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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
4章 家に帰ろう シンシア目指してどんぶらこ 編
137/202

番外ネキ 特に大したことない一日

 前回のくびすじ


 (あざ)





 ――――









 〜ある日のキンガ号の1日〜



 本日も快晴なり。 雲もまばらに太陽が船の甲板にさんさんと降り注ぎ、波も穏やかに航海も順調のようだ。


 ……え? 何? か?


 かい……ぞ……何? うん?

 いいかい? 問題はね、起きなかったら問題ではないのだ。


 だからなにもなかった。 仮に頭を狙撃され結構な血飛沫撒き散らしても、顔面セーフのルールにより実は皮1枚で助かってたり若干仰け反っていたので致命傷は避けたとかそんな感じ。 アブなんとかドゥルさんだってそう言ってたわ。



「おはようございます」


「今日もはえーすっなジアンさん」


 働く船員へと丁寧にお辞儀をして挨拶をするは“剣の探求者(ソード・シーカー)”と呼ばれる集まりの代表者、ジアン。


 冒険者にしては珍しい重装気味の、プレートメイルと聞かれたらそうでもないほどの軽めの全身鎧の4人組である。


「思うっすけどいつも鎧着込んでて暑くないですか?」


「無論、多少は蒸れますな。慣れっこですのでお気遣い有難く存じ上げ申す」


「野暮なこと聞いたっすね、すいやせんでした。ところでまだ昼前なのになんで甲板に?」


「うむ、いかんせん暇を持て余していて、航海の邪魔にならない所でよければ素振をして鍛錬を行いたい故」


「あーそれならタマの姐さんのいる所の空樽置場辺りが多分空いて……ちょっと船長にひとっ走り聞いてくるっすわ」


「あ、待たれよ……行ってしまった……」


 ジアンが遠慮する前にサッと賭けて消える船員。 が、間も無くしてサッと戻ってきた。


「“まぁ、無いだろうがマストとか斬らなけりゃどこでやってもいいぞ!” だ、そうです。 いやー船長最近ご機嫌なんで何聞いてもOKっすわ……」


「ありがとうございます。 それでは早速……」


「頑張ってくだせー」


 律儀に船員へと一礼し、タマがすっかり占領している空樽置き場へと向かう。


「っと……確かこの鳥たちは人語を理解できるほど賢いのであったな…… 鳥殿鳥殿、剣の鍛錬の許可を頂いた故剣を振り回すのでお手数になるがもう少し詰めてはいただけないだろうか?」


「ミャォ(どーぞ)」



 ジアンのお願いに対し、スススス……と、船の縁を移動して彼のためにスペースを設ける。


「うーむ賢い……ギルドの伝書鳥に抜擢すれば活躍するのでは……?」



 腕を組みつつ、顎に手を当てて唸るジアンに、渡海猫たちが首を横に振って応える。


「ミャ、ミャミャ。ミャォー(俺たちゃ流れの渡り鳥よ。島を渡り、好きに生きるのさ。人に使われるなんざ向いてねぇ、姐さん? 姐さんは俺らを上にも下にも見ちゃいねぇ、姿形は違えど友さ。)」


「ッポ、ポポウッ!(ソウルッ! フレンズッ!)」


 どこからともなくマイコーが羽根で頭を隠しながらムーンウォークで現れる。


 うんうんと頷くジアン。


「ふむふむ……申し訳ないが鳥殿が何を言ってるか全く理解できなくてすまない! だが伝書鳥はダメだということは私にも伝わった」


「ミャ。 ンナァ〜オ(そらそうよ。あんたたちの言葉喋ってるわけじゃねーしな。なんとなくでしっかり伝わってる姐さんがおかしいだけだから……ま、場所は空けたんで好きにやってくれや)」


「うむ、動作で“空けたからどうぞ”は伝わった。では有難く使わせていただこう……」


 空いた場所にて鍛錬(トレーニング)を行なうジアン。


 しかし、剣を振り回す様子は無く、腰を落とし剣に手をかけたまま静止し、動かない。 微動だにしない。


 穏やかに揺れる船。 遠くに聞こえる船員たちのやりとり。


 だいぶ続いた静寂の後、不意に目が覚めたタマが仰向けのまま首だけを横に向け、少し間を置いてジアンに(とい)をかける。


「……なにしてんだ?」


「ぬ、起こしてしまわれたか。これは申し訳ない……」


 姿勢は崩さぬまま少しだけ兜をタマの方へ向けジアンが言を返す。


「いんや、俺が勝手に起きただけだしなそっちに非はねーよ……ところで、居合? それ」


「“イアイ” を知っておられるのですか」


「知ってるっつーかそのポーズでそのあと剣……まぁ、刀やね。 そらもう居合しかないじゃんよ」


「“カタナ” も知っているのですか。 成程それならイアイも当然。 以前、とある旅の鍛冶屋に出逢いましてな、その時にどんな剣が良いかと聞かれて渡されたのがこの、“アワモリ”です。 実際本当に私の戦い方にピッタリでして、その方には本当に感謝しております」


