝」に記されているので省略。
――――
「─坂道?」
「坂にゃ」
「坂でござる」
「結構な上り坂ね」
「それじゃー手ぇ離すぞー……ん? 戻んねぇな? ま、いいわ。なになに? 坂? ボウリングのガーターみてぇだな」
上げていた扉から手を離すが、降りてくる気配が無いので別に良いやと放置することにしたタマ。
(多分原因は内部が捻くれてるからだと思います)
ツッコミは不在故に扉は捨て置かれ、皆と合流し、現在居るちょっとしたスペースから曲がる先の通路を覗くと、床全体が緩やかに湾曲した延々続く一本道の上り坂、最奥は目視では確認できないほど長く続いている。
「ちなみに正しい呼びはガターらしいですぞ」
「へぇ」
「とは言っても言葉の意味なんて変わるからさして気にすることではござらんですがね」
「そういう考えができるお前、俺は好きよ」
「恐悦至極にござる」
「あ、やっぱなんか書いてる……ふむふむ? “絶望の周期。勇敢なる1人が行く。その先かの者が終止符をうつ” ……ん〜、定期的に危ないから1人を先に行かせるといいよ! ……的な?」
「読めるアンタも大概だけど古代の人なんでこんな変な書き方してんの? 何? 古代人ってアンタと同類?」
「さあね〜。もしかしたら私たち魔族系の人たちが建てたんじゃない? ココ」
「ほんで、絶望ってこの音のことかにゃ?」
「この? あ。これかしらね」
「耳の良い獣人と耳ざといエルフにしか聞こえねー」
「じきにわかるわよ」
「……ふむでござる?」
「んー? どれどれ」
ナハトが身を乗り出し通路の奥を見つめ、すこしばかりその場で待っていると確かに通路の奥から音が聞こえる。
ゴゥン……
ゴゥン……ゴゥン……
ゴゥン……! ゴゥン……!
「うげっ!?」
通路の奥から姿を現した物とは。
─鉄球であった。
何の変哲もない巨大な鉄の球。
しかし通路を隙間なく埋めるほどの巨大な塊。それがゆっくり、ゆっくり坂を下ってくる。
ナハトは素早く危険が無いように小部屋に戻り、その塊が目の前を通り過ぎるのを見届ける。
通り過ぎていった巨大鉄球は下り坂の闇の中へと消えていった……
「……どーするんの? アレ」
「私に聞かないでよ……察するにまた来るんでしょ、アレ」
「お? よく見ると通路の壁に1人くらいは入れる隙間が奥に見えるにゃよ?」
「成程。 1人を先行させて奥に停止スイッチもしくは1人ずつ順番に隙間に挟まって行けということですな?」
「……うーん。なんか聞いてるだけでめんどくせえなァ……あんなもん来たら返せば良いだろ」
「成程、そういう発想しますかタマさ……うぇ? 今、なんて?」
「いや、だからよ、リーフちゃん。あんな生意気に通り道塞いでくる球っころなんてな」
「止めて蹴るなりなんなりで返してやりゃ良いんだよ」
「えぇ……?」
「よーし決まり。決めた。なーにが絶望だってのめんどくせぇ。もっと真っ直ぐバリアフリーにしろってんだ」
「バリア……?」
「リーフ、わかるように説明するとタマ殿は“ダンジョンの階段に手すりと案内を付けてもっと優しくしろ” と言ってる感じでござる」
「……正直無茶苦茶過ぎない?」
「味方で、拙者が、楽で! 助かるので、正直どうにでも! なーれでござる」
「……そうね。あとその貧乏ゆすりみたいな左右にすごいブレて残像が見える動き止めなさい」
「おっとついシャゲダンが」
「お? 慣れたかリーフ」
「ナハトとケッタのアンタ2人が順応早くておかしいだけよ?」
「そうかー?」
「そうよ」
一行が言葉を交わしていると、通路の奥から再び例の巨大鉄球が接近してくる音が聞こえる。
「お、早速来たか。なァに、たかが球っころ1つ、このタマさんが押し返してやりますよ」
「アク○ズぅ!」
「……ダイチ、そのへんちくりんなマスクと被り物は?」
「なりきり赤い3倍セットにござる」
「うん。わかんないからスルーするわね」
そんなダイチとリーフの漫談をよそにタマは通路に立ち、仁王立ちにて迫り来る鉄球を待つ。
軽いジェスチャーにて離れておけとの指示をタマから受け取っているダイチは小部屋の端に一行を集めてもしもの時の被害の軽減を図る。
そして、タマの目前へと巨大鉄球が迫り
「おーし、そんじゃ球撃ちって言ったらこれだな……どっせい!」
ダイチ達が思わず咄嗟に耳を塞ぐほどの鈍く響く衝突音。
巨大鉄球を腰を落とした姿勢の突き出した左の手でガッチリと受け止め、腰をねじり振り被った右手の掌底により、打撃。 発射。
「今なんか思い着いた秘技、バト○フェニックス!」
「スーパー○ーダマンんんんんん!」
ダイチのツッコミと同時に、理外の一撃を受けた鉄球は上り坂を下る速度とは比較にならない速度にて上がる。っていうかもうこれ滑る。滑る滑る。
当然終わりは来るもので壁終わりの排出口にホールインワン。
次球とガッチンコしてしまった鉄球同士は力の逃げ場を失い爆砕。 当然中の装置もお釈迦に。
これこそ俗に言われる “玉突き事故” である。
古事記にもそう書いてある。(違う)
通路の奥から響く爆砕音に再び驚いて飛び上がるダイチ一行。
手の埃をはたきつつ、ふんす。と満足気なタマ。
「おっけー。次行くべ」
「ネタがニッチ過ぎないでござらんでしょうか?」
「いや、俺はともかく解るおめーがすげーよ」
「嗜みですので」
「さよか」
「……良いのかしら……ダンジョンこんな風に突破して……」
「ストロングでかっけえ……」
「楽ちんにゃぁ」
“鉄球坂” 機能不全により CLEAR!
……CLEAR?




