123ネキ Shall we ダンジョン?
前回のあらすじ
サンバのリズムで割り込んでも良かったかもしれない。
そんなことするやつ居る?
……キシダ? ……うっ!? 頭が……ッ!
――――
「おーおーおーおー、んだよ人ん仕事場の真ん前で騒ぎ起こすたァどんな奴……なーにやってんだダイチ」
様子を見に少しばかり遅れてきたゼットが野次馬を掻き分け現れる。が、三点倒立を見て思わずダイチに状況を尋ねた。
「あ、ちょうど良いところにきてくれたでござるよゼット殿」
「どういった騒ぎだこりゃ……お! もしかして、アンタ兄貴が言ってた奴だな! おー確かに兄貴の言ってたまんまで綺麗所さんじゃねーか! 握手してくれ! 握手!」
「お、おう? 構わんが兄貴?」
「あーそっか、アンタが乗ってきた船の船長知ってるか? ほれ、こんーなヒゲ生やしてて今時見ねぇ海賊帽被ったおっさん、アレ俺の兄貴なんだわ」
「え? マジ? マッキー船長弟居たんか?」
「マジマジ。俺弟のゼットって言うんだわ! 此処じゃちょっとだけ偉いギルド長とかやってんだ! 良かったら来てくれよ! 兄貴の話だけじゃさあ」
「確かに言われりゃ似てんな……」
タマを発見したゼットが嬉嬉として握手をねだり船長の弟と言うのも嘘ではなさそうなため流されるまま握手に応じる。
「おーありがてえありがてえ! ……で、誰でも良いから説明くれるか?」
「俺で良かったらざっくりと説明会するっすよー」
「なんだ? 紙切れが喋ってやがる」
するりとタマのポーチから紙コーイチが状況説明のために現れた。
「あ、全然驚かないんすね」
「紙切れが喋ったくらいで驚いてたらこの仕事なんてできねえよ。あ、ダイチ、俺がケツ持つから取り敢えずそこの嬢ちゃん連れて休ましてきてやんな」
「お気遣い感謝。リーフ、拙者らは一旦ナハトを看てくるでござるよ」
「う、うん……」
やや白目をむいて結構残念な感じに気絶しているナハトを抱え、一旦ダイチ組が、その場から離脱。
「あ、そっすか。それは話が早くて助かるっす では、カクカクしかじかモンモコモン……」
〜〜〜
「……ふむ、まぁざっくり纏めるとそこのタマちゃんのカバンがスられたからお前が出てきて追って此処に来て話をしようとしたら力で黙らされたから転がして外から来た嬢ちゃんたちに勘違いされてダイチが割り込んできて今……でいいのな?」
「いえーす。詳しくは言えませんがそのアイテムポーチはタマさんにとってどんな方法でも取り返さないといけない代物っすね」
「……テンバイさんよ、商売長くやってたらこういうの、“匂い”でわかんなかったのか?」
「……無論。しかし決め事は頭目が絶対ですので……」
「カーッ! 仕事人だねぇ! 飛んだ災難つーかテンバイさんも欲に目が眩んだか……んで、横流し。 表に出てきちまったから多分アンタら無くなるぞ」
「まぁ、報いでしょうな」
「……随分と落ち着いてるなアンタ」
「見ての通り結構な歳ですし、老い先短いでしょうからどうにでもなるでしょうと達観してるだけですよ」
「うーん俺が部下に欲しいくらいだわ、アンタ。 ……ま、どうなるかは置いといて、紙切……じゃねえ、コーイチって言ったっけ? そっちは地の果てまでも追っていくつもりなんだな?」
「追っていくっていうかタマさんが鎮まらないっす()この人地味に頑……ん゛っん゛ん゛! ……意思が硬いっすから」
「おめーよォ、紙のくせにうっかり口滑らしてんじゃねーよ。ま、否定はしねーけど」
「……今日みたいなのは?」
「あっ、序の口ですね。彼女の御武勇を聞いた上で止められるならやってどうぞっす、責任は一切負えません」
「う〜ん……こりゃめんどくせぇな……俺ぁアイツみたいにゃなりたくねぇし……一応俺ギルド長だし……テンバイさんもしちめんどうくさいことしやがってもう……」
「俺としてはポーチさえ無事に帰ってくるならなんでもいいんだがよ……」
「例えばこっちが買い付けて返すってのは?」
「俺ァ乞食じゃねーんだ。ケツは自分で拭くっつーの」
「なるほど、こりゃ兄貴が気に入るわけだわ……うーん……」
「いい方法あるでござるよ!」
ダイチ、ひょっこりと再度登場。
「お、おめーんとこの連れ大丈夫だったか? やったの俺だけどよ」
「ちょっと残念な顔してるけどそれ以外は大事無いでござるよ。むしろ穏便に済ましてくれたと思ってるでござる」
「あ、そ。なら良かったわ」
「そんでダイチ、お前が言ういい方法ってのは?」
「ゼット殿、答えから先に申しますと気持ちであれ対価があるなら良いのでござるよ……と、タマ殿、いきなり現れて見ず知らずの者のお願いで恐縮にござるが……此方は貴女をよく知っています」
「おん?」
「ガンテツ殿をご存知ですね?」
「お? おめーガンテツ知ってんのか」
「左様。積もる話もありますので是非、拙者の仕事。まぁ、ダンジョン攻略ですな。 それの依頼を受けてくれないでござらぬか? その間ゼット殿が絶対にタマ殿のポーチとやらを取り戻します故に」
「んー……まぁ、それで帰ってくるならいいんだけどよォ……本当か?」
「はいでござる。同郷の者として誓うでござるよ」
「……へぇ。乗った。面白ぇ」
「あ。じゃあ俺そこのゼットさんの所についていって解決してくるっすね、よろしく御願いするっすよー」
「つまりアレか? タマちゃんとダイチが出かけてる間に俺がなんとかしとけって話か? コイツと一緒に」
「そういう感じでござるね! ……余計なことだったでござるか?」
「いんや、俺も助かるわ。じゃ、コイツ預かるぜタマちゃんよ。 ……オラっ! どきなどきな! 見せもんじゃあねーぞ! 衛兵だぁ? ほれ、俺が話付けたから帰った帰った!……」
紙コーイチを仕舞い、自身の部屋へと急ぎ戻るゼット。
そして残されたタマとダイチ。
「さて、タマ殿。積もる話もありますので是非此方の宿でお話いかがでござろうか? 良い石持ってるでござるよ」
「おっ、なんだ? 知ってんのか。じゃーご馳走になろうかな。ちょうど小腹が空いてきたンだよ……」
更に2人が去った後、未だソファから動いていないムッシ。
どうしたもんかと悩んでいるかと思いきや……
「……取り敢えず掃除して営業再開しますか」
彼は切り替えのできる男であった。




