107ネキ カモメ時々海賊船。
前回のあらすじ。
思いつき(暇潰し)で海中に衝撃波を撒く女。
字面がやべぇな!
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キンガ号出航から十数日。
数日前のガチンコ漁事件以外はこれといったことも無く、船は穏やかな海風を帆に受け、悠々と航海をしていた。
そんで、我らが天上天下唯我独尊強引グマイウェイ自由人タマサァンは何してんの? と、言うと……
「ミャー」 「ミャーミャー」 「ミャーオ」 「ッポウ!」
「毎日毎日よー来るな? お前たち。 ほれ、今日もパンクズやら何やら貰ってきぜー」
甲板の一角の日光浴と言うか昼寝スペースへと改造(空樽やらそこら辺にある物)された場所にて、海鳥らしき生物に餌付けを行っていた。
公園の鳩に餌をやるおじいちゃんかお前は。
「ちゃーす、姐さ……うおっ!? 渡海猫の群れすげぇ!?」
「おー。おいーす」
「ミャーオ」 「ミャー」 「ンミャ〜オ」 「アオッ!」
軽く手を振り、海鳥たちも返事をしたように鳴く。
「そいつ等良く船乗りの船に休みに来るんスけど、こんなにどっから集めたんすか……」
「さあ? こないだ船の外でのんびりパン食ってたら、いつの間にか船の縁に集まってて俺が食ってるパンガン見してたんで、分けてやったら毎日来たからマクレのおっさんから棄てるもん貰ってきて餌やってたら増えてたわ」
「「「「ミャミャミャー」」」」 「ンーマッ!」
「え〜……にーしーろー……これ100余裕で超えてますぜ姐さん……」
「マジ? いっぱい居るなとは思ってたけど、おっさん棄てる手間省けるしって言ってるし、なんかこいつらの羽根落ちてたらくれって言うし海鳥はこいつらでなんか俺の言うこと聞くし……いいことずくめじゃね?」
「渡海猫に懐かれるとかさすが姐さんつーかなんつーか……」
「そうかぁ? 俺は羽根拾いかったるいから抜けた羽根は飯の駄賃で樽に入れろ。 って冗談で言ったら本当にやったんでこいつら賢っ!? てビックリだぜ」
「そいつら俺たちの言葉理解するくらい地味に賢い魔物っすからね」
「えっマジ? お前たちただの鳥じゃなかったのか」
「ミャーオ」
「へー、意外やわ」
「あ。あんまり驚かないんすね?」
「ん? まァ、魔物だろうが鳥だろうが別に? だしな。……っと、丁度良かった、その羽根詰まった樽おっさんの所に持っていってくれよ」
「“タマちゃんから樽持ってこい! 樽ゥ!” ……って言ってたけどソレのことだったんすか…… 因みに羽は羽根ペンの材料になったり品質の良い矢羽根やら何やらとにかくあったらあるだけ使える素材っすよ」
「ほえーお前たちの羽根スゲーんだな」
「ミャ〜オゥ?」
「すんげー自然に鳥と会話してるよこの人……俺たちより鳥に好かれるとかすげー人だな…… あ、そしたらコレ、貰っていきますよー?」
「おーう、じゃあ俺は昼寝でもしてるわ」
樽を渡した後、大きなあくびを1つかいて、サンサンと照らす太陽の下、すやすやと鼻提灯が膨らみ始めた……
――船内――
「おーす! うお、お前その羽根みっちり詰まった樽どうしたよ?」
「おう。 じつはカクカクシカジカ……」
「ほんとあの人俺らに金持ってくるな」
「全く、船長は金運の女神様拾ってきたと来たもんだ……あ、そういやちょっと毛色の違う奴が居たな?」
「へー、どんなだ?」
「えーと……“ッポウ!” とか珍しい鳴き方して色もなんか黒と白が混じった奴だ」
「えっ本当かよソレ! “スリラーカモメ”じゃんかよ! 超珍しい鳥じゃん! 早速捕まえてくるわ! 高く売れるぜェーッ!」
「あっおい……行っちまった……数が尋常じゃねーの言い忘れてたけど、この羽根の量見たら解るだろ……ま、いいか」
欲に刈られ意気揚々とタマの昼寝スペースへと駆けていった船員。
「ーーうぎゃーっ!?……」
程なく、意趣返しとして服と全身の毛を鳥たちに毟られた男の断末魔の悲鳴が上がるのは火を見るより明らかであった……
そして、男の悲鳴が聞こえたのと同時に警鐘が船外内に鳴り響く。 海鳥たちも危険を感じて一斉に飛び立って退避を開始。
「緊急ッ! 緊急ーッ! 3時の方向より船! 海賊船と確認! 出れる奴以外は警戒態勢!」
「ンがっ!? なんだ、なんだ!?」
鐘の音に提灯を割られ、寝ぼけ半分のタマ。 口の周りヨダレ半端ないなお前。
“襲われることは無い” とか言ってた気がするがどうやらそんなことは無かったらしい。 やっぱりフラグでしたね?