115ネキ バラバラ殺タコ死体遺棄とぶらり珍勇者
前回のあらすじ
何がアレってあらすじに割くカロリーは実は高い。
やめたら? この仕事?(あらすじ)
(やめる気は)ないです。
じゃあたまには普通なあらすじにするね。
@船は戻ってきてるよ。
若干まっとうなあらすじおしり! 間違った、おわり!
――――
下にまいりまーす!
俺、海底まっしぐらなう。
船上で宣言通りクラーケンに1発をかまし、眉間に突き刺さったまま海底へと急直下するタマ。
腕組仁王立ちで堂々たる姿勢は崩さない。(クラーケンがなびいて逆てるてる坊主状態で全く見えないんですがその。)
さて、そろそろ海底じゃね? いや、見えんけど。 それじゃ締めの1発いくぜー? せーの!
勢い衰えず海底へとタマ、多大な轟音と砂煙を巻き上げ、クラーケンをクッションにし、着地。
必殺! 48の殺蛸技の1つ、
「柱落下締め!!」
技は今、適当に考えた。誰も見ちゃいねぇが江戸っ子の裏地にオサレするようなもんですよ。
ほいでは全身埋まってしまって気分悪いので出ますね。よっこいせ……うぉぉこいつの上ぐにぐにで滑べ……おわっぷ、転がり落ちたわ。
うーん巻き上げられた砂でなんも見えん。ちょっと待つか。
〜ネキ待機ちう……Now Loading〜
有無を言わさず眉間にめり込まれ偶然そこにあった急所を断ち切られたクラーケンは断末魔の叫びを上げることなく、巻き上がった砂が落ち着く頃には既に事切れピクリともしなかった。
「うーん確かにぶっ殺すつもりでやったが存外あっさりくたばったな此奴。怨むなとは言わん。 ま、せめて多少なりとも糧としてやろう、火はまぁ……刺身でいいか、頂きます」
ぐったりと海底に広く拡がったクラーケンの亡骸へと近寄り砂をはらい、両手を合わせて合掌した後、両手でがっしりと押さえ込み豪快にかぶりついて肉を齧りとる。 いわゆるサバンナスタイル。
……刺身とはなんぞや。マナーとはなんぞや。
モニュ……モニュ……ゴユ……ゴユ……
うーん……この、やたらめったら、ゴユゴユの皮。俺には関係ないけど咀嚼を絶対的に拒否するこの反発。
身も皮と大して変わらず私はこの圧政(咀嚼)に大して絶対の叛逆を敢行する! ってくらい硬い。
まぁそれもこれも俺にとっちゃ村の一揆程度よ。
はい鎮圧。肉程度が俺の顎にかなうと思うたか。鉱物になって出直しませい。
食感は一言で言うと廃棄の古タイヤ……かな。 味? 味は……海水の塩味。そらもう真っ只中なので好きなだけしゃぶしゃぶできますよ。
別に俺は食通でもなんでもないからざっくり言うけどな、うん。こいつ生食美味しくないわ……前言撤回1口で終了のお知らせ。
やっぱり蛸は大根で叩くなり洗濯機にぶち込むなりして柔らかくしないとダメやんな〜。せっかくだから1本切り落としてどうにか食えないかマクレのおっちゃんに後で聞いてみよ。
適当な食レポはそれくらいにして……こんだけでかけりゃ魔物でしょ? 魔物ならアレがあるよなァ?
とりあえず適当に解体しゃどっかにあるだろ。
サクサクーっとカニタマさんでやっちまうか!
(結構凄惨なので良い子には見せられないよ!)
(まだ見せられないよ!)
(見せら) 中略。
お? あったあったありましたよ胴の中にクソでけー黒真珠かよって感じのバスケットボール大の魔石。
さっそく齧……いや、土産にするか。タコ肉微妙だったし。
そしてタコと言えば! 一番のかっこいいところはやっぱりカラストンビでしょ。 タイで言う所の鯛中鯛とか大竜とかあと何個かあったけど知らん。 覚えてねぇ。
えーと……結構ザクザク刻んだけど口とかここら辺か? おういえすドンピシャだったぜカラストンビ発見!
おーおー凶悪な形とすげーでけーわコレ。 やっぱり蛸の嘴ってかっこいいよな!
