119ネキ 一言多いと損すること有るよね
前回のあらすじ
よくわかるよいこの解錠術
1。 先ずは取手を確認しましょう。
堅いようなら引きちぎっても構いません。
2。 取っ手が自由に動きますね? じゃあ扉を開け……
え? 何? 錠が掛かっている? んなもん手ぇ突っ込んで取れ!
3。 おっ、開いてんじゃーん
4。 ね? 簡単でしょう
――――
「……え!? クラーケンもう居ないでござるか!?」
「ええ……正直私たちも驚いてまして……昨日の情報によりますと、なんでも救難信号を出した当の船自体が襲ってきたクラーケンを倒してしまったとか……」
「凄いでござるな! 確か聞いた話では特段大型と言っていたでござるが……」
「ええ、そうですはい……通常の三倍程の黒いクラーケンだったとか……ですがまぁ、マッキー船長ならあながちデマでは無いかと……」
「ほえーそんな猛者も居るもんでござるなぁ! ……ところで受付殿、拙者たちはギルドの呼び出しにてここまで来たのですが……どうすればよろしいでござろうか?」
「その件に関しましてはギルマスと仔細を詰めていただきたく……ですが……」
「了解でござるよ。 と、その様子だと、もしかしなくても御不在くさいでござるな」
「申し訳ございません……マッキー船長、いえ、討伐者の船の所に遊……検分しに出かけているようで、もう暫くで戻ってくるとは思いますが……」
「ふむ……では此処で待つことにするでござるか。さて、リーフたちも聞いていたでござろう? 拙者1人でも話は大丈夫ゆえ、町で遊んでくるといいでござるよ」
「まぁ……仕方ないわね」
「待っててもいいけど、ダイチは私たちが羽伸ばしてくるほうが喜ぶもんね?」
「飯ィ! 時間は適当に夕方頃でいいにゃ!? じゃ、早速行ってくらァにゃい!」
時間がかかると踏んだケッタは言うが早いか時すでに遅し、足が渦巻きに見えるほどの(例のぐるぐる足)早足で外に駆け出していってしまった。
「……と、いうことで夕方頃にギルドに戻ってくると良いでござるよ、後ナハトは解ってるでござるなぁ……いい子いい子でござるよー」
「ふへへ……」
「あっ、羨まs……いやなんでもないわよ! ケッタはどーせ食い歩いてるだろうから私はナハトと町でも見て回ってくるわよ」
「うへぇへへへ……」
「あのぅ……(人前でイチャイチャ勘弁してほしいんですけど……(チッ))」
「あんたらいつまでやってんのよ! ほらもう行くわよ!」
「ああん後一生……」
「なげーわボケ! アンタも甘やかすな!」
「おっと失敬、これくらいでやめとくでござる」
「鬼! 悪魔! 血も涙も胸も無い奴!」
「あ゛ぁ゛ん!? 表出ろクルルァ!」
「あーれぇー……」
リーフに首根っこを掴まれズルズルと外へと消えていったナハトとリーフ。
「いやー仲間がご迷惑をおかけしもうした……それでは邪魔にならない所で待たせてもらうでござるよ」
「あ、はい。まぁ……お気になさらずに……(ほんとな!)」
――――
一方、スリグループの隠れ家だよ!
(そりゃ静かに開けましょうとは言いましたけども……まぁいいか)
「開きゃいいんだよ開きゃ。ぬ? だーれも居る感じせーへんぞ」
(あ、さっきも言いましたけど地下っすよ地下、入って右奥の部屋、そこの床板起こしてください)
「おん? これか? おー扉あるじゃないですかー、じゃお邪魔しますよ〜っと」
(タマさんさっきまで怒ってませんでした? なんかテンション高く感じるんすけど……)
「あー、勿論俺ァ怒ってるさ。けどもお前と話してるうちに表面落ち着いただけよ、当然犯人はひっぱたくぜ」
(アッハイ)
縦穴の梯子を少々降りると、直ぐに地面へと着き、そこには人が通るには十分な広さの横穴が続いて壁には灯りとして所々ランプが灯っている。
(火が炊けるってことは何処からか換気穴がある訳ですから結構な隠れ家っすね)
「他に出入り口とかは?」
(まぁ無さそうではありますね、あったらすいませんっすけど)
「おけおけ、そんときゃ逃がすのも癪なんでとりあえず俺ごと埋めるから大丈夫だ、とりあえず歩くべ」
(ヒエッ……)
――
「……なぁ、なんか出入口のほうから音が聞こえねえか?」
「へっ、お前がきちんと戸締りしてないから風でもぴゅーぴゅー吹き込んでんじゃねえのか?」
「なわけねーだろ! 俺ァきちんと外の鍵も閉めたし出入りも閉めたぜ! ……多分」
「気になってしょうがないな。仕方ない、俺が行って閉めてこよう」
「お、気が利くな」
「……まぁ今の酒飲んで寝転がってる状態のお前に言っても面倒くさがるだけだしな」
「解ってるぅ」
グループの内の1人が確認のために出入り口へとランプを片手に向かう。
「全く……直ぐ近くだからいいものの慢心は足を掬われる……ん?」
ぶつくさと独り言ち出入り口へと向かう男、曲がり角にて不意に柔らかい何かにぼふり、とぶつかった。
「なんだ? アイツ道中に何か落とし……」
ぶつかった何かに灯りを掲げ照らしたその先には─
「曲がり角にゃ気をつけろってな」
みんなのタマさんだよ!
