122ネキ 何かあったら大抵土下座でなんとかなるって隣の山田さんの叔父の後ろにいるおっさんが言ってた
前回のあらすじ
しっ、沈むッ……沼! ……沼にッ……これが……圧倒的闇のッ、沼ッ……!
(ざわざわしつつ顔をぐんにゃりさせてると尚良し)
――――
一方その頃のダイチさん。 ギルド長執務室。
よくよく話を聞けばギルド長曰く、
“客か何か来たら取り敢えず俺ん所で待たしとけ!”
との話が後から発覚したため、応接用机の上に乱雑に書類が山になっているのを見、
「本当に優先度のある物から処理してそれ以外はまぁ……」な、人物像と、予測しつつそれは実は出来る故の芸当なのでは? とその人物の考察をして待っていると、ドアが開かれその人がダイチの前に姿を現す。
「おー! すまんすまん! いや〜待たせちまったな! 大体の話は部下から聞いてっけどよ。 いやな? デケェクラーケン出たって聞いて、てんやわんやしてたらもう解決してたでやんの! ガハハ! しかもそれが見に行ったらよォ! 兄貴の船がやったんだつーからそりゃもうおもしれーのなんの!」
「あ、どうもこんにちはでござる。拙者シュバから派遣され申した勇者のダイチと申す者でござる」
「おう! 俺はゼットっつーんだわ、よろしくな! ……あー、そういやこんなバカみたいに早く解決するとは思ってなくて増援要請したんだっけな……悪ぃな。勇者って忙しいんだろ?」
「いえ、正直勇者なんて体のいい便利屋の極みですからな! 此処には魔王なんて居ませんし拙者勇者と言うよりはダンジョン掃除屋でござるよ!」
「はっ、おめー中々面白い奴だな?」
「シュバの王様にはこき使われてるでござるが結構楽しい日々でござるよ」
テヘペロと軽くおどけるダイチを見て、面白い奴が勇者なんてやってるものだなと感心しつつ、真面目な話をするためゼットは応接用の机の上に積まれた書類をつい払い除けようとするが、間一髪思い留まり丁寧に山を別の机へと移動させる。
「いけねえいけねえ……つい癖で退かすところだったぜ」
「豪快でござるな」
「海の男なんてそんなもだよ。んで、ダイチって言ったな、まぁ立ち話もなんだしそこ座ってくれや」
「お気遣い感謝でござるよ」
「んじゃ、真面目な話すっかぁ……」
別におもんないのでカット。尺の都合があるかもしれないのでカット。
「……で、話を纏めると別に詫びだけで何もしなくて良いんだな?」
「王様のことだから“かまへんかまへん”とか言うと思うでござるよ」
「王様ってそんな軽い感じで喋んのかよ」
「あー……示しがつかないので普段荘厳でござるが、割とサクサクした御仁でござるよ。ここだけの話ですぞ?」
「おう、海の男の口は堅ぇんだ。こっちは特にないが、そっちはなんか有るか?」
「あ、しからばクラーケンを倒したゼット殿の兄上のことを土産話として聞きたいでござるな」
「お!? いいぞいいぞ、是非聞いてってくれ! 兄貴から聞いたんだけどよ、実はとんでもない奴が倒したんだって話なんだよ。 アンタぐらい強い奴になら言っても大丈夫だろ。あ、俺も兄貴に“一般人には言うなよ”って言われてるからアンタも内緒にしてくれよな!」
「あいわかり申した。して、仔細をば」
「最初はな? 兄貴曰く一目見たときから面白そうな奴だと思ってたらしく、半分冗談で港に落とした砲弾拾ってこいって言ったら本当に拾ってきたんだとよ!」
「砲弾? 泳ぎが得意なら海系の種族の方でも良いのでは?」
「そう、そこなんだわ。その砲弾ってのがな、1発がこーんなデケェやつでよ、抱えて上まで泳げねえぐれぇ重いんだわ」
「ほうほう……まさか1人で持ち上げて泳いだので?」
「そう思うよな? だけどちげーんだわ積荷の箱ごと担いで海中から陸路で揚がってきたんだとよ!」
「ほう! なんとも逞しい」
「んでまぁ、長くなっちまうから端折るけどな、ここらの近海で確かに見ないはずのクラーケンに襲われたんだと、えーと兄貴の船が動けないぐらいだから通常の3倍ってところだな、そんでな? まさかのそいつが蹴り1発でクラーケン仕留めたんだとよ!」
「なんと! 本当でござるか?」
「本当も本当で俺も兄貴からクラーケンの魔石とカラストンビ見るまで信じなかったぐれぇだからな。いやぁバケモンみたい奴が世界にはしれっといるもんだなぁ!」
「はえーすごい御仁も居るんでござるなぁ……有名な方で?」
「いや、こっちでは無名だ。後ついでに面白いのが野郎じゃねーぞ。そいつ」
「……うん? 詳しく」
「えーとな、確かそこら辺の奴より高い身長で……」
「ふむふむ?」
「あまり見ない緑? エメラルド? まぁ、綺麗な目ェしてたんだとよ」
「それからそれから?」
「あ、アンタと同じ珍しい黒の髪だったって言ってたな」
「……うん?」
ここ辺りでダイチの脳裏に何かがよぎる。
「あっ、サメ見てぇな歯ですげー美人だったらしいぞ」
「うんん?」
よぎるって言うかビンゴで言うところの真ん中以外の全列リーチがかかる。
「あの……真に失礼でござるが……その御方の胸囲は、いわゆる豊満だったのでは?」
「おっ? なんだお前知ってたのか? そうそう、こーんな感じにおっぱい凄かったんだとよ。しかし自然とエロくねぇ、すげー漢らしい女だったって話なんだぜ」
はいビンゴー!
