118ネキ 鋼鉄伝説 特攻のタマ (特攻と書いてぶっこみと読む)
前回のあらすじ
〜 昨夜のとあるスリグループ の アジトにて 〜
「ッってぇー……なんなんだあの女、身長以上にどっしりしてやがったぜ……」
「へへへ、いの一番にぶつかったのに、当たり負けてコケてやんの」
「う、うるせぇ! お前も盗れなかっただろうが! 同じだ同じ!」
「まぁまぁ喧嘩しなさんなっての。ちょいと強引だったが目星付けたブツは頂けたんだからな」
「そうだぜ。俺たちの連携プレーの勝利なんだからよ、お前がコケてくれたおかげで作戦変更できたし、お前さんに気を取られてくれたからこそ獲れたってもんよ」
「……まぁ、お前がそう言うなら良いんだけどよ……で、ブツはどうなんだ?」
「へへ、聞いて驚くなよ? なんとこいつぁ次元袋だ」
「マジかよ!?」
「ああ、とんでもねぇ大当たりだ。しかも中身も相当ヤベぇ、見な」
「ん? 石ころ……じゃあねえのか?」
「ところがどっこいこいつぁミスリル鉱石だ。 しかもコレがたんまり所じゃぁねえ。 他にも色々入ってたがパッと見なんの鉱石か俺たちじゃあ解らない。つまりもっとお宝な可能性がビンビンってわけよ。ミスリルで確認のために出そうとしたら全部出す前にヤベぇ塊だと気がついて引っ込めたのさ……」
「お! じゃあ中身抜いて袋だけいつもの所に卸しゃあもっと儲けるんじゃね!?」
「へへ、お前ならそう言うと思ったぜ」
「だが駄目だ。コレはそのまま例の所に卸そうと思う」
「……は? なんでだ?」
「ばっかお前さんそりゃこんなやべー次元袋を持ってたあの女が普通だと思うか?」
「……あ」
「へっ、理解したか。だからこんな危ねーもんはさっさと手放すに限るぜ」
「そうだ。コレは早朝日の出前に裏口から俺がこっそり卸に行く。物が物故に買い叩かれることは無いだろう、中身も触らないに越したことはない。それに、現金も既に山分けてることだし暫くは此処に身を隠すべきだ」
「あーあ、あのおっさんもツイてねえよな! 俺がちょいとくすねてやったらそれが大事に貯めてたであろう金貨袋なんてなぁ? へへへ」
「やはり仕事は船が入った時に限るな」
「ああ、クラーケン騒動で巷は大騒ぎだぜ」
「コレだからスリは辞められねえなぁ」
「「「同感だ」」」
………
……
…
――――
〜 そして朝。 タマの居る宿。の一室 〜
おはもーにん。
う〜ん……
焦ったところで見つかるもんじゃねーし、外の喧騒で起こされて仕方なしにのっそりベッドから起きてーの、寝起きの1口。
……1口。 ……ひとくち……どこ?
……あっ、ポーチみつからねーからいいやもう寝るわで寝たんだったよな。 ま、先に着替え着替え……着込むだけなんだどもね。
〜〜
はい。 着替え終わって改めておはもーにん。 2階の窓から覗く街並みを見ると人が往来して活気あるな〜と眺めつーつ、1口ぽ……いー?
……。
うん? うん。 無い。 無意識に煙草咥えて吹かすぐらいの自然さでムシャリしてた俺のポーチが無い。
……落ち着けー。 おちけつ。
おーちーつーけー。
先ずはベッドの下。 ……無い。
続いてポケットと言うポケット。 ……うむ、無い。
部屋の隅から隅。お、昨日の酒瓶めっけ。あ、悪くないわねとバリバリ咀嚼しつつ、 まぁ肝心のおやつ袋は……無い。
ポーチINポーチ。 ……は、確かどうやっても入んないってガンテツ言ってたしな、着替えと財布は有るが……
うん? お や つ…… ど こ ?
待って待ってまってまって。 失くした? えっ失くした?
えっ、マジ失くした?
えーと確か? 船から降りる前には確か摘んでたな? うん確かに食ってたわ。
そんで? 宿の場所通行人に聞いて此処行く途中に路地裏で見つけたおっさん冷やかしに行って1杯やった後は直ぐに此処に向かったよな?