「うっ、うわぁおグゥ!?」
スっと男の胸元に差し出されたタマの手、それと同時にデコピンが炸裂。 言葉を遮られた男は胸に強烈な一撃を貰い壁へと張り付き、直ぐに意識を飛ばすことに。
「な、なんだぁ!?」
「誰か来たのか!?」
「侵入者か!」
のんべんだらりしていた男たちもすぐに仲間の悲鳴と大きな音で異変と気付き、武器を取って構える。
そして間もなく男を担いだタマ
「お、全員居るな!」
「ゲェッ!? 昨日のデカ女!」
「仕返しにきやがったのか!?」
「クソっ、人質のつもりか!」
「……はぁ? コイツ? 人質? ……強いて言うならお前ら全員だけど、コイツは横に置いて……と、大人しく投降するならおしりペンペンぐらいで許してあげよーかな〜くらいには考えちゃるから3人纏めて尻を出せ」
「うるせぇ3人に勝てるわけないだろ!」
「身ぐるみ迄はいでやるぜぇ!」
「もしかしてこの女やばい奴なのでは? ……ええいままよ!」
一斉に襲い掛かるスリグループ3人! 絶妙なコンビネーションを駆使してタマへと迫る!
洞窟内であることを感じさせない華麗で流麗かつ無駄のない連携攻撃にタマが窮地に陥るッ!
……わけないだろ!
「おごっ」
「アバッ」
「うぎゃっ」
斬りかかってきた男共の剣を適当に掴み驚かれているところにそれぞれ頬にとても良い平手打ちによる闘魂注入が行われ、各自例外なく1発KO。
そして時はちょっとだけ飛び、現在は椅子に座って膝を組んでいるタマとその下に大きく頬を歪ませ正座させられているスリグループ4人の珍妙な光景が広がっていた。
「……ンで、お前たち殺しはやってないんだな?」
「ふぁい……やってまひぇん……」
「もにょ盗りの矜恃がいちほうありまひゅので……」
「化ケもにょすぎゆ……」
「すいませんさっきから咳に血が……」
(タマさん、言動とその他諸々から察するに嘘は言ってないと思いますよ)
「ふぅん……ま、いいわ、信用してやる。……が、人様の大事なもん盗ってこれで済むとは思ってないよなぁ?」
「しゅ、しゅひまへん命だけは!」
「そこは安心していいぞ! 俺は命を取りに来る輩にゃ遠慮はしねーが殺しをしてない奴を殺すわけにゃいかねぇしな」
「じゃ、じゃあ見にょがひてくれるんでひゅか!?」
「うん? 俺のポーチ早く返してくんね?」
「えっと、すみませんが、それは……その、今朝お得意さんに卸してしまって……エホッ」
「……えっ。 ……此処に無いの?」
(あー……どうやらそれも本当にみたいっすわ、反応魔力、更新来まして……多分そっちがコイツらの言ってるお得意さんかと)
「ひぇ、しょ、しょこのばひょ聞いたってひんでもひわねぇぞ、ひょれが裏の矜恃でゃ……」
「ふーん……あぁそう……もーいいわ。(場所別ってわかったしな) よし! 逃がしてやるから、その前に全員並んでテーブルの上に両腕出せ」
「えっ、ほんとでひゅか!?」
「いーからはよしろ、それとも……」
「ひゃ、ひゃい! ならびまひた!」
「あっ、なんか嫌な予感がしゅる」
男たちが一列に並び、両手をテーブルに並べたと思ったら……
「関節増量モリモリチョップ!」
「「「「おっぎゃぁぁああああああああ!!??」」」」
タマによる連続チョップが炸裂。
トトトトーンと、リズム良くポキポキ、いや、ボキボキ、それはおじいちゃんの肩たたきをしてあげるが如く、それはもう軽快にスリグループの関節が沢山増えた。
こんな肩たたきあってたまるか。おじいちゃんの肩壊れちゃーう!
「いでぇひょお……おっさんが馬鹿みたいに金持っててちゅいてると思ったらこんなばけもにょに遭うにゃんて……」
「あ、おっさんの貯金スったのお前たち? じゃあ関節もっと作っちゃるわ! 足とか」
「うっぎゃぁーーーッ!?」×4
(ヒエッ……南無三すっよ……)
口は災いの元とはよく言ったものである。