「ぅおっぱい!」
両の拳を机に叩きつけ思わず渋い表情で叫ぶダイチ。
タマさんだ! それ絶対話に聞いてたタマさんしか居ねぇ!と。
「うお!? どうした!?」
「あ、いや、つい錯乱してしまい申し訳ないでござ――」
その時。通りの反対側、ギルド向いの大手企業の道具屋にて例の爆音が聞こえた。
「なんだ!?」
「どうしたでござる?」
2人とも執務の窓から外の様子を確認し、道具屋から次々と男が転がるのを確認。
「んだぁ? 揉め事か? ったく……」
「しからば拙者が様子でも見t……」
様子でも見てきましょうかと申し出たダイチの瞳、その瞳は店奥の出来事を見逃さなかった。
Zoom、Zoom、Zoom。
見知った2人とタマが交戦し、ナハトに沈められる瞬間を。
ついでにガンテツから聞いてる話で大体察する。
「……とりあえず先に謝っておくでござるか! ゼット殿、申し訳ないが拙者これにて失礼致し申す!」
「お、おう? じゃあな」
駆けようとするダイチ、しかし窓から飛び降りずにゆっくりと執務室を出てゆっくりギルド内を出るのはとても偉いぞ!
急げ! ダイチ! もう既にちょっと影からタマさん出てきてるけど!
――――そしてタマさんの方だヨ!――――
─右を見ても、闇。
左を見ても─闇。
勿論上下左右闇。 やみヤミ闇。
独特のとろみのある水に包まれたような浮遊感があるようなそうでもないどこが上かも分からない闇の中─
「……どうすんべ、コレ。勘違いで喧嘩売られるしよォ〜とりあえず暴れてみっか?」
(ちょちょちょ、待ってくださいよタマさん! そんなことしたらあのローブのお嬢さん大変なことになりますから!)
「え? マジ? そこまでされたわけじゃねーからそれはちっと気が引けるな」
(まー穏便に出る方法ありますよ。今大体解ったっすけど許容範囲以上になれば自ずと出れます)
「ぐう有能。おめー追跡能力以外良いな」
(それは仕様なのでちょっと勘弁してほしいっす……)
「んで許容範囲ってのは?」
(まぁ、お嬢さんが我慢できなくなるまで体重増やしていきましょ。わりとすぐ出れるハズっす)
「おけ。んじゃぎゅーんぎゅーんっとな」
(……言う必要あります?)
「ない! 気分だ(キリッ)」
(アッハイ)
――――そして、場面は店の外に出たリーフ&ナハトになるよ!
「なーんか思ったより片付くの速かったわね。ま、いいわ。さっさと衛兵の所でも行きましょ」
「……向かいのギルドに投げたほうが早い……早y、ッ!? っう……うぐぅぇっ……」
店を出て外の通りを歩こうとした途端、急にナハトに衝撃が走り足をもつれさせ地面へ四つん這いで突っ伏す。
「っが……っかハァ……」
「え!? 何!? ちょ、どうしたの!?」
全身をブルブルと震わせて呼吸もままならぬ急変した友を目の前に狼狽するリーフ。 そして、ナハトが息も絶え絶えな状態から言葉を、絞り出した。
「……ば……か、な……で、出る……」
「え?」
何が起こったか分からないリーフを他所にナハトの影からぬるり、と右手が生え、がっしりと地面を捉えた後、ずるりとタマが這い出てきた。
「あ゛〜案外あっさり出れるもんだな、コレ」
タマ、復活。 うん、まぁ、……良い子のみんなは知ってたね。
「なっ!? 貴女、どうやってナハトの影から出られたの!?」
ぐったりと気を失ったナハトを抱えてリーフがタマを睨みつける。
「あ? そりゃおめー俺なんか食っても腹壊すだけだって「はーいはーいちょっと通ります通りますでござるよ〜」
「……んあ?」
「ダイチ!?」
ダイチ、するりと参上。(言うて近かったしね)
「んだおめー、次から次へとなんだってんだ」
「ダイチ、この人、やばいわよ、気をつけて」
タマとダイチがお互い睨み合い、しばしの静寂。
─先に行動を起こしたのはダイチであった。
「…ッ。此度はっ、どうもっ、すみませんでしたっ!」
しなやかかつ残像の見える動作でいきなり土下座。そしてそのままの流れでに美しい三点倒立。
誠意がありすぎるのか失礼なのか、多分それ失礼過ぎませんかね?
「……は?」
「……え?」
……場の時がっ! ……止まるっ!
果たしてダイチ一行の命運は……如何に?
(ケッタは食い歩いています)
(ケッタは食い歩いています)
大事なことなので2回r
―――お ま け――
そしてタマがシンシア上陸の際の鉱山都市、ヴィシソワーズ。
の。
ガンテツの工房。
の。
畳スペース。 例のアイツ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
絶賛微振動中のぎーと。
タマが上陸したことも知ってか知らでか、時折出る発作の振動がうつ伏せながらも地味に前進するほど震えている。
その状態を見てやれやれ……と溜息を吐いたアルドがおもむろにぎーとに近寄り、
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
謎のお立ち台に座らせ、
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ちゃっちゃかとミラーボールを設置。プチたちも点呼して集め、
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
店の一角を暗くし、ぎーとにサングラス、首かけ片耳ヘッドホン、そして仕上げに手元にディスクを置いてブースを完成させる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
キュッキュキュッ! チェキチェキラァ!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……Yo! Yo!」
リズムに合わせてブレイクダンスを踊るプチたち。
うむうむと、顎に手を当て満足そうにするアルド。
……DJだコレー!?
ぎーと鎮めに磨きがかかっていたアルドであった()