全くおっさんも大金スられるとかツイてねえよなぁ。親孝行はいいことだってのにそんな大切な金を盗るなんて悪い奴が居るもんだなぁ……俺がもしそいつと出遭ったら絶対指先から肩までに新しく関節100くらい増やしちゃうね。
っと、まぁそんなことは無いし大事なことはこっちだこっち。
タマがうんうんと唸り昨夜のことを一生懸命思い出していると、不意に着替え用のポーチから人型を取った紙が1枚、ヒラリと舞出す。
なんだ? と気がついたタマの目の前でPON! と小気味よい音を立てた紙切れはなんと、小さいコーイチへと変化した。
「あーあーあーテステス、毎度どうもタージェル商会のアフターサービスっす」
「お、コーイチじゃん随分と身長縮んだなお前」
「あ、どうもタマさん……って、違います違います。俺は仕込まれたプログラム……えーとそうすね、AI積んだ式神とかそんな感じの認識で良いっすよ。わかりやすいでしょ?」
「式神とかなんでもアリだなおめー」
「いえタマさん程じゃ……って、早速本題にはいるんですけど、俺が起動したってことはお渡ししたアイテムボックスが所有者から一定時間離れたってことで、多分紛失か盗難じゃないすかね」
「紛失? 盗難?」
「タマさん今近くにアイテムボックス無いですよね」
「うんむ。さっきから全然見つからねーわ」
「昨日の経緯お話聞かせてもらってもいいですか?」
「いいぞ。カクカクシカジカにゃんこらしょ……
〜 ネキ説明ちう 〜
「……はい、はい。そっすね、コレ間違いなく昨日の宿前でぶつかられた時にスられてますね、はい」
「……え? ……まじ?」
「ええ……起動時間から逆算しても間違いなくそれですわ」
「……まじかー……」
ベッドに腰掛けたまま、顔を両手で塞ぎ盛大に落ち込むタマ。
「第2のおっさんになってたのかー……すげー面白いくらいにフラグ回収してんじゃんよー俺……」
「まーまー落ち込むのは早いですよタマさん」
「……うん? なんで?」
「今から探しに行きましょうよ」
「……マジでか!? できんのか!?」
「ええまあそのための俺ですから。ウチはアフターサービスも優秀なことがウリっすからね」
「よっしゃやる気出てきたわ! ……ところでどうやって取り返しに行くんだ? 場所わからんちん」
「あ、それなら俺が起動してから一定時間毎にアイテムボックスから信号がこっちに届くので、残留魔力を追えば直ぐに見つかるはずっすね。リアルタイム信号じゃないのは電池の節約だと思って勘弁してくださいっす」
「……フゥー……解った。じゃあ、早速行こうか(ニッコリ)」
「アレ? タマさん、なんかめっちゃ怒ってないすか? AIの俺でもめっちゃ怖いんすけど?」
「いや、なんか一気に安心したらよ、なんかすげーふつふつとはらわた煮えくり返ってきたのよ」
「あ、さいすか……では俺はAIなので淡々と道中案内させてもらいますね(棒)」
「おう、頼りにしてるわ」
再度、PON! と音を立て紙に戻ったコーイチ(AI)は、するりと着替えポーチへと戻り、声のみがタマへと伝わる。
(あーテステス。 はい、OKっすね。 タマさんだけに聞こえるチャンネルなので道中案内するっすよー)
「おけ。じゃ、お尻ペンペンでもしてあげに行こうかァ」
「(それ尻で済むんですかね)」
「じゃあおしりもぎもぎふるーつするわ」
「(そんなコブとりじいさんじゃないんですから……)」
大胆な道中カット。
それだけだと若干寂しいので一瞬だけロッジ邸を中継致します。
――――
「っおっほぉう!? なんだこの悪寒は!?」
突如ロッジにフレクサトーンによる某ニュータイプ音が走る。
「マスター、さすがに私にバブみを求めるのはどうかと? まぁやぶさかではありませんが」
「彼女は私の母になって……って違うわ! オカンじゃねーよ!」
「大ボスノリツッコミサスガヤン?」
――――
そして少々寂れた町の一角のどこにでも有りそうな一軒家。
の! 玄関前ぇ!
「(此処、地下有るっすね。最新反応ここっすわ)」
「そうか。じゃあ……逝こうか」
堅く閉ざされたドアノブをクシャリ、と握り潰し鍵部分を抉る華麗なピッキングによって、今、タマが屋内へと踏み入った。