「へぇ、その方ってのはどんなんだ?」


「たしか……ドブ・ロック殿と申しましたな。シンシアに渡る理由もその方一言お礼を言いに行くのと仲間もコレに近しいのが欲しいとのことで話題になったので……」


「ドブロ…… え? そいつドワーフ?」


「おや? よくわかりましたね? もしかして高名な方なのですか? 本人は偏屈隠遁者と言って詮索を嫌ってましたので……やはり高名な方でしたか」


「いや、うん。 俺もそのドブなんとかさんは全く知らねーが、なんつーか……響き? うん。 ドワーフだよねって感じ」


「左様ですか?」


「いや、俺の勝手な思い込みだから真面目に受け取らないでく「敵襲ーッ! 魔物だ! 大海蛇(シーサーペント)が出たぞーッ!」


「あん?」「ぬ?」


 響く警鐘。 予期せぬ来訪者に船内船上問わず慌ただしく戦闘態勢へと切り替える船員たち。


「シャギャーーッ!!」



「今回の奴もでけぇな!」 「陽動しろー!」「誰でもいいから拘束用強弩砲座(バインドバリスタ)に座れーッ!」 「この位置だと無理だがいつ許可出ても良いようにキンガ砲も弾込めとけー!」

戦闘用強弩砲座(メインバリスタ)準備よーし!」

「冒険者どこだーッ!」




「……会話の途中失礼ッ!」


「おっ…… はえーなあいつ……俺も行こ。 (昼寝スペースが)荒らされたらたまんねぇしな」


 タマに謝罪しつつも駆け足にて魔物が現れた方に向かうジアン。

 よっこらしょっとのそりのそり起き上がり頭を掻きつつ大きな欠伸を1つするタマ。


 今回は随分と余裕があるように見えるが単にまだ半分寝ぼけてるだけかもしれない。



「加勢しましょう!」


「うお! はえーなあんた!? あんただけか?」


「じきに他の方たちも来るでしょう! 拘束と聞こえましたが何か方法があるので!?」


「構えッ!」「撃てーッ!」


 船員たちの掛け声と共に、強弩砲座から矢が大海蛇(シーサーペント)へと撃ち込まれる。


 放たれた数々の鋼鉄の矢は強靱な鱗を突き破り、肉へと食い込むが厚い筋肉を持つ大海蛇(シーサーペント)への致命傷には至らない。


 が。


 鋼鉄の矢の矢筈(ケツの部分)には鋼糸蜘蛛(ワイヤスパイダー)の糸が取り付けられており着弾を確認後強弩砲座に設置されている巻き取り装置が一斉に稼働。




 様々な角度から引っ張られ、蜘蛛糸に掛かった虫を連想させられるように船の舷へと張り付けられ、身動きを封じられた。


「……成程。素晴らしい手際ですな。しからば、美味しいところを頂く形になりますが一働きさせていただきましょう」


戦闘強弩砲座(メインバリスタ)待てーッ! 冒険者の方に任してからでも遅くねぇ! 無駄弾使うと船長にどやされっぞ!」


 再度駆け、大海蛇(シーサーペント)へと対峙したジアンは鍛錬と同じ動作にて腰を落とし、刀に手をかけ、息を吸い、目を閉じ、 一拍 ――――


「“残波(ざんぱ)ッ!”」



 カッ! と目を見開き鞘をレールに刀を滑らかに走らせ。



 描いた孤は力を持ち、離れた大海蛇(シーサーペント)の喉元へと吸い込まれ。


「南無三」


 チンッ。 と刀を鞘に戻せば同時にゆっくりと魔物の首と身体がズレ始め、すぐに頭と胴体は泣き別れた。



「おおおおすげえ! 鎧の冒険者の人!」

「弾代浮いたぜやっほう!」

「引き揚げて解体だァ!」

「マクレのおやっさん喜ぶぜぇ!」




「……“アワモリ”。 助かったぞ」


「ひゅう。 やるじゃんかっけー」


「む? いやはや……タマ殿の剛力無双には及びませんよ」


「そうじゃねーんだよなぁ、今の技後でもっかい見せてくんね!? すげー浪漫あってカッコイイから! やり方! やり方教えて!」


「ええ? 技のやり方ですか? ……まぁ秘匿するものでもないですし、私でよければ…… まずは魔力を練って刃に乗せて云々……


















ちなみに大海蛇君は鰻みたいな感じだったとかそうじゃなかったとか。










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