それはそれとして。 解体。
ごまだれ〜!(ハートの欠片感)
やったぜカラストンビゲットだぜ! ……え? なんで嘴なのに鳥かって? えーと、外して……上嘴が横から見てカラスっぽい。んで下がトンビっぽい。
……にしては禍々しい形してんな。カラストンビつーよりヤタグリフォンとか名前付けたほうがいいんでねーのコレ。
まいいやこいつも土産に仕舞お。いらねーって言われたら後で食お。
さて、と。 取るもんとったし船に帰るか。適当に海面出りゃどっか居るだろ。
盾を展開状態にして海面へと跳躍しようとした時、タマの付近へとタイミング良く落下してきた船の錨が海底へと突き刺さる。
おん? 錨? あ、なるほど。これ鎖伝っていけば船まで帰れるじゃん船長気が利くぅ!
〜 一方海上かつキンガ号 〜
「船長……言う通りに戻ってきたポイントで錨言う通りに降ろしたっすけど本当に姐さん釣れるんすか?」
「タマちゃんがタコ野郎もといクラーケンを蹴り落とした場所が大体ここら辺だからな。まだ下に居るならきっと釣れるぜ」
「ええ……?」
「船長殿、如何にタマ殿と言えど息が持たないのでは?」
「知らん。自分から沈んで歩いて帰ってくる女だ。つーかクラーケンを蹴り落とす豪快な奴だ。きっと海底でピンピンしてるぞ。俺の勘がそう言ってる」
「勘……ですと?」
「勘。だ」
「なるほど。勘。ならば仕方ありますまい」
お互いにゆっくりと頷き何かを感じ合う2人。
「なんなんだろうかこの人たち……いや、錨で釣れると言われてるタマさんもアレだけど……」
「ケラスおなかすいた〜」
「船長ぉ! 鎖が揺れてます!」
「ほーらな! 船の恩人のお出ましとくらぁ!」
海底から黒い影が1つ、鎖を伝って。
そのまま外壁をよじ登り、甲板へと。
滴る海水、豪快な毛ぶりで水を切り。
「うーす。ただいま」
何食わぬ顔、キラリとギザ歯が煌めいて。
水も滴るいい姉御、ただいまここにしれっと帰還。
――――
更に一方。 交易と航海の街、 シンシア大陸バガディールの街。
その郊外、ダイチ一行。ギルド急ぎの馬車便にて。
「全く拙者の所の王様も人使いが荒いでござるなぁ……“近くの街のギルドで大型魔物出現の救難信号出たから倒してきてくれよなー頼むよー”でござるからなぁ……拙者でなくても腕のたつ冒険者は沢山居るのでは?」
「まぁそのギルドの要請が私たちに指名されるくらい結構なものなんでしょ。逆に考えて」
「馬車らくちーん」
「とりあえずぶっ飛ばせばいいと思うにゃ」
「……で、相手はなんなの?」
「タコでござる」
「は? たこ?」
「もっとわかりやすく説明するとびっくりするくらい大きいクラーケンが出たので〜……緊急の討伐命令でござろう。拙者たち以外にも既に街では討伐準備をしてるとかなんとかでござるよ」
「またなんで近海にクラーケンなんて出るのよ……」
「出ちゃったものはしょうがないからでござるからね、頑張ろうでござるよ」
「ばっちこーい」
「やったるにゃー!」
「その意気でござるぞナハトにケッタ! サッと炒めてサッとパセリを添えるかのように終わらせてこれが終わればフリーになるのでドワーフの国に行こうでござるな!」
「あんたねー……」
「もちろんケッタのツナ缶とナハトの買い物だけでなくリーフの用事になんでも付き合えるでござるよ!」
「あ、そう? じゃ、じゃあ早く済ませたい用事が有るから、私も頑張っちゃおうかなー……?」
「フッ」「ヘッ」
「今何か言った?」
「「いや (な)(にゃー)んも」」
「小さいおっさんが居て幻聴でもしたんでしょ」
「気のせい気のせい森の精にゃ」
「ええ……なによそれ?」
愉快なもとい、愉快すぎる一行はバガディールへと向かう。
そして。
出逢う。
――――おまけ――――
例の凄惨な解体現場から結構離れた海域。 その海中。
――危ナカッタ……。
本体を捨テテ分離シナケレバワカラナカッタ。
助カッタ。 覚エタ。
アノ餌ハ、ハズレが混ジッテル。 モウ狙ワナイ。
―― 体、トッテモ小サクナッテシマッタ……。
デモカラダスゴク軽イ。 良シトシヨウ。
……オ家、帰ルカ、帰ロウ……コンナトキモアルサ……